「私、脚には自信あるんだよね」


 月村が言った。

 ミニスカートから伸びる健康的な生足を強調して、彼女が自慢するように続けた。


「サッカー部でも鍛えてきたしさ。脚技だったら誰にも負けないつもりなんだ。でも、どれだけ自分が強いのか、いまいち本気だせないから分からないんだよね」


 彼女は足下の男子生徒たちを見下ろして言った。


「だから、どれだけわたしが強くなってるのか、みんなで試させてね。この脚で、みんなのこと可愛がってあげるからさ」


 満面の笑みだった。

 助けてください。

 許して。

 お願いします。

 口々に命乞いをする男子生徒を無視して、月村が死刑宣告をする。


「それじゃあ、まずはゴールキーパーの栗山くんだね。ちょっと壁際に立ってくれる?」


 男子の中でもひときわ巨漢の男を名指しする月村。

 男子サッカー部の正ゴールキーパーとして、数々の危機を救ってきた栗山は、しかし、月村の言葉に怯え狂い、首を左右に振り続けるだけだった。


「もう、はやくしなよ」


 月村が「仕方ないなー」と言わんばかりの軽さで、栗山の手をとると、強引に立たせた。

 そのまま、命乞いを続ける栗山を教室の端の壁に立たせる。

 怯え、ブルブルふるえている栗山にむかって、月村が言った。


「ほら、百裂脚ってあるでしょ?」


 談笑するかのように、月村が続ける。


「ストリートファイターのあの技。子供のころ、やったことあってさ。あれに憧れてたんだよねー。だから、ちょっとそれやってみるね」


 栗山の前で、ぐいぐいと屈伸運動を始める月村。彼女のミニスカートから伸びた生足が、そのたびに逞しい筋肉を浮かび上がらせていた。


「もちろん、栗山くんは避けてもいいし、キーパー技術で止めてもらってもいいよー。そうだなー、一回でも私のキックに反応できたら、きみのこと合格にしてあげるよ」


 簡単でしょ。

 にんまりと笑って言う月村だった。

 彼女が本当はどう思っているかなど、その場にいる誰でも分かった。

 助けてください。

 栗山が必死に命乞いを続けているが、月村はそれを笑顔で無視した。

 左足だけで力強く立つ月村。

 彼女は右足を栗山に狙いを定めて、言った。


「はい、開始」


 ズダダダダダッッ!!

 ダダダダダダッッ!!

 ボコッ! ベギッ! ボゴゴゴゴッ!!

