抵抗なんてできるはずがなかった。

 千鶴はてきぱきと手際よく町田の体を操って、技を完成させてしまう。

 その動きは工場のライン工のように事務的でありながらも実用的なもので、千鶴がこの技を繰り出すことが初めてではないことを如実に語っていた。

 三角締め。

 千鶴は仰向けに寝ころび、その太ももの中に町田の頭部を拘束して、右足のふくらはぎで町田の後頭部をギュっと抱え込んで締め上げた。

 町田は片腕を千鶴に抱き抱え込まれて、前かがみの格好になり、千鶴の太ももの中で悶絶するだけ。身動きをとろうにも、がっちりと締め付けてくる太ももの感触からは絶望しか伝わってこなかった。


「三角締め、久しぶりだな~。昔はよく、クラスの男子とかにかけて、虐めてたんだけどね」

「きゅう、、っかああ・・・・」

「息できないでしょ。まだ絞めてないんだけどね。だいぶ深く極めてるから、絞めなくても息できないんだよね。このままゆっくり気絶させるのもいいんだけど」


 ふふっと笑う千鶴だった。

 千鶴の言葉どおり、町田の頭部は完全に千鶴の太ももの奥底で拘束されていた。千鶴の強靱な太ももにあっても尚凶悪な太ももの内側の筋肉が、町田の頸動脈にギチギチと食い込み、締め付けている。


(ぐ、ぐるじいいいい!)


 町田は早くも顔を真っ赤にして、涙を流し始めた。

 苦しくて苦しくて仕方なかった。

 彼はなんとか許しを乞うために命乞いの言葉を吐こうとするのだが、それすらも太ももと喉にあたる千鶴の尾てい骨によって封殺され、一言も発することができなかった。

 すがるように視線をあげて千鶴の顔をみようとする。

 なんとか千鶴の顔を視界に納めると、そこには滑稽なこちらの反応をトロンとした瞳で観察している少女がいた。


「ふふっ、久しぶりだけど、ちゃんと極まってるみたいだね。よかったよかった」

「かひゅー・・・・ひゅうー」

「それじゃあ、連続気絶いってみようか。思い出すなー。昔、いつもエロい目で見てきた担任教師にこれやって、ぼこぼこにしたこと。何度も絞めて気絶させてたら、大の大人が泣きわめいて命乞いしてきて、傑作といったらなかったね」


 弘樹くんもそうしてあげる。

 そう言った千鶴が太ももに力をこめた。

 最初はほんの少し。太ももの内側の筋肉に少しだけ力をこめる程度。

 それだけで町田の体はビクンと痙攣し、それが間断なく続いた。拘束されていないほうの手で千鶴の太ももをつかみ、そこから脱出しようと企てる。

 全くの無駄。ビクともしない。千鶴の発達した下半身は微動だにせず、自分の無力感を募らせるだけに終わった。

 抵抗が無駄であることの絶望を感じた町田は、何度も何度も千鶴の太ももを叩いてギブアップのタップを繰り返し始めた。

 町田に許されたのはそれだけだった。ギブアップという声を出すことは千鶴の尾骨の圧迫によって許されていない。もう片方の腕は千鶴に抱え込まれて自分の首を絞めることに協力してしまっている。彼にただ許されているのは、残った片方の腕で、必死に千鶴の太ももをタップすることだけだった。

 町田の小さな手が、発達したムチムチの強大な千鶴の太ももをタップし続ける。ぺしぺしと叩かれるタップの音はどこまでも滑稽だった。


「アハハッ、必死だね~。ほら、もっと一生懸命にやらなきゃ、ギブアップしてるって気づいてもらえないよー」


 千鶴が言って、さらに下半身に力をこめてやった。

 そのまま千鶴は、手加減をして気絶することを許さず、ギブアップのタップが自分の太ももを打つ感触と、そんな滑稽に命乞いをする男の姿を堪能していく。


「う、ひゅうーーー・・・カヒューーー」


 町田の動きが止まっていく。

 町田のタップを繰り返していた手も動きが弱くなり、ぺちぺちと弱々しく千鶴の太ももを叩くだけになっていく。

 次第にぺちぺちという音すらしなくなって、町田の手が千鶴の太ももに弱々しく触れるだけになった。


「あ、タップしないんだったら本気だすね」


 無慈悲な女王が宣言し、太ももに力をこめた。

 柔らかそうな女の子の太ももの下から強靱な筋肉が浮き上がり、屈強な下半身が膨張する。

 その体面積を格段に増した千鶴の太ももの中には町田の頭部が拘束されているのだが、もはや千鶴の太ももに埋まってしまっている格好でその姿は後頭部がかろうじて見えるだけになってしまっていた。

