道場で練習に明け暮れる。

 部活が休みの日でも関係がなかった。

 柔道の大会が間近に迫っていたこともあって、部活が休みの日も、こうして子供の頃から通っている道場で汗をかく。鍛錬に鍛錬を重ねる。だから、こいつに付き合う時間なんて、俺にはないのだ。

「おっつ~。久しぶりだね、誠」

 道場。

 そこに場違いなギャルが現れた。

 近隣の進学校の制服姿。それが明らかに改造されていて、パンツが見えるくらいにスカートの丈が短い。胸元も大きく開かれていて、その大きなおっぱいがチラチラと見えていた。髪も茶色く染められており、化粧も派手目。渋谷で遊んでいそうなギャル。かつて、同じ道場に通っていた同い年の佳織だった。

「・・・・・今さら何の用だよ、お前」

「柔道しに来たに決まってるっしょ? 昨日メッセージ送ったじゃん」」

 確かに昨日の夜にメッセージを受け取った。

 道場で柔道がしたい。今更こいつはそんなことを言ってきたのだ。

「柔道やめた奴がなに言ってるんだ」

 そう。

 佳織は柔道を辞めた。

 中学にあがった瞬間に道場にも顔を出さなくなって、学校の柔道部にも入らなかったのだ。その頃からこいつは帰宅部で、遊び歩いている。身長が高くなって、スタイルが抜群になったせいか、浮いた夜の噂しか聞こえてこなくなった。あれだけの才能があったのに、こいつはあっさりと柔道を捨てたのだ。

「誠って、少しは強くなったの?」

 俺の言葉を無視して佳織が言う。

 裸足になって彼女が畳の上にあがってくる。

 キョロキョロと周囲を見渡して「なっつー」とつぶやいている。近くまでくると佳織の大きな体が威圧的に迫ってくるのが分かる。切れ長の瞳とか、整った顔立ちに心臓が脈打つ。俺は彼女から視線をはずして、回答した。

「あたり前だ。俺はあれからずっと練習してるんだ」

「へ~、そうなんだ~」

「お前なんかと比べものにならないくらい強くなってるさ。時間の無駄だから、とっとと帰れよ」

「ふふっ、小学生の頃は、私に一回も勝てなかったくせに、言ってくれるじゃん」

 勝ち誇って佳織が言う。

 言葉どおり、俺は佳織から一度も一本をとったことがなかった。文字通りぼろ雑巾になるまで投げ飛ばされた。天性の才能が佳織にはあった。同い年の俺だけでなく、道場に通っていた年上の男子も、簡単に佳織は投げ飛ばしてしまっていた。彼女のキラキラした姿は今でも俺の頭の中に残っている。

「む、昔の俺と一緒にするな!」

 俺は思わず強い口調で言った。

「お前が遊び歩いている間、俺は必死に鍛錬してきたんだ。遊びまくって体を動かしてないお前なんかに、負けるわけがないだろうが」

 ハアハアと息を荒くする。

 佳織が言った。

「そこまで言うなら、勝負しようよ」

 彼女が笑って、

「最近、ダイエットしなくちゃと思ってたんだよね~。男子投げ飛ばすとストレス解消にもなるから一石二鳥じゃんってわけ」

「な、なんだと!?」

「今日は軽く練習できたらと思ってただけだけどさ~。誠と試合してみるのもアリだよね。どれくらい強くなったのか、試してあげるよ」



 *



 あくまでも遊び半分。

 佳織は柔道場に備え付けのレンタル用道着を制服の上から羽織った。上着だけ着用して、下半身はスカートのまま。彼女のむき出しのムチムチ太ももが、目に飛び込んでくる。間違っても柔道の試合をする格好ではない彼女を見て、俺の怒りは頂点に達した。

「あとで後悔しても知らねえからな」

「はいはい。とっとやろっか」

 天真爛漫といった感じで佳織が言う。

 道場の真ん中。

 畳の上で向き合った俺たちは久しぶりに組み合った。

「な!?」

 道着をつかんだ瞬間、俺は驚愕していた。

 佳織の体のポテンシャル。

 その強靱な肉体を感じ取ってしまったのだ。

(なんで・・・・こいつ・・・・)

