「なるへそな」
昼休み。
自分の席で巳雪さんのつくってくれた弁当を食べていると、郷田が近づいてきて言った。その隣には近藤も立っている。二人は机に広げられた弁当箱の中身を見て、「ふむふむ」とうなずいていた。
「なんだよ。気持ち悪いな」
「その弁当、あの人がつくってくれたんだろう?」
「そうだが」
「かあああッ! 美人でボンキュボンッで、おまけに料理もうまいとくらあ。前世でどれだけ徳をつめばあんな女と結婚できるんだよ」
郷田が頭をかかえて大げさに騒ぎ立てている。
つきあいきれず煮魚を口に運ぶ。甘めの味付けが疲れた胃袋の中に染み渡ってくるようだった。
「最近、疲れ切った顔してたのも、そういうことだったんだろう?」
「なにがだ」
「毎晩のように新妻とセックスしてたってことだろうよ。違うか?」
その言葉に驚きむせる。
ほら図星だと、郷田がしたり顔で続けた。
「まあ、あれだけの美人でスタイルのよさだ。毎日毎日、飽きないだろう」
「べ、別に」
「でもおまえ、最近はすこしマシな顔色になってきたな。ヤりまくり過ぎて慣れてきたのか?」
じろじろと人の顔を見つめてくる郷田から顔をそむける。けれどこいつの言うとおりだった。最近は体の調子もいい。あれだけ毎晩搾り取られて犯されているのに、すこぶる体調がよかった。
(たぶん……調教されているんだ……)
私の体が巳雪さんの都合の良いように改造されている。どれだけ射精しても大丈夫なように、これまで毎晩鍛え上げられてきたのだ。巳雪さんによって自分が育てられたのだと思うと、とてつもなく興奮した。
「まあいいや。ちょうどお中元の季節だからな。新しい住所教えろよ」
からかうのに飽きたのか郷田が本題を切り出すように言った。こいつは律儀に毎年お中元を送ってくるのだ。けれど、新しい住所というのが分からなかった。私の住所はずっと変わっていない。
「新しい住所って、なんだよ?」
「いや、結婚して引っ越したんだろう?」
「は?」
「今までの一人暮らし用のアパートなんかじゃ、二人で暮らすなんてできないもんな」
郷田の言葉に押し黙るしかない。
なにも言えなくなった私のことを郷田が信じられないものを見る目でみつめてくる。
「おい、おまえ、まさか」
「そうだよ。ずっと同じ場所だ」
郷田が絶句した。
「おいおい。そこは甲斐性みせろよ」
「……やっぱり、引っ越したほうがいいのかな」
「そうだろうぜ。もう少し広い場所に引っ越してやれよ。それくらい貯めてるだろ」
貯金はある。
というか私以上に巳雪さんは資産をもっている。思えば、彼女のように裕福な女性を、今のようなアパートで暮らさせるなんてダメなのかもしれない。急に不安になってしまった。
「パイセン、俺にも住所教えてください」
私の不安をよそこに、隣で黙って話しを聞いていた近藤が無遠慮に言った。
「パイセンの奥さんとよろしくやりたいです」
ニヤニヤ言う近藤のことを、郷田がゴツンと頭を殴って黙らせる。私はハハハと力なく笑って、不安な気持ちに苛まれていった。
*
自宅に戻り、巳雪さんに出迎えられる。
ご飯を食べて、ぼおっとテレビを見る。
その間も巳雪さんがせっせと洗いものをすましてくれていた。私が「手伝おうか」と言っても巳雪さんは聞いてくれない。彼女は楽しそうに食器を洗い、キッチンペーパーで水気をふいてから食器棚におさめていく。それが終わると晩酌の時間だった。
「どうぞ、旦那様」
にっこりと笑った巳雪さんがお皿をテーブルに乗せながら言う。
洗い物と同時に私のためにおつまみを準備してくれたのだ。コップを手渡されて、瓶ビールをそそいでくれる。
「ありがとうございます、巳雪さん」
「いいえ。とんでもありません」
巳雪さんが私の隣に座ってじいっとこちらを見つめてくる。愛情たっぷりの視線によって私の頭が麻痺してしまう。緊張しながらビールを飲み、おつまみを口に運んだ。
「おいしい」
私の言葉に巳雪さんがニッコリと笑った。
「いぶりがっこに、クリームチーズを乗せてみました」
「いぶりがっこって、秋田の漬け物でしたっけ?」