 すさまじい破壊の嵐だった。

 月村の鍛え上げられた右足が、容赦なく、栗山の体を破壊していく。

 その右足はまったく見えなかった。

 残像のような彼女の美しい脚線美が見えるだけ。

 まるで本当にあのゲームのように、何本もの美しくも逞しい脚が、男の体に襲いかかっている。


「ガガ!! ぎゃあ!! ぐあkjか!! じあじあ!!」


 男が滑稽なダンスを踊っている。

 右足に突かれるように蹴られるたびに、栗山の体はビクンビクンと痙攣して踊った。

 まるでマシンガンの銃弾に全身を打ち抜かれるかのように、嵐の中の木の葉のような頼りなさで、壊されていく男の体。

 普通ならば月村の一撃だけで栗山の体は後方に吹き飛び、倒れ込んでしまうだろう。

 しかし、栗山の背後には教室の壁がある。

 月村の一撃に吹き飛んだ栗山の体はすぐさま壁ではねかえって、またもや月村の脚の餌食になるだけ。

 そのバウンドする暇さえ月村の美しい脚は与えなくなっていき、しまいには栗山の体は月村の脚によって、壁に縫いつけにされてしまった。

 ドダドダドダっと、機関銃のようなキックが栗山を壁に縫いつけにしてさらにやまない。

 教室中に振動が響き、もしかすると校舎中がふるえているかもしれない。

 そんな圧倒的なまでの破壊力を、月村は笑みを浮かべて余裕で行っていた。

 自分の力を誇示して満足気に、月村は百裂脚を繰り出していく。


「おーい、栗山くーん、生きてるかーい?」


 ようやく月村の破壊が終わった。

 彼女は左脚一本で立ったまま、栗山のことを右足で壁に押さえつけていた。

 栗山の胴体を右脚の足裏で壁に縫いつけにして、押さえ込んでいる。

 少しだけ、月村の脚は腰よりも高めまで上げられており、周囲の男子からは彼女の下着が丸見えだった。

 栗山の脚は地面につかず、月村によって壁に宙づりにされてしまっている。

 そんな状況下で月村が楽しそうに言うのだった。


「精一杯手加減したから、まだ生きてるよね? どうだった? わたしの百裂脚。けっこうすごいもんでしょ」


 月村が目の前の栗山を観察しながら言った。

 栗山の全身は打ち身だらけで、その四肢はすべて潰れて跡形もなかった。

 歯は全て抜け落ち、顔もぱんぱんに膨れ上がってしまっていて、ぼろ雑巾のようにされてしまっていた。


「たちゅけえええ、ゆるひええええ」


 そんな状態にされても、栗山は必死に命乞いをしていた。

 しかし、命乞いを楽しむ趣味のない月村は、それを無視して続けた。


「それにしても、栗山くんったら、まったくわたしのキックに反応できなかったね。まあ、部活中も、わたしのシュート一本も止められなかったんだから、それも仕方ないかな」


 うんうんと月村は一人で頷いて納得している。

 ひとしきり栗山の全身を眺め、自分の力を確認すると、彼女はさばさばとした態度で言った。


「うん。もういいかな。じゃあね」


 バッギイイインンン!!

 右足を栗山の胴体からはずし、

 一瞬のうちに力強いハイキック。

 彼女の右足が栗山の顔面に直撃し、真っ赤な花火があがった。

 栗山の頭部は月村の右足裏に完全に潰され、教室の壁にめり込んでしまった。

 教室の壁に宙づり。

 ぶらぶらと、栗山の死体が、教室の壁に宙づりになっている。


「ほい、それじゃあ次ね」


 月村が何事もなかったかのように言った。


「次は純粋な力を試したいんだ。太ももで胴体潰せるか、試させてね」


 そのまま月村は地面でへたりこんでふるえる男子生徒の一人を捕まえる。

 逃げようとする男子。

 それを笑いながら拘束すると地面に転がして四つん這いにさせる。

 すぐさまその上からまたがって、男子生徒の胴体を両足の太ももで挟み込んだ。


「アアアアアアアッッ!! 助けてくださあいいいい!!」


 悲鳴をあげる男。

 笑顔の月村。

 彼女はなんの宣言もなく男を潰した。

 ぼこっと、ミニスカートから伸びる彼女の太ももが膨張する。

 まるで男の胴体ほどはある太ももが、男の胴体を軋ませ、潰していく。


「これで30パーセントかなー。これくらいならまだ大丈夫っと」

「ひゃだひゃだひゃだあああ!!」

「ほい、60パーセント」


 ボコッ!!

 さらに月村の太ももが膨張する。

 その圧倒的なまでの筋肉は、見る者を畏怖させるのに十分過ぎた。

 潰された男はもはや言葉を発することもできずに、白目をむいてしまう。

 その口からは泡がブクブクと漏れだし、絶命が近いことを教えてくれた。


「もう弱いなー。こんなんで殺しても楽しくないんだから、もっと持たせてよ」


 両手を腰にあて、仁王立ちのまま男の胴体を挟み込む月村。

 男を絶命させる力をこめながらも、その様子はまったくの余裕だった。

 楽しそうに笑みを浮かべる、いつもの気さくな同級生の姿がそこにあるだけだった。


「しょうがないなー。それじゃあ、100パーセントいくよー」


 バギベギバギベッギッギャ!!