 道着をつかんだだけで分かる。

 どっしりと足に根が生えているような重量感。よく見れば確かに佳織の下半身は発達していた。スカートから伸びるむきだしの太ももには筋肉の筋が浮かびあがっていて、太かった。脂肪だけではなく柔らかそうな筋肉の塊。それは日頃から鍛錬を繰り返している猛者の下半身だった。

「か、佳織、お前」

「ん? どったの?」

「お、お前、どこかで練習してるのか?」

 そうとしか思えなかった。

 遊び歩いている人間の下半身がここまで充実しているわけがない。そんな俺の驚愕の声に、目の前の佳織はキョトンとした顔を浮かべるだけだった。

「んなわけないっしょ。中学あがってから体なんて動かしてないもん」

「う、嘘だ。だって、お前の体」

「あ~、遊び歩いているだけでなんか成長しちゃうんだよね~。なんにもしてないのに身長は伸びて180になっちゃうし、力もどんどん強くなるんだ~」

「そ、そんな」

「自分でも不思議なんだよね~。食っちゃ寝しては遊んでるだけなのに、体育測定とか毎回1位だし。マラソン大会とかでもインターハイ出る陸上部の男子にも勝っちゃうんだ~」

 けらけらと軽く言う佳織だった。

 彼女は俺の顔をじいっと見つめて、

「ま、これも才能だよね」

「う」

「努力なしでも強くなっちゃうんだからさ。ほんと、わたしってば、才能だけはありあまってるんだよね~」

 小学生の頃の記憶。

 年上の男だろうが豪快に投げ飛ばしていた柔道の天才。その佳織の姿が思い出されて、俺はビクついてしまった。

「うおおおおッ!」

 弱気になる自分を叱咤して、佳織に襲いかかる。

 内股。

 彼女の股の間に右足を差し込みながら、ひねりあげる。俺の得意技だ。何人もの対戦相手から一本をとってきた技。この数年をこの技にかけてきた必殺技で、佳織の体を投げ飛ばそうと、

「あはっ、おそっ」

 右足が空を切る。

 佳織の体を投げ飛ばすことなんてできずに、俺の内股がすかされてしまった。あの一瞬で佳織は俺の技を見切ってしまったのだ。

「な!?」

 信じられなかった。

 最初から本気。

 自分の必殺技で勝負をきめようとしたのに、その技があっけなく破られてしまったのだ。俺の青春をかけた努力が、一瞬にして崩壊してしまった瞬間だった。

「誠ってば、今の本気~?」

 ニヤニヤと笑いながら佳織が言う。

 残酷な猫みたいな瞳で俺のことを見つめてくる。この顔には見覚えがあった。相手をいたぶって楽しんでいる時に浮かべる顔だ。こうなった佳織を誰も止めることなどできない。

「ずいぶんノロマな動きだったね」

「うううッ!」

「ちゃんと練習してたの? 小学生の頃のほうが切れがあったんじゃない?」

 俺の道着をがっちりとつかみながら佳織が言う。

 混乱した俺の頭に佳織が追い打ちをかけていく。

「あ~あ、こんな実力で息巻いてたんだ~」

「な、なんだと?」

「やっぱザコは口だけなんだね。期待して損した」

 手本を見せてあげる。

 そう言った瞬間、彼女の体が消えた。

「えい♪」

 かわいらしいかけ声。

 それと同時に彼女のむき出しの太ももが俺の股の間に差し込まれ、視界が反転した。体が宙を舞って、そのまま勢いよく、俺の体が畳に叩きつけられた。

 ドッッスンンッ!