 本気の三角締め。

 電気ショックをくらったみたいに町田の体がビクンビクンと連続で痙攣し、足がバタバタと脊髄の異常反射による滑稽なダンスを踊り、唐突に止んだ。


「はい、1回目」


 千鶴が無慈悲に言った。

 千鶴の太ももの中、そこには、盛大なイビキをかいて気絶する町田の姿があった。


「それで、すぐに起こす」


 ぎゅうううッッ!!


 再び千鶴の太ももが躍動し、その締め付けによって町田の頭蓋骨を軋ませ、町田を地獄の中へと生還させた。

 ふはっと息を吐き、何がなんだか分かっていない様子の町田。千鶴の太ももの中に頭部と片腕を拘束されている状況でキョロキョロと視線だけを動かし、千鶴と目があうと、これからどんなことをされてしまうのかを悟って、絶望で顔が歪んだ。


「さっきのタップ、よかったね」


 千鶴が言った。


「なんだか情けなくて、わたしも興奮したよ。そうだ、弘樹くんが意識がある状態で私の太ももを10回タップできたら、三角締めやめてあげるよ。そういうルールにしよう」


 簡単でしょ?

 そう言って千鶴が町田に微笑みかけた。その笑顔は町田にとって悪魔が笑っているとしか思えなかった。自分がどうなってしまうのか、千鶴の提示したルールのゲームを実行すればどうなってしまうのかなんて、始める前から分かった。


「それじゃあ、開始♪」


 明るく言って、千鶴が太ももに力をこめる。

 再び膨張した肉の塊が自分の頭部を軋ませる感触に、町田は条件反射のように千鶴の太ももをタップした。

 ぺちぺちと、町田の矮小な手が、屈強な千鶴の太ももを叩き、許しを乞い始める。

 痛みと息苦しさから解放されようと、千鶴が提示した10回という回数を目指して、高速で連続的にタップを繰り返す。

 あと3回。

 あと2回。

 そこで千鶴の楽しそうな声が聞こえた。


「アハッ、必死」


 ぎゅうううううッッ!!


「む、カッッギャはーーーッ!」


 千鶴が町田をさらに締め上げた。

 太ももの奥の深い深い場所で、町田の頸動脈にあたっている筋肉を意図的に膨張させて締め上げる。

 わずか1秒。

 あと一回、千鶴の太ももをタップすれば解放されるというその瞬間を見計らったかのように、千鶴は町田を絞め墜としてしまった。

 町田の体から力が抜け、千鶴の太ももの中でぐにゃぐにゃに溶けてしまったかのように脱力し、盛大なイビキをかき始める。

 町田のタップしていた手だけが千鶴の太ももめざして前に投げ出される格好になっていた。その情けなさが千鶴にとってツボのようで、同級生の男子を情け容赦なく気絶させた彼女は、町田の滑稽な姿を見て爆笑し始めた。