 耐えられなくなった男の胴体があっけなく潰れていった。

 肉が潰れ、内蔵が壊され、骨が砕かれていく。

 それはあばら骨から始まった最後に脊髄まで砕いた。

 そこまで全力を出していないように見えた月村は、あっけなく、男の胴体をその太ももで潰してしまったのだ。


「あっけないなー。まあでも、男の子の体を潰すくらい、簡単なんだね」


 男の死体を股の間から放り捨て、ビクビクと痙攣する男を見下ろしながら月村が言った。

 その顔には明らかな加虐性が浮かんでいた。

 3年間、同じ教室で学び、同じ部活動をしてきた男子を殺したことに対して明らかに興奮している様子があった。


「ふふっ、汚れちゃった」


 彼女の言うとおり、月村の下半身は男の血液と肉片ですさまじいことになっていた。

 立ったまま出産をしても、ここまでは汚れないだろうというほどだ。

 彼女は一瞬だけ考えると、すぐさま言った。


「斉藤くん、椅子」

「は、はい」


 呼ばれた斉藤が命令どおりに四つん這いになった。

 椅子と言われれば人間椅子だ。

 月村はさも当然そうに斉藤の背中に腰をおろし、残りの二人の男子生徒に言った。


「それじゃあ、浅羽くんと三越くん、綺麗にしてもらえるかな」


 斉藤に腰かけたまま、月村が両足を前に投げ出して言った。


「この血塗れの脚、舐めて綺麗にしなさい。右足は浅羽君、左足は三越くんね。下手なほうは殺す」


 有無をいわさない雰囲気。

 絶対女王としての貫禄。

 彼女は手を腰にやって、地べたの男子生徒を見下ろしていた。

 そんな彼女に見下ろされ、断れる男子などいるはずがなかった。


「「う、うわああ」」


 悲鳴をあげながら男子ふたりが月村の脚にむさぼりついた。

 必死に、ぺろぺろと、男子ふたりが月村の脚を舐め清めていく。

 クラスメイトの血がついていようが、肉片がこべりついていようが、彼らは必死に、顔中を真っ赤にベトベトにして、舐めていった。


「・・・・・・・・・・・・・」


 それを月村は淡々と見下ろしていた。

 厳しい管理者。

 一つも落ち度も許さない女王として。

 それは、1年生と2年生のとき、クラスと男子サッカー部を恐怖のどん底に陥れていた少女の姿だった。


「上履きと靴下脱がしてくれるかな」


 男二人が、すぐに命令どおりにした。

 丁重に迅速に、月村の両足から上履きと靴下が脱がされる。

 現れたのは、湯気でもたっているように上気した、月村の生足だった。

 彼女はそれを浅羽と三越の眼前に突き出すと、言った。


「舐めろ」


 びくっとした男子二人が、一心不乱に舐めていく。

 ジュパパッッ!! じゅるじゅるう!!

 足の指の一本一本に至るまで、丁寧に、必死に舐めていく男たち。

 そんな彼らが舐めている足は、同級生の女の子の足なのだ。

 これまで、対等な立場で授業を受けてきたと思っていた女の子。

 そんな彼女に格の違いを思い知らされ、こうして負け犬として足を舐めさせられる。

 そんな屈辱的な状況ではあったものの、彼ら二人に、屈辱を感じている余裕はなかった。

 その美しくも逞しい生足の先。

 はるか頭上には、斉藤に座った月村が、厳格な管理者の表情で自分たちのことを見下ろしている。

 少しでも落ち度があれば、すぐさま彼女は実力行使をしてくるだろう。

 あっという間に、自分たちは殺されてしまう。

 抵抗しても無駄。

 彼女の気の向くままに、惨殺されてしまう未来。

 その圧倒的な立場の違いを、浅羽と三越はようやく身にしみていた。


「はい、浅羽くん、もういいよ」


 冷たく言った月村。

 ビクンと反応した浅羽の顔を、彼女はドンと力強く右足を突き出しで蹴った。

 どさっと地面に転んでしまう浅羽。

 浅羽に対する死刑宣告。

 誰もが思った結末は、しかし違っていた。


「三越くん、不合格♪」


 言って、月村が両足の足裏で、三越の頭を左右から挟み込んだ。

 あぐらをかくように、大胆にも大きく股を広げた月村。

 彼女のスカートの奥からはパンツが丸見えで、その真正面に座っている三越はそれを眼前に見ることができる。

 しかし、三越は、自分の頭を挟み込んでくる月村の足裏の感触に生きた心地がしなかった。


「な、なんでですか陽子様! ぼ、ぼくはちゃんと・・・・・・」


 月村の足裏の感触を左右に感じながら三越が必死に言う。

 そんな彼に対して、月村は、興味を失ったようになにも返答しなかった。

 代わりに、


 ぎゅうううううううッッッ!!


