8
つぼみは宣言どおり寸止め調教を続けた。
この1週間は、これまで以上に地獄だった。
彼女は僕に快感という名の暴力を永遠に与えていった。乳首と愚息への寸止め刺激。
僕は全裸で泣き叫び、無表情の彼女に射精を懇願して喉をからし続けた。
けれど、それも今日で終わる。
約束の日。
僕は今日、つぼみに射精させてもらえるんだ。
「つ、つぼみ、もう帰らない?」
ボランティア部の部室。
そこで僕はもじもじしながら彼女に問いかけた。
部室には他にも部員がいて、それぞれ活動をしている。そんな中にあって、つぼみは念入りに幼稚園で行う予定の紙芝居講演に向けた準備を続けていた。
「まだ無理」
「で、でも」
「もう少し時間かかりそう」
「ぼ、僕も手伝うよ」
一刻も早く射精をさせてもらうために僕は必死だった。もはや主従関係ができあがってしまっている。僕は彼女に命じられる前から、彼女のご機嫌をとるための召使いのようになっていた。おそらく、彼女から人を殺してこいと命令されたら何も考えずにその通りにしてしまっただろう。それだけ僕は彼女に支配され、壊されてしまっていた。
「それじゃあ、帰ろうか」
「う、うん!」
作業が終わり彼女が言う。
僕は彼女の荷物を自分から持って帰宅の準備をすぐにすませた。それなのに、つぼみはマイペースに淡々と時間をかけて帰り支度をしている。それが焦らされているようで、僕はビクンと快感に震えた。
「…………」
快感に震えている僕に彼女が気づく。
無表情のままつぼみが僕の耳元に顔を寄せてくる。
近くに彼女の顔があるだけで興奮した僕の耳元で、彼女がささやいた。
「マ・ゾ」
「ひいいいいいッ!」
「おあずけくらって興奮したね?」
「つ、つぼみ」
「家に帰ったらたっぷり犯してあげる」
「ああああああッ!」
僕はそのままへたりこんだ。
足腰がガクガク震えて立っていられなくなったのだ。言葉だけで射精を伴わない絶頂に追い込まれてしまった。
他の部員たちが僕を見て何事かと驚いている。
しかし、そんなことはどうでもよかった。もはや、つぼみ以外のありとあらゆる事柄に僕は興味を失っていた。彼女が全てだった。つぼみという存在に僕は完璧に支配されていた。僕は地面にへたりこんだまま、こちらを見下ろしている彼女を見上げるしかなかった。
*
自宅。
エレベーターの中で僕はもう興奮して頭がどうにかなってしまいそうだった。
フウフウと鼻息を荒くして、発情しっぱなし。
だから自宅のドアをあけた途端、僕はすぐにバタバタと全ての衣服を脱ぎ去って全裸になった。
「つ、つぼみ様」
「…………」
いつからか、寸止め調教される時には彼女のことを様づけで呼ぶようになっていた。
僕は、無言のままこちらを見つめてくる彼女の足下で膝まづき、深く土下座をした。そのまま、何も言わない。僕はただただ彼女の前で無条件降伏し、自分の全てをなげうって土下座を続けた。
「…………」
すうっと彼女の片足があがり、僕の後頭部を踏み潰す。無言のままで何度かグリグリと潰され蹂躙される。そのたびに、僕の股間は爆発しそうになるほど勃起しそうになっていた。貞操帯で拘束されていなかったら、犬のように愚息を左右に振って悦んでいただろう。
「ん」
彼女が満足そうに吐息をもらした。
そのまま、彼女の手が伸びてきて、僕の髪の毛をわし掴みにする。力任せに引っ張られて僕の体は持ち上がった。そして、つぼみ様は僕の髪の毛を掴んだまま引きずるようにして、寝室へと歩いていった。
「つ、つぼみ様ああ」
髪の毛をわし掴みにされ、頭を強制的に下げられるようにして連行される。つぼみ様は無言だ。そのまま、ベットの上に僕のことを放り投げた。
「う」
あおむけになって倒れる。
その上に馬乗りになってくるつぼみ様。