「はい。そのままでもおいしいのですが、クリームチーズをのせると味がまろやかになるんですよ」
たしかにそのとおりだった。
巳雪さんは産地のものをよく知っていた。
彼女自身はそれほど食事をとる必要もないから、これら知識のすべては私のために修得したものなのだ。そう思うと彼女の愛の深さを実感することができて、幸せな気分になった。
(なんというか、私には出来過ぎた人だ)
昼間の会社での会話を思い出してしまう。
こんなにも美人で、上品で、教養もある女性を、男性一人暮らし用アパートにとじこめてしまっていいものなのだろうか。
(どう考えてもよくない)
自分で結論を出す。
彼女はなんというか、高級タワーマンションの最上階で、一着何百万円もするドレスでも着ながら、優雅にモーツァルトだかなんだかのとにかく高尚な音楽を聞いているべき人なのだ。間違っても、こんなアパートで、私みたいなとるに足らない男におつまみをつくって、ビールを手しゃくしているべきではない。
「あ、あの、巳雪さん」
私は意を決して言った。
「引っ越しとか、どうですか?」
「え?」
「ほら、この家は手狭じゃないですか。もっとおしゃれで広くて、巳雪さんにふさわしい場所に引っ越したほうがいいと思うんですが」
よかれと思って言う。
けれど巳雪さんは途端に哀しそうな表情になった。
「あの私に至らない点がありましたか?」
「な、なんでですか?」
「私にご不満があるから、引っ越しをしようとしているんじゃ……」
絶句する。
彼女の瞳からポロリと宝石みたいな涙が落ちる。私は罪悪感で自殺しそうになった。
「そ、そんなことあるわけないじゃないですか!」
大きな声で言う。
「巳雪さんはに不満なんてあるはずありません。むしろ私なんかでは釣り合いがとれないすばらしい女性です。だから、こんなアパートで一日過ごしてもらうことが、なんだか申し訳なくて」
言っていて自分で恥ずかしくなる。
巳雪さんはじっと私の言葉を聞き終わると、こちらに身を乗り出してきた。
「私は旦那様と一緒ならばどこでもいいです」
がしっと、私の両手を握る。
「この家にだって不満はありません。旦那様といられるだけで、私はとても幸せです」
「み、巳雪さん」
「だから、釣り合いがとれないとか、そんなこと言わないでください。むしろ、旦那様みたいな魅力的な男性を、わたしなんかが独り占めすることのほうが申し訳ないです」
信じられないことを言う巳雪さんだった。
あいかわらずに自己評価が低い。おそらく彼女を手にいれることができるならば王族だろうが大統領だろうが、自分の持ち得るすべての力を行使することにためらいを覚えないだろう。それほどまでに魅力的な女性であるにもかかわらず、巳雪さんはあいもかわらずに自分のことを下に見ていた。
「巳雪さん、なにか希望はないですか?」
この人のために何かをしてあげたい。
もらうだけではなくて、私も巳雪さんに与えたい。そんな胸の奥からわきあがってくる気持ちをそのまま伝えた。
「き、希望ですか?」
「はい。巳雪さんの希望をかなえてあげたいです」
「そ、そんな……」
言いよどむ。
なにかあるはずなのだ。
彼女がたまに浮かべる哀しそうな表情を思い出す。何かを期待して、けれどもそれを諦めてしまっているような、哀しそうな表情。彼女が望むことならばできる限りかなえてあげたい。そう思うのだが、
「べ、別に希望はありません」
しどろもどろになりながら、巳雪さんが言う。
「わたしは旦那様と一緒にいられるだけで幸せです」
「巳雪さん」
「本当ですよ? だから一つ希望があるとしたら、旦那様とずっと一緒にいたいです。ずっとずっと、旦那様と二人きりで暮らしたい」
にっこりと笑う巳雪さんだった。
それ以上は何も言えなかった。彼女が私とずっと一緒にいたいと考えていることは事実だろう。そこを疑うつもりはない。けれどもやはり、彼女には何か希望がある。そう思えてならなかった。
「あ、でも」
巳雪さんが思い出したように言う。