「ぐっがああああッ!」

 背中を強打する。

 受け身もとれなかった。

 それほどまでの技の切れ。息ができなくなって、口をパクパクとさせて、見悶える。

「はい、いっぽ~ん」

 畳に倒れた俺の道着をつかみながら佳織が言った。

 立ちながらこちらを見下ろしてくる。

 そのスカートから伸びるムチムチの太ももとか、道着からこぼれる大きな胸が目に飛び込んでくる。それよりも何よりも俺のことをニヤニヤ笑っている彼女の視線が、とんでもなく怖くて仕方なかった。

「投げ飛ばされちゃったね、誠」

「くううううッ!」

「一生懸命練習してたのに、あっけなく一本とられちゃった」

 彼女が俺の道着をはなす。

 そして両手を腰にやって仁王立ちしたまま、俺のことを見下ろしてきた。その瞳には明らかな愉悦があった。

「柔道の練習なんてしてないギャルに投げられちゃった~」

「うううううッ!」

「運動不足で体なんて動かしてない不摂生な女の子に、手も足も出ないで負けちゃったね~」

 ニヤニヤ。

 佳織が倒れた俺を見下ろす。

「これが才能の差だよ」

 彼女が俺の体を跨いで立つ。

 マウンティングだ。

 彼女の生足が俺の胴体の左右の畳を踏みしめている。俺から見ると、彼女の大きな体が山のように感じられた。

「誠はいくら練習しても、わたしには勝てないの。才能が違いすぎるからね」

「うううううッ!」

「才能ない奴ってかわいそうだね~。惨め。情けな~い。わたしが遊んでいた間、誠は一生懸命練習してたのに、瞬殺されちゃった。それもこれも、才能の差だよ。柔道の才能ないもんね、誠は」

 ふふっと笑われる。

 俺はもう佳織の顔を見上げることもできなかった。はやくも心が折られてしまっていることが分かる。それほどまでに、彼女の内股の威力は抜群だった。俺は一発で分からされてしまったのだ。

(才能が・・・・違いすぎる・・・・)

 佳織は天才だった。

 それに対して俺は凡人だ。

 どんなに努力しても彼女には勝てない。それを骨の髄まで分からされてしまった。

「ふふっ、ほら、立ちなよ」

 佳織が言う。

 俺の道着をつかみながら強引に立たされる。

 目の前のギャル。

 間違っても柔道家には見えない。明らかに遊び歩いている派手な少女。俺はこれから、彼女に投げ飛ばされるのだ。

「じゃ、どんどんいこっか」

 にんまりと彼女が笑う。

「才能の差ってやつを、とことん分からせてあげる」



 *



 佳織は俺を投げ飛ばしまくっていった。

 俺の体が何度も畳に叩きつけられ、殺されていく。投げ飛ばされると分かっていても対処ができない。防戦一方。腰を引いて彼女から逃げようとしても、佳織はまたたく間に俺の重心を崩して、簡単に俺の体を宙に舞わせてしまうのだ。

 何度も。

 何度も。

 俺は畳に叩きつけられ、呼吸が奪われてしまった。パクパクと口を動かして酸素を補給しようとして、それでも息を吸うことすらできない。背中を強打して肺が動かないのだ。そんな様子を佳織はにんまりと見下ろしてきた。

「ふふっ、お魚さんになっちゃったね」

「かひゅう―――カヒュウウ―――ッ!」

「受け身もとれないなんて本当にザコだよね。才能の差ってほんとうに残酷。みじめ~」

 ニヤニヤと笑う。

 俺はもう反抗すらできなくなっていた。

 はやく終わってほしい。

 ただそれだけを願い続け、しかしそれすらかなわない。

「じゃ、次は寝技ね」

 佳織が笑う。

「わたしが立ち技より寝技のほうが得意って、誠は知ってるよね?」

 もちろん知っていた。

 小学生の時、中学生や高校生の男子を締め落としていた少女の姿を今でも覚えている。あの時はまだ彼女の体は小さかった。それなのに、佳織は自分よりも大きな男子たちを寝技で血祭りにあげていたのだ。今みたいに体が成長して、大きくなってしまった彼女の寝技が炸裂したらどうなるか・・・・・俺は恐怖で「ひい」と悲鳴をもらした。

