魔力を搾り取られたレッドたちは、基地で安静にしているしかなかった。

 こんな状態で外に出れば、魔王軍の残党にも負けてしまうだろう。だからこそレッドたちは安全な基地の中に引きこもり―――そしてスマフォの画面を食い入るように見つめているのだった。

「う」

 ピコンッと音がすればすぐにグループチャットを開く。

 レッドだけではない。ほかの戦隊メンバーも同じ行動をとっていることは、すぐに人数分の既読がついたことで知れた。送られてきた画像を食い入るように見つめる。

「で、でけえええッ!」

 思わずレッドが感想を漏らす。

 スマフォの中には水着姿の詩織の姿があった。かなり露出が多めで、大きすぎる爆乳が水着におさまりきれず、下乳がすごいことになっている。張りがあって、強そうなおっぱいの光景に目がくぎ付けになる。しかも今回はメッセージまで送られてきていた。

『魔王さんがプレゼントしてくれました。これで戦隊を壊滅させてくれとのことです。もうみなさんとっくの昔に壊滅してるのに大変ですね。次の戦いでは、この水着で戦ってあげます』

 そのメッセージを読んだだけでレッドの体がビクンッと跳ねた。マゾイキしてしまったのだ。さらに食い入るように画像を見つめる。

「こ、これで・・・・この水着のおっぱいで・・・・・・」

 そう考えただけで快感が走る。

 あの柔らかい感触と凶悪なフェロモンを脳裏に浮かべてしまい、やはりマゾイキする。極小の水着ごしに顔面をおっぱいに埋もれさせ、そのまま捕食される。魔力を徹底的に奪われる。それを想像しただけでレッドの体が赤く明滅して、簡単に魔力を生み出してしまっていた。

(ダメなのに・・・・・こいつの画像を見ちゃダメなのに・・・・)

 そう考えてもやめられない。

 毎日、いや1時間ごとに送られてくる画像で興奮して魔力を生み出してしまう。画像が送られてこない時間帯は戦闘後の記念写真を見つめてマゾイキする。そのニッコリとした笑顔と、残酷な行動とのギャップでさらにマゾにさせられ、効率的に魔力を製造させられてしまうのだ。

(こ、これじゃあ家畜だ)

 牛がミルクをつくるように。

 鶏が卵を産むように。

 自分たちは魔力を製造するために生かされ、飼われ、調教されてしまっている。

(ダメだ・・・・見ちゃダメ・・・・)

 そう思っても見てしまう。

 それほどまでに詩織の爆乳は圧倒的だった。魔力を吸収してさらに大きくなったおっぱいにすべてを奪われてしまう。見ちゃダメだと分かっていながらもスマフォ画面から目が離せず、ハアハアと荒い息をあげて熱中してしまった。

「お兄ちゃん?」

 と、その時。

 妹の声がして、レッドがようやく現実にかえってくる。はっとした表情で妹の姿を確認したレッドが、ばつが悪そうな表情を浮かべた。

「どうしたのお兄ちゃん。この頃、変だよ?」

「そ、そうか?」

「ほかの皆もそう。強い敵が現れたんだよね? それなのに対策もしないで、みんな自分の部屋にとじこもってる。どうしちゃったの?」

 心配してくれている。

 それが申し訳なくて、レッドが鉄の意志でスマフォをしまった。

 久しぶりに闘志がみなぎってくる。

 目の前の気弱で病弱な妹。そうだ、こいつを守るために俺は戦っているんだ。人類を守るために戦っている。その使命感がよみがえって、レッドの顔が戦う男のものになった。

「悪かったな。もう大丈夫だ」

 レッドが笑う。

「ほかの奴らにも号令をかけて、対策を練ることにするよ。ありがとうな、比奈」

「うん。がんばってね、お兄ちゃん」

 笑顔になった比奈に勇気づけられるレッド。

 しかし彼は自分でも気づいていなかった。レッドの視線はごく自然と妹のおっぱいを見つめていた。幼いながらも大きなおっぱいのふくらみを見て、レッドの体が微弱に明滅した。



 *



 ミーティングルームには戦隊メンバーが勢揃いしていた。

 ブラックも、ブルーも、イエローも、全員が魔力を完全に回復させていた。

「格闘戦に持ち込む・・・・それしかないだろう」

 一同を前にしてレッドが言った。

 詩織に勝つための勝機。

 あのおっぱいに正面から立ち向かって勝てるわけがない。だからこその格闘戦。純粋な暴力のやりとりで、自分たち男が負けるはずがない。相手はただの女―――自分たちよりも年下のJKに過ぎないのだ。パンチが一発入れば終わる。その確信があった。