本当の希望を言ってくれるのか。そう期待して彼女を見上げると、そこには妖艶なサキュバスしかいなかった。
「引っ越しをするなら、防音設備が整った場所がいいです」
「え?」
「壁が薄くなければ、もっともっと、旦那様のことかわいがって、アンアン喘がすことができますから」
巳雪さんが私を抱きしめる。
その大きな胸が私の顔面を押し潰す。まるで宝物でも抱きかかえるみたい。ぎゅううっと力強く抱きしめられて私の小さな体が彼女の大きな体に埋もれた。
「なんで……い、今だって十分喘がされて」
「まだまだ手加減してるんですよ」
ねっとりとした声色がささやかれる。
「近所迷惑ですむくらいに手加減してあげてるんです。ふふっ、さすがに警察を呼ばれるくらいの事件性がある叫び声をあげさせると、困ったことになりますからね」
さわさわと。
彼女の魔性の手が私の背中を撫でる。
「防音設備が整った家だったら、もっともっとできます」
「あひッ!」
「旦那様のこと一日中かわいがって、体液がぜんぶ蒸発するまで責めたてて、旦那様に豚のような悲鳴をずっとあげてもらうのも、いいかもしれませんね」
「ひいいいいッ!」
「もちろん痛いことはしません。ただただ快感を与え続けます。耐性のない男なら一発で廃人になる気持ちよさで、旦那様の身も心もレイプするんです。ずっとずっと、永遠に」
耳元で愛が囁かれる。
こうなったらもうダメだ。
私はアヒアヒ悶える猿にかわる。
「旦那様、いいですか?」
撫でられる。
さらにねっとりとした声色であからさまに誘惑される。
「夜の時間で、いいですか?」
聞いてくる。
もう答えは決まっているのに。巳雪さんはあくまでも選択肢を私に預けてくるのだ。私はすぐに絶叫した。
「犯してええええッ! もっともっとマゾにしてくださいいいいッ!」
恥も外聞もなく叫ぶ。
それだけ興奮した。
巳雪さんに誘惑されたら理性なんてすぐドロドロに溶かされてしまうのだ。残されたのは本能。調教されさらに重傷化したマゾの本能が、目の前の女性に犯されたいと強く訴えかけてきていた。
「ふふっ、よくできました」
巳雪さんが愛情たっぷりに私の頭を撫でる。
それだけでビクンと痙攣してしまった私にむかって、発情した美しい女性が、甘い声で、
「お望みどおり、もっとマゾにしてあげます」
*
ジュッパアッ! じゅるううッ!
唾液音が響きわたる。
仰向けに倒れた私の体を長い舌が這いまわっていく。
唾液まみれにさせられて私は、布団の上で悶え続けるしかない。まるで培養液の中に閉じこめられた実験体みたいに、私の体が巳雪さんの涎でびちゃびちゃになる。
「ジュパアッ……んんッ……」
彼女が前髪を耳の後ろにかきあげながら、私の乳首を口に含む。熱情たっぷりな瞳でこちらを上目遣いで見つめながら、じっくりと乳首を舐めていく。口の中に閉じこめられた私の乳首が蹂躙されていく。下品な唾液音が響くたびに私の体はメスイキとマゾイキを繰り返し、どんどんバカになっていった。
「ふふっ、とろとろになりましたね、旦那様」
私の体に馬乗りになった巳雪さんが言う。
彼女も衣服を脱いでいた。その極上の女体が私の前にさらされている。張りがあってみずみずしい肌。その肉感は圧倒的の一言だ。大きなおっぱいと細い腰と男を押し潰してしまう巨尻の威圧感だけで、哀れな獲物である私は屈服してしまう。
「マゾの顔です。自分の妻に全身を舐められて脱力してしまって、とっても情けないです」
「あひい……ひいん……」
「ふふっ、旦那様のこと、もっと情けなくしてあげますね」
にっこりと笑って巳雪さんが上体を起こす。
私は仰向けに倒れたまま、大きな巳雪さんの体を見上げるしかない。この強くて優秀な肉体がひとたび牙を剥けば、私なんてひとたまりもないだろう。そんな絶対上位存在に見下ろされて、私は「ひいん」と喘ぎながらマゾイキしてしまった。
「ふふっ、立ちあがらせちゃいますね」
巳雪さんが私の下半身を抱きかかえたまま、ゆっくりと立ちあがった。
私の太ももの下に腕をまわして、がっちりと私のお尻あたりで両手を組んでしまう。私は太ももを開脚するような形で拘束され、宙づりにされてしまった。
