飯島さんのご褒美は続いた。
彼女は機会があるたびに、ご褒美と称して僕の唇を奪った。部室にいる時だろうが、一緒に映画館に映画を見に行く時だろうが関係がなかった。
彼女のベロチューを受けるたびに、僕の体の中にある大事なものが奪われていく気がした。飯島さんの長い舌に絡め取られ、捕食されて、食べられてしまう。彼女の舌が僕の口内で暴れるたびに、その気持ちは強くなった。今ではもう、飯島さんと同じ空間にいるだけで体が期待してしまうようになっていた。はやく犯してもらいたい。ご褒美がほしい。そんな気持ちになって、彼女の唇をぼんやりと見つめてしまう。僕は完全に飯島さんにおとされてしまったのだ。
「ゆるじでええええッ!」
そんなふうに僕へのご褒美が加速するのと平行して、飯島さんの部長への当たりが強くなっていた。
今も飯島さんの家で、彼女が部長に残酷な寸止め地獄を続けていた。かれこれ3時間ほど、ずっと生殺しの快感を与え続けている。四つん這いにした部長の背後から、玉袋と竿をサワサワとフェザータッチでいじめる。かと思うと牛の乳搾りみたいに竿をしごいてやって、射精する直前で解放してやる。部長は射精したくてもできなくて、永遠に悶え苦しむだけだ。
「見てよ翔太くん。こいつの顔、傑作だよね」
にっこりと笑った飯島さんが言う。
四つん這いにさせた部長の髪の毛をつかんで持ち上げ、その顔がよく見えるようにする。涙と鼻水でぐじょぐじょになった、人間の尊厳なんてどこにもない汚らしい顔を見下ろして、飯島さんが笑っていた。
「彼女に寸止め調教されてるのに反抗もできないマゾ。なさけないよね~。きもちわるいよね~。こんなのが彼氏とか、本当にありえないよ」
そんな情けない状態にしたのは飯島さんなのに、それを棚にあげて彼女は笑う。その間も寸止め地獄は継続中で、ぜったいに終わらない乳搾りが続いていた。
「やっぱり、彼氏にはもうちょっとがんばってもらいたいよね~。翔太くんもそう思わない?」
「え?」
「マゾだったらマゾらしく、もっとかわいげがないとダメだよね~。完全におちちゃったらつまらないもん」
くすくすと笑う。
その顔が僕のことをニンマリと見つめた。
「どこかに、かわいいマゾいないかな~」
「う」
「ねえ、翔太くん?」
にやにや笑って乳搾りを続ける飯島さん。
僕はどきどきしながらも、そんな彼女の姿から目を離すことができなかった。
*
そうして、運命の日がおとずれた。
連絡をもらって、僕は部室へと急いだ。
大事な話しがあるからすぐに来て。
端的なメッセージに僕はすぐに食いついた。
走って部室に到着する。
ドアを開けると、そこでは飯島さんが部長の首を締めて、最後のとどめをさそうとしていた。
「あ、翔太くん。はやかったね」
にっこりと笑った飯島さんが言う。
普段どおりの上品そうな笑顔。タレ目がちな瞳が弓なりになっている。見る者を優しい気持ちにさせるいつもの笑顔だ。
そんなほほえみを浮かべながら、飯島さんは部長の首を締めているのだった。片手で部長の首をわし掴みにして、持ち上げ、宙づりにしてしまっている。飯島さんのほうが段違いに身長が高い。だから部長の足は地面から離れてブラブラと揺れていた。
「かぎゅうううッ!」
宙づりにされている部長は顔を真っ赤にして悶え苦しんでいた。
じたばたと足を動かして、滑稽なダンスを踊りながら死んでいっている。そんな情けない男を見上げながら、片手で自分の髪をかきあげた色気たっぷりな女性が、僕に言う。
「すぐにトドメさすから、待っててもらっていいかな」
「え、あ、ああ」
「ごめんね。すぐすませるから」
にっこりと笑って、そのとおりにした。
飯島さんの右腕に力がこもる。
ぼごおっと隆起した筋肉の暴力。その細腕のどこに隠されていたのかと思うほどの柔らかそうな筋肉が浮かび上がって、締め上げている男に致命的な一撃を容赦なくくらわせる。
「カヒューーーカヒュウーーー」
すぐに部長は虫の息になった。
白目をむいて、びくびく痙攣しながら、最後の抵抗とばかりに体をじたばたさせて飯島さんの締め付けから逃れようとしている。
それなのに、飯島さんはまったくふらつくこともなく、仁王立ちのまま、片手で男を締め上げていく。にっこりとした笑顔が、部長に向けられた。
「ばいばい」
ぎゅううううッ!