 足に力をこめて、三越の頭を左右から潰し始めた。


「ギャアアアッ!! いたいたいたいいたいいいい!!」


 絶叫。

 すぐさま頭蓋骨が軋み始める。

 月村の左足の足裏が三越の右側頭部に。

 月村の右足の足裏が三越の左側頭部に。

 その状態のまま、互いの足裏がくっつくようにするまで、月村が足に力をこめていく。

 彼女は笑顔だった。

 頭蓋骨が軋み、泣き叫んで激痛に耐えている男の汚らしい顔を、楽しそうに鑑賞している。


「すぐには潰さないからね。ちょっとづつ力をこめていくから。頭蓋骨って、どれくらいで壊れちゃうのか、ちょっと興味があるんだよ」


 ふふっと笑って、月村がさらに力をこめた。

 ベギベギっと、何かが軋む音がした。


「アアアアッツ、ひいいいい!! やめてくださいいいいい! やだやだやだああああ!!」


 三越が魂の絶叫をあげる。

 涙を流し、月村の哀れみを誘うように、必死に命乞いを続ける。

 しかし、月村はそんな三越の命乞いですら、鑑賞の対象にしかしていなかった。

 情けない弱者が、足裏で潰されていく滑稽さ。

 その姿に満足を覚えた月村は、さらに足に力をこめていく。

 ベギベギベギッッ!!

 さらに頭蓋骨が軋み、三越の絶叫があがる。

 じりじりと。

 じりじりと。

 少しづつ月村の足裏と足裏がくっついていく。

 男の頬がぎゅうっと締め付けられ、ひょっとこのような面白い顔になっていく。

 それを見て月村は爆笑し、さらに力をこめる。

 男の顔が赤く鬱血し、口からはブクブクと泡が吹き出てくる。

 限界はすぐに訪れた。


 ベッギッギギイイイイ!!


 ひときわ大きな音が教室に鳴り響いた。

 途端に、男の抵抗がするっとやんだ。

 まったく動かなくなった男は、だらんと体中の力を失い、月村の足裏で挟み込まれている頭を支点に宙づりになった。


「あ、潰れたね」


 月村が、足裏と足裏で男を潰すのを継続しながら言った。


「けっこう簡単に頭蓋骨って壊れちゃうんだね。もう少し楽しめると思ってたんだけど」


 そこでじっと、亡骸となった三越を見下ろした。

 欲求不満気味の月村は、そのまま、


「潰れちゃえ♪」


 ベギベギベギッッ!!