「身動きとれないですか?」
巳雪さんが同じ視線の高さになった私のことを見つめながら言う。
ハートマーク多めで、愛情たっぷりな巳雪さんの瞳。見つめられただけでマゾイキする。じたばたと暴れて逃げようとするのだが、まったくの無駄だった。私を下から持ち上げるようにして固められた巳雪さんの両腕によって、どんなに暴れてもビクともしない拘束が完成してしまっていた。
「ふふっ、いつもより視線が高くなりましたね」
あおるようにして巳雪さんが言う。
「おチビちゃんには、この視線、慣れないんじゃないですか?」
「あひんッ!」
「これが普段のわたしの視線ですよ」
「ひいい……ひいい……」
「おチビちゃんな旦那様とは違って、いつもこの視線の高さから見下ろしているんです。もちろん、おチビちゃんな旦那様のことも、この視線の高さから見下ろしています」
ぎゅうううっとさらに抱きしめられる。
おチビちゃんと連呼されるだけでマゾの性癖が刺激される。女性よりも低い身長。そんな情けなさを言葉と身をもってまじまじと分からされ、私の体がビクビクと痙攣してマゾイキしてしまう。
「おチビちゃんな旦那様のこと、このまま犯しますね」
壮絶に笑う。
まるで獲物を前にした肉食動物だ。彼女はじいっと私を見つめながら、勃起した肉棒を密壷で丸飲みした。
「ひいいいいいいッ!」
ジュブウッ!
ズブウウッ!
私の体の一部が巳雪さんの体内に吸収される。赤ん坊みたいに抱きかかえられ、宙づりにされて身動きがとれなくされた状態での挿入。目がチカチカしてとろけた顔をさらし、そんな情けない姿を真正面から観察されていく。
「逆駅弁です。旦那様のこと立ちながら犯してあげますね」
「あひいい……しゅごいいいい……」
「ふふっ、旦那様の体、とても軽いですね。ちっちゃくて、体重も軽くて、とってもかわいい」
あおってくる。
マゾイキが激しくなって涙がぼろぼろ落ちてしまった。
「あー、泣いてしまいましたね。女性に持ち上げられて、宙づりにされながら犯されて、涙ぽろぽろこぼしてしまいました」
「ひいいいい……ひいいい……」
「この体位は、体格差と力の差がないとできないんですよ。わたしのほうが旦那様よりも身長が高くて、力が強いからこそできるんです。普通だったら、逆、なんですけどね」
ふふっと、巳雪さんが笑う。
「普通なら男性のほうが女性よりも身長が高くて強いんですよ? この体位も本来ならば逆なんです。男性がたくましい体で女性を持ち上げて犯す。それなのに、旦那様は正反対。妻であるわたしに持ち上げられて、挿入されただけで悶絶して、涙ぽろぽろ流しながら完全敗北してしまいました」
額と額をつきあわせた至近距離から巳雪さんが言う。笑顔の女性と、負け犬の顔をさらした男の対比。私はマゾイキした。
「このまま犯しますね」
パアンッ!
パンパンッ!
「ひいいいいいいいいッ!」
腰が打ちつけられる。
私の足を開脚させて持ち上げたまま、巳雪さんが豪快に腰を振っていく。私という重量を抱きかかえているというのに、彼女の強靱な体はビクともしなかった。長くて逞しい二本の足でどっしりと立ったまま、抱きかかえた私を犯していく。
「旦那様、抱きついてください」
腰を振りながら巳雪さんが言う。
「少し激しく犯すので、ちゃんと抱きついていないと危ないですよ」
ほら、と。
巳雪さんがさらに力強く腰を動かし始めた。
「ひいいいいいいいッ!」
前後に揺さぶられる。
私の体がめちゃくちゃにされていく。
彼女が腰を打ちつけるたびに私の体がビクンと痙攣する。肉棒が丸飲みされて、彼女の体内で犯されていく。肉が肉を潰す音。女性の肉体が男性の肉体を押し潰し、征服していく音が響く。
「あひいいいいいいッ!」
ゆさぶられて、脳震盪をおこすほどの衝撃で体が揺れる。純粋な恐怖心で、私は巳雪さんにすがりついてしまった。彼女の首に両腕をまわして、力強く抱きしめる。
「ふふっ、コアラの子供みたいですね」
バジュンッ! グジャアッ!