「でも、どうやって?」

 イエローが不安そうに言った。

「どうやって、あの敵の・・・・・・」

 そこまで口にしたイエローが、チラリとミーティングルームの隅で話しを聞いている比奈を気にして、言葉を選びながら続けた。

「あの敵の・・・・・脅威に立ち向かうんですか?」

「・・・・・見ただけで終わるでしょうね」

「・・・・・・・」

 ブルーもブラックも意気消沈している。

 特にひどいのがブラックで、さきほどから貧乏揺すりが止まなかった。プライドを傷つけられているのだろう。余裕のない様子が見てとれる。

「背後からいくしかない」

 レッドが作戦を説明し始める。

「真正面から敵のおっ・・・・脅威を受け止めては勝機はない。敵の背後から襲いかかる。一カ所にまとまらずに、敵の背後がとれるように準備するんだ。真正面に位置どることになった奴は・・・・・・なんとか敵の注意をひきつけるために意識を保ってくれ」

 それが無理なことはレッドが一番分かっていた。

 真正面から敵のおっぱいを見せつけられた戦隊員はすぐに自由意志を奪われおっぱい奴隷にされてしまうだろう。これは一人の犠牲のもとに成り立つ作戦だった。しかし、もうこれしかないのだ。

「それでいこう」

 ブラックの静かな声が響いた。

 作戦は決まった。あとは実行するだけだ。

「今日こそ勝とう」

 レッドが仲間たちを鼓舞する。

 久しぶりに戦う男の顔になった戦隊メンバーたちが、夜の町に繰り出していった。



 *



 警戒しながら歩く。

 いつ敵と遭遇するか分からない。

 その時にきちんと背後をとれるようにレッドたちはキョロキョロしながら歩いていく。

 しかし、そんな努力は無駄に終わってしまった。

「今晩は、みなさん」

 詩織だ。

 音も気配もなく、いつの間にか詩織がレッドたちの前に現れた。暗闇に溶け込んでいる様子は闇の住人そのもの。暗闇の中で顔だけ見えている詩織の姿に、レッドたちが戦々恐々とした。

(ま、まずい)

 全員が敵に対して真正面の位置に陣取ってしまっている。このまま彼女がこちらに近づけば―――見えてしまう。今は暗闇に沈んでいる爆乳が目の前に現れる。そうなったら勝ち目なんてなかった。

「ふふっ、安心してください」

 レッドたちの心を読むように詩織が言った。

 はやくも恐怖と興奮で身動きがとれなくなってしまったレッドたちのほうへと、一歩、詩織が歩を進める。そしてレッドたちの視界に彼女の全貌が入ってきた。

「な!?」

 男たちが驚愕した。

 目の前―――そこには、制服ではなくゆったりしたスエットを着用した少女がいた。体のラインがまったく出ていない。敵の恐るべき脅威が完全に無力化された姿に、レッドたちは呆然とした。

「驚きましたか?」

 詩織がにっこりと笑って言う。

「今日はおっぱいではなく、純粋な力でみなさんのことを屈服させようと思うんです」

「なに?」

「だって、みなさん、わたしのおっぱいさえなんとかすれば、勝てると思ってますよね?」

 くすりと詩織が笑って、

「純粋な力だったら女のわたしになんか負けるはずがない。そう思っているんですよね?」

「うっ」

「ふふっ、だからこういう服装にしてみました。ゆったりとしたブカブカのスエットです。言い訳できないように長ズボンも履いて露出を完全にゼロにしました。これなら、みなさんもおっぱいを見ただけで敗北するなんてことないですよね」

 詩織が妖艶に笑った。

「この状態でみなさんのことボコボコにしてあげます」

「な、なんだと?」

「おっぱいだけではなく、純粋な戦闘力でもわたしに勝てないってこと、みなさんの体に教えてあげるってことです。そうすれば完全屈服の完成です。ふふっ、上質な魔力をたくさん製造できるように、わたしがみなさんのことを徹底的にボコボコにして、調教してあげますからね」

 自信満々に宣告してくる少女。

 しかしレッドたちはあくまでも冷静だった。

「ふんッ、思いあがるなよ」

 これまで少女と相対した時には余裕がなかった。

 少しでも気を抜けば恐るべきおっぱいが視界に入り、それだけで自由意志が奪われてしまうのだ。けれど今はそんな心配はなかった。ダボダボの衣服の下でおっぱいは眠りについている。目の前にいるのはただのJK。こんな弱そうな奴に負けるはずがない。

(そうだ・・・・・これはチャンスだ)

