どうしようもなく幸せな日々が続いた。

 僕はジムに通い、周囲の女の子たちの圧倒的な力の中で劣等感に苛まれながら、筋トレをする。

 夜になって、真由美ちゃんからキスをされる。

 激しいキスで失神され、

 溶ろけるキスで射精させられる。

 そんな毎日が続いたある日、その日は少しだけいつもと違っていた。

 二人きりになったジムのラウンジ。

 そこで真由美ちゃんはこう言ったのだ。

 今日は別のところ舐めてあげる。


 ジュルジュルジュパッ! じゅじゅッ!!


「あ・・・あ・・・・ああん・・・・」


 唾液音と僕の喘ぎ声。

 僕の体はさきほどから溶けそうになってしまったいた。

 こんなところを舐められるくらいで、なぜここまでの快感が生まれるのだろう。

 僕は真由美ちゃんに、右手を舐められているに過ぎないのに。


 じゅぱあ・・・・ジュルルッ!


「ひいい・・・・はあんん・・・・・・」


 まるで美味しいアイスクリームでも食べるかのように、僕の右手を味わっている真由美ちゃん。

 右手の指と指の間にも舌を絡ませ、じゅるじゅると舐めあげていく。

 普通、手を舐めるというのは相手に奉仕する形となると思うのだが、真由美ちゃんの場合は違っていた。

 どこまでの嗜虐的。

 僕は椅子に座って、右手を辺りまであげている。

 まるで女王様に自分の右手を捧げているような恰好だ。

 その捧げられた右腕を、仁王立ちの真由美ちゃんが両手で包み込み、逃がさない形となって僕の右手を貪り喰う。

 頭上からは僕の表情を冷徹に観察する視線。

 それは僕の快感を全て把握し、弱いところをさらに責め、僕をトロトロにしていってしまう。

 さきほどから腰に力が入らない。

 椅子に座ってなければ、そのまま床にずるずるとへたりこんでしまっていただろう。

 それほどまでの快感を真由美ちゃんは僕にたたき込んでいった。


「ふふっ、どう? 気持ちよかった?」


 真由美ちゃんが僕の右手から口を離して言った。

 ねっとりとした視線が頭上から降り注いでくる。

 にんまりとした笑顔がとてもとても魅力的だった。


「手、舐められてるだけなのに、イきそうになったでしょ。まあ、このまま続けてけば、そうなるんだけどね」

「す、すごすぎて・・・・きもちよかった」

「ふふっ、感謝しなさいよね。これ、ほかのやつにはしたことないんだから。って、キスのほうも久しぶりなんだけどさ」


 ふふっと悠然と笑う真由美ちゃんだった。

 僕は椅子に座って、息も絶え絶えといった感じだ。

 それを仁王立ちの真由美ちゃんが笑顔で見下ろしている。

 目の前に大きな肉の壁があるような圧迫感。

 脂肪ではない柔らかい筋肉の塊。

 野性味に溢れたアマゾネスが、さて本題といった具合に切り出した。


「じゃあ良助、あんたも舐めてよ」


 真由美ちゃんが右手をこちらに差しだしながら言った。

 椅子に座ったままの僕の目の前に、彼女の大きな手が差し出される。

 僕は頭上の真由美ちゃんを思わず見上げて、呆然としてしまった。


「なによその呆けた顔。まさか、人には舐めさせておいて、自分は舐めたくないって、そういうわけ?」

「え、いや・・・・・・」

「そんなの不公平じゃない。わたしだけ舐めるなんて、ずるいと思わないの?」

「そ、そういうわけじゃないよ。ただ驚いただけで。ごめん、舐めるからさ」


 僕は真由美ちゃんの腕を手に取った。

 口元を彼女の手の直前までもっていく。

 真由美ちゃんの手に口づけをする直前で止まり、ゴクンと唾を飲み込んだ。

 恥ずかしさと、倒錯感。

 その感情がもう一度僕に躊躇させ、辺りは一瞬静寂に包まれる。

 それでも、僕はおずおずと、彼女の右手に舌を這わせた。

