斉藤が連れて来られたのは女子寮。

 その中でもクラス委員などの役職者が住む区域の一角だった。

 その広さは、やはり男子寮の自分たちの部屋とは雲泥の差だった。

 こんなところに住めるなんて、やはり自分たちとは違う存在なんだと斉藤はあらためて思った。


「あれ、斉藤くん、私の部屋、来ことなかったっけ」

「いや、あれは1年生のころのことだから」

「そっか。この部屋にうつってから、ここでは調教してなかったね」


 言いながら、月村が斉藤の隣に座った。

 手にはグラスに入ったアイスコーヒーが二つあって、そのうちの一つを斉藤の前に置いてくれる。

 大きなソファー。

 ふかふかのクッションの高級感あふれるソファーに、斉藤と月村は並んで座っているのだった。


「ねえ、覚えてる? わたしたちが1年生だったころのこと」


 月村が言った。

 斉藤は忘れるわけがないと、忸怩たる思いでそう思った。


「あのころは、自分でいうのもなんだけど、相当斉藤くんには厳しくしたよね」

「そ、そうだね」

「教室では毎日脚を舐めさせてさ、ちょっとでも反抗的なら何度も蹴って、脚に挟んで締め上げて、気絶させなかった日はなかったもんね」

「・・・・・・・・」

「夜もわたしの部屋で徹底的に調教して、斉藤くんが泣き叫んで命乞いしても念入りにしたっけ。覚えてる? あんまりにも斉藤くんの悲鳴がうるさくて、隣の子から苦情がきたの」

