あの一件があってからというもの、僕と真由美ちゃんとの間には、それまで想像もしていなかった関係性ができあがっていた。
ジムが終わってからのディープキスだ。
毎日毎日、例外なく、ジムが終わった後僕は真由美ちゃんに唇を奪われ、骨抜きにされていた。
その激しさは回数を重ねるほどに増しているようにも感じられるほどだった。
手加減をしている。
まだまだ、真由美ちゃんの本気はこんなものではないと言われているようで、僕は戦々恐々とするしかなかった。
これが毎日のように続くのだ。
僕はあこがれだった真由美ちゃんと会えるだけでも幸せだというのに、こんなにも幸せなことがあってもいいものかと、毎日のように幸せを実感していた。
*
毎日の日課のように、ジムに通ってトレーニングをする。
自分のトレーニングの順番は真由美ちゃんが決めてくれていて、僕はそのとおりにトレーニングを行っていた。
汗をかきながら黙々と続ける。
次は胸筋を鍛えるためのマシンだ。
重量については自分でストッパーを動かして調整しなければならない。
現在のストッパーの位置は100キログラムになっていた。
僕は何回目かになるか分からない劣等感を感じながら、そのストッパーをはずして、30キログラムの位置へと調整した。
これが僕がトレーニングできる最重量なのだ。
これ以上になると、筋肉を痛めてしまう可能性がある。
このジムの会員のほとんどが年下の女の子たちで。
そんな女の子がこのマシンでトレーニングしたときには、100キログラムを使用していた。
僕はその半分にも満たない30キログラムをあげるのが限界・・・・・・・。
どこかで屈辱を感じながら、僕はマシンに座り、バーを動かす。
歯を食いしばって、いっしょうけんめいに両手でバーを押し上げる。
「ふんぬッ!」
顔を真っ赤にして、全力。
一回、二回・・・・・・・
そのとき、目の前に女の子が立つのが分かった。
「ふふっ、30って」
童顔の女の子だった。
確実に僕より一回りは年下の女の子だ。
それなのに体の発育はよく、堂々とした体格だった。
身長ももしかしたら僕よりも高いかもしれない。
露出が多い恰好で、へそ出しのホットパンツ姿。
その長い脚はどこまでも健康的で、隠しきれない筋肉の筋が、柔らかそうな皮下脂肪の下から自己主張をしていた。
そんな彼女に一瞬だけ見とれて、次の瞬間、彼女が腕につけている腕章を見て、はっと我に返った。
彼女のつけている腕章の色は銀色。
発達した体躯以外はこんなにも幼い様子なのに、彼女はこのジムに数名しかいないAクラスなのだ。
「あ、ど、どうぞ」
僕はトレーニングを中断して、自然と敬語になって言った。
マシンから腰をあげて、少女に譲る。
少女はそれを当然のように受け止めて、堂々とマシンに座った。
そして、30キログラムのストッパーを見てクスリと笑い、優越感を感じさせる手つきでそのストッパーを120キログラムに刺した。
「言っておくけど、これはウォーミングアップだからね」
少女が僕に言って、彼女のトレーニングが始まった。
ぎしイイっと、120キログラムの重りが勢いよくあがり、それが落ちていく。
少女が胸筋を鍛えるたびに、その大きな胸が少女の腕によって挟みこまれ、その谷間がさらに強調された。
何度も何度も。
一度も休むことなくスムーズに、彼女は僕が限界だった重さの4倍でトレーニングをしていた。
しかも、彼女は笑っていた。
笑いながら、僕に見せつけるようにして、重りをあげていく。
少女の言うとおり、彼女にとってこの重さはトレーニングに入る前のウォーミングアップに過ぎないのだろう。
彼女が本気になったとき、どうなってしまうのか。
少女と僕の力の差をまじまじと見せつけられ、僕は何度目かになるか分からない目眩みたいなものを感じた。
このようなことは日常茶飯事だった。
僕と同世代、または年下の少女たちが、僕とは比べものにならないほどの重りで、トレーニングをしている。
その育ちきった豊かな体の中に、僕では決して勝つことができない筋肉力を秘めているのかと思うと、僕は今までの常識みたいなものが音をたてて崩れていくのを感じていた。
男は女よりも強い。
そんなことは、少なくともこのジムの中ではあてはまらない常識だった。
*
ジュパっ・・・・・じゅるるるッ!・・・・・ジュルぱ・・・・・・。
「あひいんん・・・・・アアン・・・・ひいい・・・・・・・・」
唾液音と悲鳴のような喘ぎ声。
ジムの終わり、今日も真由美ちゃんは僕の唇を奪い、熱烈なディープキスを施していた。
毎日のように続く日々の日課。
その行為は少しづつ過激になっていき、僕は唇が腫れるまで吸い尽くされる。
真由美ちゃんに抱きしめられ、拘束されている僕の体。
その腕の力も日々の中で少しづつ強くなっているようだった。
ぎゅううううううッッ!!
「ウンムウウウ!!」
まるでプレス機のように力強く、抱きしめてくる真由美ちゃんの腕。
僕の体は彼女の腕とその大きな胸で潰され、呼吸が満足にできない。
まるで片腕で行うベアハッグのような恰好。
僕は悲鳴をあげるが、それすらも真由美ちゃんの舌に絡みとられる。
じゅるるるッ! ジュバッ! ジュジュ!!