力強い締め付け。
すぐに部長は気絶した。
あれだけ暴れていた部長の体がダランと脱力し、ぶらぶらと揺れている。飯島さんに宙づりにされたまま首を締められている男は、最後まで彼女に勝つこともできず、完全敗北したのだ。
「ふふっ、おまたせ、翔太くん」
あくまでも笑って飯島さんが僕のほうへと振り返った。
その上品そうな様子からは、ついさきほど、男を締め落としてしまったなんて信じられなかった。彼女の圧倒的な強さを前に、僕は夢中になってしまった。
「わたし部長と別れたんだ」
「そ、そうなんだ」
「うん。だから翔太くん、わたしと付き合ってよ」
どくん。
心臓が鳴る。
あこがれだった女性と付き合うことができる。
これだけ強くて、男のことも簡単に締め落とせてしまう女の子と彼氏彼女の関係になれるのだ。そう思ったらあらゆることがどうでもよくなった。僕はコクンと首を縦にふった。
「ふふっ、これからよろしくね、翔太くん」
「あ」
抱きしめられる。
180センチある僕よりも高い身長の彼女によって力強く抱きしめられる。彼女の大きなおっぱいが僕の体で潰れる。その柔らかすぎる乳肉はまるで底なし沼みたいだった。彼女の体にぐんにゃりと埋もれてしまい、はやくも腰が抜けそうだった。
「でも、気をつけてよね」
飯島さんが笑う。
「わたしに夢中になるとすぐにマゾになっちゃうよ?」
「あ、あああ」
「そうならないように、気を確かにもってね」
にっこりと笑って彼女が言う。
そして僕の耳元で妖艶にささやくのだ。
「今日、泊まっていってよ」
どくんと、何度目になるか分からないほど心臓が脈打つ。
「朝まで、セックスしよう」
その囁き声だけで射精しそうになる。
僕ははやくも飯島さんのとりこになってしまった。
*
いつもの飯島さんの家。
二人っきり。
今までは常に部長がいた。
けれどこれからはもういない。
部長は彼女に締め落とされ、捨てられてしまった。これからは僕が飯島さんの彼氏なのだ。それが嬉しくもあり、恐ろしくもあった。
「寝室、いこっか」
飯島さんがねっとりと言い、僕はうなずくしかない。彼女と僕の足音だけがやけに大きく聞こえた。彼女の片手が僕の腰を後ろから支え、かかえるようだった。逃がしはしない。そう言われているようで、僕の下半身がさらに震え、興奮した。
一室の前で止まる。
彼女がゆっくりとドアをあける。
目の前に薄暗い部屋の内観と、大きなベットが飛び込んできた。
「う」
その寝室に入った瞬間、僕はうめいてしまった。
飯島さんの体からただよってくる甘い匂い。
それが濃縮されて部屋の中にただよっている。はやくも勃起して、どうしようもなく興奮してしまった。
「ん」
彼女が立ったまま僕のことを抱きしめる。
身長差から僕のことを見下ろしてくる彼女のことを、怯えたような、興奮したような視線で見上げる。僕の視線の先の飯島さんは、にっこりと笑っていた。笑って、僕という新しい獲物を観察していた。
「い、飯島さん」
僕の問いかけに、彼女が笑う。
そして、僕の唇に人差し指をあてて黙らせると言った。
「名前で呼んでよ」
「え?」
「もうわたしたち付き合ってるんだから、名前で呼んで」
心臓がドキドキする。
なぜかとても恥ずかしい。
これまで付き合ってきた女の子たちには抱かなかった感情。僕はうわずった声で言った。
「ゆ、佑梨ちゃん」
「うん。翔太くん」
笑って見つめられる。
抱きしめられたまま、じいっと見つめられる。
その瞳はすべてを見通してしまうような透き通った瞳だった。タレ目がちな綺麗な瞳。それに見つめられていると、なぜか支配されているという居心地の悪さと、恐怖と、それと同時に陶酔した気分を覚えた。ぎゅううっと抱きしめられ、彼女の大きな胸に沈み込む。いたたまれなくて、興奮して、恥ずかしくて、僕は彼女から視線をはずそうとした。その瞬間、
「ジュルルウッ! じゅぱああッ!」
奪われた。
捕食された。
蹂躙される。
佑梨ちゃんが、僕の唇を奪い、あの熱烈なディープキスを始めてしまう。
「あひいん・・・・ひい・・・」
僕は悶えるだけになる。
