「許してええ、やめ、は、ひいいい!!」
男の悲鳴が部屋の中に響いた。
リビングの一角。
そこで娘は椅子に座りながら、男子生徒を調教していた。
彼女の太股には、男子生徒の頭部が挟み込まれている。
すらりと長い脚の中に、完全に拘束されてしまっている男。
まるで蜘蛛の巣に捕らえられた虫のような惨めさがそこにはあった。
「・・・・・・・・・・・」
娘は冷ややかな顔をして、男の抵抗を無視していた。
彼女は今、テーブルに頬づえをつきながら、テレビを見ている最中だった。
テレビ鑑賞を邪魔するような男子生徒の悲鳴をあがるたび、娘は強く脚に力をこめた。
結果、男の頭部が隠れてしまうほどに、逞しい太股が閉じられ、すさまじい圧力が男にかけられた。
ミシミシと骨が軋む音がリビングに響く
もはや悲鳴はあがらなかった。
静かになって、ビクビクと痙攣する男。
気絶したのだ。
男は白目になり、泡をふいて気絶していた。
それでも、娘は拘束をやめない。
ぎゅうううっと、男の顔面を太股で挟み込んだままである。
男が気絶したことなんか気にするそぶりもみせず、淡々とテレビ鑑賞を続ける娘。
少しの時間の経過後、男は気絶から目覚めることになるだろう。
しかし、そこは地獄でしかない。
女性の脚の中。
また気絶する恐怖に怯えながら、それでもあまりの激痛に悲鳴をあげざるをえない。
そんな無限地獄が彼の運命だった。
○○○
レストランの一件から2日が経過していた。
娘の能力の一端を見せつけられた後も、私と娘は普段どおりの親子関係を続けていた。
男を虫けらのように扱った娘が、自分に対しては敬意をはらい、満面の笑みを向けてくれる。
そのことに優越感を感じないといったら嘘になった。
女性に大事にされている。
そのことに優越感を感じるなど組織に対する冒涜以外の何物でもなかったが、わきたつ思いをどうすることもできなかった。
「ほら、もっと舌つかいなさい」
冷たい声が響いた。
娘は、リビングの椅子に座って、男子生徒に脚を舐めさせていた。
長い脚を組んで、つま先を男の眼前にブラブラさせる。
男は膝まづいて、娘の脚をぺろぺろと、必死に舐めていた。
哀れみを誘うような滑稽な男の姿。
眉は下がって、飼い主に懇願する捨て犬のような表情。
そんな男子生徒の姿を、娘は冷淡に見下ろしていた。
少しでも下手なところがあれば、すぐにでも暴力をふるう。
かれこれ、1時間くらい、娘はこうして男子生徒のことを調教しているのだった。
「うん、もういいわよ」
許しの言葉が出たのは、それからさらに1時間後のことだった。
娘は床に膝まづいている男を見下ろしながら、慈悲の言葉を口にした。
「今日の調教はここまで。よくがんばったわね。あとで、ご褒美をあげるわ」
「あ、はりがとうございまふ!!」
娘の脚を舐めすぎたせいで、うまくろれつがまわらない様子の男。
それでも、娘に優しい言葉をかけられて、男はうれしそうにしていた。
そんな男とは対照的に、娘は冷淡に男を見下ろすだけだった。
「それじゃあ、クッションになりなさい。私は、お父さんと話があるから」
「は、はい」
すっかり従順になった男は命令に従った。
娘がさきほどまで座っていたソファーに頭部を乗せる。
男の後頭部には、娘の尻で暖められたソファーの感触が広がっていることだろう。
あおむけの格好で、頭だけをソファーに乗せ、娘のことを見上げる男。
眉が下がりきって、怯えている情けない男。
そんな彼を娘は仁王立ちで見下ろし、冷淡な眼で観察する。
すべての準備が整ったのを見て取ると、娘は、
「ん」
どっすうううんん!!