僕の下腹部に腰をおろし、そのままじっと僕のことを見下ろしてくる。その冷徹な瞳が全裸になった僕の痴態を余すことなく凝視していた。
「はずしてあげるね」
首にかけた貞操帯の鍵。
それを僕に見せつけてから、彼女は貞操帯をはずした。ガチャンという音。僕の一物が解放された。既に我慢できず先走りのツユが漏れているのが分かる。まるで犬だ。エサを前にして涎を流し続ける獣。そのように、彼女に躾られてしまったのだ。
「逃げたらまた最初から寸止め調教する」
彼女が淡々と命令を口にする。
「口答えしても最初から寸止め調教」
「つ、つぼみ様ああああ」
「私が満足するまで我慢できたら射精させてあげる」
「しゃ、射精、しゃ、射精させてええええ」
「我慢。わかった?」
「は、はひいいいいいッ!」
よろしい。
そう言った彼女が僕の乳首に手を伸ばした。
はじまる。
*
乳首責め。
彼女の手が魔性の手に変わる。
なぜこんなにきもちがいいのか分からない。
彼女の指が僕の乳首をひっかくたびに、僕の全身と股間に信じられないほどの快感が生まれる。僕の口からはひっきりなしに甘い声がもれていった。
「あひ……アアンッ……んんっ」
男の喘ぎ声。
我慢しようとするのに1度だって我慢できない。
彼女の手が僕の乳首を蹂躙するたびに、僕はびくんびくんと震え、とろけきった顔をさらして喘ぎ声を漏らすしかなかった。
「あひいいいいいいいッ!」
彼女の人差し指が連続で乳首をひっかき始める。
乳首のまわりに親指と中指と薬指をがっちりと食い込ませて固定化し、人差し指だけを永遠とカリカリしていく。それをやられると僕は壊れてしまう。涙を流して僕は悲鳴をあげるしかない。
「…………」
つぼみ様は僕の胴体に馬乗りになって、無表情に見下ろしてくる。
彼女のお尻が僕の胴体をむっちりと押し潰しているせいで、どんなに痙攣してもベットに縫いつけにされたままだった。拘束されている。彼女の体に拘束されて、永遠と乳首責めを受けている。そう思うと、さらに興奮が増した。つぼみ様が言うマゾの快感で、僕はバカになる。
「きもちい?」
彼女が聞いてくる。
乳首をいじりながら御主人様が問いかけてくる。
「ねえ、きもちいの?」
「は、はひいいいいッ! きもちいですううッ!」
「そう。じゃあ、ち●ちんはいじらなくていい?」
「ひゃだあああッ! ち、ち●ぽ、ち●ぽもいじってえええええッ!」
「でもコレきもちいんでしょ?」
カリカリカリカリッ!
「ひゃあああッ! しゅごしゅぎるううッ! つぼみ様の手、しゅごいいッ!」
「そんなにきもちがいいなら、ち●ちんいじられなくてもいいよね」
「らめえええッ! お願いですううッ! ち●ぽもいじってくださいいいッ!」
僕は発狂しそうだった。
もしかしたら本当にこのまま乳首だけで終わってしまうかもしれない。また射精は許されず、永遠とメスの快感でよがらされるだけ。そう思うと全身に悪寒が走り、僕は泣き叫んで命乞いをはじめた。
「おねがいでしゅ。おねがい、つぼみ様、射精、射精をさせてください」
「…………」
「口答えもしません。なんでもいうこと聞きます。だから、お願いします、助けて、助けてください。射精、射精させてえええッ!」
涙をぽろぽろ流す。
媚びる。
へつらう。
ご主人様に射精を許してもらうために、僕は涙を流し、眉を負け犬のように下げて、必死に命乞いを続けた。
「ふふっ」
笑った。
つぼみ様がうっすらと笑って、後ろに手を伸ばした。
「ああああああッ!」
体がビクンと痙攣する。
彼女の手が僕の愚息をがっしりと掴んでいた。
掴まれただけ。
それなのに、僕は自分という全存在が彼女に握りしめられたと感じた。
「そんなに射精したい?」
「し、したいですうううッ! おねがします、射精させてくださいいいいッ!」
「どうしようかな」
ぐいいいいいッ!
