英雄は明日香に狂ってしまった。

 道場で明日香と一緒の空間にいる時はもちろん。学校でも自宅でも。英雄の頭の中にあるのは明日香のことだけだった。

「明日香……明日香……様……」

 夜。

 自宅でいつものようにオナニーが始まる。

 妄想するのは明日香のことだった。

 今日も居残り練習でサンドバックの男たちを性道具にして、自分の性欲を解消していた少女。

 練習中にニコニコしながら男たちを締め落としている時とはうって変わって冷酷な女王様の姿に、英雄は参ってしまっていた。

「明日香様……ぐるじいい……」

 英雄が妄想していく。

 あの丸太のような腕が自分の首に巻きついて締め上げる。

 すぐに頭が真っ白になって、きもちよくなってしまう。さらには、あの大蛇のような太ももで挟み込まれて、潰されていくのだ。三角締めをくらって、すぐに気絶する。太ももで頭部を挟みこまれて頭蓋骨だけ軋まされる。胴体を挟み潰され一呼吸だって許されずに酸欠で意識を刈り取られる。そんな光景を妄想すると、英雄はとんでもなく興奮して肉棒を鋼鉄のように固くした。

「明日香様……もっと、もっと締めてくだしゃいいいいい」

 懇願。

 締め落としに恋いこがれ、彼女の足下で隷属したいという気持ちに身を委ねてしまう。

「イっちゃいますう……明日香様……」

 目の前の明日香。

 彼女がニヤニヤ笑っている。

 自分の首を締め上げて、吊るしている少女。さきほどから足が地面についていない。宙づりにされているのだ。自分はその状態で抵抗することもなくオナニーをしている。

 目の前の妹弟子の視線。

 ねっとりと妖艶な大人びた女性の視線が自分を観察してくる。彼女の口が、ゆっくりと動いた。



 イけ。



 居残り練習の時に聞いた彼女の命令が頭に響き、英雄は射精した。

「ひゃああああ、あしゅかしゃまああああッ!」

 精液が巻き散る。

 明日香と出会う前にやっていたオナニーが子供だましに感じるほどの快感。英雄は、何か大事なものが明日香によって奪われてしまったことを悟った。

「締め落とされたい」

 ハアハアと肩で息をしながら、

 英雄が恍惚とした表情で自分の正直な気持ちをつぶやいた。

「明日香様に、締め落としてもらいたい」

 完全にマゾになっている。

 いや、マゾにさせられた。

 チビであるコンプレックスを刺激されて、チビマゾ性癖を植えつけられてしまったのだ。年下の少女に。かつての妹弟子に。師匠である自分は、明日香によってマゾに調教されてしまった。

「明日香様」

 恋い焦がれるようにして英雄が言う。

 明日香は最近、サンドバックしか虐めていなかった。道場の男たちには決して手を出さずにキックボクシングジムの面々だけを拷問にかける毎日。逃げれば徹底的に追いかけられて捕まえられて見せしめのためにさらにヒドいことをされる。それを見せつけられたサンドバックたちはガクガクと震えて明日香から逃げられなくなっていた。それがここ1ヶ月の間に起こったサンドバック虐めだった。

「俺も……明日香様に、締め落とされたい……のに……」

 正直な気持ちがおさえられない。

 英雄はかれこれ1ヶ月ほど、彼女からの締め落としも、吊るし上げもしてもらえていなかった。

 それが悶々とした欲求不満として英雄の中にたまっていく。なぜそんな不満が生まれるのかとか。虐められないのだからそれでいいではないかとか。常識的な考えが頭に浮かんではすぐに消える。明日香の調教によって、英雄は重度のマゾにされてしまっていた。

「……明日香様」

 うわ言のようにつぶやく。

 脳裏に浮かぶのは明日香様のことだけ。

 どうすればいいのか。

 どうすれば彼女に相手をしてもらえるのか。

 そう考えた英雄は覚悟を決めた。今後の人生を左右する決断。英雄は意を決して、自分の覚悟を明日香様に伝えることにした。それが、英雄が格闘家でいられた最後の日となった。



