げほっ、ごほっ。
私は解放された安堵感から必死に息を吸っていた。
目、鼻、口に大量の砂が入り込んでいて、それをなんとかしようと努力を続ける。
涙があふれて、砂によってぼやけた視界が少しづつ回復してくる。
目に飛び込んできたのは、私を救ってくれた娘の姿だった。
「早紀先輩、どういうことですか?」
娘がさきほどの女性に質問していた。
どうやら、娘と女性は顔見知りらしかった。
娘は、少しだけ眉をあげながらも、親しげな様子で女性に話しかけている。
「どうもこうもないわよ」
女性が・・・・早紀さんが口を開いた。
「この男が反抗的だったから調教しようとしていただけ」
「反抗的? お父さんが?」
「そうよ」
娘は私に「信じられない」という視線を向けた。
しかし、優しい娘は先輩にくってかかるように、
「き、きっと何かの間違いです。お父さんがそんなこと、あるはずありません」
「でも、実際に私の命令にそむいたのよ。そこにどんな理由があれ、調教するしかない。違う?」
「それは・・・・・・」
「とにかく、あなたの顔をたてて、恥をかかせない形で調教してあげるから。あなたは黙って見ていなさい」
もっとも、と早紀さんは言った。
「父親が調教されている様子なんて見たくはないでしょうけどね。でもね、これは義務なのよ。絶対にやらなくてはいけないことなの。あなたの父親は調教されなければならない。女性に逆らったことを悔いるまで、徹底的に。それはあなたも分かっているでしょ?」
「でも・・・・・・」
「穏便にすましてあげると言っているでしょう。とりあえず、お尻叩き500回。それで様子を見て、人間椅子の時間を決めるわ。破格よね、これなら」
背筋が凍った。
本格的な調教。
近頃まったく受けてこなかった調教が、私の身にふりかかる。
娘が「先輩」というからには、この早紀という女性は学生なのだろう。
自分の娘ほどの年齢の女性に、調教される。
そんな屈辱、私には耐えられそうにない。
私は娘をあおぎ見た。
助けてほしかった。
娘に守ってほしかった。
しかし、娘の口からでてきたのは救いの言葉ではなかった。
逆に私を地獄へと落とす、冷徹な言葉だった。
「わかりました」
娘が底冷えのする声で言う。
女王。
男性よりも上位に位置する生命体の言葉。
彼女は、父親の私をちらっと見ると、その言葉を口にした。
「私がお父さんの調教をします。それで文句はないですよね?」