勢いよく、男の顔面へとその巨尻を落とした。
「むふうっつううああ!!」
くぐもった声が娘の尻の下から聞こえてくる。
娘の全体重が男の顔面に集中する。
夏を間近にして、娘の服装はラフそのもの。
短いホットパンツから浮き出る艶めかしいラインが、男の顔面でぐにゃりと潰れている。
女性特有の大きなお尻。
男の顔面は完全に娘の巨尻で隠れてしまっていた。
「よいしょっと」
苦しむ男を無視して、娘がぐりぐりと尻を左右に降る。
自分の尻のおさまりがいい角度を探して、娘がぐりぐりと男の顔面を蹂躙する。
そのたびに男の体はビクンビクンと痙攣するのだが、娘はまったく意に介さなかった。
結果、男の顔面はみっちりと娘の尻に埋まってしまった。
短いホットパンツを弾ききらんばかりの大きくて柔らかそうな桃尻。
さきほどまで聞こえてきた男のうめき声はもうなかった。
うめき声すら許さない。
男の鼻と口は完全に娘の尻によってシャットアウトされ、息を吸うこともままならないだろう。
私は、知らず知らずのうちに、娘のお尻を凝視してしまっていた。
あの大きな桃尻。
男の抵抗なんてまったく相手にしないほど堂々とした出で立ち。
ふつうならば、その柔らかさによって男の性的欲望の対象にもなる部位。
それが今では男を調教する武器に変わっていた。
男の体の痙攣が止まらない。
もはや反狂乱になって、すごい勢いで暴れている。
自由な手と足がこっけないなほど暴れまくり、なんとか目の前の尻をどかそうと試みている。
しかし、ビクともしなかった。
娘はまったくの余裕で、男の顔面に座ったままだ。
顔面でソファーに釘付けになってしまった男の姿。
「ごくっ」
私は、いつしか生唾を飲んでいた。
もしも、娘の尻の下にいるのが私だったら。
顔面に乗られ、情け容赦なくクッションにされ、一片の人格もない物扱いされてしまったら・・・・・・
あの美しくも艶めかしい桃尻に捕らわれ、圧倒的なまでの圧迫に苦しめられたら・・・・
私たちの計画がバレれば、こうなる。
調教と称した拷問がいつまでも続く。
もしかしたら、娘に、
実の娘に、こうしてクッションにされてしまうことだって、
「もう、お父さんったら、聞いてるの?」
呆然自失の私を呼び起こしたのは娘の声だった。
はっとして、私は巨尻が視線をはずし、娘の顔を見上げた。
そこには、さきほどまでの冷酷な女性はおらず、頬をぷすっと膨らませて愛嬌たっぷりに怒っている娘がいた。
「え、ああ、すまないね。なんだったかな」
「もう! やっぱり聞いてなかったんだ。せっかく勇気をだして話したのに」
ふんとそっぽをむく娘。
横を向くときにブルンと揺れた巨乳に目をやるのを我慢しながら、私は詫びた。
「ご、ごめんよ。ちょっとお父さん、ぼうっとしてしまって」
「まったく、しっかりしてよね、お父さんってば」
私が謝ると、娘はすぐに機嫌をなおしてくれた。
そうなのだ。
本来の娘は、こんなにも優しくて、可愛らしい女性なのだ。
年上の男子生徒をクッション代わりにして、永遠に苦しめるなんていうのは、このいかれた世界のせいなのである。
「それで、どうしたんだい。話というのは?」
「うん。あのね、この前のお詫びがしたいんだよね」
「お詫び?」
「そう。ほら、この前のレストランのこと」
こういうことらしい。
娘は、先日のレストランの一件を自分の油断がまねいたことだと責任を感じているということだった。
父親をあんな危険な目にあわせてしまって、お母さんにあわせる顔がないと、娘は心底自分のことを責めているようだった。
「だからお詫びがしたいの。今度はちゃんとお父さんのことエスコートするからさ」
「いや、でも・・・・・」
「ね、お願い! このままじゃ、私が納得いかないんだよ。ね、いいでしょ?」
両手をあわされ、頭を下げる娘だった。
いくら父親相手とはいえ、女性が男に頭を下げるなんてめったにないことで、私は慌ててしまった。
「わ、分かったよ。いいから、頭をあげなさい」
「ほんと? やった!」
うれしそうに笑う娘。
本当に可愛らしい自慢の娘だった。