 ぺろぺろと、たどたどしく真由美ちゃんの右手を舐めていく。


「ふふっ、くすぐったーい」


 おどけたように言う真由美ちゃんだった。

 彼女は男に手を舐めさせているというのに、まったく堂々としていた。

 まるで男に自分の体を舐めさせることに慣れているかのように、僕の奉仕を当然のものとして受け止めていた。

 僕はやはり恥ずかしくて、真由美ちゃんの顔を見ることができず、下を向いて舐め続けた。


「ほら、下向かないで。顔を上げて、私の目を見る」


 筋トレのインストラクターをするかのように命令してくる真由美ちゃん。

 僕は彼女の右手を頬張りながら、上目遣いで頭上を見上げた。

 そこには、こちらをニンマリとした笑顔で見下ろす真由美ちゃんの姿があった。


「もっと舌を動かす。そんなんじゃくすぐったいだけだよ」

「ふぁ、ふぁい」

「そうそう。それで、強弱をつけていくの。ほら、一カ所だけ舐め続けない。手をまんべんなく。ずっと同じところだと感覚麻痺しちゃって気持ちよくならないでしょ」

「ふぉ、ふぉめん」

「だからそれじゃあ弱いって! もっと強く! 恥ずかしがってちゃ、いつまでたっても私を満足させられないわよ」


 真由美ちゃんの叱責が飛ぶ。

 彼女に叱られるたびに、僕の体はビクンと震えて、ひたすら真由美ちゃんの手を舐めることに集中させられる。

 手を舐めることの練習・・・・・・いや、練習というよりも調教だ。

 動物に芸を教えるために、厳しい調教を施していくのと同じように、真由美ちゃんは僕のことを調教していく。

 ぺろぺろと舐め続ける。

 女の子の手を。

 同級生の女の子を手をひたすら、ひたすら。

 彼女の許しがなければ舐めるのをやめてはならないことは、真由美ちゃんのこちらを冷たく見下ろす瞳を見れば一目瞭然だ。

 僕はひたすら、彼女の手に舌を這わせていった。

 ・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・

 ・・・・

 ・・

「しょうがないわね。今日はこれで終わりにしましょう」


 どれくらいの時間が経ったのだろう。

 ようやく許しをもらって、僕は真由美ちゃんの右手から口を離した。

 彼女の右手は僕の唾液まみれになっていて、僕の口のまわりもこぼれた唾液で汚れてしまっている。

 満足に息もできないくらいだったので、僕は椅子からずり落ち、地面にへたれこんでしまった。


「ちょっとこれくらいでそんなに疲れるなんて、情けないわね」


 頭上からの怒った様子の言葉。

 恐る恐る頭上を見上げると、そこには腕組みをしてこちらを見下ろす真由美ちゃんの姿があった。


「ふぉ、ふぉめんなはい」

「呂律もわまらなくなっちゃったわけね。まったく、あれだけ私がキスで慣らしてやったっていうのに、これじゃあ先が思いやられるわ」


 ふうとため息。

 彼女は仕切り直すようにして言った。


「ま、初回はこんなもんかもしれないわね。これから、きっちり仕込んでいくから、そのつもりでね」


 真由美ちゃんは唾液まみれの右手を僕の眼前に差し出して、ぐーぱーぐーぱーと手を開いて閉じてを繰り返した。

 そのたびに、僕の唾液が真由美ちゃんの手の中でネバネバになっていく。

 それはまるで、僕の液体が、彼女に蹂躙されていくようでとてもイヤらしく思えた。

 
 *


 その後、僕と真由美ちゃんの関係には一つの変化が現れた。

 ジムで体を鍛える、真由美ちゃんにディープキスをされる・・・・・・そして、僕が真由美ちゃんの手をぺろぺろと舐めるというその行為だ。

 ジムが終わり、ディープキスで骨抜きにされて、呂律もまわらなくなった舌で、真由美ちゃんの大きな手を舐めあげていく。

 僕が舐めるたびに、真由美ちゃんは厳しく叱責を繰り返し、僕に適切な舐め方を教えていった。

