純菜の決勝進出はうちの学校でもかなり話題になっていた。
教室でも純菜は人気者になっている。女性陣からは羨望の眼差しで見つめられ、男子からはチラチラと盗み見をされるようになっていた。
その人気は俺たちの学年だけではないようで、1つ下の学年でも同じようだった。中等部のバトルファック同好会の後輩である姫華も、純菜のファンのようだった。

「マジすごいし。純菜先輩ヤバい。かっこいい」
校内でたまたま会ったときに姫華が興奮したように口を開いた。
どうやら姫華は榎本選手が瞬殺された試合から最後の試合まで観戦し、その試合すべての動画をダウンロードして繰り返し見ているとのことだった。
「アレでしょ? センパイがうちにオススメの教材頼んできたのって、純菜先輩のためだったんッスよね?」
「ああ。そうだよ」
「うわー。すごいすごい。まだバトルファック始めて数ヶ月でアレってマジやばいって。そんなすごい人と一緒の学校って、かなりラッキーって感じ」
興奮して純菜を誉めたたえる姫華だった。いつか彼女を紹介してほしいとしきりに言ってくるあたりまるっきしただのファンだ。
「そんなに純菜に会いたいなら、バトルファック部に入ればいいじゃねえか」
「え?」
「だから、今からでも部活入れば、毎日純菜に会えるし、一緒に練習できるぞ。なんならスクールと掛け持ちでもいいし」
俺の言葉に「そうかその手があったか」と考え込む姫華だった。
どこか抜けているところがあるのがコイツのいいところだが、そんなことも考えつかないほど、姫華は純菜のことを神聖視していたのかもしれない。
「それより、純菜の次の相手だよ。黒宮。やっぱり強いのか?」
俺は肝心のことを質問した。
姫華はスクールで何度も黒宮と戦ったことがあるらしかった。何か参考になることがあるかもしれない。
「アイツは悔しいけど強いッスよ。わたしだって何度もイかされましたし」
「そうか。何がすごいんだ?」
「まあ、ああ見えて繊細な技もできるとか、いろいろありますけど、一番はやっぱ、乱暴なプレイスタイルッスかね?」
「乱暴?」
「そうッス。反則ギリギリの乱暴プレイ。本人は黒宮流レイプ術とかサムいこと言ってますけどね。クリストスを噛んだり、無尽蔵の体力でピストンを繰り返したり、そういうプレイっすね」
なんともBL学園らしくない話しだった。
西園寺選手を筆頭にして、正当派バトルファッカーを輩出する名門校から、なぜ黒宮のような化け物が生まれたというのか。
「まあでも、純菜先輩ならきっとやってくれるッス」
期待に目を輝かせて姫華が言った。
あの強気で自意識のかたまりみたいなこいつがここまで人のことを慕うのは意外な気持ちがした。姫華は純粋に純菜の勝利を応援している。しかし、俺たちはそこまで楽観視することができなかった。
*
「ううむ。やはり黒宮くんは強敵だね」
部室で岸田部長が言った。
俺たちは部室備え付けのディスプレイで黒宮の予選7試合を分析している最中だった。
「見てみたまえ。この第3試合なんて悲惨の一言だよ」
部長が動画を再生する。
画面に映されたのはリングだった。その上で黒宮が何度も反則スレスレの動作をして、相手選手を終始圧倒していた。
相手選手にタックルをし、倒れかかる瞬間に偶然を装って肘を相手の顔面に叩き込む。瞼から流血し、視界が遮られたことをいいことに、ひるんだ女性の秘所を勢いよく殴った。当然のように審判員が試合を止めて厳重注意を行う。しかし黒宮は悪ぶれることもなく、肘があたったことは偶然であること(確かに流れる動作に意図的な要素を読みとることはできない)、秘所を殴ってしまったのは絶好の好機と思って手マンをしようとしたのだが焦って目測を誤ってしまったことに原因があること(確かに素人バトルファッカーがよくある失敗の一つではある)を流暢に説明し、イエローカードをもらうこともなく試合が再開される。
あとは一方的な展開だ。怯えた女性選手を力づくで押し倒し、威嚇をしながらレイプを始める。競技水着をビリビリに破り捨て、相手の興奮なんておかまいなしに性的快感を暴力的に叩き込み続ける。
決まり手は、背後から女を四つん這いにさせた状態でのダイレクトアタックだった。女性がイっても執拗に続けられたその行為によって、最終的に女子選手の意識は戻らなくなり、病院送りになった。その後、PTSDを発症していることが判明し、今でも面会謝絶とのことだ。
「ひどすぎる」
確かに黒宮は強かった。
しかし、その強さは邪道の強さだ。相手を尊重することもせずに、暴力を用いて勝利する。そんなものがバトルファックであっていいわけがなかった。俺の中に怒りがメラメラとわいてくるが、それよりも心配なのが純菜のことだった。