「ほい、じゃっ、やるね~」

 佳織が軽く言いながら襲いかかってくる。

 俺はなんとか逃げようと畳を這って逃げようとする。けれどそんな抵抗なんてまったく気にしたそぶりすら見せずに、佳織があっという間に調理を完了してしまった。

「はい、三角締めの完成~」

 俺の首が佳織の太ももの間にすっぽりと埋まっている。スカート姿のむき出しの太ももが両頬に食い込んでくる。俺の目の前には彼女のパンツが見える。そんなこと佳織はまったく気にもしていないらしい。当然だ。自分よりも弱い生物に異性を感じる必要なんてないのだ。俺は玩具だった。佳織という柔道の天才に遊ばれる玩具。それくらいの存在価値しか、俺にはないのだ。

「誠はわかってるとは思うけど、わたしの三角、まじでえげつないからね」

「かぎゅううッ! むううううッ!」

「小学生の頃も、年上の男子をこれで締め落としてきたからね。体が成長した今これやったらどうなるのか、自分でも分からないよ」

 まあでも、と。

 彼女が笑って、

「才能がない誠を再起不能にしても、誰も困らないもんね。今日は徹底的にやらせてもらうから」

 ぎゅうううううッ!

 佳織の太ももに力がこもる。

 筋肉の束が浮かび上がってきて、体積を増す。太ももの間に挟まれている俺の頭部よりも太い脚。俺の後頭部にがっちりと巻き付いたふくらはぎの強靱さ。俺は一瞬で、自分が締め落とされる未来を思い浮かべてしまった。

「かぎゅううううッ!」

 暴れる。

 じたばたと暴れて、なんとか三角締めから逃れようとする。この太ももはダメだ。本当に殺されてしまう。女の子の脚で絞め殺される。それがいやだから必死に逃げようとする。全身全霊で、体を暴れさせて命を長らえようと。しかし、

「あはっ、なにやってんの?」

 佳織の鼻で笑った口調がかえってきた。

 ビクともしなかった。

 彼女の太ももの存在感だけを感じて、苦しみ悶える。仰向けに寝転がった佳織がじいっと股の間で苦しむ俺のことを見上げているのが分かる。彼女は明らかに楽しんでいた。手も足もでずに太ももに殺されていく俺のことを見て性的に興奮しているのだ。

(無理だ・・・・・本当に・・・無理・・・・)

 自由な右手。

 それをうやうやしく佳織の太ももにあてがう。

 そしてタップする。

 ギブアップ。

 許してくださいという命乞い。

 しかし予想どおり、佳織はにんまり笑うだけだった。

「覚えてないのかな~。ギブアップなんて認めないよ」

 ぎゅうううううッ!

 さらに太ももに力がこめられる。これは全力ではないのだ。まだまだ遊び半分といった様子で、佳織が俺の頭蓋骨を軋ませていく。

「小学生の頃もギブアップした男子締め落とすのが趣味だったんだよね~。誠も覚えてるっしょ? お前のことも何度も締め落としてやってたもんね」

 その記憶がよみがえってくる。

 苦痛に歪む男子の顔をキラキラした瞳で見つめながら、容赦なく男子の意識を刈り取っていた少女の記憶。どんなにあがいても逃げ出すことができなかったアリ地獄みたいな佳織の寝技。それを思い出してしまい、絶望で顔を歪ませた。

「やっぱ、寝技がしっくりくるわ~」

 佳織が笑う。

「小学生の頃も、締め落としてる時は楽しかったもんね~。男子がびくびく痙攣してさ~、黒目をグリングリンってまわして白目むいて、口から泡ふきながら気絶するの観察するのが好きだった~。今でもたまに思いだしながらオナニーするんだよね。彼氏に舐めさせながらその時のことを思い出してもけっこうイけてさ~。何度か学校の柔道部の奴、遊び半分で締め落として楽しんでた時期があったよ」

 勝ち誇って笑う。

 興奮したのか佳織の太ももがますます凶悪になっていった。

「それにしても、寝技でも才能の差は歴然だね」

「かぎゅううううッ!」

「がんばって練習してたのに意味なかったね~。遊んでただけの私の三角でこれからお前は締め落とされるんだよ。惨めだね~」

 くすくすと笑われる。

 それでも抵抗しようという気持ちは失せていた。無駄と分かっていても、俺は佳織の太ももをタップし続ける。それが気に入ってもらえたのか、彼女が「くすり」と笑った。

「墜ちろ」

 ぎゅううううううッ!