 全力でプレス。

 月村が力をこめて三越の頭を足裏と足裏で潰した。

 彼女の美しい生足。

 その大きな足の裏と足の裏が完全にくっついてしまう。

 その間にあった三越の頭部は、スイカのように潰れ、いろんなものを周囲に飛び散らせた。


「あはは、かんたーん」


 おどけて言う月村。

 彼女はそのまま、地面にへたれこんでいる男の間近まで移動した。

 あわあわと腰を抜かして、近くで仁王立ちをする月村を見上げるしかないその男。

 斉藤の親友、浅羽だ。


「最後は浅羽くんだね」


 笑っている。

 月村が猫のように笑っている。

 怯え狂っている獲物を前にして、月村が残酷に笑っていた。


「きみには最後のチャンスをあげるよ」


 月村が言った。

 そのまま彼女は浅羽を四つん這いにする。

 それだけでひいっと悲鳴をもらした浅羽が滑稽で、「くす」と笑みをもらした月村。

 月村は立ったまま、地面に四つん這いにさせた浅羽の首にまたがった。

 ぎゅっと、太ももを閉じる。

 浅羽の首に、月村の美しい太ももが絡みついた。


「絞めるから5秒間だけ我慢して。気絶しなければ、浅羽くんのこと合格にしてあげる」


 月村は仁王立ちだ。

 その太ももの中には、浅羽の頭が埋まっている。

 楽しそうに、月村は笑って、自分の股の間に拘束されている男を見下ろしながら続けた。


「女に二言はないよ。それに、5秒間だけだったら、まだ現実的だよね。別に私に勝てとかそんな無理は言ってないわけだからさ」


 それじゃあいくね。

 可愛らしく言って、月村が始めた。

 ぎゅううううううッッ!!

 むちむちの太ももが、浅羽の首を締め付ける。

 彼女の逞しい太ももに挟まれた矮小な男の頭部は、既に太ももに覆い尽くされて肉の壁に隠されてしまっていた。

 その圧倒的なまでな体格差の中、月村がカウントダウンを始める。


「いーち、にーい」


 おどけたようにカウントダウン。

 苦しみに浅羽が暴れ回っているが、それでも意識を手放すまでには至らない。

 しかし、月村はあくまでも余裕だった。


「さーん、よーん・・・・・」


 最後の1秒。

 これだけ我慢すれば助かる。

 その一縷の希望。

 それを月村は情け容赦なく刈り取った。


「ごっ!!」


 ぎゅうううううううううううううッッ!!


 ビクビクビクンッッ!!