 敵が油断している間に暴力で勝つ。

 思い上がっている少女に引導を渡してやるのだ。これまで好き勝手された恨みをはらしてやる。レッドが久しぶりに戦う男の顔になり、一歩、前に出た。

「俺がやる」

「レッド」

「順番にあいつをボコしてやろう。これまでの恨みをはらすんだ。そうすれば、戻れる」

 戻れる。

 少女にいじめられて興奮し、魔力を生み出してしまう自分たちを変えることができるはずだ。そのために、目の前の敵を完膚なきまでに叩き潰す必要がある。

「いくぞッ!」



 *



 レッドが突進した。

 怒りを力に変えて、神速の速度で少女に迫る。

 すぐに間合いだ。

 レッドの必殺の右ストレートがものの見事に詩織の顔面に炸裂した。

「や、やったか?」

 拳を少女の顔面にめりこませながらレッドがつぶやく。

 手応えはあった。敵はこちらの速度についてくることもできず、必殺の右ストレートの直撃を受けた。これで無事な奴なんて、いるわけが、

「くすっ、それで全力ですか?」

 ビクンッ!

 信じられない思いでレッドが拳を引く。

 少女の顔面が見えるようになる。その肌には傷一つついていなかった。ニコニコと楽しそうに笑っている少女がそこにはいるだけだった。

「ダメージ一つ残りませんでしたよ」

「うッ」

「まさか今のが全力じゃないですよね?」

「ううッ!」

「ほら、全力できてください。わたしのことをボコボコにして分からせてくれるんですよね? それなら一生懸命やらないとダメじゃないですか。わたしは一歩も動きませんので、どうぞご自由に攻撃してきてください」

 詩織がリラックスした状態で棒立ちになった。

 余裕綽々の態度にレッドの余裕がなくなる。

(本気だ・・・・本気でやる)

 全力。

 自分の力をすべて右腕にこめる。それは魔力コントロールに他ならなかった。歴戦の勇者たちにしかできなかった技に開眼したレッドが、己のすべてをこめて、詩織にむかって拳を放った。

「はああああああッ!」

 どすんっ!

 直撃する。確かな手応え。少女の顔面が陥没し完膚なきまでに破壊した・・・・・そう思っていたレッドの表情が凍りついた。

「ふふっ、魔力コントロールをした拳でもこの程度なんですね」

 直撃を受けたはずの詩織はニコニコとほほえむだけだった。まるでダメージを受けていない。その顔面にレッド渾身の拳が直撃したのに傷一つついていなかった。

「うわああああああッ!」

 目の前の光景が信じられずレッドが襲いかかる。

 半狂乱に陥って連続して魔力のこもった拳を詩織の顔面にめりこませていく。女を殴ってはいけないとか、目の前の相手は年下の少女であるとか、そういった常識をかなぐり捨てて、ただ己の全力をもって殴り続ける。しかし、現実は非常だった。

「あはっ♪ よわっ」

 レッドの拳をすべて受けきった詩織が満面の笑みを浮かべる。

 その言葉にレッドの体がビクンと震えた。

 ハアハアという荒い息づかいをあげているのは自分だ。攻撃をしかけていた自分のほうが消耗してしまっている。その事実があまりにも惨めで、レッドは自分の戦意が折られてしまったのを自覚した。

(通用しないんだ・・・・俺の攻撃・・・・こいつには通用しない・・・・)

 己のすべてをかけた拳も彼女にダメージ一つ与えることができなかった。

 レッドの膝が崩れ落ちる。膝立ちとなったレッドが見上げた視線の先には、ただニコニコとレッドのことを見下ろす少女がいた。

「はい、心折れちゃいましたね」

 淡々と詩織が指摘する。

「自分の攻撃が通用しないって分からされて、屈服してしまいました」

「ううううッ!」

「でも当然ですよね。だって、魔力量に差がありすぎるんですから。レッドさんたちから吸収した魔力を溜めているわたしに、レッドさんたちが勝てるはずがないんです」

 それくらい分かりましょうよ。

 ダメな生徒に教えるようにして年下少女が言う。

「魔力量も、魔力のコントロールも、すべてはわたしのほうが上です。そんな相手に勝てるわけないですよね? さっきまでのレッドさんの攻撃も、蚊に刺されたほうがマシってくらいに攻撃力が皆無でしたもん。あれじゃあ、いくらやってもわたしにダメージ一つ負わせることもできませんよ」