もじもじと体を動かして、その瞬間に僕の腰にまわされた彼女の片手がぎゅううっと力をもつ。抱き潰されるみたいな強烈な抱擁。それによって身動きがとれなくなってしまい、僕は顔を上にあげて、彼女からのキスで頭をバカにさせていく。
(ダメ・・・・これ・・・・無理・・・・)
何度受けても、佑梨ちゃんの口づけはすさまじかった。こんなものに男が耐えられるはずがないのだ。僕ははやくも腰が抜け、がくがくと震えてしまった。
「ふふっ」
佑梨ちゃんが笑って、僕を抱きしめたまま倒れる。
ベットの上で潰される。
上からのしかかってきた佑梨ちゃんが、僕のことをじいっと見下ろしながら笑った。
「もうトロトロだね」
「あひん・・・ひい・・・」
「キス弱いよね、翔太くん。これから躾ていくからね」
にっこりとした笑顔。
僕はぼおっとした頭で、そんな美しい女性を見上げるしかなかった。
「じゃ、服脱ごっか」
言って、僕の服を一枚一枚脱がしていく。
その動作は明らかに手慣れていた。男の服をはぎ取ることに慣れている。すぐに僕は全裸になった。じいっと、佑梨ちゃんが僕の下半身を見下ろす。
「大きいね、翔太くん」
「え?」
「ふふっ、これなら楽しめそう」
佑梨さんが笑って、自然に動いた。
なんの感慨もなく、自然に。
彼女が僕の肉棒を自分の秘所に挿入した。
「ひいいいいッ!」
悲鳴が漏れる。
全方位から包み込まれた僕は、それだけで射精しそうになった。ぐねぐねと蠢く佑梨ちゃんの中で、僕の分身がめちゃくちゃにされている。逃げようとしても無理だ。僕の腰にどっしりと座った佑梨ちゃんの巨尻によってベットに縫いつけにされてしまっている。僕の体は彼女のお尻によって潰され、僕の分身は彼女の密壷の中でめちゃくちゃにされていた。
「すごいでしょ、わたしの中」
勝ち誇るようにして、僕を見下ろしたままの佑梨ちゃんが言う。
「みんな、3分ともたないんだよね~。どんな男もすぐに射精しちゃうの」
「ひいいいッ! ひいいいいッ!」
「動かすね」
やめて。
その言葉は、すぐに始まった豪快な腰振りの前に消えてしまう。
パンッ! パアアンッ! パンンッ!
「ひいいいいいッ!」
腰振り。
佑梨ちゃんが勢いよく腰を振っていく。
僕の肉棒が彼女の肉壁によって責め虐められていく。彼女の腰が棒の亀頭ギリギリまで持ち上げられて、そこからいっきに僕の腰まで叩き潰す。まるで餅つきのようだった。僕という餅を、さらに大きな柔らかい餅が情け容赦なく潰してくる。すぐに限界がおとずれた。
「ひゃああああああッ!」
どっびゅうううッ!
びゅっびゅうううッ!
水鉄砲みたいな射精が、佑梨ちゃんの中でほとばしった。
これまでの人生でこれほどまで勢いのある射精は始めてだった。目の前がチカチカして、ただただ射精するだけの機能だけが残る。
「ふっ、はやっ」
鼻で笑うように佑梨ちゃんが言った。
僕の上で騎乗位になった彼女が、僕の肉棒を挿入して人質にとったまま、言う。
「あっさり射精しちゃったね」
「ひいいい・・・・・ああん・・・・・」
「翔太くんってば早漏なんだ。こんなおっきいのに早漏とか、意味ないね~」
ふふっと笑って、見下ろしてくる。
佑梨ちゃんはニンマリとしたサディストの笑顔を浮かべていた。その視線を前にすると、蛇ににらまれたカエルみたいに動けなくなってしまう。
「次はもたせてね」
佑梨ちゃんが当然のことのように言う。
再び、ゆっくりと、彼女の腰が動く。
「あ、だ、だめええ。や、休ませてええ」
「え~? なに言ってるの?」
パジュンッ。パンッ。パンッ。
ゆっくりと、ゆっくりと。
まるで助走をつけるように腰が打ち付けられる。射精直後の肉棒にその刺激は強すぎた。
「だ、だめえええ! イったばかりだからああ!」
「ん~?」
ニンマリ笑った佑梨ちゃんが腰を浮かす。
そして、亀頭だけを密壷にくわえこんで、そのままぐりぐりと回転させ始めた。
「ひいいいいいいいッ!」
射精したばかりの敏感になった亀頭をぐりぐりされて、ひとたまりもなく悶絶する。僕が苦しむ様子を見て佑梨ちゃんが満足そうに笑った。
「これすごいでしょ。亀頭だけグリグリするの、わたし得意なんだよね~」
ぐりぐりぐりッ!