「あ、ああ」

「ふふっ、でも、あのころは斉藤くんが男子の中では一番頭がよくて、一番運動神経がよかったからね、君もちょっと増長してたし、仕方なかったんだよ」


 こともなげに言う月村だった。

 まるで、楽しかった遠足の話をするかのように、斉藤のことを虐めていた日々のことを放す彼女。

 月村にとっては、あの地獄のような日々が、そんな気軽なような毎日として認識されているのだろう。

 同級生の女の子に、ひたすら調教される毎日。

 その日々の苦しさを、この少女はまったく認識していないのだろう。

 斉藤は、恐ろしいものを見る目で、月村のことを見つめていた。


「ふふっ、それじゃあ、さっそくしようかな」


 ひとしきり昔話をしてから月村が言った。

 キョトンとする斉藤に対して、彼女は無慈悲に言い放った。


「卒業試験までに、斉藤くんのこと、立派な奴隷にしてあげるよ」


 月村は笑顔だった。

 いつもの天真爛漫とした笑顔を斉藤に向けて、彼女は続けた。


「じゃあ、まずは忠誠のポーズしてもらおうかな」


 *

 
 月村がなんのきなしに言うのを斉藤は聞いた。

 鼓膜が現実を拒否している中で、斉藤は月村が自身の右足を前に突き出すのを見た。


「まずは基本だよ。忠誠のポーズ、1年生のころにたっぷり仕込んだから、覚えてるよね」


 右足をぶらぶらとさせながら月村が言う。

 スカートから伸びた彼女の生足。

 その白い陶器のような肌と、それとは対照的な鍛え上げられた筋肉。それらが、女の子の柔らかな皮下脂肪に隠され、なんともいえない魅力を放っていた。

 長い、長い脚。

 自分のものとは比べものにならないほど長く、そして美しい脚が、斉藤の眼下に突き出され、自己主張をしていた。


「ほら、はやく」


 月村がせかす。

 斉藤は言葉につまって、身動きをとれないでいた。

 忠誠のポーズ。

 彼女の足下で膝まづき、その足の甲に心をこめてキスをする。

 彼女たちに間違っても反抗しないように。

 男としてのプライドを捨てさって、同級生の年下の女の子に服従する儀式。

 それをしろと、月村は命じてきている。


「う、あ」


 言葉にならず、屈辱と恥辱に、身を焼かれそうになる。

 のどが乾いて、ゴクンと唾を飲み込んだ。

 そんなことはしたくない。

 そう心の底から思う。

 しかし、


「失礼します」


 体に覚えこまされた調教の成果だった。

 斉藤はぎくしゃくしながらも月村の足下に膝まづいた。

 そして、突き出された彼女の右足に手をあてがう。

 ぷるぷると震える斉藤の手。

 顔面を蒼白にさせながらも、彼は彼女の足に、そっとキスをした。


「・・・・・・・・・」


 その男の様子を月村は淡々と見下ろしていた。

 ソファーに座って、自分の足下で服従のポーズをとる男を冷たく観察していく。

 無言の時間が流れる。

 その間、斉藤は月村の足に口づけをしたまま動くことは許されない。

 月村の許しがなければ、この行為をやめることはできないのだった。そのようにしつけられている。


「ダメ」


 月村が冷たく言い放った。

 ビクンとした斉藤の体。

 彼女は口づけされていた右足を大きく振り上げた。

 そのまま、絶望の表情を浮かべて月村のことを仰ぎ見る斉藤の顔を、右足で踏みつぶした。


 ベッギイイイイ!!


 斉藤の顔面に月村の右足の裏がめりこみ、そのまま斉藤を地面へと叩き潰した。

 地面に縫い合わせるかのように、彼女の足が斉藤の頭を踏みしめる。

 グリグリと右足を動かし、斉藤の頭が地面に埋もれてしまうかのような力でもって、踏みつぶしていった。


「心がこもってないよね。自分でも分かってるよね、斉藤くん」

「アアアアッ! ゆるしてえええ」

「おざなりに忠誠を誓っているなんて、すぐに分かるんだからね。そんなことすればどうなるか、その体にたっぷり教えてあげたつもりだったけど、まだ足りてなかったみたいだね」


 もう一度教えてあげるよ。

 そういうと月村は、右足を再び振り上げた。

 ぐいっと胸の高さまで右膝を降り立たんだまま直立する。

 その暴力の前の静けさに対して、斉藤はなすすべをもたなかった。


「・・・・・・・・・」


 ベッギイイイイ!!


「ひいいいいい」


 月村が無言で斉藤を踏みつぶす。

 連続して、地面に倒れ込んだ斉藤に対して、何度も何度も、足を振り下ろし、その足裏で斉藤のことを踏みつぶした。

 部屋の中には打撃音と斉藤の悲鳴がこだましていった。


「やみぇ・・・・ぎいいい・・・いたい、いたいいいいい!! ゆるしてええ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「ひゃだあああ!! もう踏まないでくださいいい!! イイイイヤアアア!!」

「・・・・・・・・・・」


 斉藤の懇願にも冷淡に、月村が踏みつぶし続ける。

 彼女の様子に、昼間の天真爛漫さはなかった。

 明るい笑顔が特徴的な少女はおらず、いるのは男を調教してその反抗心を刈り取るだけの死に神。

 月村は淡々と事務的に、地面に横たわった斉藤を踏みつぶし続けた。

 まるで、地面にはいまわるゴキブリを退治するかのように、その行動は熾烈だった。


「なにか言うことはあるかな、斉藤くん」


 踏み潰しの絨毯爆撃がようやく終わった。

 月村は手に腰をやって仁王立ちのまま、地面に倒れて泣き崩れている斉藤を見下ろしている。

 ぐすぐすと泣き、怯えきっている男。

 地べたに倒され、踏みつぶされて、ひいひいと悲鳴をもらしている男。

 その圧倒的な強者と弱者の図は、彼女と彼の関係を如実に現していた。


「ねえ、聞いてるんだけど」


 ドスウウン!!