 ぐいっと詩織がレッドにむかってかがんで、

「スエットでおっぱいを隠して露出をなくしてあげたのに、純粋な戦闘力の差で完敗してしまいましたね」

「ひいいいッ!」

「レッドさんはわたしよりも弱いんです。年下JKに戦闘力で勝てない。終わってますね、あなた」

 言葉で責めてくる。

 レッドの体が赤く明滅していく。詩織がトドメを刺すことにしたらしい。

「今度はこちらから攻撃しますね」

 すうっと。

 詩織の右手があがった。最初は拳の形。それが「くすり」という笑顔と共にひらかれる。それが意味することは明らかだった。

「拳で殴ったらレッドさん一発で死んでしまうでしょうから、ビンタで勘弁してあげます」

「ひ、ひいいいいッ!」

「手加減もしてあげますから安心してください。これで死ぬことはないと思います」

 いきます。

 その声を聞いたレッドが恐怖で震える。けれども逃げ出すこともできない。自分よりも強い相手を前にして、指一本動かせない。レッドにできるのはこちらを見下ろしてくる詩織の視線に耐えること。そして、少女のあげた右手を恐怖の眼で見上げることだけだった。

「えい♪」

 バッチイイインンンッ!

 かわいらしいかけ声と共に、炸裂した。

 詩織のビンタがレッドの左頬に直撃し、そして吹き飛ぶ。レッドの体が木の葉のように舞い、地面で擦れ切れて滑稽なブレイクダンスを踊りながら、キリモミ回転を繰り返して吹っ飛ばされる。路上の壁にぶち当たって、ようやくその体が止まった。

「あわわ、大丈夫ですかレッドさん」

 詩織が慌ててレッドに駆け寄った。

 壁にめり込む形で倒れているレッドは気絶していた。白目をむいて苦悶の表情を浮かべている。しかし息だけはかろうじてあって、詩織がほっと胸をなで下ろしていた。

「よかったです。それにしてもレッドさんったら弱すぎですよ。精一杯手加減してあげたのに、ビンタ一発で死にそうになるなんて想定外でした」

 気絶したレッドに向かって言う。

 彼女はスマフォを取り出して壁にめりこんだまま動かないレッドを容赦なく撮影する。そこまでしてようやく満足したのか、少女の視線が次なる獲物に向けられた。

「さ、次はどなたの番ですか?」

 詩織の視線の先にはブラックたちがいる。

 ブラックも、ブルーも、イエローも、目の前でレッドが無残にもビンタ一つで敗北した光景を見て、呆然としていた。

「3分間はこちらから動かないであげます。その間自由に攻撃してください。なんなら3人同時でもいいですよ? みなさんが力をあわせれば、わたしにかすり傷くらい負わせることができるかもしれません」

 まあ、と。

 少女が不敵に笑って、

「無駄でしょうけど、ね?」



 *



 ううううッ。

 うめき声をあげてレッドが目覚めた。

 なぜか自分の体が壁にめり込んでいる。戦隊スーツの防御性能のおかげで左頬以外にダメージはない。そう現状確認をした段階でようやく気づく。俺は負けたんだ。敵はどうなった?

「うううううッ!」

「ひいいいいッ!」

「ああんんんんん」

 ようやくレッドが気づいた。

 呻き声をあげていたのは自分だけではなかったのだ。

 レッドの視線の先には、仁王立ちになった少女と、その足下で全裸で倒れた仲間たちの姿があった。

「あ、レッドさん、ようやく起きたんですね」

 詩織が笑って言った。

 どこにでもいる優しそうなJKだ。しかし、その足下では体中に手型の紅葉を咲かせた全裸の男たちが倒れている。

「レッドさんが寝ている間に、ブラックさんたちのことをビンタしまくっていじめてました」

「な、なんだと?」

「やはりレッドさんが一番強いんですね。ほかの方々はレッドさんより弱くて加減が難しかったです。ですがもう大丈夫。力加減も分かったので、ほら、このとおりです」

 笑った詩織がブラックの髪の毛をつかんで、持ち上げる。

 プライドの高い男が軽々と宙づりにされてしまった。その顔は恐怖で歪んでいる。そんな男を鑑賞してニッコリと笑った少女が、右手を振り上げ、即座に、

 バッチインンンッ!

「ひいいいいいいッ!」

 ビンタをお見舞いした。

 ブラックの左頬に少女の平手が炸裂する。しかもそれだけではなかった。

「往復ビンタ、いきますね?」

 バチインンンンッ!

 バッチインンンッ!

 バッチッチイイッ!