「ヒイイイイイッ!」
力強く僕の愚息を握り潰したつぼみ様。
彼女はそのまま快感に喘ぐ僕のことを見下ろしてきた。じいっと、容赦なく、彼女の視線が僕に突き刺さる。マゾの快感と、つぼみ様の手によって与えられている快感で、僕の頭の回路がズタズタにされていく。
「しごいてあげる」
「ひいいいいいッ」
ゆっくりと。
彼女の手が動き始める。
僕をじっと見下ろしながらの蹂躙。
その魔性の手が動くたびに、僕の体は痙攣していき、すぐに限界が訪れた。ぴくぴくと震える。僕の愚息が虫の息となって、ようやく射精ができる。つぼみ様はその様子に気づく様子もない、じいっと僕の顔を見下ろしたまま、魔性の手を動かしていくだけ。あと1秒、それだけで射精できる。あと、少し―――それなのに、
「おあずけ」
「あああああああッ!」
ぱっと。
つぼみ様の手が離れた。
寸止め調教。
僕はまたしても射精ぎりぎりの負け犬ち●ぽに仕上げられてしまったのだ。
「射精できると思った?」
つぼみ様が僕に馬乗りになったまま言う。
僕はあまりの衝撃で、涙をぽろぽろ流しながら「あうあう」と悲鳴をもらしていくしかなかった。
「君のち●ちんの状態なんて見なくても分かるんだよ」
「しょ、しょんなあああッ!」
「手でさわるだけで君の限界も弱点も、ぜーんぶ分かっちゃうの」
「つ、つぼみさまあああッ! つぼみさまああああああッ!」
「私がその気なら今日も君は射精できないよ。アンアン泣かされちゃう」
「ひゃだあああああッ! 射精させてくださいいいいいいいいッ!」
僕は泣き叫んだ。
涙を流し、必死に命乞いを続けた。
それをつぼみ様は無表情で見下ろし続けていた。うっすらと頬を赤くした彼女が、必死の命乞いをして射精を懇願していく僕のことを観察している。
「ふふっ、かわいい」
彼女がうっすらと笑った。
期待に胸が膨らむ。
彼女の機嫌がいい。
僕の命乞いを気に入ってもらえた。
もしかしたら射精させてもらえるかもしれない。
しかし、彼女はどこまでも残酷だった。
「もう少し寸止めさせてね」
悪魔。
僕には彼女が残酷な悪魔に見えた。
「もっともっと情けなく喘がせてあげる」
*
言葉どおりだった。
彼女は僕のことを寸止めし続けた。
彼女の魔性の手が僕の愚息に襲いかかる。
鬼頭だけを容赦なくグリグリといじめられる。
竿に絡みついた長い指がイソギンチャクみたいに蠢いていく。
1時間、
2時間、
3時間。
僕はひたすら寸止めされた。
どんなに泣き叫んでも、どんなに命乞いを続けても許してもらえなかった。
僕の意識が次第にうつろになっていく。
もはや時間の経過も分からない。
外はすっかり暗闇だ。
僕はもはや何時間目になるかわからない寸止め調教の中で、人格を破壊されていた。
「ううううッ! ううううッ!」
ぽかぽかと頭を叩く。
両手でいっしょうけんめい自分の頭を叩いていく。
なぜこんなことをしているのか分からない。
涙はとっくの昔に枯れていた。
白目をむいて、必死に頭をポカポカ叩く。
こうしていなければ耐えられなかった。
寸止めの後の衝撃。
それがあまりにもひどくて頭をポカポカ叩いていないと自分を守ることもできないのだ。壊れていく感覚。それにあらがうために僕は自分の頭を必死にポカポカ叩いた。
僕の頭にはいくつもの巨大なタンコブができていた。鈍い痛みがずっと続いている。それでもこの寸止め調教の拷問に比べれば可愛いものだ。
「また射精できなかったね」
誰かが僕の耳元で囁く。
僕はベットに座っていた。
その後ろに誰かが座って僕の愚息を握っている。
ずいぶん昔からこの体勢になっていた気がする。
僕は背後から彼女に手コキをされ、射精ギリギリで寸止めをされ続けていた。
「くやしい?」
彼女の声が熱をもっている。
興奮した吐息が耳を犯した。
「男のくせに女の子にいいようにされて、くやしい?」
「うううううッ! ううううッ!」
「もう言葉も喋れない?」
「ううううううッ! ううううッ!」
「うん、それじゃあ射精しようか」
彼女の両手が僕の一物をがしっと掴んだ。
これまでの動きが子供だましに感じられるような、そんな強烈な手コキだった。
彼女の魔性の指が僕の愚息をブっ壊していく。
強制的に、
男を射精に追い込むだけの暴力。
ねちゃねちゃといやらしい音が響く。
誰かが獣のような悲鳴をあげている。
喘ぐとかではなく断末魔の悲鳴。
それがどこからか聞こえてきてうるさい。
それでも、
それでも、耳元で囁く彼女の声はしっかりと聞こえた。
「イけ」
「ひゃああああああああッ!」
どっびゅううううううッ!