 それが何日を何日も続いた。

 少しづつ、真由美ちゃんの叱責は少なくなっていった。

 そちゃあ、まったく怒られないということはありえない。

 しかし、少しづつではあるが、真由美ちゃんは、僕の奉仕に満足を感じているように思えた。


「うん、よくなってきてるじゃない」


 真由美ちゃんが、自分の手を前に差しだし、僕に舐めさせながら言った。

 いつものジムのラウンジ。

 真由美ちゃんは仁王立ちで立ち、僕は床に膝まづいていた。

 女王陛下が家臣に手の甲にキスさせて忠誠を誓わせるように、

 僕は真由美ちゃんの足下に膝まづいて、差し出された彼女の手をぺろぺろと舐めあげていった。


「教えたこともできてるし・・・・・・・よし、次はフェラ」

「ふぁい」


 命令。

 僕はそれを受けて、口を大きく開けて、真由美ちゃんの指先を口の中にくわえ込んだ。

 そのまま、顔を上下に動かし、真由美ちゃんの手をしごいていく。

 この間も舐めることは止めてはダメで、僕はえずきながら、上目遣いで真由美ちゃんのことを見上げて、その疑似フェラを続けた。


「うん。上出来ね。今日はこれで許してあげる」


 真由美ちゃんの許しが出て、僕は彼女の手を離した。

 激しい運動が終わって、僕はいつものように息も絶え絶えといった感じで床にへたり込んでしまう。

 いつもはそのまま真由美ちゃんはシャワールームへと行くのだけれど、今日は違った。


「ふふっ、がんばったわね」


 そう言いながら、真由美ちゃんが、僕の頭を撫で始めた。

 慈愛に満ちたような、優しげな手つき。

 彼女の大きな手が、僕の頭を愛撫するほどに、頭が溶けて、じーんと麻痺するのを感じた。

 ふあああんんっと、声まで溶けてしまって、多幸感でおかしくなりそうだった。


「ちょっと、なんて声だしてるのよ」


 そう言って、真由美ちゃんはますます撫でる手に力をこめて、わしゃわしゃと僕の頭を撫でた。

 じっと、僕のことを見下ろしてくる真由美ちゃん。

 彼女は優しくほほえんで、言った。


「ま、合格にしておいてあげようかな」


 そういうと、彼女は床に膝まづいている僕のことを抱き起こした。

 そのまま彼女の両腕が僕の背中にまわされて、力強く抱きしめられる。

 彼女の大きな胸が僕の矮小な胸板を征服する。

 真由美ちゃんの顔は僕の顔の間近だった。

 身長差から、僕の足は地面につかずに、彼女に抱きしめられて宙づりにされてしまっていた。


「今度の日曜日。うちに来て」

「え?」

「わたしの家に来なさいっていってるの。住所はあとでラインしておくから」


 初めての申し出。

 これまで、僕と真由美ちゃんの関係はこのジムの中で完結していたのだ。

 それが初めて、真由美ちゃんの家に招待された。

 僕は嬉しくなって、真由美ちゃんの大きな体に自分から抱きついた。


「それで、ちょっと用事があるから、わたし日曜日までジムに来れないと思う」

「え? そうなの?」

「そんなにがっかりしたような顔しないでよ」


 呆れたような、しょうがないなあとばかりの表情を浮かべる真由美ちゃんだった。

 どうやら家の用事があるらしく、その間はジムには来れないらしい。

 次に会うのは日曜日、真由美ちゃんの家で、だった。


「その代わり、これからたあっぷり、可愛がってあげるからさ」

「あ、あ、ンンッムウウ」


 真由美ちゃんの舌が僕の口内に進入してくる。

 縦横無尽に暴れ回る真由美ちゃんの舌。

 抱きしめられ、宙づりのまま拘束され、僕は真由美ちゃんにされるがままになる。

 どっぴゅううう!!

 すぐに僕は射精させられ、それが止むこともなく続いた。

 僕はそれをひたすら甘受するしかなかった。


(続く)