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 昼休み。

 俺がぼんやりと教室で佇んでいると、辺りには夏休みを前にして計画をたてる男女の声が聞こえてきた。

 大会も終わり、部活も新体制になってから数週間が過ぎた。あと1週間もすれば夏休みで、そこからはバトルファック三昧の日々がまっている。

 それが楽しみでもあり、不安でもあった。考えるのは最近の部活内の雰囲気だ。どことなく、女子部員が目立つというか、幅をきかせる様子が目立ってきたのだ。

 人数的には、女子部員が純菜をあわせて12名、男子部員はその倍以上の50名にふくらんでいる。夏休みを前にして、男子部員の入部希望者はあとを立たず、ここまで膨れ上がることになった。普通だったら、人数が多いほうが威張ったりするもんなのだが、うちの部活の場合には違っていた。純菜以外の女子部員は1年生だというのに、どういうわけか、女子部員のほうが強気なのだ。練習後に体を洗う順番にせよ、後片づけやトイレ掃除をする順番にせよ、女子部員のほうが優遇されている。

 それは誰かが命令しているというわけではなかった。自然発生的にそうなるのだ。場の雰囲気というか、見えない圧力みたいなものがあって、男子部員たちは女子に順番を譲るし、率先して掃除をするなどしていた。

 それくらいならばまだ問題ないのだが、目につくのは女子部員たちの男子部員を軽んじる態度だった。模擬試合後に気絶した男子部員の扱いはひどいの一言で、優しく介抱するなんてことはなく、足をもって引きずっていったり、その顔をグリグリと踏み潰して意識を取り戻したりと、やりたい放題だった。

 そう。女子部員と男子部員の力が拮抗していないのが一番の問題なのだろう。

 入部したばかりの素人1年生ですら、既に男子部員を簡単に射精させられるようになってしまった。持ち前の巨乳を武器にして、男子部員の精液を絞りとっていく少女たち。純菜の指導は的確で、女子部員たちはメキメキと実力をつけているのだった。


(このままじゃいけないな。なんとかしないと)


 それが部長としての責任だった。俺はどうしたものかと、教室の中、あれこれと考えていた。


「あ、健ちゃん。こんなところにいたんだ」


 はずむような声がして顔をあげると、そこにはニッコリとした笑顔を浮かべる純菜が立っていた。

 彼女の登場に教室中がこちらに注目しているのが分かった。もはや純菜は、校内でも知らない奴はいない有名人なのだ。男たちが制服ごしに膨らむ純菜の爆乳を思わず凝視してしまっている光景が目につく。


「純菜、どうしたんだ?」

「うん。ちょっとお願いがあってね」


 そう言うと純菜は申し訳なさそうにお願い事を俺に伝えてきた。その内容は、部長職が預かっておくことになっている部室や競技場の鍵を貸してくれないかということだった。


「どうしたんだ? 何に使うんだよ」

「うん。今度の日曜日にね、みんなに教えたいことがあって、それで競技場を使いたいんだ」

「おいおい。日曜日は部活禁止のはずだろ? それはダメだろうが」

「大丈夫。先生たちには許可をとったよ。お願いしたら、あっさり許してくれた」


 そう言って笑う純菜だった。

 しかし、彼女の口から「お願い」という単語を聞くと不穏な気分にさせられる。いったい、どんな方法で「お願い」したというのか。


「まあ、それならいいけどな。でも純菜、みんなに教えたいことって、それって女子部員限定なんだろ?」

「そうだよ。姫華ちゃんも麗美ちゃんも、みんなやる気だからね」

「なあ、純菜。お前が熱心なのも分かるけどさ、それでも男子部員のことも考えてやってくれないか」


 俺の言葉に純菜が苦笑いした。


「う~ん。わたしも考えているんだけどね。やっぱり、不満をもつ男子部員もいるよね」

「そりゃあな。年下の女子にめちゃくちゃに犯されて、ぞんざいに扱われて気分のいい男なんていないだろう」

「そうだよね。やっぱり、一度徹底的にやって、墜とすほうが早いのかな」


 ん?

 なにか純菜と俺の会話がかみ合っていないように感じた。


「ま、そこらへんもちゃんとやるからさ。健ちゃんのバトルファック部を強くするためなの。ね、お願い」


 そう言って両手をあわせてお願いしてくる純菜だった。

 俺は仕方ないと鍵を渡してやった。それを受け取った純菜は「ありがとう健ちゃん」とニッコリ笑って教室を去っていった。彼女がいなくなった後も、甘い匂いが辺りには漂っていて、慣れていない男子はそれだけでぼおっとなっていた。

 なんというか、純菜の魅力と実力は日に日に増しているようだった。それが頼もしくもあり、不安でもあった。


 *


 日曜日になった。

 俺はいつものように自宅で勉強を続けていた。この前の期末テストの点数があまりよくなく、教師からも注意を受けていたのだ。総体の準備や部長になってからのアレコレでなかなか勉強ができていなかったことが原因だった。

 しかし、それは言い訳にもならないだろう。俺よりも多忙で大変だったはずの純菜は、期末テストで変わらずに学年1位を死守し、才色兼備を地でいっていた。


「しかし、純菜たちは大丈夫なんだろうか」


 今日、女子部員限定で純菜の特訓をやるといっていた。

 競技場で彼女たちがやりすぎてしまわないか心配だった。彼女たちの練習相手を務めるというのは本当に命がけなのだ。


「というか、練習相手って誰なんだ?」


 俺はふと疑問に思った。

 実践形式で練習をするのなら、男子部員が必要のはずだ。しかし、純菜たちが男子部員に声をかけた様子はなかった。


「まさか、外部から誰かつれてくるなんてことはないよな」


 そうなればさすがに責任問題になりかねない。

 外部から招いた男が乱暴な奴で、女子部員に暴力を振るうなんてこともあり得る話しだ。俺は心配になり、少し様子を見に行こうと思った。制服に着替え、俺は学校にむかった。


つづく