 ●●●



「え、明日香と試合ですか?」

 キョトンとしながら明日香が言った。

 そのかたわらには、顔を真っ赤にしながらモジモジしている英雄がいた。

 英雄は消え入るような声で「俺と試合してほしい」と、そうつぶやいたのだ。

「でも師匠、いいんですか?」

 心配そうな表情。

 彼女は仁王立ちしながら、自分がつかんでいるものを顎で指しながら問いかけた。

「明日香と試合したら、師匠もこうなっちゃいますよ?」

 明日香が指し示した先。

 そこには、明日香によって吊るし上げられ、顔を鬱血とさせて死にそうになっている聡がいた。

「う」

 英雄はそれを思わず凝視していた。

 苦しそうにしている少年。

 身長差から足が地面についておらず、じたばたと体を暴れさせてお魚さんになっている元人間。それを凝視した英雄が、一瞬だけ、誰にも見られずにトロンとした瞳を浮かべた。

「すごい顔ですよね、こいつ」

「あ、ああ」

「せっかく明日香のストレス解消はこいつらで済んでるのに、いいんですか?」

「も、問題ないよ。俺も鍛錬してきたし」

 強がりを言う。

 心臓がドキドキしている。

 そんな英雄のことを明日香が「ふ~ん」と眺めてから、

「まあ、いいですよ?」

 どすん。

 明日香が聡に興味を失ったように放り投げた。

 気絶した聡が物体となって道場に転がる。明日香が手を腰にやって、英雄の目の前で仁王立ちになった。

「ふふっ、師匠が言い出したんですからね?」

 ニヤニヤ。

 笑いながら英雄を見下ろす。

「明日香、自分のこと抑えられないですよ?」

 その言葉に英雄はゴクリと生唾を飲み込んだ。

 羨望しているのだ。

 自分はとっくの昔に目の前の女性に支配されていたのだった。自分という矮小な存在が、明日香の大きな体に飲み込まれていくのが分かった。最後の時間がおとずれようとしていた。



 *



 対峙する二人。

 それは対照的な光景だった。

 一人はまだ幼い顔立ちの少女。

 しかし、その体は道場中の誰よりも大きかった。身長も高く、体も分厚い。道着から伸びるムチムチの太ももには筋肉の筋が浮かびあがり、アマゾネスの肉体を強調している。

「ふふっ」

 そんな少女が目の前の男を、ニヤニヤしながら見下ろしていた。

 彼女の視線の先には、矮小な体を惜しげもなくさらして、とろけたような表情で明日香を見上げる英雄がいた。

「いきますよ、師匠」

 ブザーが鳴り、始まる。

 電光石火のタックル。

 その巨体がかすんで見えるほどの速さで速攻をしかけたのは明日香だった。

「ウグッ!」

 大型トラックに突進されたような衝撃を受け、英雄の体が否応もなく地面に倒される。

 仰向け。

 そこに馬乗りになった明日香。

 彼女の強靭な太ももが、がっちりと英雄の胴体に巻きついて、完全拘束を完成させてしまった。

「あれれ、師匠、どうしたんですか?」

 男に馬乗りになった明日香が言う。

 悠然と髪をかきあげ、余裕たっぷりの表情で英雄を見下ろしながら、

「なんだか前より弱くなってませんか?」

「う、あ、あすかあ」

「なんでだろう。すごく弱い」

「あしゅかああ」

「ひょっとして、師匠……」

 明日香が英雄を見下ろす。

 彼女の視線の先には、恍惚とした表情を浮かべ続ける英雄がいた。

「ふふっ、な~んだ」

 ニンマリ笑った。

 すべてお見通し。そんな表情を浮かべて、明日香が英雄のことを見下ろす。

「これなんかどうですか?」

 ぎゅううううッ!

「ひっぎいいいいッ!」

 明日香が英雄の胴体に巻きつかせた太ももに力をこめた。

 英雄の背中でがっしりと交差した明日香のふくらはぎ。その圧倒的な下半身に巻きつかれた矮小な男の体など、ひとたまりもなかった。

「ふふっ、これで3割くらい」

「カヒュ――カヒュ―――」

「あはっ、もう喋れなくなっちゃいましたね。はい、これで4割」

 ぎゅううううううッ!