「あー、おかしい。笑いすぎて涙まででてきちゃった。はやく次やろうっと」


 千鶴が再び太ももに力をこめる。

 肉と骨が潰れる音がして、あっという間に町田が覚醒した。


「残念だったね、町田くん。あと少しで10回タップできたのにね。おしかったよ」


 千鶴が演技がかった声で町田をねぎらう。

 その言葉が嘘であることを町田は理解していた。


「それじゃあ、続きをしようね。がんばってね」


 他人事のように言って、千鶴が太ももに力をこめた。

 さきほどと同じことが続いた。

 彼女の強靱な脚が貪欲に町田の頭部を喰らいつくし、締め上げて呼吸を奪う。無駄と分かっていても一縷の希望をもって、町田が千鶴の太ももを叩き始める。

 ぺちぺちという音が滑稽に鳴り始めると千鶴は心底嬉しそうに破顔して、さらに太ももに力をこめた。

 あっという間に町田は絞め墜とされてしまい、今度はすぐさま覚醒させられた。

 これが何度も続いていく。

 三角締めで絞められ、

 三角締めで覚醒させられる。

 寝ても覚めても千鶴の太ももの中。

 肉で出来た監獄兼処刑台の中で、気絶と覚醒を繰り返す。

 両頬に伝わってくる千鶴の太ももの暖かさと柔らかさと、筋肉の恐怖。

 許してくださいと命乞いをしたいのだが、それは千鶴の尾てい骨が喉仏に突き刺さっていてできない。

 それほどまでに町田の頭部は千鶴の太ももの奥深くに捕らわれ、潰されていた。

 声すらも彼女の体に奪われ、自分に許されているのは千鶴の太ももをタップすることだけ。

 彼女の強靱な太ももに、必死の思いをかけて命乞いを繰り返す。

 許してくださいと。

 もうこの脚には逆らいませんので命だけは助けてくださいと。

 そんな思いをこめて必死にご主人様の太ももをペチペチとタップする。彼女の慈悲を求めて。必死の命乞いを繰り返す。


「あははッ、はい30回目♪ 口からブクブク泡吹いちゃったね。白目の中に黒目がちょっと残ってるのが情けなくていいよ~。どんどんいくね♪」


 そんな哀れな奴隷の願いを千鶴は無視して絞め上げ続けた。

 町田がなすすべもなく気絶し、必死にタップをしている姿を見ると、彼女の興奮もまたひとしおに高ぶるようだった。

 町田の苦しみは完全に無視して、無慈悲な女王が処刑を繰り返していった。


 *


 もはや抵抗する気持ちなんてさらさらなかった。

 今の自分では千鶴様に手も足もでない。

 自分とは違う圧倒的上位の存在。

 彼女の太ももを10回タップすることもできず、強靱な下半身に意識を刈り取られ続け、町田は心の底から千鶴に屈服していた。

 崇拝と恋慕。

 そんな二つの感情が折り重なって、町田は彼女に対する隷属と恋心の間で自分の存在がなくなってしまうような感覚を覚えていた。

 全ては千鶴一色になる。

 彼女の存在が全てで、自分という存在が消えてなくなってしまうように感じられた。

 絞め墜とされ続けているのに、町田の下半身は一物を硬く勃起させ、千鶴に対して全面降伏を続けている。


「これで分かったかな」


 千鶴が言った。

 どれだけ時間が経ったのか、それすらも町田には分からなかった。

 千鶴はいつの間にか仁王立ちで町田のことを見下ろしていた。町田は意識が朦朧としながらも、千鶴の存在にガクガクと怯えて震えながら、土下座をしていた。

 仁王立ちの美しい女性と、その足下で震えながら土下座をする男。

 嗜虐的な笑みを浮かべ男を見下ろす女性と、眉が下がり涙をぽろぽろ流しながら負け犬の表情を浮かべる男。

 その構図は、彼女と彼の関係性を如実に現していた。


「お前は私に勝てないって、分かったよね」


 千鶴がもう一度言った。

 町田は怯えながら答えるしかなかった。


「も、もう分かりました。ぼ、僕は千鶴様には勝てません。お願いします。い、命だけは助けてください」

「うんうん。素直なことはいいことだね。そうかそうか、お前は命だけは助けて欲しいんだね」

「は、はい。もう、絞め墜とすのはやめてください。これ以上は死んじゃいます。お、お願いします、千鶴様」