「純菜はまだ格闘技系の技は練習してないんです。というか、アマチュアレベルでは本来ルール違反で必要ない技ですからね。でも、黒宮相手となったら話がかわってくる」
「確かに、あの反則プレイは、総合格闘技の心得がなければ対処できないかもしれないね。正攻法の純菜くんでは、さすがに荷が重いか」
「純菜がこの女子選手と同じ目にあうかもしれないかと思うと、気が気でなりません。危なくなったら、俺は躊躇なくタオルを投げ入れますよ」
俺の言葉に部長は「俺もそれがいいと思う」と言ってくれた。その上で、部長が俺の体を気遣ってくれた。
「健二、君の体はもう大丈夫なのかね」
「え。ああ、俺の試合のことですか」
「ああ。試合は本当に残念だったね。おしいところまでいったが」
純菜が勝率1位を獲得したというのに、俺といえば2勝1敗。
4回戦目からは棄権という低落で大会を終えていた。2連勝で迎えた3回戦目。そこでBL学園の1年生に完膚なきまでに敗北し、ドクターストップがかかってしまったのだ。
「あの1年にはさんざん絞りとられましたけど、体力だけには自信がありますからね。今はもうなんともないですよ」
「そうか。それならいいんだが」
「お気遣いいただいてありがとうございます。部長もおしかったですね」
部長は6勝1敗で惜しくも勝率1位を逃してしまった。
最後の一人に勝てていれば、勝率では黒宮に並んでいたのだ。堂々のベスト4入りだった。
「ハハッ。あれはくじ運だよ。最後の一人以外、胸の大きな選手がいなかったからね」
「どういうことですか?」
「純菜くんと練習をすればこうなるということだ。この前病院に行ったら、おっぱいドランカーと診断されたよ。これで俺もバトルファックは引退だね」
「そ、そんな」
おっぱいドランカーというのはバトルファッカーの宿命みたいな病気だ。
胸のでかい女性選手のおっぱい技で完膚なきまでに搾り取られると発症すると言われている。症状としては、胸のデカイ選手相手には極端にバトルファックが弱くなること。
おっぱいドランカーになった選手がその後、巨乳バトルファッカーに勝利する確率は0パーセントと言われている。これを発症すると、ほとんどの選手が引退を余儀なくされていた。
「それで、純菜くんは今日はどこにいってるんだ?」
部長が重苦しい話題を避けるように言った。
俺もそれにあわせて答える。
「あ、あいつは今日、榎本選手の見舞いに行くって言ってましたよ」
「ああ。そうか。榎本はまだ退院できないみたいだね」
「意識は戻ったらしいんですけどね。こればっかりは心の問題もあるみたいですから」
「まあ優しい純菜くんだけのことはあるな。自分が壊した相手なんて、ふつうは気にかけることもしないがね」
部長の言うとおりだった。
あいつはどこまでもすごい選手だった。卑怯な技を使うことなく、代名詞となった悪魔殺しの大鉄槌でもって失神KOを連続させる。その強さに驕ることなく、敗者に対しても気遣いを見せる(まあ、弱い相手や向上心のない相手には徹底的に残酷だが、それも彼女がストイックに強さを求めているからだろう)
そんな彼女に比べて、俺はあまりにも情けなかった。
俺が強ければ、俺が勝率1位となって、純菜と決勝で戦うことになったのだ。
そうすれば、純菜が黒宮と戦うこともなかった。
俺は予選を勝ち抜けなかった原因、3回戦のことを思い出していた。
*
相手はBL学園の1年生だった。
名前は皆川麗美。
長身で美人系の少女だ。冷たい印象を覚えるほどの整った顔立ち。その大人びた様子は、とても年下には見えなかった。しかし、年下に見えない部位はほかにもあった。

巨乳だ。
さすがに純菜よりは小さいものだったが、学生レベルは楽に越えていた。彼女が上着を脱いだ瞬間にこぼれ落ちた大きな果実に、俺の視線はくぎづけになってしまった。
試合は終始一方的なものになった。
正攻法のディープキス勝負からして、俺は彼女の足元にも及ばなかった。その大きな胸がぐりぐりと俺の胸板を刺激してくる。それに耐えることもできずガクンと膝が笑ってしまう。今年の3月以降、まともに女性とバトルファックできていなかったのだ。完全な練習不足。俺は一方的にキスだけでなぶられていった。
「ああ……ひいい……」
俺の口からあえぎ声が漏れる。
それを麗美が真顔で見下ろしてくるのが分かった。
彼女の舌が俺の口内で暴れるたびに、俺の悲鳴がこぼれ、その痴態が冷静に観察されていた。
興奮で頭が真っ白になっていた俺の防御力はいつの間にかなくなっていた。気づくと俺の一物に彼女の長い指が絡んでいた。まずい。そう思った瞬間に、麗美の手が激しく動き出した。その手技の見事さは味わったこともないもので、変幻自在に麗美の手の動きが変わり、あっけなく俺は果てた。
「い、いっきゅうううッ!」
どびゅどびゅどびゅッ!