「ヒュウ――……カヒュ―――……」

「あ、白目むいた。よわ~い」

 楽しそうに。

 うれしそうに。ニンマリと笑って、英雄を虐めていく。

「師匠、ほら、息継ぎしてください」

 太ももの力を調整して、英雄が呼吸できる程度の巻きつきにしてやる。とたんに貪るように息を吸い始めた男のことを、明日香が愛しそうに見下ろした。

「はい再開」

 ぎゅうううううッ!

「ギイイイイイッ!」

「ふふっ、師匠、苦しそうですね~」

「あ、あ、あ、明日香ッ!」

「めちゃくちゃ手加減してあげているので、気絶できないですよ? ふふっ、それとも師匠は気絶させられたいのかな?」

 ニンマリとした笑顔。

 大人と子供。

 性に目覚めた少年を手ほどきするかのような、妖艶な雰囲気をまとって、明日香が英雄のことを見下ろしていた。

「師匠~、大好きな明日香の太ももで虐められて、うれしいですか~」

「だ、誰がうれしいなんヒッギイイイッ!」

「あはっ、ちょっと締めつけ強くしただけで喋れなくなっちゃうなんて、弱すぎてかわいそうになっちゃいますね~。ほ~ら、明日香のムチムチの太ももが、師匠のちっちゃな胴体を潰しちゃってますよ~」

 見せつける。

 力の違いを。

 生物としての優劣差を。

 これでもかというほど見せつけながら、明日香が英雄のことを熱のこもった視線で見下ろしていく。勝ち誇って師匠のことを観察していく少女。その顔に確信的な笑顔が浮かんだ。

「あ、技がはずれちゃいました」

 わざとらしく言って、明日香が英雄の腕をつかんで立ち上がった。英雄が「ひいひい」言いながら引きずり起こされる。

「仕切り直しですね、師匠」

「ううううッ」

「次はがんばってくださいよ?」

 ニンマリと笑う。

 そして試合が再開されるのだ。

 もはや勝負にすらなっていない、一方的なしごき。師匠が教え子によって分からされていく。

「はい、三角締めの完成です」

 圧倒的強者である少女が、てきぱきと男を調理する。

 英雄がどんなに抵抗しても、技を避けようとしても無駄だった。力だけではなく技術でも上をいかれている。自分がどんなに頭をつかって、これまでの経験を総動員して逃れようとしても、明日香に全て動きを読まれ、先回りされてしまう。結果としてできあがったのが三角締めだった。明日香の強靭な太ももが、英雄の矮小な首に巻きついて、捕食してしまっている。

「ぐげえええええッ!」

 喉仏にもぎっちりと食い込んだ明日香の極太の足。

 それによって言葉を奪われ、容赦なく頸動脈を締められて、英雄の顔が歪んでいく。眉を下げ、白目をむき、苦悶の表情で顔を歪ませる。

 明日香の純白の肌とは対照的なドス黒く変色した男の顔。

 大蛇のような太ももと太ももの間から、ひょっこりと顔を出しているその姿はあまりにも惨めだった。自分の頭部の倍以上もある太ももに包み込まれて、万が一にもそこから脱出できないことが見てとれる。

「ふふっ、苦しそうですね、師匠」

「グゲエエエエエエッ!」

「あはっ、えづいちゃってます。明日香の太ももで締め上げられてえづいちゃってますね」

 つんつん。

 明日香が自分の太ももの間から顔を出している英雄の額を指で突っつく。

 年相応の少女によるイタズラ。しかし今行われているのは遊戯ではなく拷問だった。ひとまわり以上年下の妹弟子が、師匠のことを拷問していた。

「この日のために鍛錬してきたって、そう言ってましたよね?」

 つんつん。

 明日香が英雄の額を突っついて遊ぶ。

「それなのに、なんでこんなに弱くなってるんです? まるで自分から負けにきてるみたい」

 それに、と。

 彼女の手が英雄の股間を握りしめた。

「なんで、勃起しているんですか、師匠?」

 ぎゅうううううッ!