 月村が地面を強く踏んだ。

 威嚇をこめた一撃。

 少しでも答えが遅ければまた踏みつぶすぞという意思表示。

 斉藤はそれだけで恐慌状態へと陥り、滑稽に起きあがると、月村の足下で土下座をした。


「申し訳ありませんでした、陽子様!」


 月村のことを名字ではなく名前で呼んだ。

 様づけをするときの決まり事。

 ガクガクと震えながら、年下の同級生の足下で、滑稽に土下座をする男。


「うん、覚えてたね、えらいえらい」


 一転して笑顔になる陽子だった。

 彼女は土下座をしたままの斉藤をそのままにして、ソファーに腰かけた。

 そのまま、じっと土下座した斉藤を見下ろす。

 ソファーに腰かけた陽子は、その見事な脚を優雅に組んだ。

 スカートから延びる艶めかしい脚線美がさらに強調される。

 鍛え上げられた柔らかそうな筋肉の筋が、組んだ太ももから浮き出てきて、それが陽子の力強さと魅力を増して見せていた。


「それじゃ、次」


 陽子は座ったまま、組んだ脚を前にくいっと差し出した。

 彼女は無慈悲に言った。


「お掃除、してもらおうかな」


 *


 お掃除という言葉に、1年ぶりに戦慄する斉藤だった。

 その言葉の意味はイヤというほど分かっていた。

 彼女の生足を舐めて綺麗にすること。

 女の子の脚を。

 同級生の脚をペロペロと舐めあげること。

 その調教は、斉藤にとってもっとも屈辱的なものだった。1年前、男子サッカー部のまとめ役だったころから、陽子は斉藤に対して何度も掃除を命じた。

 そのときの屈辱が体の底から沸き上がってくるかのようだった。

 斉藤は、一瞬、躊躇してしまった。


「ふう」


 ため息をついた陽子。

 彼女は面倒くさそうに、<能力>を行使した。

 斉藤の体が宙に浮かぶ。


「う、わ、わわわ」


 四肢をじたばたさせて滑稽に暴れる斉藤。

 それを冷ややかに見据えた陽子は、そのまま斉藤の体を自分のほうへと招きよせた。

 宙に浮かんだ斉藤の体が陽子のほうへと・・・・・彼女の脚に近づく。


「や、やめ」


 なにをされるか予想ができた斉藤が言う間もなかった。

 陽子はガバっと両脚を開脚させて開くと、獲物である斉藤の胴体を捕食してしまった。


「ンンンあああああッッ!!」


 ギチギチギチギチッ!!


 陽子の太ももと太ももの間に挟み込まれ、潰された斉藤が断末魔の悲鳴をあげる。

 陽子の魅力的な太もも。

 筋肉の筋が浮き上がったその艶めかしい脚が、斉藤の胴体に食い込み、潰していく。

 その柔らかそうな皮下脂肪の下に隠されていた凶悪な筋肉。

 陽子の脚は筋肉で膨張して大きくなり、その太さは斉藤の胴体を軽く上回っていた。

 そんな暴力的な太ももに、胴体を挟み潰されてしまっているのだ。

 斉藤の苦しみは想像を絶した。


「やみゃあああ!! だめだめだめ!」


 半狂乱になって陽子の太ももの間で暴れ回る斉藤。

 その表情は激痛で歪んでいた。

 そんな暴れ回る斉藤に対して、陽子は何でもないように、


「まだ喋れるんだ。ちょっと手加減しすぎたかな」


 ボッゴオオオオ!!


「あkfじゃっかあああ!!!!!」


 さらに脚に力をこめ、斉藤の悲鳴すら封殺する陽子。

 内蔵が出る。

 陽子の太ももに挟み込まれた胴体の中で、行き場を失った内蔵が口から出てしまう。

 現実に吐き気を催し、なにかが口から飛び出ていく予感を感じる斉藤。

 彼は必死に負け犬の視線を陽子にやり、心の底から屈服していることを示すように、くううんくうんと鳴き始める。


(ゆるしてくださいいい!! 陽子さまあああ! ゆるしてえええ!!)