びゅっびゅうううううううッ!
ビュビュッビュウウウッ!
止まらない。
僕の愚息が爆発してこっぱみじんにされてしまった。
それでも射精だけが止まらない。
彼女の手も止まってくれなかった。
「い、イってましゅうッ! イってるからあああッ!」
「…………」
「ひゃあああッ! も、もう、もうやめへえええッ!」
「…………」
無言。
一心不乱に射精直後の一物を蹂躙する魔性の手。
耐えられるはずがなかった。
暴れても暴れても背後から抱きしめられて逃げられない。
僕の体が命の危険を感じて痙攣し始める。
それなのに、彼女は止めてくれなかった。
射精。
射精が続く。
―――彼女の手が、
射精が続く。
―――暴力的に、
射精が続く。
―――壊れる、
射精が続く。
続いていく。
終わらない。
命が消えていく。
消え……、
消えて……、
そして、本当に爆発した。
「ひっぎいいいいいいッ!」
どっびゅううううううううううううッ!
っびゅうううううううッ!
飛び散っていく。
部屋の天井まで届くくらいの勢い。
こんなの経験したことない。
壊れる。
死ぬ。
たすけて。
お願い。
たすけて。
「潮ふいたね」
背後。
つぼみ様が淡々と事実を確認する。
「このまま搾り取るね」
ぐちょぐちょぐちょっ!
魔性の手がさらに僕の愚息を粉々にする。
精液なのかなんなのかもわからない液体が股間から爆発していく。僕の体中の水分が股間から出て行くような気がした。僕の生命力が消えていく。彼女に搾り取られて殺される。このままじゃ殺されちゃう。
たすけて。
お願い。
たすけてください。
死ぬ。
やめて。
殺さないで。
たすけて。
「壊れちゃえ」
「ひいいいいいいいいんッ!」
視界がなくなる。
意識が遠のく。
快感という激痛も消えていく。
命が、
もう。
たゆたう。
耳元、
彼女の声が、
「すこしやりすぎたかな」
そうつぶやくのが聞こえた。
9
結果的に言うと僕は生きていた。
目が開く。
あ、生きてる。
それが最初の感想だった。
「起きたね」
つぼみの声。
僕はそこではじめて彼女の存在に気づいた。
天使が僕のことを膝枕していた。
「大丈夫?」
「う、うん。平気みたい」
「よかった」
つぼみはいつもの無表情で僕の無事を確認すると立ち上がった。
「帰るね」
「え、もう?」
「今日、1限目から講義なの」
「そ、そっか」
無表情が僕の顔をじいっと見つめた。
僕はその視線の意味が分からず何も言えなかった。
彼女はそのまま「それじゃあね」と言って、あっけなく帰宅してしまった。
「…………」
後には僕だけが残された。
部屋は片づけられている。
あの精液は全てふきとられていた。
それだけではなかった。
机の上にはアレがあった。
「て、貞操帯」
本体と鍵。
それが机の上に置かれていた。
その横には手書きで「処分しておいて」という、つぼみの書き置き。
その時はじめて、僕の股間にあの金属の拘束具がつけられていないことに気づいた。
「も、もう寸止めされないのか?」
信じられない思い。
自分の愚息が返却されたような自由な感覚。
僕は天にものぼるきもちだった。
自由。
尊厳の解放。
そんなものに喜んでしまった僕はどうしようもないバカだった。
*
結論から言うと本当に寸止めされなくなった。
けれどそれだけではない。
あの日から、つぼみは僕に手コキをしてくれることもなくなってしまったのだ。
「今日、家こない?」
部室で誘っても、彼女は「今日は用事があるから」とつれなかった。映画を見たりデートをしたりしても、それが終わるとすぐに帰宅する毎日だった。
1週間がたった。
2週間がたった。
あっという間に1ヶ月が経過した。
その間、ずっとつぼみは手コキをしてくれなかった。
悶々とした日々が続いた。我慢できないほどに性欲が高まってしまっている。
今までだったらオナニーをしたはずだ。つぼみに手コキをしてもらえるようになる前には毎日のようにしていたオナニーで自分の性欲を解消する。男なら誰しも当たり前のようにしている行為。
けれど、僕はオナニーをしなかった。
しなかったのだ。
それをすることはつぼみに対する裏切りのように思えてならなかった。