盛大に射精をした俺は地面にへたり込んでしまう。
それを麗美が淡々と見下ろしていた。その視線がなんだか可哀想なものを見るような同情で染まっていたのが妙に印象に残っている。
俺は歯を食いしばって10カウント前に立ち上がった。
試合が再開され、そこからは公開処刑だった。
パフパフで胸の中で顔面をミンチにされ、乳首をさんざんにいじめられた。彼女が本気を出せば俺のことを射精させることなんて簡単だろうが、彼女はそうしなかった。彼女は俺の性感をひたすら高めていった。そのたびに俺の情けない悲鳴が会場に響くことになった。純菜も当然に会場にいた。彼女の前で無様な試合をすることは悔しかったが、どうにもならなかった。
決まり手はパイズリだった。
年下の少女の谷間の中で、無惨にも精液が噴出する。
それを麗美が冷たい表情で見つめていた。俺を射精させることなんて当然という表情だった。しかも、彼女の乳圧は緩むことなく、ぎゅうううッと左右からおっぱいを挟みあげ、さらに乳圧をあげてきた。
「悔しいですが、黒宮先輩の指示なんです。恨まないでください」
麗美がパイズリを続けながら言った。
「あなたの学校の純菜選手が榎本先輩を失神KOしたので、その意趣返しということです。これからあなたが気絶するまでパイズリします。覚悟してください」
麗美はあくまでも表情一つ変えなかった。
その西洋人のような切れ長の瞳でもって、俺の痴態を観察しながら、膝上パイズリを続けていく。
「それにしても、あなたは弱すぎですね。話しになりません」
麗美が怒ったように言う。
「あの純菜選手が所属する学校の選手ですから、もっと歯ごたえがあるかと思っていたんですが。あなた、満足に女性と練習していないでしょ」
ずばり指摘する。
図星だった。
「やっぱり。そんなことで大会に出ようなんて舐めてるんですか? その無尽蔵の体力以外、ほとんど素人同然です。これなら、わたしが小学生の頃でも勝てたと思いますよ」
ぎゅうううッと乳圧をさらに増した。俺は白目をむいて悶絶する。
「もう限界のようですね。それでは無様に気絶してください」
さらに深くおっぱいを打ち付け、麗美の言葉どおりになった。俺は白目をむき、体を痙攣させて、そのまま気絶した。
その後のことは覚えていない。後で聞いた話しでは、気絶した後も麗美はパイズリをやめず、潮を吹かせてからも冷たい表情でパイズリを継続し、審判員が割って入ることでようやく解放されたとのことだった。
目をさましたのは病院だった。
幸いなことに、純菜と練習できなかった俺は基礎体力を向上させることしかしていなかったので、回復力も段違いとのことだった。
特に入院する必要もなく、俺は帰宅することになった。
しかし、体に影響が残ってはまずいということで、医者からはドクターストップをかけられてしまった。こうして俺の2年の大会は終わってしまったのだった。そのふがいなさを自分自身許せないまま、俺は純菜のセコンド役に専念していた。
つづく