「ひいいいいいいいいいッ!」

 連続する。

 左手でブラックの髪の毛をつかんで持ち上げ拘束し、右手で連続して往復ビンタを繰り返していく。

 詩織の手の平、手の甲が、順番にブラックの左頬、右頬に炸裂していく。右手が鞭みたいにしなっていく。連続ビンタの速度に目が追いつかず、レッドはガクガクと震えるだけになった。

「ね? ちゃんと手加減できてるでしょ?」

 詩織がブラックに往復ビンタをしながら、レッドのほうに顔を向けて言う。

「気絶するギリギリの力で加減をして永遠に往復ビンタをすることが可能です。もっとも、脳しんとうの影響があるので、これを続けていけばブラックさんも死んでしまうでしょうけどね」

「や、やめ」

「ふふっ、年下JKのビンタで殺されるなんてかわいそうですね。それもこれも、みなさんが弱いのが悪いんですよ? 魔王軍のアルバイトに過ぎない人間の学生にコテンパンに負けてしまう自分たちの情けなさを反省してください」

 バッチインンッ!

 バッチイインッ!

 会話の間もビンタが続いている。ブラックの体がビクンビクンと痙攣していた。それでも死なない。そのように手加減されている。永遠のビンタ地獄。そんな残酷な攻撃を笑顔でしてくる詩織の姿が、とてつもなく恐ろしかった。

「それでは最後の仕上げをするので、レッドさんはそこで見ていてください」

 すぐさま詩織が左腕だけでブラックの胴体を抱える。

 軽い荷物を小脇に抱えるようにして、詩織が片腕だけでブラックの体を持ち上げてしまったのだ。

 少女の眼下には無防備にさらされたブラックの臀部が剥きだしになっていた。

「お尻ぺんぺん、開始です♪」

 ばっちいいんんッ!

「あひいいいいいいいいッ!」

 少女の右手が鞭のようにしなってブラックのお尻に炸裂する。

 傷一つなかった男のお尻の片側が、少女の手の形に赤く変色してしまった。

「反対側も♪」

 バッチイインンッ!

「ひいいいいいいいいッ!」

 肉の殴打音と男の悲鳴が響く。

 ブラックの左右の尻には強烈な赤い手型が仲良く並んでいた。

「ふふっ、綺麗な紅葉ですね~」

「ひいい・・・・やああん・・・・・」

「どんどんいきますね?」

 ばっちいんんッ!

 バッチインンッ!

「ひゃああああああッ!」

 連続していく。

 さきほどの往復ビンタと同じだ。レッドの目の前で、大切な仲間がお尻ぺんぺんで虐められていく。

「ほら、反省してくださいブラックさん」

 バッチインンンッ!

「魔王軍のアルバイトに負けたこと反省しましょう」

 ばっちいんんんッ!

「JKに手も足も出なかったこと反省するんです」

 ばちっちんんんッ!

「反省して全世界の人たちに謝ってください」

 バッチイイイインッ!

「誠心誠意、ごめんなさいをしてください」

 ばっちいいいいんッ!

「ほら、はやく」

 ニンマリと笑って、

「あ・や・ま・れ」

 バッチインンンンンンッ!

 最後に強烈な一撃がブラックの臀部にお見舞いされる。

 脅され、命令されて、大の男が滑稽なほどに絶叫した。

「ご、ごめんなさいいいいいいッ!」

 謝った。

 あのプライドの高い男が、年下少女からお尻ぺんぺんをされて惨めな謝罪を強制されてしまったのだ。ブラックの顔は恐怖と屈辱でグジャグジャになり、その瞳からは涙をポロポロとこぼしていた。

「もっとです」

「ごめんなさいいいいッ!」

「もっと」

「ごめんなじゃいいいッ!」

「何に謝っているんです?」

「弱くてごめんなさいいいッ! 負けてすみませんでしたあああッ! 年下の女なんかに手も足も出ずに負けてごめんなさいいいいいいッ!」

 もはや操り人形だった。

 詩織の命令どおりに動くだけの惨めな人形。お尻ぺんぺんをされて、謝罪を強制されて、情けない声で「ごめんなさい」を繰り返していくブラック。その体が、これ以上ないほどに強く明滅を始めていた。

「くすっ、お尻ぺんぺんされて、謝罪を強制されて、マゾ性癖をガンガン刺激されてしまいましたね」

 バッチインンンッ!

 詩織がお尻ぺんぺんをしながら言う。

「年下の女の子にお尻ぺんぺんされて、恥ずかしくて、悔しくて、興奮してしまっています。それでマゾ性癖が刺激されて魔力を生み出してる。とっても惨めですね、おまえ」

 バッチインンンッ!