僕の愚息に貞操帯は装着されていない。
だから、しようと思ったらできる。
何度僕の右手が一物に伸びたか分からない。
けれど、そのたびに僕の手はぴたっと止まった。
「射精したい。射精。射精」
ベットの上で悶々とつぶやく。
つぼみの手の感触を思い出す。
彼女の匂いとか体温を妄想してしまう。
ハアハアと息が荒くなる。
興奮した獣が股間に右手を伸ばして―――虚空で止まる。
バタンと右手がベットに投げ捨てられる。
これが何度も繰り返された
「こ、これはもう、つぼみのものなんだ」
僕のものではない。
だから、僕が自由にしていいはずがない。
つぼみに支配され、管理されるべき存在。
ああ、貞操帯なんて関係なかった。
僕はもう、つぼみの手コキの中毒になって、彼女に支配されなければ生きていけなくなっていたのだ。
「つぼみいいい……つぼみいい……」
僕はつぶやき、彼女のことを妄想し続けた。
僕の愚息も彼女に媚びるようにぷるぷると震え続けていた。
*
そんなある日のこと。
つぼみからラインが入ってきた。
『今日、部屋にいってもいい?』
そのメッセージに心臓がドクンと脈打って、全身が歓喜に震えた。けれど、続いて表示されたメッセージによって奈落に落とされることになる。
『大事な話があるの』
いつもの事務的なメッセージ。
それなのに僕にはそれが他人行儀に感じられた。
彼女が部屋に来る。
なにをしに来るのだろう。
ひょっとしたら、別れ話をするためじゃないか?
『もう君とはつき合えない。彼女の手コキでアヒアヒいったり、玄関で土下座するようなマゾ男は気持ち悪いから別れてほしい』
そんな別れ話をしに来るのではないか。
僕は絶望で目の前が真っ暗になった。
けれども返事をしなければならない。
「いいよ」と簡単なメッセージを送る。
彼女はさっそく今日の夜に来ることになった。
*
「こういうこと、もうやめたほうがいいと思うの」
開口一番。
彼女はそう言った。
僕の部屋の中。
お互いに正座で座った状態で、彼女は僕のことを真正面から見つめてそう言ったのだ。
「手コキとかそういうの、やめたほうがいいと思う」
じいっと僕を見つめてくる。
いつもの無表情だ。
けれど、どこか哀しんでいるように見えた。
そんなに嫌だったのか?
やっぱりマゾは気持ち悪いのか。
僕は「そ、そうなんだ」と、そんなことを言ってから、
「いや、もちろん、つぼみが嫌だったらしなくていいんだよこんなこと。うん」
「…………」
「別に無理矢理とかそんなこと考えてないしさ。うんうん、そうだよね、嫌だよね、こんなことさ」
僕は泣きそうだった。
嫌われてしまったのだろうか。
気持ち悪いと思われているのだろうか。
僕は後悔していた。
手コキしてほしいなんてそんなこと頼まなければよかった。
僕はつぼみと一緒にいられればそれで満足なのだ。それなのに、自分の欲望を優先して、彼女に自分の性欲処理をさせてしまっていた。だから、彼女は傷ついてしまっているのだろう。僕は罪悪感でどうにかなってしまいそうだった。
「…………別に嫌じゃない」
つぼみが小さい声で言った。
「え?」
「別に嫌じゃないの」
「い、嫌じゃないって、なにが」
「君のこと手コキすること、別に嫌じゃないの」
そう言って、つぼみは視線を下に落とした。
いつも僕の顔を真正面から見つめてくるのに、今の彼女はどこか戸惑っているらしかった。
「だ、だったらなんで? な、なんで手コキしないとか、そういうことになるの?」
僕は必死に言った。
彼女は落としていた視線を再び僕に向けると、いつもの無表情に見える表情で、
「なんだか怖くて」
「怖い?」
「うん、私、最近自分に歯止めがきかなかったんだ」
「はどめって……」
「君のこと虐めて支配するのが楽しくて、歯止めがきかなくて、ついやりすぎちゃった」
どくん。
どくんどくん。
僕の心臓が鳴っている。わなわなと口が震えて、なかなか声が出てこない。そんな僕にむかって、つぼみが、
「これを続けてたらどこまでいくか分からないからさ。怖くなって。それに、君も迷惑だよね」
「め、めめめ」
「一方的に私だけ楽しんで。そんなの迷惑でしょ?」
迷惑なんかじゃないッ!
