悪魔の討伐に向かった天使の末路は、悲惨なものになった。
目標である悪魔にすらたどり着けず、天使は、その悪魔の子供によって、足止めを食らってしまったのだ。
「おじさーん、弱すぎなんじゃないの〜」
頭から角をはやし、背中には堂々とした漆黒の羽をもった悪魔の娘が、楽しそうに笑いながら言った。
まだまだあどけなさを残す幼い風貌。事実、天使の男の半分も年を重ねていない幼い悪魔の子供だった。
その悪魔の娘に、天使はなすすべもなく、全身を嬲りものにされていた。
「・・・うう・・・・っく」
悪魔の娘の前に、満身創痍の出で立ちで、よろよろと立ちながら、天使がうめいた。
その鍛え上げられ、筋骨隆起した肉体は、今では真っ赤に腫れ上がっている。
手も足もでずに、悪魔の娘に殴られ、蹴られた跡だった。
その攻撃を思い出すに、天使は目の前に立つ、自分の子供ほどに幼い悪魔に対して、純粋な恐怖を感じていた。
「こんなに弱いのに、お母さんに勝負を挑むなんて、ちょっと身の程知らずすぎない?」
「・・・・うう」
「まだまだ悪魔としては半人前の私に、ここまでボコボコにされちゃうなんてね。アハハ。おじさんって、その年で下級天使だったりするの?」
もちろん、男は上級天使だった。
そもそも、最低限の犠牲におさえるために、男は単身悪魔の巣にやってきたのだ。
歴戦の勇者である自分なればこそ、目標である悪魔を討伐できる。男はそう考えてきたのであるが、
「おじさんの標的って、わたしのお母さんなんだよね。なのに、その子供に負けちゃうなんて、情けないよねー」
幼さを残した少女の言葉にこそ、現在の男の惨めさが端的にあらわれていた。
天使の男は、ううう、と苦しげにうめいた。
「まあ、わたしとしては退屈してたところだからさ。こんなにいい玩具が自分からきてくれて、嬉しいけどね!」
言葉をきると、少女は男との間合いをいっきにつめた。
豊満な乳房が、ぶるんぶるんと揺れているのを見る間もなく、男は悪魔の娘に後ろから羽交い締めにされる。
少女の片腕が、天使の喉に食い込む。その大きな胸が、天使の羽と背中を制圧するように押しつけられていた。
「ふふふ〜、まだ綺麗なうちに戦利品をもらっておくね」
耳元でくすぐったい声。
意識が遠のくような少女の芳香に酔うのもつかの間、天使は、自分の真っ白な羽が、悪魔の娘に掴まれたのに気づいた。
「や、やめ、」
「よいしょっと」
「アアアッギャア!」
力任せに、天使の羽をもぎとる。
立派だった純白の羽が、周囲に羽毛のように飛び散って、その大きな羽が男の背中からはぎ取られた。
「もう片方はじっくり剥がしてあげるね」
「や、やめえ・・・ひいいい!」
少女は残ったもう片方の羽を、ゆっくりと剥ぎとっていった。
さきほどのようにいっきにやるのではなくて、時間をかけて、真綿で首を締めるように、少しづつ力をいれていく。
男は、痛みと恐怖にどうにかなってしまいそうだった。
「ほーら、おじさんの羽、ちょっとずつとれていっちゃってるよ〜」
「やみゃああ、ッギャア・・・ひいい」
「天使の象徴の真っ白で大きな羽が、悪魔に剥ぎとられちゃってるんだよ〜。しかも、まだ子供でしかない悪魔の娘に。えへへ、おじさん、くやしい?」
そのまま、悪魔の少女は天使の羽を剥ぎ取った。
その行為が終わると、悪魔の娘は男を解放した。地面に倒れこみ、背中の痛みでのたうちまわる男を、悪魔の少女は、戦利品を両手で持ちながら見下ろしていた。
「あはは! おじさん、もう人間と見分けがつかないね。ねえ、今どんな気分?」
「ううう・・・・っひっぎゃ・・・」
「よわっちいくせに、おじさんの羽だけは立派だから、わたしのコレクションに加えてあげるよ。ふふふ、部屋のどこに飾ろうかなー」
るんるん、と鼻歌でも歌いそうなほどの上機嫌さで、悪魔の娘は天使の羽を抱きしめていた。
その無邪気な笑顔は、プレゼントを喜ぶ女子児童を思わせる。しかし、彼女は、自分の力で、その羽を剥ぎとり、収集したのだった。
それまで天使の体の一部だったものの所有権が、悪魔の少女に移った瞬間だった。
「さてと、じゃあ残りで遊ぼうかな」
言うと、悪魔の娘は漆黒の羽をはばたかせて飛んだ。
もはや二度と空を飛べない天使に見せつけるように、背中からのびた立派な羽を躍動させて宙を飛ぶ。
そして、男の真上まできたとき、少女はいきなり急降下して、天使の背中に飛び乗った。
ドスン!
「ギャアッギャア!」
少女はそのまま、天使の背中に馬乗りになって、男を地面に押さえつけた。
天使の背中に馬乗りになり、楽しそうにニコニコ笑いながら、痛みに悶える天使を観察し始める。
「玩具は、ちゃんと持ち主を楽しませなきゃだめなんだよ。これは、わたしの質問に答えなかったお仕置きです」
あどけない笑顔で、悪魔の少女は男の顔面をつかむと、そのまま勢いよく引っ張った。
キャメルクラッチ。
男の背骨が、限界まで軋まされる。
「ッガガッギャアア!」
男の体がシャチホコのように後ろに反る。
その力は加減を知らないようで、今にも男の背骨が折れ、その胴体がまっぷたつになってしまいそうだった。
少女の胸が、男の後頭部に押しつけられ、ぐにゃりと妖艶につぶれていた。
(おれは・・・・おれは・・・・)
天使は、今にも自分の背骨が折れてしまう恐怖にかられながら、どうしようもない屈辱を感じていた。
こんな年端もいかない少女に手も足もでず、こうして殺されていくしかないこと。
自分の子供ほどの幼い悪魔に、玩具にされていること。
男は、このまま少女に殺されることを無念に思いながら、屈辱に涙を流していた。
しかし。
「うん、これくらいかな」
次の瞬間には背骨が折れるという時になって、少女は男を解放した。
そして堂々と立ち上がり、地面で苦しみに悶えている天使を見下ろした。その顔には、楽しそうな無邪気な笑顔が浮かんでいた。
「せっかくの玩具なんだもん。簡単には殺さないよ。だから安心してね」
「な、に・・・・を」
「そうだ! こんどはわたしの胸で虐めてみようかな。人間の雄って、なぜかわたしの胸が好きみたいだったんだよね。天使はどうなのか、試してみようっと」
男は、目の前に迫る少女の豊かすぎる爆乳に威圧されながら、恐怖におののくしかなかった。
このまま自分は、少女が飽きるまで玩具にされる。
決して殺されず、散々に痛めつけられる。
天使の背筋に、サアーっと寒気がはしった。
「アハハ! おじさんの顔面、わたしの胸の中に隠れちゃったね! おもしろーい」
抵抗なんてできるはずもなく、少女の胸の中に拘束され、遊ばれるしかない天使。
悪魔の娘の玩具遊びは、それからも長く続いた。
殺してくれ、と、男が泣いて懇願するまで、さして時間はかからなかった。