「ほら、もっとですよ。もっとごめんなさいしてください。そうして、わたしの成功報酬のために、たっぷり魔力を溜めてください」

「ご、ごめんなじゃいいいいッ!」

「ふふっ、続けますね?」

「ごめんなッギャアアアアアッ!」

 お尻ぺんぺんが続いていく。

 すぐにブラックの臀部が真っ赤を通り越して真っ黒になった。

 鬱血して紫色に変色し、最後に内出血でドス黒く変色してしまったのだ。それらはすべて年下JKによるお尻ぺんぺんのダメージだった。爆乳少女のビンタによって、男のお尻が見るも無惨な姿になっていく。

「ふふっ、十分に溜まりましたかね」

 ようやく詩織のビンタが止まった。

 左腕で男の胴体を抱えて拘束したまま、自分の成果を確認していく。

「すごいお尻になりましたね。とっても痛そうです」

 他人事のように言う。

 彼女はチラリとレッドに流し目を送って、

「ほおらレッドさん、お仲間のブラックさんのお尻、こんなになっちゃいました」

 レッドにむかってブラックの臀部を展示した。

 仲間の末路を見てレッドがゴクリと喉をならした。

「これだと当分は椅子に座ることもできないですね」

「あひん・・・・ごめ・・・・な、じゃい・・・」

「ふふっ、こんなになっても「ごめんなさい」を止めないなんて、少し追いつめ過ぎましたかね」

 少女の右手が優しくブラックの臀部を撫で始める。しかし散々に痛めつけられてしまったブラックにとってその愛撫は拷問に過ぎなかった。

「ぎゃああああああああッ! ごめんなじゃいいいいいいいいッ!」

 撫でられただけで絶叫し、ごめんなさいをする。

 そんな光景をレッドは間近で見せつけられていった。

「うん、許してあげましょう」

 どさっ!

 詩織がブラックの体を放した。

 男の体がうつ伏せで倒れたままピクピクと痙攣するだけになる。痛めつけられた臀部を上にして腰を浮かし、少しでも刺激がこないように無駄な努力をしている男。その全裸に剥かれた男の体には少女の手型が咲き誇っていて、無事な部位なんてどこにもなかった。

「これで分かりましたよね」

 詩織が勝ち誇って言う。

「みなさんよりわたしのほうが強いんです。こんなふうに露出をおさえた格好で、おっぱいの力を使わずに圧勝してしまいました。これだけやれば、さすがにみなさんも分かったでしょ?」

 詩織の言葉にレッドたちは言い返すこともできない。

「はい、完全屈服の完成です。ということで、スエットはもういいですよね」

 そのまま彼女は自然とスエットを脱いでいった。

 まず下半身のズボンを脱ぎ、そのムチムチの太ももをさらす。彼女は白色の水着を着用していた。レッドたちはイヤな予感ではやくも「ひい」と悲鳴を漏らしている。

「ふふっ、じゃんじゃじゃ~ん」

 おどけながら詩織が上半身のスエットも脱いだ。

 下から現れたのは布地が少なめの白色の水着だった。さらに成長したおっぱいの肌色を前に、男たちの意識がすべてもっていかれた。

「「「「ひいいいいいいいいいッ」」」」

 ビクッ!

 ビクンビクンッ!

 おっぱいをあらわにしただけ。

 それだけなのに男たちは全員マゾイキしていた。

 おっぱいには勝てないのだ。純粋な戦闘力ですら歯が立たなかったレッドたちが、詩織の爆乳に勝利する可能性なんて一つもなかった。

「この前、グループチャットで送ってあげた水着ですよ」

「ひいい・・・ひいい・・・・」

「その時にも言いましたが魔王さんが買ってくれたんです。ちょうどまた大きくなってサイズが合わなくなっていたのでありがたかったんですよね」

 ニッコリと笑った水着姿の爆乳少女が言う。

 年下少女が夜の街路で卑猥な爆乳姿をさらしている。

「これでみなさんの魔力を奪ってあげますからね」

 怪しく笑って、

「まずはブラックさんからです」

 今だにうつ伏せで倒れたままビクビクしているだけの男に詩織が近づく。

 ひゃだあああッ!

 ごめんなさいいいいッ!

