「これだけやれば、もう反省しましたよね」
佐織様が、俺の顔面に座りながら言った。
彼女は制服姿で、とても大人びた顔立ちをしていた。この学校に入学したばかりの中等部一年生だというのに、高等部の女子生徒よりも成熟した女性の雰囲気をもっている。
性格も、その外見と同じく大人しいものだった。それは、ほかの女の子の調教よりも過激ではないところからして、すぐに分かった。
運動部ではなく、文芸部に所属していて、放課後は読書や創作活動にいそしむ文芸少女。
その落ち着いたそぶりから、入学したばかりだというのに、佐織様にはかなりの人気がある。
そんな彼女が、俺のことを調教していた。
「結城さん。反省したのですか? それとも反省していないのですか?」
俺の頭部に顔面騎乗しながら佐織様がいう。
しかし、返事をしたくてもできないのだから仕方がない。
俺の顔面には、艶めかしくも熟れきった桃尻が、むちむちに密着している。
制服のスカートごしではあったが、その柔らかさを顔面全体で堪能することができる。
しかし、その柔らかさは今では凶器なのだ。
俺は、佐織様のお尻になぶられるだけで、プロレスのリングの上で調教されていた。
「返事がないようなので、もう少しだけ調教してあげますね。ちょっと痛いですけど、我慢ですよ?」
ていねいな言葉とともに、佐織様の調教が再開した。
ぐりぐりとお尻で俺の顔面をこすりつけたり。
餅つきのように、その桃尻で俺の顔面を殴打する。
俺はこれでも高等部一年生で、プロレスの世界ではそれなりに名の知れた選手である。
それが、中等部に入学したばかりの少女に、手も足もでずにボコボコにされてしまうのだ。
体の隅々にまでたたき込まれた格差を、俺は再度、佐織様に教え込まれていった。
・・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
「あ、結城さん。きがつきましたか?」
ぼんやり目を開けてみると、きらびやかな照明とともに、佐織様の美しい顔立ちが、俺の顔をのぞき込んでくるのが見えた。
「よかった。結城さん、気を失ってしまっていたんですよ。心配しました」
そう言うと、佐織様は俺の頭を優しく撫でてきた。
どうやら、俺は佐織様に膝枕をしていただいて介抱されているらしかった。
後頭部に、俺のことを散々なぶってきた、美しくも艶めかしい太ももの感触がある。
「さ、佐織さま。こんな・・・・膝枕だなんて・・・・」
俺は、優しく頭を撫でてくださる佐織様の寛大な処置に感動してしまって、今にも感極まってしまいそうになった。
しかし、やはり膝枕なんて恐れ多くて申し訳がない。
俺は、急いで立ち上がろうとするのだが、
「結城さん。もう少しこのまま休んでください。大丈夫ですから」
にっこりと笑顔になって、佐織様が言う。
その笑顔は本当に上品で、俺よりもよっぽど大人びていた。
「それで、結城さん。わたし、あなたに頼みごとがあるんですが、よろしいですか?」
膝枕にした俺の顔を見下ろしながら、おずおずとした態度で言った。
俺としては是非もなかった。
佐織様の頼みごとだったら、たとえそれがどんなものでも従う。
なおも言いずらそうにしていた佐織様だったが、意を決したように言った。
「実は、わたしの妹の相手をしてほしいんです」
「佐織様の妹さん、ですか?」
「そうです。大変申し訳ないんですが・・・・」
佐織様は、申し訳なさそうに言った。
「実は、わたしの妹が・・・・プロレスですか? 結城さんの勤しんでいらっしゃる格闘技に興味があるようなんです。それで、わたしが結城さんのことを話したら、是非とも練習をご一緒したいということらしくて」
「えっと、佐織様の妹ということは、その妹さんは、初等部・・・・なんですよね」
「はい、そのとおりです。初等部3年生になります」
「で、でも、それならまだ女の子の能力も何もない、ただの子供ではないんですか? そうなると、いくら女の子といっても、高等部男子の相手をするのは・・・・」
女の子の身体能力が格段に上昇するのは、初等部高学年からだ。
3年生にすぎないのならば、まだまだただの子供ということになる。
そうだとすれば、さすがに格闘技で相手をするというのは・・・・
「それが、わたしの妹は、特異体質らしんです」
「特異体質、ですか?」
「はい。簡単にいえば早熟ということになるんでしょうか。初等部3年生なのに、身長が160センチあって、身体能力のほうも、年齢離れの腕力をもっているんです」
「はあ」
「マレにそういう女の子がいるらしんです。そういう子には、特別に女と男の本当の関係を教えて、あまり初等部の時には無茶をさせないようにするみたいですね」
確かに、そういった話を聞いたこともある。
初等部のときに、自分だけ尋常ならざる力をもってしまっては、フラストレーションがたまるだろう。
だからこそ、格闘技に興味をもったということなのだろうか。
「でも、妹の力もまだまだ解放された本当の力とは比べものにならないほど弱いものです。おそらく、純粋な腕力ならば、結城さんと同じくらい・・・・いや、今の段階なら、まだ結城さんのほうが強いんじゃないでしょうか」
「そうなんですか?」
「はい。それで、どうでしょうか。わたしの妹の相手をしてくれませんか?」
あくまで強制することなく、眉を下げながら佐織様は言う。
俺としても断る理由はなかった。
俺は佐織様の頼みを喜んで受け入れた。
「そうですか。ありがとうございます」
にっこりと笑顔になって佐織様が言う。
そのまま、佐織様は俺の頭を再度撫でてくださった。
それだけで俺の頭は真っ白にとろけてしまって、上品な佐織様の美しい顔立ちを見上げることしかできなくなってしまう。
そんな幸福感に包まれながら、俺は佐織様の言葉を聞いた。
「でも、気をつけてくださいね。わたしの妹は・・・・・」
「え? なんですか?」
「・・・・言いにくいんですが、わたしの妹はかなりのSなんです」
「S、ですか」
「はい。普段はとても天真爛漫で、無邪気な可愛らしい女の子なんですが、ことが勝負ごとになると人が変わったように、相手をまかさなと気がすまなくなってしまうんです」
「・・・・・・」
「この前も、家の道場で・・・・あ、わたしの家の子供は身を守るために柔道をならうんですが、その道場で、男の師範代をこてんぱんに痛めつけ、締め落として、徹底的に負かしていましたから」
「初等部の女の子がですか?」
「はい。ですから、気をつけてくださいね。あの子もプロレスは初めてですし、結城さんのほうが力が強いので大丈夫とは思いますが・・・・・」
佐織様は申し訳なさそうに言った。
俺は、佐織様に膝枕をされ、頭を撫でていただきながらも、一抹の不安を覚えるのだった。