「旦那様の今の姿、お母さんにすがりついているコアラの子供みたいですよ? 乱暴に犯されているのに、その相手にすがりついて慈悲をもとめて悶えている情けない男。本当に惨めですね」
パンッ! パンパンッ!
「ほら、わかりますか? 旦那様は今、無理矢理宙づりにされて、乱暴に犯されているのに、そんな相手にすがりついてしまっているんですよ」
「ひいいいいッ! ひいいいいいッ!」
「力の差は歴然ですね。旦那様はわたしには勝てない。こうやって力づくで犯されているのに、身動き一つとれず逃げることもできません。赤ちゃんみたいに抱きかかえられて、相手にすがりついたまま、惨めに犯されてしまっています」
あおってくる。
マゾイキしっぱなしになる。白目をむいて、巳雪さんの豪快な腰使いの前に無条件降伏してしまった。
「潰しますね」
巳雪さんがさらに責め立ててくる。
その表情には明らかな愉悦の表情がある。彼女の本能の底に眠っているサディストの一面。私を犯すたびにあらわになる獰猛な本能が牙をむいてくる。
「壁に押しつけたまま、犯します」
「ひいいいいいッ!」
「潰れろ」
ぎゅううううううッ!
家の壁。
そこに背中が押しつけられ、ぎゅうううっと抱き潰される。私の顔面は巳雪さんの大きなおっぱいの谷間でグジャグジャになる。さらに大きすぎる彼女の体が、私の小さな体を押し潰してきた。前方には巨大な極上女体。背後には家の無骨な壁。その間に挟み込まれた私はなすすべもなく潰されてしまった。
「手も万歳しましょうね」
巳雪さんの首に絡ませていた私の両手首ががしっとつかまれ、強引に上に持ち上げられる。そのまま背後の壁に打ちつけられて、もはや自由に動かせる体がなくなってしまった。
「ふふっ、磔にされてしまいましたね」
私を抱き潰しながら巳雪さんが言う。
「旦那様の小さな体、もうどこからも見えなくなってしまいましたよ? わたしの体に生き埋めにされてしまっています」
「むううううッ! むううううッ!」
「暴れても無駄です。私のほうが旦那様よりも大きくて強いんですから。マゾの旦那様を押し潰したまま犯すなんて簡単なんですよ」
ぎゅうううううッ。
さらに潰される。
抱きかかえられて宙づりにされながら壁におさえつけられている。足が地面についていない状態で犯されているのだと思うと、とてつもなく興奮した。
「ふふっ、本当にマゾの殿方は単純でいいですね」
おっぱいに生き埋めにされた状態で巳雪さんの楽しそうな声を聞く。
「こんな屈辱的な格好をさせられているのに、すごく興奮しているのが分かります。わたしの中で、旦那様の肉棒がこれ以上ないくらいに勃起して、ヒクヒクふるえているのが分かりますよ」
ぎゅうううううッ!
マゾ性癖を刺激するたびに彼女の肉体の力が増す。極上の女体と家の壁の間で、プレス機にかけられてミンチになってしまう。
「ふふっ、いきます」
バッジュンッ!
グッジャアアッ!
「むうううううううッ!」
壁に押さえつけながらの腰振り。
彼女が豪快に腰を動かすたびに、私の体が背後の壁にめりこむ。ドスンッ! ドスンッ! と壁に衝撃が伝わってすごい音がしている。建物全体が揺れているのではないかと思うほどの力強さ。私の肉棒が情け容赦なく犯され、口から獣みたいな絶叫が絞り出されてしまう。
「ほら、いいんですか旦那様? 近所迷惑ですよ」
腰振りを継続しながら巳雪さんが言う。
「旦那様の獣みたいな悲鳴と、ドスンドスンって壁が揺れている衝撃で、間違いなく隣の部屋の人にはバレてしまっています。あ~また隣のご主人が犯されてるって、そう思われているかもしれません」
バッジュンッ! バッギッ!