「どうしようっかなー。本当だったら、この後は、私のおっぱいで100回くらい窒息責めして、私のおっぱいにも勝てないってこと、骨の随まで叩き込む予定だったんだけど」


 そう言うと千鶴は、両手で自分の爆乳を挟み込んで強調した。

 その動きにあわせて、千鶴の胸がぐんにゃりと柔らかそうに変形して、大きな谷間をつくった。その大きさと柔らかさは、そのまま町田のことを責める凶器に他ならなかった。


「ゆるして・・・・・ゆるしてください・・・・」


 町田にできることはただ命乞いを続けることだけだった。

 ガクガクと震えながら、ひたすら土下座をして、同級生の女の子の慈悲を乞う。

 そんな様子をジっと見下ろしていた千鶴は、満足したのか「くす」と笑ってから言った。


「仕方ないなー。そこまで言うなら許してあげるよ」


 でも条件があるの。

 そう言って千鶴はニンマリと笑った。ネズミを前にした猫のように、その瞳が嗜虐的な色に染まっていた。

 彼女は唐突に、土下座をしている町田の後頭部に右足を乗せた。

 靴下もつけていない生足だ。

 素肌のままの足裏が、土下座をしている町田の後頭部を力強く押さえつけていた。


「舐めろ」


 千鶴が命令する。

 ビクンとする町田。舐めろという命令が何を意味しているのか、これまでの彩華たちの調教のせいですぐに分かった。


「ちゃんと舐められたら、許してあげる。分かった?」


 千鶴が言った。

 その言葉は、きちんと舐められなかった場合にどうなるのかを町田に教え込ませるのに十分すぎるほどだった。

 町田は震えながら顔をあげた。

 眼前に差し出されている生足を見つめ、ゴクンと唾を飲み込んでから、ぷるぷる震えながら千鶴の足に舌を這わせた。

 しょっぱさと、唾液と共に自分の口の中に侵入してくる床の汚れ。

 そんな不快感を感じる暇もなく、町田はぺろぺろと、同級生の女の子の足を舐めていった。


「あはっ。本当に舐めたね」


 千鶴が言った。

 仁王立ちのまま、足下で膝まづいている奴隷を見下ろしながら、トロンとした瞳を浮かべている。


「同級生の女の子の足を舐めさせられちゃった。暴力に服従して、これ以上絞め墜とされたくないからって、汚い足をぺろぺろ舐めさせられてる。ねえ、今どんな気分?」


 千鶴が笑っている。

 それが何よりも恐ろしくて、町田は命乞いをするようにして必死に足を舐めていった。


「じゅぱあッ! じゅるじゅるッ!! ンンッ! ぺろぺろぺろ」


 指と指の間に舌を這わせ、親指を口の中に含んでぐちゅぐちゅと舐める。舌を大きく出して千鶴の足裏をまんべんなく舐めていく。

 それは彩華に教え込まれた成果だった。

 彩華の調教の成果。それを披露してなんとか許してもらおうと思ったことが、町田の全ての過ちだった。


「なにそれ」


 千鶴の不機嫌な声が響いた。

 それまでの楽しそうな声が一変して、絶対零度の女王としての声色になる。

 恐る恐る町田が顔をあげると、そこにはこちらを冷たく見下ろすご主人様がいた。


「それ、誰から教わったの?」

「あ、こ、これは」

「ああ、彩ちゃんか。なるほど、すっかり調教されてたってことね」

「ち、違、僕は千鶴様に、」

「こんなに人に躾られちゃって。お前は誰の奴隷なのか分かってるの?」


 怒りに震えている千鶴。

 彼女は自分でも信じられないほどの激情が自分の体の中で渦巻くのを感じていた。

 今すぐ目の前の男のことをめちゃくちゃに犯し尽くして、発狂させてやりたい。そんな冷たい感情が表情に出ていたのか、町田は一瞬にして「ひ」と悲鳴をもらした。


「躾なおしてあげる」

「むっぎゅうううう!」


 千鶴が町田の口の中に足をつっこんだ。

 力任せに女性の足が男の口の中にねじこまれる。千鶴はそのまま足の親指と人差し指で町田の舌を捕獲し、掴みあげた。

 
「立て」

「ひいいいいい」


 千鶴が町田の舌を足指で掴んだまま、ゆっくりと足を上にあげ始めた。

 その足の動きにあわせて、町田の舌が口内から飛び出てさらに持ち上げられ、顔が上をむいて、さらに足が上に持ち上げられ、顔が動き、宙づりになって、さらに持ち上げられた。