「アヒイインン・・・・あはん・・・・ん、んんむう」
ベアハッグと過激なディープキスで呼吸ができない。
酸欠になり、意識が遠のいていく。
視界が少しづつ暗くなる。
そんな僕の様子を真由美ちゃんは冷徹な観察者の視線で凝視してくる。
僕は・・・・・・・
なにも・・・・
意識が・・・
消え・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・
・・・
「・・・・すけ・・・・・良助」
はっと覚醒した。
きょろきょろと周りを見渡す。
僕の体は地面に横たわっていて、頭上には真由美ちゃんの顔。
どうやら膝枕されているらしい。
僕の後頭部には、柔らかくも弾力のある真由美ちゃんの太ももがあった。
「よかった。気づいたみたいだね」
「ふぁ、きへつしへはんでふか?」
「ふふっ、呂律まわってないよ? 舌つかれちゃったの?」
どうやら過激なディープキスの結果、僕の舌はしびれて満足に動かすこともできなくなってしまったようだ。
それなのに、真由美ちゃんは平然と喋っている。
その性能の差がまざまざと分かる瞬間だった。
「少しやりすぎたみたいだね。大丈夫?」
「へんへん、だいひょうぶへす」
「そう? それならいいけど」
なんだか真由美ちゃんの声が優しい。
膝枕までされ、頭上の真由美ちゃんの顔もどこか穏やかだ。
さらに彼女の片手がゆっくりと僕の頭を撫で始めた。
慈愛に満ちた優しい手つき。
その愛撫は頭が溶けそうになるほど気持ちよかった。
「ふあああああああ」
「ちょっと、頭撫でただけでなんて声だすのよ」
「はって・・・きもひいいい・・・・・・・」
「まったく。しょうがないわね」
言うと真由美ちゃんが僕のことを持ち上げた。
ひょいっという感じで体が浮き、そのまま真由美ちゃんの太ももの上に乗せられる。
真由美ちゃんは脚を大きく前に伸ばして床に座っている。
その太ももの上に跨がるようにして、僕は座らされた。
そのまま僕は彼女の両腕で優しく抱きしめられた。
さきほどまでの潰されるほどの力ではない、ただの抱擁。
近くに、真由美ちゃんの顔があり、僕の胸板には彼女の大きな胸がぐんにゃりと潰れていた。
「ふふっ、こうするとやっと身長差もなくなるわね」
「そ、そうへすね」
「真正面から見つめ合って、まるで身長が同じ恋人同士みたい」
彼女はおかしげに笑って、僕の顔をまじまじと眺めていた。
そんな彼女の視線が恥ずかしくて、僕は顔を真っ赤にするしかない。
「良助もがんばってるし、ご褒美あげるね」
目、閉じててもいいよ。
そういうと、真由美ちゃんが優しく僕の唇を奪った。
何度目になるか分からない真由美ちゃんとのディープキス。
しかし、これまでとは違って、その舌は僕の口内で優しく動くだけだった。
ねっとりと、甘いキス。
暴力的なまでの過激さはなりを潜め、僕に快楽だけを与えるような舌使い。
(なにこれえ・・・溶けちゃう・・・・・)
まるで腰が真由美ちゃんの舌で直接舐められ、溶かされてしまうようだった。
じゅぱじゅぱと彼女の舌が動くたびに、僕の体はビクンビクンと震えた。
その震えも、真由美ちゃんの抱擁で優しく受け止められる。
多幸感でどうにかなってしまいそうになる。
体の震えがさらに増し、僕は限界に達した。
「い、いっきゅうううう!!」
ドビュッ!
射精。
体が震え、なすすべもなく白い液体が発射される。
それは滑稽にも全てパンツの中に放出され、なんの生産性ももたらさなかった。
ジュルル・・・ジュパア・・・・。
射精している最中も真由美ちゃんのディープキスは続き、僕の体はますますと痙攣していった。
その痙攣は真由美ちゃんの逞しい腕によって抱きしめられ、拘束されて、唇を溶かされていく。
けっきょく、真由美ちゃんのトロケるようなキスが終わったのは、僕の射精が完全に終わってからだった。
「ふふっ、すごいっしょ」
真由美ちゃんが至近距離から言った。
僕は真由美ちゃんの太ももの上でなすすべもなく放心するばかりだ。
僕のおでこに真由美ちゃんのおでこがぴったりとくっついて、彼女の吐息が感じられるほどの至近距離から、真由美ちゃんが話しかけてくる。
「これやると、男はみんな射精しちゃうのよね。体びくんびくんさせて、直接触ってもないのにね。それで墜ちちゃう」
「あ・・・あああ・・・・」
「ふふっ、今の良助みたいにね。とろとろに溶かされちゃって、放心しちゃうんだ。ねえ、そんなに気持ちよかった?」
「う・・・うん・・・・しゅごいいい・・・・・」
「そう、それならよかった。それにしても、ずいぶんイったね」
言うと真由美ちゃんが僕のドロドロになった下半身を触ってきた。
「はうう・・・・・」
「ちょっと、なんて声だしてるのよ。まったく」
そう言って、真由美ちゃんはほほえむのだった。
僕は放心状態のまま、そんな彼女がとても綺麗だなと思った。
真由美ちゃんの存在だけを残して、僕の世界からは全てが消え去ってしまったように感じられた。
(続く)