ドッスンッ! ドゴオッ!
「旦那様の背中ごしの壁がミシミシ言ってますね。壁一つ挟んだお隣さんにはまる聞こえです。ひょっとすると、隣人は壁に耳をあてて盗み聞きしているかもしれません。旦那様の悲鳴と壁がドスンドスン揺れている音と衝撃、ぜんぶ聞かれてしまっているかも」
言葉をかけながら巳雪さんがさらに腰を振る。
私の頭部がおっぱいによって押し潰され、胴体が彼女の大きな体全体でもって潰される。肉の監獄の中に閉じこめられた私は、そんな極上の女体と背後の壁の間でプレスされ、犯される。太ももを開脚させられ、下から持ち上げられてしまい、私に残されたのは肉棒だけだった。巳雪さんが腰を振り、肉の殴打音を響かせていく。
「ゆるひでええええッ! もうひゃめてくだひゃいいいいいいッ!」
おっぱいの拘束から顔を少しだけ出して、必死の命乞いをする。
男の頭部を挟み込んですら余裕のある爆乳に生き埋めになりながらの必死の懇願。眉を下げ、涙をぽろぽろ流しながら、一生懸命お願いする。
「ふふっ」
そんな私のことを巳雪さんが熱のこもった瞳で見下ろしていた。
おっぱいの間から生えた私の顔半分が、じいいっと観察されているのが分かる。巳雪さんの顔には明らかな愉悦があった。サディストの笑顔。それだけで私はマゾイキして、それをすべて把握されてしまい、目の前の女性から「くすり」と笑われる。
「マ~ゾ」
辛辣な声。
それが連続する。
「マ~ゾ。マ~ゾ。マ~ゾ」
「あひ……ひい……あひ」
「いじめられて興奮する負け犬。妻のわたしに身長でも勝てないチビマゾ。壁に押しつけられて赤ちゃんみたいに持ち上げられて犯され悦ぶ変態マゾ野郎」
じいいいっと巳雪さんから見下ろされながらの言葉。
その一つ一つが私の脳髄に刻まれる。私という人格を上書きしようとしているのが分かる。その試みは明らかに成功していて、彼女の言葉が発せられるたびに、脳がマゾイキして新しい扉がひらきそうになっていた。
「まだですよ。まだイくな」
グジャアッ! パジュンッ!
ドスンッッ! バギイッ!
乱暴に腰を振りながら囁く。
私は巳雪さんの体に潰されながら懇願するしかない。
「イがせでえええッ! 巳雪しゃんんッ!」
「ダメ。絶対に射精するな」
「ひいいいいいッ! お願いしますううッ!」
我慢の限界。
巳雪さんに乱暴な言葉を吐かれるたびにマゾイキがひどくなる。壁に押さえつけられ、呼吸すらできないほど押し潰されて、それだけでマゾイキがとまらない。肉棒を丸飲みしている密壷も情け容赦なく私を責め立ててくる。
「ふふっ」
そんなマゾイキしっぱなしになった私のことを巳雪さんが見下ろしている。
観察されているのだ。情けなく悶え、されるがままになっている私が観察の対象にされてしまっている。巳雪さんの顔。怜悧な刃のように美しい相貌。男をマゾに変えてしまう恐ろしい女性。そんな彼女に間近でじいいっと見下ろされればされるほどにマゾになる。いつもの優しそうな表情ではなく、強気で勝ち誇っていることが分かるサディストの顔。にんまりと笑う彼女を見て、新しい扉がひらいてしまった。
「み、巳雪様ああああああッ!」
言った。
自分の妻のことを「様」づけで呼び、それだけで頭がマゾイキした。
「イがじぇでええええッ! 巳雪様ああああッ! 射精させでくだざいいいいいいッ!」
彼女のことを様づけで呼べば呼ぶほどマゾイキが強くなる。必死に滑稽に泣き叫ぶしかない。そんな私を巳雪様がじっくり見下ろしていた。
「マゾ調教、完了です」
にんまりと彼女が笑う。
その姿はどこまでも美しかった。
「自分の妻のことを崇拝するマゾ夫の完成です。旦那様のこと、徹底的に追いこんでしまいました」
「巳雪様あああああッ! 巳雪様あああああああッ!」
「ふふっ、巳雪様って呼ぶたびに、興奮するでしょ?」
「はひいいいいッ! 興奮します巳雪様ああああッ!」
泣き叫ぶ。
その情けない様子をすべて見下ろされている。勝ち誇った瞳に観察され、私の脳がずっとイきっぱなしになる。彼女がひときわ壮絶に笑った。
「イけ」
「ひゃああああああッ!」
どっびゅびゅうううッ!