 締め付け。

 一瞬で目の前が真っ白になって、真っ黒になる。意識を失う最後。彼女の股の間で締め上げられながら、俺のことを見つめる彼女の視線に貫かれて、俺は意識を失った。



 *



 そして何度も締め落とされた。

 意識を失っては起こされ、また締め落とされる。

 それは佳織が満足するまでずっと続いた。

「あ~、遊んだ遊んだ」

 ん~っと猫のように体をのばしながら佳織が言う。

 俺はそんな彼女のことを畳の上に倒れながら力なく見上げていた。

(ゆるして・・・・もう・・・・ゆるして・・・・)

 俺の心はとっくに壊れていた。

 勘違いをしていたのだ。

 練習をすれば佳織に勝つことだってできるなんて、とんでもない勘違いをしていた。そんなことは不可能なのに。才能の差が違いすぎるんだから無理なのに。俺はそんなことを信じて一生懸命練習を続け、そして遊んでいるだけだった佳織にボコボコにされてしまったのだ。

「うううッ! ううううッ!」

 自然と涙がこぼれてくる。

 畳に倒れながら、泣く。

 自分が情けなくて、惨めで、大量の涙が自然とこぼれて、畳をぬらしていった。努力に努力をかさねて汗を濡らしてきた畳に、俺の敗北の涙が染み込んでいく。

「うわっ、泣いちゃったの?」

 そんな俺をニヤニヤ笑いながら佳織が見下ろしてくる。はるか高見にある彼女の顔が残酷な子猫のように笑っていた。

「ちょうどいいや。足綺麗にしちゃおっと」

 ドスウンンッ!

 踏まれる。

 彼女の大きな足裏が俺の顔面を覆い尽くして、そのままグリグリと蹂躙された。

「久しぶりに柔道したけど、やっぱ足裏が汚れるのがいやだよね~。今日はもう終わりにするから、綺麗にしてよ」

「ううううううッ!」

「ふふっ、次から次へと涙が出てきて掃除には便利でいいね~。足裏が誠の涙で綺麗になっていくよ」

 ぐりぐり。

 俺の涙で足裏をクリーニングしていく佳織。俺の敗北の涙なんてこれくらいの価値しかないのだ。佳織の足裏を綺麗にするくらいしか、俺の涙に存在価値はない。敗北しても貶められる。俺はやはり佳織の玩具だった。

「才能の差ってほんと残酷だね~」

 佳織がしみじみと言う。

「才能ない奴がどんなにがんばっても意味ないんだもんね~。才能ある奴に玩具にされるだけ。よかった~、わたし、才能があってさ」

 ぐりぐり。

 さらに足裏掃除をしていく。

 俺は涙と嗚咽をもらしながら同級生の女の子に踏みつけにされていった。

「ま、誠にも才能はあるよ。足裏掃除の才能だけはあるから、安心しなって。柔道の才能があるわたしが、これからしっかりお前のこと使ってやるからさ」

 ニヤニヤと笑っている。

 それがなによりも恐ろしい。

「柔道ってダイエットにはなるから、定期的に遊んであげる」

 さらに踏みつけにされる。

 俺は涙を流し続けるしかなかった。

「ん、じゃ、舐めろ」

 もはや躊躇もなかった。

 俺は佳織の足裏一つにすら勝てない才能のない男なのだ。そんな俺にとって佳織の命令は絶対だった。

「ぺろ・・・・・ぺろ・・・・・」

 舐める。

 同級生の足裏を。

 柔道で汚れた才能あふれる女の子の足を舐めて、掃除していく。

「ふふっ、ほら、やっぱり才能あるじゃん」

 足裏掃除を鑑賞される。

 これがずっと続く。

 俺は涙を流しながら、永遠と佳織の足裏を舐めていった。