 力強く握りつぶす。

 英雄の股間が少女の片手によってわしづかみにされてしまっていた。その大きな手の平の中には英雄の勃起した肉棒がある。太ももで殺されかかっているのに、興奮して、勃起してしまった敗北の証拠。それを分からせるために、明日香が英雄の股間をわしづかみにしながら、さらに太ももに力をこめた。

「苦しいはずですよね、師匠」

「ぐげえええええッ!」

「それなのに、なんで勃起しているんですか?」

「おっぼおおおおッ!」

「こんなに痛めつけられて、死にそうになっているのに、なんで勃起しているんでしょう」

 ぎゅうううううッ!

 さらに明日香の太ももに力がこもる。

 肌色たっぷりの生足。その柔らかそうな皮下脂肪の下から獰猛な筋肉が隆起している。さらに体積を増してしまった凶悪な太もも。その間に挟み込んだ獲物を容赦なく食い散らかしてしまう化け物が、一人の男を亡き者にしようと襲いかかっていた。

「まだ明日香、本気を出していません。これで7割くらいです」

「ぐげえええええッ!」

「本気で絞めたら師匠の頭部をぺちゃんこにできると思います。師匠は今、そんな恐ろしい太ももに絞めあげられているんですよ? それなのに、なんで興奮しているんですか?」

 ぎゅうううううッ!

 ボゴオッとさらに太ももが隆起する。

 もはや英雄の顔が太ももの肉によって埋もれて見えなくなってしまった。それほどまでに明日香の下半身は圧倒的だった。少女の凶悪な太ももによって、師匠であったはずの男が殺されていく。

「ふふっ、まだまだこれからですよ、師匠」

 明日香が笑う。

「試合はまだ始まったばかりです」

「グボオオオオオッ!」

「たあっぷり堪能させて、骨の髄まで分からせてあげます。覚悟してください、師匠」



 *



 英雄は地獄の中にいた。

 地獄。

 そのはずだった。

 それなのに彼の体には恍惚とした快感が電流のように走っていた。

(ぎ、ぎもじいいいいッ!)

 死にそうな表情を浮かべながら、歓喜に震えている。

 一方的な試合は続き、今は再び胴締めの時間だった。

 明日香の股の間に座らされた英雄は、背後から伸びてくる明日香の凶悪太ももによって挟みこまれて、そのまま胴体を潰されてしまっていた。英雄の体の前でがっちりと組まれて4の字になった明日香の脚。英雄の胴体よりも太い明日香の太ももの感触だけで、そこから逃げることができないことが分かる。ミシミシと英雄の体がずっと軋んでいく。

(明日香の太もも、しゅごいいいいいいッ!)

 この太ももには勝てない。

 このまま自分は殺される。

 この極太の逞しい太ももによって、胴体をぺちゃんこにされて潰され、殺されるのだ。

「ひゃああああああッ!」

 それが分かっているからこその歓喜の絶叫。

 完全に分からされている。

 こうして虐めていただけるだけで嬉しい。かつての師匠が妹弟子に殺されながら、その肉棒を滑稽に勃起させていった。

「師匠、苦しいですよね」

「いっぎいいいいいッ!」

「息もできずに、胴体べこんって潰されて、内蔵を直接痛めつけられてる。これされた男はみ~んな無様な命乞いをするんですよ。情けなく。明日香様許してくださ~いって」

「ヒッギぐイイいイッ!」

「それなのに、なんで師匠は勃起するだけでなくて、そんなに嬉しそうな顔をしてるんですか?」

 明日香の確信に迫る言葉。

 彼女の視線の先。

 そこには、苦しみながらも恍惚とした表情を浮かべた男がいた。

「ふふっ、師匠、かわいい」

 ぎゅううううッ!