びゅっびゅううううッ!
お許しの言葉が出た瞬間、私は射精した。
すでに私の体は巳雪様のものだったのだ。彼女の言葉一つで射精させられてしまう存在。私の全存在といってもいい量の精液が、巳雪様の体内に捧げられていく。
「ん」
そのとんでもない量を巳雪様がなんなく受けきっていく。一滴たりとも逃がさないという強い決意のもと、射精している肉棒をさらに責め立ててくる。
「…………」
その壮絶な射精を受け止めながら、巳雪さんはやはり哀しそうな表情を浮かべていた。
さきほどまでの勝ち気な女性はどこかに消え、未亡人みたいな艶やかな表情だけが残る。眉を下げ、哀しそうにたたずむ女性が、私の精液を根こそぎ搾り取っていった。
(巳雪さん……やっぱり何か……)
彼女には隠された希望がある。
そんな思いをかかえながら私は意識を手放した。
*
まどろみの中。
最初にきづいたのは股間に伝わってくるマグマのような暖かさだ。
射精の衝撃で気を失っていた私は、ようやく目を覚ました。
「おめざめですか、旦那様」
巳雪さんの言葉。
そちらに視線をやると、彼女が私の肉棒を舐めながら、玉袋をマッサージしていた。その刺激の強さで私の体が自動的にビクンと痙攣した。
「申し訳ありません。少し、絞りすぎてしまったようです」
「み、巳雪さん」
「言葉責めも少しやりすぎてしまいましたね。マゾに効くように乱暴な口調にしてみましたが、ご不快ではありませんでしたか?」
玉袋を優しく愛撫しながら巳雪さんが言う。
男の急所を掴まれながら質問されて、やはり私はマゾイキした。
「ふ、不快になんて思ってないです」
「本当ですか?」
「はい……あの、すごくよかったです」
正直な言葉が口から出る。
巳雪さんの優秀な肉体と壁に押し潰されながらの射精はあまりにも刺激的だった。それを思い出しただけで、私の肉棒がビギンと勃起した。
「ふふっ、たくましい」
「あ」
勃起した肉棒をいたわるかのように、巳雪さんが優しく亀頭にキスをする。
玉袋に対する魔性の愛撫はあいかわらず。さらに勃起して、性感が高められてしまう。さきほどの射精の衝撃なんてすぐに回復してしまった。
「もし気に入っていただけたのであれば、これからもたまにやりましょうね」
「あひ……ひいん……」
「旦那様のこと冷酷に罵ってさしあげます。旦那様の精神もいじめて、マゾの性癖を刺激しながら、徹底的に射精させてあげますからね」
言葉とともに愛撫が強くなる。
彼女の長い舌がおいしいアメ玉でもしゃぶるように、私の肉棒を舐めていく。玉袋へのマッサージはあいかわらず。すぐに射精してしまいそうになるほど私の肉棒は回復してしまった。
「ふふっ、久しぶりにフェラチオしますね」
準備が整ったことを確認した巳雪さんが笑う。
大きな口をあけて、肉棒を頬ばろうとする。すぐには肉棒を口に入れない。大きな口をあけたまま、肉棒の近くでじっくりと見せつけてくる。口から長い舌だけがチロチロと蠢き出て、亀頭だけを蛇みたいに舐める。期待と不安で性感が高まる。これから巳雪さんに犯されると思うと、それだけでマゾイキしそうになった。
「ふふっ」
じゅぼおおおっ!