「じゃあ、今度の日曜日ね。約束だからね」
「ああ、分かったよ」
「ふふっ、楽しみにしててね」
魅力満点に笑う娘。
あまりの美しさに、私はぼうっと彼女のことを見つめてしまった。
こんなにも父親思いの娘をもって、私は幸せものだった。
ふつうならば、年頃の娘は父親を邪険にあつかい、下手をしたら調教の対象にだってしてしまうというのに、
私は、こんなにも優しい娘をもって幸せだった。本当に、本当に幸せだった。
「あ、墜ちてる」
娘がつぶやく。
いつの間にか、娘の尻の下で潰されていた男の痙攣がとまっていた。
ぐったりと体中の力がぬかれ、まったく微動だにしない。
娘は、しょうがないなーと言わんばかりに尻を浮かせた。
立ち上がった娘はさきほどまでクッションにしていた男をはるか高みから見下ろす。
「あーあ、やっぱり気絶しちゃってる」
憮然として娘が言った。
「白目むいて口からブクブク泡だしちゃって、情けないなあ。もう、この程度で気絶しちゃうなんてありえないよ」
まったくもう、と怒る娘は、いきなり気絶した男の体を肩にかついだ。
すうっと男の体を自分の肩に乗せ、片手だけで男を支える。
男の重さを感じさせないような娘の動きに、ますます彼女の身体能力の高さを知る思いだった。
「ま、今日はがんばったから、約束どおり、ご褒美はあげないとね」
そう言った娘の顔に、私は驚いてしまった。
ご褒美といった瞬間、娘の顔は「女」の顔になったのだ。
あの艶めかしい、色欲に彩られた表情に。
そして、「ご褒美」という言葉が、あの「ご褒美」のことだとすれば、それはつまり・・・・・・・
「それじゃあお父さん、約束忘れないでよ」
「あ、ああ」
「ふふ、おやすみなさい」
そう言うと、娘は気絶した男を肩にかついだまま、自分の寝室へとむかっていった。
その足取りはどこか軽く、そわそわしているような感じさえあった。
私は、彼女のホットパンツから延びる生足の美しさと、艶めかしい桃尻、そして極上のくびれを後ろから凝視してしまった。
女としての娘。
色っぽい、熟れきった体。
娘に「女」を感じてしまった私は、ごくっと唾を飲み込んでしまった。
娘がリビングから去って、一人残される。
シーンと静まり返った室内。
その静寂はどこか秘密めいた情事を思わせ、私は一人、下半身を反応させてしまっていた。
*
静寂の支配するリビングで電話がなって、我にかえった私は、ぎりぎりの5コール目で電話をとった。
予想どおり、それは組織からの指令だった。
「はい、映画のパンフレットはもうみました。ええと、はい、あ、4日後の月曜日に男性のみの特別料金ですか。場所は・・・・・あ、了解しました。あの映画館ですね。それでは、月曜日の22時に。はい、失礼します」
受話器を置く。
緊張に冷や汗がでて、頭がぼんやりする。
なにげない会話に隠された指令。
それは、いよいよ決行の日が決まったということ。
来週の火曜日。
22時。
私たちは決起する。
このいかれた世界を是正するため、男の人権を守るため、そして、いかれた制度のためにしなくてもいい調教などをやらされている娘を救済するためにも、私たちは戦わなくてはならないのだ。
「いよいよだ」
私はつぶやいた。
いよいよ、戦いがはじまる。
武器の用意も万全だ。
国会議事堂を占拠し、われわれ男性の力を世にしらしめる。
その崇高なる使命に、私は胸がたかぶった。
*
「体調を整えるために、今日は寝るか」
私も立ち上がり、自分の寝室へと向かった。
リビングを出て、廊下を歩く。
娘の部屋の前にきたとき、私はごくっとまたしても唾を飲み込んでいた。
なぜか、娘の部屋のドアは完全にはしまっていなかった。
中からは、くぐもった男の声がおぼろげに聞こえてくる。
ごくっと唾を飲み込んだ。
ご褒美という言葉。
それが意味するのが、もしもアレならば。
私が学生時代から変わらないアレのことを意味するのであれば。
ごくっ。
私は、知らず知らずのうちに、娘の部屋をのぞきこんでいた。
薄明かりの部屋の中、
そこで行われていたのは・・・・・・、