「カヒュ――カヒュウウ―――」

「締めつけを強くしたらすぐ息もできなくなっちゃうほど弱っちいところなんかも、とってもサイコーです。ほら、息継ぎしてください」

 下半身だけで男をコントロールしている。

 彼女の思うがままだった。

 男に悲鳴をあげさせるのも、男の呼吸を奪うのも、すべては脚だけで調整できる。大蛇に巻きつかれた男は、本来であれば、自分の体が丸飲みされていく恐怖にさいなまれながら、必死の命乞いをするしかない。唾を飛ばしながら、滑稽に、必死に。

「あしゅかしゃまああああッ!」

 それなのに、英雄はとろけた表情を浮かべるだけだった。

 抵抗心とか男のプライドというものが残っていないことは明らかだった。それらは全て、明日香の太ももによって挟み潰されてしまったのだ。今ここにいるのは、成長した妹弟子に柔術でボコボコにされて、屈服し、分からされてしまった哀れな負け犬だけだった。

「ふふっ、師匠の恍惚とした顔を見ていたら、明日香も我慢できなくなっちゃいます」

 明日香の顔にも熱が帯びる。

「師匠のこと、試してあげますね」



 *



 明日香がゆっくりと英雄の胴体に巻きつかせていた足をほどいた。

 そのまま立ち上がり、悠然と男を見下ろす。

 少女は高身長の高みから男を見下ろして、時間をかけて鑑賞する。ねっとりとした瞳が容赦なく男を貫く。最後に少女が「ふふっ」と笑った。

「ほ~ら、首輪ですよ」

 明日香が仰向けに寝ころがった。

 そのまま右足だけあぐらをかくように開脚し、右足の甲を左足の膝下でがっちりと固定する。

 できあがったのは明日香の言葉どおり女性の脚でつくられた首輪だった。

 ちょうど、三角締めをするときの体勢。

 その太ももと太ももの間に頭部を挟み込まれてしまった男がどうなるのか、誰でも分かる凶悪でムチムチな下半身の迫力が、英雄の目の前に展開された。

「マゾの男には首輪をしなくちゃいけません」

 明日香が笑う。

 何かを確信している笑顔。

 寝ころがり、太ももとふくらはぎでつくった首輪を、英雄に見せつける。

「ほら、師匠はやくしてください」

「ううううッ」

「どうすればいいか、師匠だったら分かりますよね?」

 そんなこと言われるまでもなかった。

 英雄がフラフラと体を起こした。

 目の前。

 そこには首輪がある。

 明日香のムチムチの足でつくられた首輪だ。その首輪をはめた男がどうなるのかも分かっていた。けれど、今の英雄にとってはそれこそが望みだった。

「はあ、はあはあ」

 四つん這いになって近づく。

 熱に浮かされたような視線。

 興奮して理性を奪われた猿。

 彼の脳裏にあるのは、ただただ明日香の凶悪な下半身だけだった。

「はあ、はあ、ハアハア」

 ゆっくりと首を伸ばして近づいていく。

 近づいただけで熱量が感じられた。

 その躍動感が伝わってくる。

 ムチムチの足。

 柔らかそうな女の子の足。

 その下で蠢いている筋肉が、獲物を待ちかねている肉食性のイソギンチャクのように躍動しているのが分かる。

「あ、明日香あああッ」

 英雄にためらいはなかった。

 ゆっくりと。

 味わうように。

 英雄が頭を下げて、太ももとふくらはぎでできた首輪に頭を通す。四つん這いの格好で、自ら処刑台であるギロチンの穴に頭を通し、終わった。

「は~い、よくできました」

 ぎゅううううううッ!