「あひっ!」
さんざん見せつけられたあげく勢いよく食べられた。一瞬にして私の肉棒が根本まで丸飲みされてしまった。
「しゅ、しゅごいいいいいッ!」
彼女の口の中の感触に悶絶する。
思えば久しぶりだった。
セックスをするようになってからというもの、ほとんどの射精を彼女の秘所に放ってきたのだ。巳雪さんは執拗に私のことをセックスで搾り取ってきた。2発目だろうが3発目だろうがそれは変わらなかったのに、なぜ今日はフェラチオなんだろうか。
「じゅぼおおっ! ジュブジュブッ!」
そんな思考は激しすぎるご奉仕で霧散する。
巳雪さんが笑顔のままで顔を上下に動かしていく。頬肉と頬肉。そして彼女の喉奥の感触がダイレクトに伝わってくる。彼女の長い舌が躍動しているのが分かった。
(食べられて……食べられちゃってる……)
むさぼり食われている。
マゾ性癖が刺激されマゾイキし、ビクンビクンと痙攣が始まった。
「ふふっ」
巳雪さんがトドメを刺すことにしたらしい。
彼女の長い指が私の目の前に差し出される。ピンと伸びた人差し指と中指。それを見せつけられて、私はこれから何をされるかさとってしまった。
「ひゃ、ひゃめアッギイイイイッ!」
私の制止の言葉もむなしく、巳雪さんがピンと伸ばした指を私のアナルに突き刺した。巳雪さんの指にかかれば私なんてすぐに快楽だけで殺してしまうことが可能なのだ。その長い指が私の前立腺を串刺しにしてしまった。
「ひゃああああああッ!」
どっびゅうううううッ!
びゅっびゅううううッ!
すぐさま射精する。
それにあわせて、巳雪さんがバキュームを開始してしまった。根本まで丸飲みしながら、射精を促すための強烈な吸引で、私の精巣内の精液が根こそぎ奪われてしまう。アナルの中で指がぐりぐりと動かされ、前立腺をくいっくいっとノックされていく。精液を搾り取るために最適化された動き。たちまち、私はすべての子種を奪われてしまった。
「んふっ」
妖艶に笑ってようやく肉棒を解放してくれる。
そのまま巳雪さんが、至近距離まで顔を近づけてきて、口を大きくひらき、絞り殺した大量の精液を見せつけてきた。
「ああああああッ!」
二発目とは思えないほどの大量の子種。
それは大事な私の遺伝子情報だ。
それが搾り取られて、これから捕食される。目の前の優秀な女性に食べられ、胃の中で溶かされて、栄養にされてしまうのだ。その予感によって私はマゾイキした。
「ふふっ」
脳だけでイっている私を見て、巳雪さんが笑い、ゴクンと飲み込む。
一飲み。あれだけの大量の精液が一瞬にして丸飲みされる。彼女の喉が大きく動く様子を間近で見せつけられ、「あひん」と情けない声が漏れた。
「……ん」
私の子種を飲み込んだ瞬間、彼女の肉体に活力がみなぎるのが分かった。
子種を力に変える彼女の能力によって、巳雪さんがさらなる魅力的な姿へと変貌する。張りのある艶やかな肌。生命力に満ちた大きすぎるおっぱい。見ているだけで射精しそうになる極上の女体をさらに進化させた女性が、目の前にはいる。けれど、
(なんで……そんな顔……)
寂しそうに巳雪さんが視線を落としている。
そんな喪失感に満ちた表情は一瞬で終わり、彼女はすぐに満面の笑みになった。
「ごちそうさまでした、旦那様」
艶やかな声で囁かれる。
「マッサージをすれば、まだまだいけそうですね」
「み、巳雪さん」
「今日は徹底的に、フェラチオで搾り取ってあげます。ふふっ、旦那様のことお口中毒にしてあげますね」
すぐに肉棒を丸飲みされる。
絶叫し、涙をぽろぽろ流しながら、自分の体が食べられていく様子を見せつけられる。そんな極限状態にあっても、私の脳裏に残っているのはさきほどの巳雪さんの哀しそうな表情だった。
(巳雪さん……どうしたんだろう……)
そんな疑問を一瞬だけ思い、フェラチオの感触で頭が真っ白になる。強烈なバキュームと、アナルに突き刺さった指の感触で悶絶する。何度目になるか分からない射精を搾り取られ、私の子種が食べられていった。
つづく