四



 けっきょく、俺の心配は杞憂に終わった。

 純菜の予想どおりになったのだ。


「ひゃあああンッ!」


 試合会場に男の悲鳴がこだまする。

 それをリング外のBL学園生徒が絶望の眼で見据え、その他の観客が熱狂と共に応援をしていた。

 リング上。そこには、もはや予定調和のようにして、BL学園の生徒が純菜に犯されている光景があった。


「や、だめえええッ! おっぱいだめえええッ!」


 筋肉隆々とした大の男が小柄な少女に恐怖して怯えている。

 リング上に倒された男。仰向けになった男は、少しづつ近づいてくるその爆乳に心底恐怖していた。仰向けに倒れた男の股間めがけて、じりじりと純菜のおっぱいが迫っていく。

 男は純菜の肩をつかんでなんとかその爆乳が接近してくるのをくい止めようとしているのだが、さきほどから筋肉でかためられた二の腕はプルプルと震え、純菜の爆乳の接近を許してしまっている。


「ふふっ。ほ~ら、少しづつ近づいていってますよ~。しっかりしないと、おっぱいに捕まっちゃいますよ~」


 純菜が笑いながら言った。

 その迫力。純菜を見上げた男が「ひっ」と悲鳴をもらして、心が折れてしまった。


「は~い。おち●ん、つかまっちゃいました~」

「ひっぎいいいいッ」


 爆乳の中に矮小な一物が挟み込まれる。

 それだけで男は白目をむいてしまった。その破壊力を知っている観客たちが、期待に胸をおどらせてコールを始めた。


「壊せ! 壊せ! 壊せっ!」


 それは大合唱だった。満員となった観客席が一つになって、興奮は最高潮に達した。

 もう何人ものBL学園生徒を再起不能に陥れた純菜の必殺技が炸裂したことで、観客たちの期待は一つだった。あのBL学園の冷酷悪魔を病院送りにしたパイズリ。誰が最初に言い出したのか分からないが、純菜のパイズリは「悪魔殺しの大鉄槌」と呼ばれ、熱烈な人気を誇っていた。


「みんな~、いっくよ~」


 純菜が観客をあおって、さらに熱狂が増した。

 笑顔を浮かべた純菜が、勢いよく乳圧をあげた。


「ひゃッギャアアアっ!」


 男が断末魔の悲鳴をあげる。

 パンッと肉の殴打音が響き、男の体がリングの上で陸揚げされた魚のようにはねた。さらに純菜が妖艶な笑みと共におっぱいを持ち上げた瞬間、セコンド席からタオルが投げ入れられた。審判員が慌てて、純菜と男を引き離す。男の一物がスポンと音をたてて純菜の谷間から解放された瞬間、堰を止めていた決壊が崩れ、白い液体が噴出した。男の体がビクンビクンと痙攣し、そのまま意識を取り戻すことはなかった。


「TKO! 勝者、爆乳天使の純菜っ!」


 審判員が純菜の手を高らかにあげた。

 有名選手でなければつけられることのないリング名。これもまた誰がつけたのか分からなかったが、爆乳天使という二つ名もあっという間に浸透していた。その童顔で優しくほほえむ様子は天使のようでいて、天使には似合わない爆乳がとんでもないギャップと魅力をあらわしている。


「あ、残念ですね。せっかく、榎本さんみたいに、空っぽになるまでイき狂わせてあげようと思ってたんですけど」


 純菜がニッコリと笑って言った。

 彼女は恒例となった勝利後のポーズをとった。片腕でおっぱいをぐいっと持ち上げて、観客席に手をふった。


「応援ありがとうございます。次の試合もがんばりますので、応援よろしくお願いします。次は、回復できないくらい完全にブッ壊してみせるので楽しみにしていてください」


 ワアアッと歓声があがる。

 その中には黄色い声もまじっていて、女性ファンの多さが目立った。童顔少女が屈強な男たちを圧倒し、壊してしまう光景が、女性たちの心をつかんで離さないらしかった。その選手イメージにあわせるように、純菜は時折ドSで強気の言葉を残すようになっていた。


「ありがとうございます。ありがとう」


 リングの上を歩きまわって観客に手を振る純菜。

 その足下では、対戦相手がいまだに体を痙攣させていて、他のBL学園生徒たちが必死に応急措置をしている。

 勝者と敗者。

 それはここ2週間のうちでさんざんに見てきた光景だった。
 






 *


 純菜は、榎本選手の後も、BL学園生徒を次から次へと撃破していった。

 2人目、3人目は榎本選手と同じく病院送りになって、そのままその後の試合も棄権するしかなかった。大量の白い液体が純菜のおっぱいにこべりついた映像がインターネットの世界を席巻し、榎本選手との勝負が決してビギナーズラックではないことを証明した。

 4人目からはセコンドがタオルを投げ込むタイミングが早くなり、病院送りにはならなくなったものの、失神KOは相変わらずだった。

 5人目に至っては開始3秒、パイズリが極まる寸前でタオルが投げ込まれ、大会最短KO記録が生まれた。それがあまりにも情けなく、内外からさんざんなバッシングを受け、ネットでは屈辱的なコラ画像があふれるに至ってむかえた6人目。

 それがさきほどの試合だった。胸を押しつけられて腰が抜け、パフパフで意識を刈り取られて、あっという間のパイズリ失神KO。タオルが投げ込まれるのが少し遅れただけで、男は壊れてしまった。おそらく、このまま病院送りだろう。今後の試合を棄権しなければならないかどうかは神のみぞ知るといった感じだ。

 純菜はBL学園選手たちを6人連続でKOしてしまったのだ。

 決まり手は全てパイズリ。

 あの爆乳で強豪たちを圧倒し、全勝勝ち抜けまであと一人にまで迫っていた。

 BL学園の選手もバカではない。あの爆乳に正面からぶつかれば勝ち目がないことは当然に分かっていた。しかし、彼女の規格外のおっぱいはどんな対策も無効化し、そんな小細工をする男たちをあざ笑うかのように、男たちの精液を絞りとり、壊してしまった。

 女の象徴であるおっぱいで、男の象徴である一物をミンチにして、搾り取る。

 純菜の爆乳を前にすれば、男のどんな巨根も矮小に見えた。

 偉そうな男たちが童顔少女に手も足もでずに悲鳴をあげ、白目をむき、失神して病院送りになる映像は衝撃的なもので、それが純菜のファンを急拡大させている原因らしかった。




つづく