「ひいいいいいいいいいッ!」

 首輪が閉じられる。

 太ももの間で、英雄の小さな頭部が、圧倒的な明日香の太ももによって左右から潰された。

 右足のふくらはぎががっちりと英雄の後頭部を抱き込み、左足の膝下でホールドが完成。もう逃げることなんてできない。その首には明日香の太もも首輪がみっちりとはめられていた。

「師匠の気持ちは分かりました」

 明日香が寝ころがりながら言う。

 自分の太ももの間で埋もれている男。

 愛しい愛しい存在。

 その男の頭を慈愛をこめて撫でながら明日香が続ける。

「両思いだったんですね、明日香たち」

 にっこり。

 うれしそうな表情を浮かべて、

「こんなひどいことしてるのに、師匠はとってもうれしそう。明日香も、今、とっても幸せです」

「ぐ、ぐぎぎいいいい」

「これから毎日、明日香が師匠のことを虐めてあげますからね。大丈夫。ぜったいに師匠のことは壊しませんから。ほかの男たちで限界を見極める力は身についたので、壊れる限界ギリギリまで追い込んであげます」

 ぎゅうううううッ!

「カヒュウウ――カヒュウ―――」

「あ~、師匠かわいい~。大好きです師匠。まだ体がちっちゃい時から、明日香、師匠のことが大好きでした。好きです。好き好き」

 ぎゅううううううッ!

 愛の言葉を囁きながら、その太ももで愛しい男を締め落としていく。苦しそうに歪んだ彼の顔を見て、ますます熱を帯びた表情となった明日香が、思い人のことを追い込んでいく。

「今日は徹底的にやります」

 興奮している。

 一匹の女豹が、獲物を前にして性的に興奮していた。

「明日香が満足するまで、師匠のことをボコボコにします。いいですよね、師匠?」

 明日香の言葉。

 太ももで締めつけられ、殺されそうになっているのに、問いかけられた男は確かに首を縦に振った。

「……師匠」

 ぱああああっと笑顔になる明日香。

 彼女が、身も心も屈服させて分からせた男のことを、さらにボコボコにしていく。



 *



(あしゅかあああ、しゅごおいいいいい)

 英雄は明日香に痛めつけられていった。

 ただひたすらに締め落とされた。

 何度も何度も。

 苦しみで発狂するような気道責めも、快感で頭を壊されそうになる頸動脈締めも、そのすべてが英雄にとってご褒美だった。普通ならば恐怖で逃げ出しそうになるのだろうが、英雄は明日香の優秀な体に溺れるようにして、恍惚とした表情で痛めつけられていった。

 1時間。

 2時間。

 3時間。

 英雄の体が限界になるまで明日香の締め落としは続き、最後の時間が訪れた。

「師匠、かわいい~」

 ギリギリギリッ!

 吊るし上げ。

 高身長で仁王立ちした明日香が、英雄の首を両手でわしづかみにして吊るしている。

 英雄はとっくの昔に全裸だった。

 全身を締めつけられ、殴られたり蹴られたりしたわけではないのに全身が内出血の跡でひどいことになっている。それだけ明日香の締めつけは強烈だったのだ。体中をその腕で、太ももで、ふくらはぎで締めつけられ、何度も気絶してしまった英雄は、もはや人間としての自我も尊厳も奪われていた。