 最後の最後。

 最後の5秒目にあわせて、月村がくいっと太ももの角度を変え、ほんの少しだけ力をこめた。

 それだけで、まるで魔法のように、浅羽がくったりと力を失った。

 月村の股の間で、情けなく気絶してしまったのだ。


「はい残念でした」


 まるで予定調和。

 こうなることが分かっていたとばかりの口調。

 まるでお遊び。

 月村にとって、男を気絶させることなど、1秒間だけあれば十分な簡単な作業だったのだ。


「ほら起きてくださーい」


 月村が浅羽の胸ぐらを掴んで立ち上がらせる。

 宙づり。

 片手で一本で男子を宙づりにしてしまう。

 浅羽の足はブラブラとして地面についていない。

 そのまま月村は、笑顔で往復ビンタを繰り出し始めた。

 バシンバシンと音がするたびに、浅羽の頭部が左右に大きく振れた。


「あ、起きたね」


 ひとしきり往復ビンタを繰り出し、ようやく覚醒した浅羽。

 月村は、そのまま浅羽の胸ぐらを掴んではなさず、浅羽のことを宙づりにしたままで言った。


「不合格だよ、浅羽くん♪」

「う、あ」

「君は最後の一人だからね。念入りにやらせてもらうよ。簡単には殺さないから、安心してね」

「た、たったたた助けて、」

「だーめ」


 満面の笑みを浅羽の眼前で広げた。

 そして、月村はくるっと斉藤のほうへと向き直った。


「斉藤くんもよく見ていてね。親友が殺されるところ、なんにもできずに、ただ見ているんだよ?」


 月村が、どさっと浅羽を放り投げた。

 斉藤の間近で浅羽が地面に倒れ込む。

 そんな恐怖にかられた浅羽が、斉藤に助けを求めるようにすがりついてきた。


「斉藤、おまえからもなんとか言ってくれよ。おれ、まだ死にたくないよううう」


 浅羽の命乞い。

 涙を流し、顔を歪ませての必死の懇願。

 それを止めさせたのは月村だった。


「ほらほら邪魔だよ浅羽くん。斉藤くんは椅子になってもらうんだから」


 月村は浅羽の首根っこを掴むと、そのまま斉藤を四つん這いにさせてその背中に腰掛けた。

 そして、太ももと太ももの間に浅羽をもってくると、ぎゅうっと太ももを浅羽の胴体に絡みつかせ、背後から抱きしめた。


「まずは指からいこうか♪」


 月村が言った。

 浅羽は月村から抱きしめられ、身動き一つとれなかった。


「指を一本一本、折っていくね♪ 発狂した瞬間に殺すから、気をしっかりもつんだよ?」


 優しく、優しく言う月村だった。

 しかし、その言葉は残酷過ぎた。


「それじゃあ開始♪」


 それから先、浅羽の絶叫がやむことはなかった。

 壊れたような絶叫。

 なぜか声を裏返して笑い始める様子。

 ボギボギっと、何度も何度も、骨が折れる音が教室に響く。

 それを、月村は楽しそうに行っていた。

 笑って、嬉しそうに、何度も何度も、手の指を折り続ける美少女。

 手の指がなくなると、彼女は浅羽の関節という関節を壊していった。

 腕ひしぎ十字固めで両腕を粉砕する。

 手首も、股関節も、全て念入りに破壊していった。

 それを斉藤は間近で見せられた。

 親友が壊されていく様子。

 なすすべもなく、美少女が親友を壊していく様子を、斉藤は見つめるしかなかった。

 月村のお楽しみはまだ始まったばかりだった。


 *


「殺してええええ!! もう、ころしてくだしゃいいいいい!!」


 浅羽が狂って絶叫した。

 かれこそ既に1時間が経過していた。

 すでに浅羽は自分ひとりで立つことも這うこともできない状態だった。

 関節の全てを破壊され、指の骨もおられて、物理的に指一本動かせない。

 地面に芋虫のように這い蹲って、殺してくださいと、必死に哀願するしかなかった。


「ん〜、もう壊れちゃった?」


 月村が残念そうに言った。

 凄惨な拷問をしてきたとは思えないほど、彼女は普段と同じ様子だった。


「しかたないな〜。まあ、みんなも佳境だしね」


 月村がくるっと教室を見渡した。

 そこには、月村と同じように、自分に割り振られた最後の一人を念入りに虐め、殺すクラスメイトの女子生徒の姿があった。


「ねえみんな。もうそろそろ終わりにしようか」


 月村が言うと、皆は口々に、


「そうだね。鳥口ったら、さっきから「殺してええええ」ってそればっかでウンザリだし」

「わたしもそれでいいよ〜。ちょっと飽きてきたしね〜」


 決まりね。

 そう言って、月村がニンマリと笑った。


「あっ、みんな、いいこと思いついたんだけど」


 そう言って、月村が女子に指示を出していく。

 彼女たちが、最後の一人を引きずって、斉藤の周りにあつまってくる。

 彼女たちは一様にニヤニヤと笑って斉藤のことを見下ろし笑っていた。

 そのまま、斉藤を中心に、周囲を女子が取り囲んだ。

 美しくも柔らかい肉の壁。

 それが周りを取り囲み、周囲が暗くなった気がした。


「斉藤くん、ひざまづいて」


 月村の命令。

 斉藤が言われたとおりに地面に膝をつく。

 肉の壁がさらに増した。

 頭上を見上げると、美しい少女たちが自分のことをニヤニヤ見下ろしている。


「さあ、斉藤くん。みんなの最後をちゃんと見ておくんだよ?」


 ふふっと笑う。

 月村が周囲の女子生徒に目線をやった。

 それを合図に、女子生徒たちが、股を広げると、男たちの後頭部にまたがった。

 全員仁王立ち。

 例外なく、彼女たちの長い脚の間には、男子生徒たちの頭部が挟み込まれていた。

 虐め抜かれ、痛めつけられ、顔をぼろぼろにした男子たち。

 その情けない顔が、美しい少女たちの太ももに挟まれているせいで、惨めさがさらに増していた。

 中にははやくも、ぎゅっぎゅと、力を入れたり緩めたりを繰り返す少女もいて、そのたびに股の間の男子が悲鳴をあげている。

 そんな光景が、斉藤の周囲に繰り広げられた。

 斉藤の顔の高さにあわせて、周囲360度を、男子生徒たちの顔が鎮座した。


「カウントダウン開始♪」


 ぎゅうううううッ!!

 ぎゅっぎゅっぎゅううう!!

 ギュウウウウウ!!

