決起当日。
あの娘の調教から二日が経過していた。
娘はあれから、まったく日頃から変わらないように私に接した。
調教で少しやりすぎてしまったことを可愛らしい笑顔と声で詫びただけ。
それからは元の通り、父親を敬愛する天使のような娘に戻っている。
同じ人間に対して行うにはあまりにも凄惨な調教をしておきながら、娘は私のことを尊重して、敬意をもって接してくれている。
それは、調教の傷を能力で直してくれたことからもすぐに分かった。
女性の能力の中でも、特別技術のいる治癒の能力。
観測することによって、対象者の細胞の新陳代謝を加速度的にあげ、傷を治癒してしまうという人知を越えた力。
ふつう、調教の傷を能力で治したりはしない。
調教の結果は結果として、傷を背負って生きるべきであるとそう考えられている。
それなのに娘は、ケガをしたままでは生活が不便だろうからと治してくれたのだ。
娘からお尻ぺんぺんをされ、無惨にも真っ赤に腫れ上がった私の尻は、今では元通りになっている。
なんの痛みも感じない。
そこに女性の能力の恐ろしさを感じると共に、私はほっと胸をなでおろしていた。
あの傷のままでは、肝心の決起の際に支障がでていただろう。
満足な働きもできなかったに違いない。
優しい娘に感謝しつつ、そんな娘のためにも、なんとかして今日の決起を成功させなければと、強く覚悟を決めた。
「それじゃあ、お父さん、行ってくるね」
娘が元気よく言った。
朝の7時30分。
いつもの登校時間だった。
「今日は夜に委員会活動があるから、学校の寮に泊まるね。これも一緒だから」
言うと、娘は四つん這いになった男子生徒のわき腹を蹴った。
うめき声をあげた男子生徒。
彼の首には首輪がかけられており、そこからひもが延びて、娘の手に握られている。
犬の散歩のような格好。
娘と彼は、このままの格好で登校するのだ。
「ああ、分かったよ」
「うん、突然ごめんね。なんか今朝いきなり電話がかかってきちゃって、委員会活動、急にやることになったの」
「大丈夫。おまえもあんまり無理をするなよ」
「・・・・・・うん。ありがとう、お父さん」
玄関で娘は、見事なプロポーションを制服につつんで、私に愛情の眼をむけてくれていた。
短いスカートから延びる脚線美は、美しさと色気を兼ねそろえていて、私はなんとかそれを凝視しないように必死の努力が必要だった。
私は無意識のうちに、彼女の手とその長い指を見つめていた。
この可愛い娘に調教されたのだと思うと、私は胸の動悸を抑えられなかった。
「・・・・・・お父さん」
言うと、娘がじっと私の目を見てきた。
私の心の底まで見通すような視線。
女性が男に向けるたぐいの視線。
しかし、それはすぐに消えた。
娘は天真爛漫な笑顔に戻った。
「ど、どうしたんだい」
「ううん、なんでもない。お父さんも、あんまり無茶なことしちゃダメだよ? ちゃんと考えて行動してね」
どういうことだと問いつめるヒマもなく、娘は「行ってきます」という言葉と共に玄関から出ていった。
四つん這いの男子生徒を従えて、犬の散歩をするように男を扱って、娘は元気よく登校していった。
「私も準備をするか」
私はつぶやき、装備の最終点検をすることにした。
今思うと、後悔に尽きない。
娘の言葉の意味をきちんと考えていれば、私の運命は変わっていただろうか。
娘の委員会活動というのがなんなのか、もう少し関心をもっていれば・・・・・・
ヒントはどこにでも転がっていたはずなのだ。
それを私は、すべてことごとく見逃してしまっていた。
しかし、こんなことを考えても後の祭りだ。
どうしようもないことなのだ。
決起はその日の夜22時。
あと、15時間30分後に迫っていた。
そこで、私の運命は大きく変わることになる。