誰かが叫んだ。
僕だった。
目の前のつぼみが瞳を見開いて驚いている。
「め、めめ迷惑なんかじゃないよ」
「…………」
「む、むむむしろ、ぼ、僕のほうが一方的に、き、きもちよくなっちゃってさ」
「でも苦しそうにしてるじゃない? ずっと泣き叫んで」
「そ、それがいいんだよ。それが。それがいいの」
「そんなこと言っても、射精したい時に射精したいよね? 今は貞操帯はずしてるから自由にオナニーだってできるんだからそのほうが……」
つぼみの言葉が終わる前に僕はズボンを脱いだ。
パンツも脱ぎ捨てる。
あっけにとられている彼女の前で愚息をさらす。限界まで勃起した僕の分身が彼女に捧げられた。
「え?」
驚いた彼女の声。
つぼみはそのまま僕の愚息を凝視していた。
それだけですべて把握されてしまった。
僕が説明するまでもなかった。
「オナニーしてなかったの?」
「う、うん」
「な、なんで?」
「だって」
僕はなぜか涙目になって、
「こ、これはもうつぼみのモノだから。僕のものじゃないから、だから、あれから一度だってふれてない」
「…………」
「支配されたい」
「…………」
「つ、つぼみに支配されたい、です」
そう言って僕は貞操帯を取り出した。
彼女につけられていた貞操帯だ。
それを僕は肌身離さず持っていた。
それをつぼみ様にうやうやしく差しだし、
「……管理してください」
「…………」
「射精管理、してください」
僕の言葉を、つぼみは無言で受け止めた。
彼女の手が伸び、僕から貞操帯を受け取った。
それを手にした彼女が静かに言った。
「していいんだね?」
いつもの無表情の彼女。
しかし、その頬は赤らみ、興奮しているのが僕には分かった。
「君のこと犯して虐めて支配していいんだね?」
「は、はい」
「そう」
つぼみの手が伸びた。
僕の一物をがしっと掴む。
歓喜に全身が震える。
僕はこの瞬間のために生まれてきたんだ。
そんな仰々しいことを思いながら、僕は彼女にたちまち支配されてしまったことを悟った。
「本気でやるからね」
つぼみが。
無表情でじっと僕の顔を見つめながら、
「本気の手コキ。耐えられるかな」
「ほ、本気って、い、今までのは」
「手加減してたんだよ。君が耐えられないだろうと思って、手加減してあげてたの」
でも、もう必要ないよね。
ぎゅううううッ!
彼女が一物を力強く握りしめる。
痛みは感じない。
彼女の魔性の手は僕に対する刺激をすべて快感に変えてしまう能力をもっていた。僕は「うううッ」と喘ぎ声を出して、眉を下げて負け犬の顔をさらしながら、こちらを凝視してくる彼女を見上げるしかない。
「まずは私の本気の手コキを味わってもらうね」
「つ、つぼみいいい」
「壊れないように必死に耐えるんだよ?」
「は、はひいいいいいッ!」
はじまった。
それから先のことは覚えていない。
規格外の快感の嵐に翻弄され、その間の記憶はほとんど残っていなかった。
誰かの断末魔の叫び声が聞こえる。
何度も滑稽に命乞いをしている男の声。
それを見下ろす彼女の姿。
最後。
すべて終わった後。
精巣が空っぽになっても続いた本気手コキの後に、
貞操帯。
それをつけられる。
ガチャンという鍵の閉まる音。
それは僕のことを永遠に閉じこめる鍵の音に聞こえた。
鍵を握った彼女。
僕のすべてを支配してくれる人。
彼女が、優しげな笑みを浮かべて、言った。
「大好きだよ」
END
告知ページ