 そんな悲鳴が轟く中、男の悲鳴を完全に無視した詩織がてきぱきと準備をしていく。そしてブラックの頭部を左右から両手でがっちりとつかみ、おっぱいの前に固定化して、終わってしまった。

「はい、ぱっくん」

「むうううううううッ!」

 食べた。

 男の頭部をおっぱいで捕食してしまった。ブラックの首から上が乳肉に生き埋めになって見えなくなり、一瞬にしてその全身が脱力して、ビクンビクンと痙攣し始めた。

「あはっ、すごい悲鳴」

 詩織が楽しそうに言う。

「わたしのおっぱい、ますます凶悪になっているんですよね。学校でも大変なんですよ? 同じ教室にいるだけで男子たちを強制フル勃起させてしまって、中にはわたしのフェロモン嗅いだだけで射精してしまう男子もいるんですから」

 ぐりぐりと。

 詩織が、ブラックの頭部をおっぱいで食べて、その魔力を吸収していく。

「わたしのおっぱいを制服ごしに見ただけでもダメですね。そうなった男子はみんな例外なく射精してしまいます。男性教師も同じです。だからみんな、わたしと話す時には下を向いているんです。もっとも、我慢なんてできずにすぐにおっぱいをチラ見してしまって、あっという間に射精してしまうんですが」

 バカにするようにブラックの顔面を爆乳に押しこめながら、

「雄は女の子のおっぱいには勝てないんです。それはみなさんも同じです。だから恥ずかしがることなんてないんですよ。おっぱいに完全敗北するのは仕方のないことなんです」

 少女の言葉が続く。

 けれど詩織の声はレッドたちに届いていなかった。彼らの視線は目の前のおっぱい様にくぎ付けになっており、まばたきすら忘れて凝視してしまっているのだ。

(す、すごすぎる)

 目の前のおっぱい様。

 大きくて、張りがあって、柔らかそうな乳肉の暴力。これだけ大きいのに形が崩れていなくて、美乳の形を保っているので見ていてまったく飽きなかった。このおっぱい様に食べていただける。自分の魔力を吸収してもらえる。それが嬉しくて男たちがマゾイキする。レッドたちは既にそこまで墜とされてしまっていたのだ。

「はい、次はレッドさんの番ですよ?」

「あ」

 いつの間にブラックが絞り尽くされていた。

 ミイラのように痩せ細ったブラックの体が地面に倒れてピクピクしている。そんな悲惨な目にあったのにブラックはアヘ顔を浮かべて昇天していた。

「ほ~ら、見てくださいレッドさん。わたしのおっぱい、ますます大きくなりました」

 ぐんにゃりッ!

 詩織が両手を乳房の側面にあてがって寄せあげてしまう。ぐんにゃりと蠱惑的に潰された乳肉の谷間を前にしてレッドの意識がおっぱい一色になった。人類のことも、仲間たちのことも、妹のことだって忘れて、敵のおっぱい様に夢中になってしまった。

(しゅご・・・しゅごしゅぎる・・・・・しゅごい・・・・・)

 もはや語彙力も知性もなくなる。

 目の前のおっぱい様を凝視するだけ。あとはどうでもよくなってしまった。

「レッドさん、どうしたいですか?」

 詩織が笑って問いかける。

「レッドさんに選ばせてあげます。どうします?」

 回答を迫ってくる。

 さらにおっぱいが寄せあげられて谷間が深くなった。それだけでレッドは甘い匂いに誘われたハエのように少女に近づいてしまう。ハアハアという荒い息づかい。もはや理性もドロドロに溶かされてしまった男が、そのまま自然と、自分の顔面をおっぱい様に捧げた。

「むうううううううッ!」

 自分から詩織の爆乳に顔面を突っ込む。

 そしてグリグリと顔を動かして、さらなる谷間の深みにもぐろうと滑稽な努力を続けていく。詩織はレッドの頭部をつかんですらいない。両手を自分の腰にあてがった仁王立ちしているだけ。ただ突っ立っている少女の脅威にむかって、哀れな奴隷が自分の頭部を生け贄に捧げてしまっていた。

「はい、おっぱい奴隷の完成です」

 ニンマリと詩織が笑う。

「わたしは立っているだけなのに、レッドさんは自分からおっぱいに食べられてしまいました。ふふっ、まるで自分を生け贄に捧げてしまったみたいですね」

 バカにしたような笑顔。

「いいんですかレッドさん? 自分からおっぱいに頭を突っ込んで堪能してしまって。このおっぱいは、あなたたちから魔力を吸収してしまう怖いおっぱいなんですよ? そんな場所に顔面を突っ込んだら、空っぽになるまで魔力を吸いとられてしまいます」

 その言葉にレッドの理性が一瞬だけ戻る。

 逃げないと。このままだと搾り取られてしまう。そんな考えが一瞬だけ浮かんだものの、ほんの少し鼻から息を吸っただけで溶かされてしまった。

「むうううううううッ!」

 ビクビクッ!