 同級生に潰されながら、心の中で必死の命乞いをする。

 息を吐くことも吸うこともできない。

 それほどまでに陽子の脚の圧迫は苛烈だった。

 だからこそ、命乞いは声にならず、ぱくぱくと口を動かすだけ。

 少しでも哀れみを感じてもらうような情けない顔をして、陽子の慈悲にすがろうとする。

 しかし、


「もうちょっとだけ、力こめるね」


 やめて。

 その言葉は声にならず、さらに膨張した陽子の太ももが斉藤の胴体を食い潰していく。

 その暖かく柔らかな筋力に覆われた陽子の脚。

 あまりの苦しさに、無駄と分かっていながら斉藤は両手を陽子の脚にあてがって、なんとかその拘束から逃れようとする。

 しかし、無駄だ。

 陽子の太ももはびくともしない。さらに力がこもっていく絶望を前に、斉藤はビクンビクンと暴れながら、なんとかその拘束をとこうと必死だ。

 そんな男の様子を、陽子は「くす」と笑って眺めている。

 まるで、滑稽な動きをするかのような虫けらでも見るような陽子。

 虫けらの反応で楽しむために、一瞬だけ全力で潰し、すぐさま緩めてすぐに全力で潰す。

 脚の締め付けだけで男をコントロールしていく。

 パンパンと肉を殴打する音が響く。

 それはまるで、セックスのときの音のようだった。

 しかし、実際は、女が男の胴体を太ももで潰す音なのだ。

 何度も何度も、潰して緩めて潰して緩めてという動作を繰り返す。

 そのたびに斉藤が悲鳴と絶句を繰り返していて、陽子は「ふふっ」とさらに笑った。

 男の命を太ももで挟んで潰し、その命運をコントロールする。

 斉藤の滑稽な様子に、陽子は楽しそうに笑っていた。


「斉藤くん、なに言おうとしてるの?」


 くすくす笑いながら言う陽子。

 彼女は潰して緩めてを繰り返し、緩めたところで斉藤に命乞いさせ、それでも最後まで言わせずにまたしても潰して絶句させる。

 その繰り返しの中で、斉藤の様子に純粋無垢に笑っていた。


「やみぇッギッギ・・・・・・・・ゆるッギャあ・・・・・・ゆるッgッッy!・・・・やあ・・・・・・」

「なに? なに言おうとしてるの? ちゃんと言ってくれないと分からないよ」

「やあッギャアア・・・・・・・やみぇヒイイ!!・・・・だめッギ!!・・・・・お願いッッガア!!・・・・ひゃだグゲエ!!・・・・・」

「アハハ! 虫みたい!」


 熱に浮かされたような陽子。

 彼女はまじまじと斉藤を見ると、仕上げにかかった。


「5割。耐えられるかな?」


 ベッギッッギイイイ!!


「ぐああげえこかかlkgっっかあ!!」


 さきほどまでとは比べものにならないほどの力。

 斉藤の口からは舌が飛び出て、黒目がグルリと裏が選って白目になる。

 すぐにブクブクと口から泡をふき、ビクビクと痙攣を始めた。

 さらには鼻から鼻血が出て、胴体を締め付けられているだけなのに白目が赤く充血していった。


「ん、ダメか」


 言うと、すぐに力を弱める陽子。

 彼女の太ももの間でかろうじて意識を保っている斉藤は、陽子の脚に挟みこまれながら、ブランと体中から力を失った。


「もう、5割程度耐えられないなんて、なさけないなー」

「ゆるして・・・・お願い・・・・陽子様・・・・・ゆるして・・・・・」

「しかたないなー」


 おどけたように言った陽子。

 彼女はそのまま太ももから力をぬいた。

 どさっと地面に墜ちる斉藤。

 彼は地面に横たわって、そのままビクビクと痙攣していく。


「斉藤くん」


 そんな虫けらのような男に対して、陽子は、最初と同じように片足を差しだした。

 靴下を脱いだ彼女の生足。

 その足裏と美しい足の指がぬめぬめと斉藤の眼前にさらされる。

 そして、陽子は、虫けらを笑顔で見下ろし、言った。


「ーーーー舐めろ」

「う、ああああああああ!!」


 斉藤はすぐに陽子の足下に膝まづき、しゃぶりついた。

 足の指を口いっぱいに頬ばって、一心不乱に舐め始める。

 同級生の女の子の足を。

 年下の女の子の足を。

 命令され、強制的に、舐めさせられていく。


「あはは、すごい勢いだね」


 その男の痴態を陽子は当然のように受け取った。

 じゅぱじゅぱと音をたて、醜く足を舐めていく男。

 それをソファーに座ったまま見下ろし、くすくすと陽子は笑った。


「ほら、左足」

「ふぁいいいいいい!!」


 もう片方を舐めろと命じる。

 斉藤はすぐさま舐めしゃぶった。

 陽子の足を、見ていて薄ら寒くなるほどの情けなさで、ぺろぺろと舐めていく斉藤。

 それだけ、斉藤は心を折られてしまったのだった。


「もう、最初からそうしなよ」


 陽子が言った。


「ねえ、斉藤君の胴体、すごいことになってるよ。私の脚の痕で、どす黒く変わっちゃってる」


 舐めさせている脚ではないほうの脚で、ぐいぐいと、斉藤の胴体をつっつきながら陽子が言った。


「まあ、これはこれで、わたしの奴隷だってことが分かっていいかな。この痕が薄くなってきたら、また同じことしてあげるね。一生消えないくらい、すごいのしてあげる」


 うれしいでしょ。

 そう言う陽子に斉藤は涙を流しながらコクンとうなずいた。

 ソファーに座ったままの陽子と、地面に膝まづいて彼女の脚を永遠に舐めていいく男。

 唾液音が永遠と部屋に響いていった。


(続く)