「ひゃっひゃあだあああ!!」


 町田は千鶴の足に必死に抵抗しようとするのだが、そんな虫けらの抵抗には無頓着に、千鶴の足がどんどんと上にあがっていく。

 たまらずに町田が片膝をついた。体を支えて千鶴の足によって捕まれた舌の激痛を緩和しようとする。

 しかし、


「ほら、とっとと立てよ」

「ひゃああああッ!」


 さらに千鶴が足をあげた。

 千鶴の足指につまみあげられた舌がぐいぐいと持ち上げられてしまう。舌がとれてしまうのではないかと思うほどの苛烈な責め。

 それは彩華にもされた調教だったが、容赦のなさは千鶴のほうが上だった。

 町田はすぐに両膝で立ち、それでも千鶴の足は町田の舌を持ち上げてしまう。

 片足で立ち、中腰になる。

 両足で立って、立ち上がる。

 それでも千鶴の足は止まらない。

 彼女はまるでハイキックをするように片足を自分の顔の高さよりも上にあげてしまった。


「いっひゃあああああ! やめへえええ!」

「・・・・・・・・」


 つま先立ち。

 ぷるぷると震える足先。

 舌からは冗談ではなくブチブチと繊維がちぎれる音が響いてくる。


「はい、仕上げ」

「ッヒャアアア!!」


 ついに千鶴が限界ぎりぎりまで脚を持ち上げた。

 信じられないほどの怪力は、脚一本だけで男の体を完全に宙づりにしてしまった。男の舌を足の指で掴み上げて、片足だけで立ちながら、普通ならバランスをとるのもやっとだというのに、もう片方の足だけで男の体を持ち上げてしまう。

 町田のつま先は床を離れ、絞首刑の死刑を執行された罪人のように、じたばたと暴れる。宙づりになった足が地面を求めて滑稽に動く有り様は、まるで死に向かってダンスをするようで情けなかった。


「・・・・・・・・・・・・」


 その状態のままで、千鶴は真正面からじっと町田のことを見つめていた。

 町田は舌がとれてしまうのではないかと思うほどの激痛と、その千鶴の視線に苛まれて、どうにかなってしまいそうだった。


「これから上書きしていくけど、彩ちゃんたちに躾られたことは忘れなさい。いい?」


 千鶴が言った。

 冷たい声で、奴隷に言い聞かせるように。


「今度、彩ちゃんと優ちゃんに躾られたことを私にしたら、こんなもんじゃすまさないからね、分かった?」

「ふぁひいいい!! しゅみまへんんんッ!!」

「・・・・・・・・・・・・・」


 その状態で千鶴はしばらく冷たい視線で町田を凝視し続けた。

 その後、唐突に町田のことを投げ捨てた。いきなり放り投げられた町田は、なすすべもなく地面に仰向けになって倒れ込む。

 舌が麻痺して感覚がない。舌の存在が感じられなくて、本当にとれてしまったのかと思うのだが、指で触れるとまだ存在した。よかったと思う暇もなく、その顔を千鶴の足裏が踏みつぶした。


「なに休んでるの? はやく舐めろ」


 ぐりぐりと、女王として君臨する千鶴が町田の顔面を踏み潰しながら言った。

 彼女の足裏が鷲が獲物をわし掴みにするように町田の顔面を捕獲し、早く舐めろと強要する。

 町田はたまらずに、勢いよく千鶴の足裏を舐め始めた。


「じゅっぱあッ! ジュルジュルッ。ンンっ」


 一心不乱。

 技術も何もなく、ただ必死に同級生の女の子の足裏を舐め続ける。

 間違っても彩華に教わったことを繰り返すことなどできなかった。そうなれば今度こそ殺されてしまう。そんな危機感を覚えるほどに、今の千鶴の怒りは本物だった。

 麻痺した舌で、感覚もなかったが、町田は必死に舐め続けた。


「私が満足するまで舐め続けろ。少しでもサボったら、さっきの続きするからね。分かった?」


 ぐりぐりと顔面を踏み潰して返事を催促する千鶴。

 町田は、涙をぽろぽろ流しながら、舌の動きはそのままに、こくんこくんと頷くしかなかった。

 そこからは、滑稽な男の悲鳴と、唾液音だけが部屋の中に響くだけだった。

つづく