佑梨ちゃんが腰を浮かして、その巨尻を回転させて僕のことを責めてくる。あまりの刺激に僕の体が暴れて悲鳴があがる。
「うわっ、暴れてる暴れてる。すご~い」
「ひいいいッ! ひいいいいッ!」
「このまま1時間とか2時間とか責めると男ってすぐに壊れるんだよ? 寸止めギリギリでやるとすぐ発狂するの。翔太くんもそうされたい?」
ニヤニヤと笑っている佑梨ちゃん。
彼女は本気だ。僕のことを永遠と虐めようとしている。僕の瞳から涙がこぼれた。
「ゆるじで・・・や、やめでえ・・・・」
懇願する。
僕の上にまたがって、亀頭だけをくわえこんでグリグリと腰を動かしている女性に、必死のお願いを続ける。
「ゆるじでください・・・・む、無理だから・・・・おねがい・・・・」
必死にお願いする。
けれど佑梨ちゃんはそんな僕のことをじいっと熱に浮かされた瞳で見下ろすだけだ。
「もっと必死にお願いしろ」
ビクンッ!
その冷たい声に僕の体が震える。
「ほら、もっとお願いしろ。腹の底から声出せよ」
「ひいいいいッ!」
「はやくしろ。壊すよ?」
グリグリグリッ!
乱暴に腰が動く。
人質にとられている肉棒が彼女の象徴でミンチにされて悲鳴をあげていた。
「ゆ、ゆるじでくださいいいいッ!」
絶叫した。
頭上の佑梨ちゃんがニンマリと笑った。
「もっと」
「た、たじゅげでえええッ! たじゅげでええええッ!」
「もっと」
「お願いしますううッ! ゆるじでえええッ!」
どんなに叫んでも許されない。
それどころか佑梨ちゃんの腰の動きはどんどん強さを増していく。体がびくんびくっと跳ねる。痙攣をしたように暴れていく。しかし、
「暴れるな」
ぎゅううううッ!
佑梨ちゃんが僕の両手をつかんでベットに叩き潰した。そのまま体を押さえつけられて身動きがとれなくなる。腰のぐりぐりは継続。自分は動きたくても動けない。僕に許されたことは言葉を発することだけだった。ぽろぽろと涙を流しながら、ひとりでに言葉が出てきた。
「ごめんなさいいいいッ!」
謝る。
頭上の佑梨ちゃんに向かって、必死に、謝る。
佑梨ちゃんの瞳がキラリと光った。
「もっと謝れ」
彼女がさらにグリグリを強くして乱暴に言う。
「ほら、謝れ。はやく」
「ごめんなさいいいいいッ!」
「なにに謝ってるの?」
「が、我慢できなくてごめんなさいいいッ! 佑梨ちゃんを気持ちよくできなくてごめんなさいいいッ!」
必死に。
涙をぽろぽろ流しながら、
ひたすら謝罪する。
「ふふっ」
佑梨ちゃんが笑った。
まるで聖母みたいな慈愛に満ちた表情。
許してもらえる。そう思って安堵する。彼女が僕に許しの言葉を・・・・・・
「もっと謝れ」
パンパンパンッ!
乱暴に腰が振られて僕の体が痙攣する。
僕の腕を握った彼女の手に力がこもる。
頭上にはニンマリと笑った佑梨ちゃんがいた。
「このまま、朝までやるからね」
悪魔。
サディスト。
その視線によって、僕の体が歓喜にふるえる。
彼女が確信的な笑顔を浮かべて、言った。
「これから、たあっぷり調教してあげるよ」
つづく