 ぎゅっぎゅううううううッッ!!

 ギュウウウウウウウウ!!


 長身の美少女5人が、同時に、太ももに力をこめた。

 途端に、男子生徒たちの顔が鬱血し、ばたばたと暴れ始める。

 それを見た少女たちが嘲笑の声をあげ、カウントダウンを開始した。


「10、9、8」


 楽しそうな少女たちの声が合唱した。


「7、6、5」


 少女たちの太ももがさらに力を増す。

 太ももの筋肉が、男たちの首と頭を潰していく。


「4、3、2、1」


 ミシミシと軋む音。

 半狂乱で暴れ出す男子たち。

 斉藤の視界には、太ももで頭を潰され、その激痛に苦しむ汚れた男子生徒たちの顔が浮かび上がった。


「0!」


 ぶっしゃああああああ!!

 ベギベギバギバギイイイ!!

 バッギイイイイ!!

 ベッギイイイイ!!

 バギベギッッギイイバギイイイ!!


 潰れた。

 少女たちの太ももで、男子5人の頭部がトマトのように潰れた。

 鮮血が斉藤の顔にかかる。

 ぼたぼたと、クラスメイトの男子の鮮血が飛び散る。


「ははっ、あっけないよねー」

「そうそう。もっと大変なんだと思ってた」

「男の子殺すなんて、とっても簡単〜」

「あ〜あ、でもこれで終わりか」


 名残惜しそうに少女たちが男子の亡骸を太ももで挟みながら続けた。

 なかには、太ももをさらに擦り寄せ、男子の潰れた頭部をミンチにしている少女すらいる。

 彼女たちは血塗れだった。

 教室には、さきほどまで生きていた男子生徒たちの死体が積み上げられている。

 それを全て、この5人の少女たちが行ったのだ。

 楽しそうに笑いながら。

 クラスメイトの男子を、惨殺した5人の長身美少女たち。


(こ、こわい)


 斉藤は恐ろしかった。

 こんな化け物たちと一緒に、これまで勉強をしてきたのかと思うと、恐ろしくて仕方なかった。

 格が違う。

 存在自体が違うのだ。

 自分たちが対等な立場で接するなんて、そんなことが許されていいわけがなかった。


「斉藤くん」


 声がした。

 斉藤がビクンと震え、頭上を見上げた。

 そこにはこちらを見下ろす月村がいた。


「これでわかったよね」


 見下ろされている。

 少女たちに見下ろされている。


「私たちと、君たちが、どんなに違うか」


 月村が片足をあげた。

 それを膝まづく斉藤の頭上に乗せた。

 優しく、まるで撫でるように、ぐりぐりと月村が斉藤の頭を踏みしめながら言った。


「男は私たちに絶対服従していればいいの。そうすれば、こんな目にあわなくてすんだんだよ?」


 身のほどを知ろうね。

 笑っている。

 少女たちが笑っている。

 斉藤は既に、反抗心の全てが自分の中から消え去っているのが分かった。

 あるのは、彼女たちに対する恐怖と忠誠心だけだった。


「それじゃあ、汚くなったわたしたちの脚、綺麗にしてもらおうかな」


 月村が言った。


「5人もいるから大変かと思うけど。舐めて綺麗にしなさい。時間がかかったり、ちゃんと綺麗にできないとお仕置きするからね」


 はい、お願いね。

 月村が片足を斉藤の太ももに乗せる。

 斉藤はすぐに彼女の太ももにすがりついた。

 そして、一心不乱に汚れを舐めとっていく。

 ぺろぺろと。

 同級生の女の子たちの前で。

 それを少女たちが見下ろして笑っている。

 嘲笑。

 それは、斉藤が全ての少女たちの脚を舐め清めるまで続いた。

 こうして、斉藤は女の子に対する反抗心の全てを失った。

 残りの人生、彼は、月村の奴隷として、彼女に尽くすことだけに人生を捧げた。

 一度も反抗せず。

 月村の命令には従順に。

 隷属する快感を知った彼は、ある意味、幸せだったのかもしれない。


 完