「明日香の大きな両手が、師匠のちっちゃな首を包み込んでしまっています」

「かぎゅううううッ!」

「気道と頸動脈の同時締めが可能です。これ以上になく力関係が分かる技ですよね、これって」

 明日香が笑う。

 両手で英雄の首をわしづかみにして締め上げ、宙づりにして、同じ目線になって鑑賞を続ける。

「師匠の命は明日香が握っているんです。チビの師匠は、大きな明日香に絶対に勝てない」

「ぐっぼおおおおッ!」

「ふふっ、気道だけ絞めてま~す。次は頸動脈だけ一瞬絞めて天国に連れていきま~す」

「おぼおおおおッ!」

「うわっ、えづいているえづいている。あ~、きもち~」

 好き放題。

 明日香による情け容赦のない締めつけが、ずっと、ずっと続いていく。

「あしゅかああああ」

 それでも英雄は恍惚とした表情で明日香を見つめていた。

 明日香と英雄の視線と視線が、熱をもって交差していく。それはまるで永遠の愛を誓い合った恋人のようだった。

「師匠」

 明日香が、優しい声で言った。

「何か言いたいことはありますか?」

 その言葉。

 ビクンと英雄の体が痙攣した。

 もはや自分をおさえることは不可能だった。ここ最近、ずっと妄想していたこと。それが絶叫となって口から漏れた。



「俺のこと、明日香様の弟子にしてくださいいいいッ!」



 英雄が覚悟をきめたことはこれだった。

 明日香様の弟子にしていただくこと。

 これまでの師匠と妹弟子という関係を壊し、自分が明日香様の弟子になること。

 そうすれば、ずっと二人でいられる。

 彼女から虐めてもらえる。

 英雄が思い悩み、決断したことは、明日香様の弟子になるということだった。

「いいんですか、師匠?」

 うれしさを隠し切れていない声で明日香が言う。

「明日香の弟子になったら、師匠は明日香の命令に絶対服従ですよ?」

「はいいいいいッ! 服従しますうう。させてくださいいいいッ!」

「明日香の弟子になったら、師匠には柔道をやめて、大学にも行かないで、明日香のそばにずっといさせますよ。それでもいいんですか?」

「いいですううううッ! それでいいですからああッ!」

「……師匠」

「俺を明日香様の弟子にしてくださいいいいいッ!」

 絶叫する英雄。

 それを見つめて感極まったようにうれし涙を浮かべた少女。ひとしきり男の懇願を堪能すると、少女がキリっとした表情を浮かべた。

「よろしい。じゃあ、おまえを明日香の弟子にしてあげます」

 明日香が英雄を放り投げた。

 仰向けに倒れた英雄。

 そんな顔面めがけて、明日香の足裏が炸裂し、踏み潰した。ぐりぐりと体重をかけて、英雄の顔面を潰していく。

「英雄」

 明日香の冷たい言葉。

 師匠と妹弟子ではなく、弟子と師匠の関係になった二人が、新たな関係性を築いていく。

「これから、道場では敬語で喋りかけること。いい?」

 命令に英雄がコクンコクンと首を縦に振った。

「師匠の命令には絶対服従。口答えは許さない。わかった?」

 歓喜しかない。

 英雄が何度も何度も首を縦に振る。

「よし、じゃあ、最初の弟子の仕事よ。まず、明日香の足を綺麗にしてもらおうかな」

 ふふっと。

 笑って、

 明日香が命じた。

「舐めろ」

「はひいいいいいいッ!」

 ぺろぺろと舐め始める。

 明日香に顔面を踏み潰されたまま、英雄が必死にその足裏へと舌を這わせた。

 最初に締め落とされた時には、どんなことをされても舐めなかった男が、今では率先して師匠の足裏を舐め清めていく。弟子の身分に堕とされた英雄が、師匠となった少女の足裏をぺろぺろと舐めていった。

「ふふっ」

 そんな弟子の姿を見て、明日香は満足そうに笑うのだった。

 恋い焦がれた男をこれ以上なく落として

、分からせて見せた少女は、ご満悦の様子で、ひたすらに足を舐めさせていく。

「まだまだ下手くそだから、たあっぷり躾てあげる」

 うれしそうに。

 幸せそうに。

 明日香が続ける。

「師匠の性欲処理も弟子の仕事だからね。ふふっ、おまえも居残り練習盗み見ていたんだから、意味は分かるわよね?」

 ぐりぐりぐりっ。

 力強く踏み潰す。

 それでも舌の力はやまない。必死のご奉仕が続いていく。

「これからよろしくね、英雄」

 呼び捨てにされ、タメ口をきかれる。

 これから英雄は明日香に対して敬語で話しかけなければならないのだ。

 柔道の道も、格闘家としての未来さえ捨てて選んだ道。明日香様の弟子として生きる。それは、彼女とずっと一緒にいるために選んだ道だった。

「明日香様あああッ! 好きでしゅうううううううッ!」

 踏み潰されたまま英雄が言う。

 ボコボコにされ、屈服して、分からされてしまった男。

 弟子は恍惚とした表情で、師匠の足裏を永遠と舐めていった。



 完



* これにて本編は終了です。

* この続きのエピローグ1とエピローグ2が有料版で読めます。

* 明日香一人称(前日談)も有料版で読めますので、よろしくお願いします。



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