 理性が溶ける。逃げようという気持ちすらなくなる。ただただ目の前のおっぱい様を味わいたくて、さらに自分からぐりぐりと顔面を乳肉様にこすりつけていく。吸ってはダメな魔性のフェロモンで肺を満たして、さらなるおっぱい奴隷になっていった。

「あ~、これはダメですね」

 呆れたように詩織が言う。

「完全におっぱい奴隷になってしまいました。あれだけ勇ましかったレッドさんが、わたしのおっぱいの前に完全服従しているのが分かります。情けないですね」

 詩織が「ふふっ」と笑った。

「吸収開始です♪」

 キュイインンッ!

 レッドの輝いていた赤色の光が詩織のおっぱいに吸収されていく。ドクンッ、ドクンッと、まるで血液みたいに一定間隔で流れていくレッドの魔力。おっぱいに吸収され、ますます詩織が強くなっていく。

「ふふっ、レッドさんの魔力は本当に上質ですね」

「むううううううッ!」

「成功報酬の単価が一番高いのはレッドさんの魔力なんです。だから、徹底的に追い込ませてもらいました。満タンにしたレッドさんの魔力、わたしのおっぱいで搾りとりますね」

 集荷活動。

 家畜のつくった生産物を集めて出荷するための捕食の時間だ。

 詩織は仁王立ちのままで、両手を腰にやって立っているだけ。レッドの後頭部を抱きしめて拘束することすらしていない。少女のおっぱいに顔面を押しつけているのはレッドの意思そのものだった。負け犬の体が少しづつ萎んでいく。

「ふふっ、ザ~コ」

 もはや完全に男たちを下に見ている詩織が辛辣に吐き捨てる。

 ニヤニヤした笑顔で、ひたすらに魔力を吸収していく。

 そんな屈辱的な言葉なのに、レッドはおろか、ほかの戦隊員も全員マゾイキしてさらなる魔力を製造してしまう。それを鑑賞した詩織が「くすり」と笑った。



 *



「はい、みなさん空っぽですね」

 捕食活動が終わった。

 ニコニコ笑った少女の足下で、干からびた男たちがピクピクと痙攣していく。

「お疲れ様でした。みなさんのおかげで今日も成功報酬が期待できます。もうすぐ弟の1年分の学費が貯まりそうなんです。割りの良いバイトを続けられているのもみなさんのおかげですよね。感謝しています」

 弟思いの少女がアルバイトに勤しんでいる。

 それだけ聞くと姉弟愛に感動するストーリーのようだが、その犠牲になっている男たちにとってはたまったものではなかった。

「それでは、下ごしらえをしてから、終わりにしましょうね」

 詩織がレッドの顔面を踏む。

 水着姿となり、生足となった詩織の足裏が、干からびたレッドの顔面を容赦なく踏み潰す。ぐりぐりと体重をかけて潰されたレッドの体がビクビクと痙攣していく。

「舐めろ」

 そして命令。

 おっぱい奴隷となっているレッドはすぐにペロペロと舐め始めた。

「ふふっ、舐めましたね」

「ぺろ・・・ぺろぺろ・・・・」

「年下JKの足裏を舐めてしまいました」

「ぺろ・・・・じゅるうう・・・・・・」

「情けないです。本当に終わってますよ、おまえ」

 辛辣な言葉。

 効果は絶大で、干からびていたレッドの体が赤く明滅して、新しい魔力が生まれていく。

「ふふっ、マゾって便利ですね」

 ぎゅうううううッッ!

 さらに踏み潰す。おっぱいの大きな少女が男の顔面を踏み潰しながら笑って、

「魔力を生み出してもらうために言葉責めもしていきますからね。わたしのバイトのために協力してもらっているレッドさんたちには申し訳ないんですが、辛辣な言葉を口にしていきます。それもこれも、レッドさんたちに効率的に魔力を生み出してもらうためですから、許してください」

 年下のおっぱい女王が妖艶に笑っている。

 言葉とは裏腹に、彼女の笑顔はサディストそのものだった。

「撮影して、グループチャットにもアップロードしてあげます。それを見て勝手に興奮してください」

 ぐりぐりッ!

 スマフォを構えレッドの撮影を開始してから、

「ほら、もっと舐めろ」

 冷たく命令する。

 男の唾液音が響く。

 レッドの瞳からぼろぼろと涙がこぼれていく。それでも舌を動かし、少女の足裏に奉仕を続けざるを得ない。レッドの体だけでなく、ほかの戦隊員たちの体も輝き、あらたな魔力を製造していく。全員が足舐めご奉仕を強制され、その一部始終を動画に撮影されるまで、それはずっと続いた。


つづく