もはや第13戦隊に魔王軍を討伐する力はなかった。
戦隊協会から言い渡されていた視察の日まで、レッドたちは何もできなかったのだ。
それどころか、ただひたすらに魔力を搾りとられてしまった。
マゾ性癖を刺激されては魔力を製造し、それを奪われていった。
サキュバスたちのエサ。
魔力を提供するためのマゾ家畜たち。
レッドたちは屈辱と後悔に苛まれながらも、どうしようもなく、詩織たちの玩具にされていった。
*
何もできないまま時間だけが流れる。
あっという間に視察の日がおとずれた。
第13戦隊の生き残りたち―――レッドとイエロー、そして比奈は、世界最強戦隊による視察の日を静かに受け入れた。
「なるほど、戦隊メンバーのうち3人が敵勢力に吸収されたと、そういうことですね」
眼鏡をかけた男―――世界最強戦隊のブルーがそう言った。
レッドたちの報告を受けて、視察メンバーたちは驚きを隠せないようだった。
「敵の情報は?」
「……ここに」
レッドがまとめていたデータを渡す。
詩織との戦闘結果。さらにはティファとエイファの情報を可能な限り記載した報告書だ。その内容はすなわちレッドたちの敗北の記録だった。自分たちがどれだけ弱いか、自分たちがどれだけ惨めな目にあってきたかを明らかにしたもの。視察メンバーたちが素早く報告書に目を通していく。
「やれやれ。ここまで事態が深刻になる前に、協会にはきちんと報告してもらいたかったですね」
世界最強戦隊のブルーがタメ息をついてから続けた。
「これでは敵にエサを与えていたのと同じです」
「う」
「みすみす敵勢力を強くしていたということを自覚しているんですか?」
「…………」
「どうなんです?」
丁寧な言葉遣いで容赦なく詰問される。けれどレッドは言い返すこともできない。彼の言っていることが正論だからこそ、何も言えずにうつむくしかなかった。
「おい、ブルー。その辺にしておけ」
涙がこぼれそうになった瞬間に助け船が入った。
部屋に入ってきた人物はレッドにとって顔見知りの先輩だった。
「起きちまったことは仕方ないだろう。あまり後輩を責めるなよ」
「そうは言ってもレッド。現場レベルの戦隊メンバーがコレでは、いくらたっても世界同時危機を解消できませんよ」
視察メンバーは協会指折りの戦隊メンバーなのだった。
戦隊協会が誇る最大戦力。世界最強戦隊の異名で呼ばれ、数々の世界同時多発危機から人類を救ってきた英雄たちだ。他の戦隊の尻ぬぐいも彼らの仕事だった。
「後輩がやらかしたことは先輩が助けてやればいいんだ。そうだろう?」
世界最強戦隊のレッド―――最強レッドが真面目な顔をして言った。
それに対して最強ブルーが肩をすくめてから、
「やれやれ、レッドには困ったものですね」
少しだけ和らいだ表情での言葉。しかしそれがすぐに厳しい表情となった。
「第13戦隊は本日をもって解散します。第13戦隊が担ってきた敵勢力―――通称「第3波魔王軍」は我々、世界最強戦隊が担当します。以上、解散」
それで話しは終わった。
戦隊協会が誇る世界最強戦隊。そんな彼らが詩織たちの相手をするというのだ。レッドはホっと息を吐いて、自分の肩に乗っていた荷物が消えたのを感じた。
「おい、竜雄」
最強レッドが、元第13戦隊のレッドにむかって声をかけてくる
「ちょっと話そうぜ?」
「……はい」
レッドが力なく返答した。
視察メンバーである世界最強戦隊の面々が後片付けをしていく中―――二人は連れだってミーティングルームを出て行った。
*
「ああ、なつかしいな」
最強レッドがグルリと部屋を見渡しながら言った。
二人は基地内にあるレッドの部屋に来ていた。そこは最強レッドにとっても思い入れがある場所なのだ。
「大事に使ってくれてるみたいじゃないか、竜雄」
「そりゃあ、先輩から受け継いだ部屋ですからね。傷一つつけてませんよ」
最強レッドは元々第13戦隊でレッドを拝命していたのだった。活躍が認められて、世界最強戦隊に引き抜かれていった。そこでも実力を見せつけ、今では知らぬ人がいない存在になっている。そんな先輩からレッドはこの部屋と、輝かしい第13戦隊のレッドの称号を引き継いだのだった。
「すみません先輩。俺がふがいないばかりに」
うなだれてレッドが言った。
本来であれば詩織たちの相手は第13戦隊がしなければならないのだ。レッドが「ぎゅっ」と拳を握りしめた。
「先輩に迷惑をかけることになってしまって、申し訳ないです。確か先輩たちはノア聖堂教会と戦っているんですよね。異世界から侵略してきた狂信者たち。第9戦隊と第10戦隊の連合軍があっという間に殲滅されてしまったとかいう、あの強大な敵と」
そんな世界の敵そのものと先輩は戦っているのだ。それなのに魔王軍の相手までさせることになるなんて、どんなに負担なことだろう。
「そんなに思い詰めるな」
最強レッドが優しく言う。
「それにノア聖堂教会の法王と幹部連中はついこの前に殲滅できたんだ」
「え?」
「あとは残党狩りが残っているだけなんで、俺たちは魔王軍だけに集中できるってことだ。だから気にするな」
あの人類最大の敵と言われていたノア聖堂教会をこの短期間で殲滅してしまったというのか。レッドは驚きで一瞬何も言えなくなった。
「す、すごいですね先輩は」
「いや、たまたまだよ。みんなの力もあってたまたまうまくいっただけだ」
そんなはずがないことはレッドが一番分かっていた。やはり先輩はすごい。この人ならばティファやエイファ、さらには詩織のことも討伐してくれるだろう。
「お前も魔王軍討伐のため協力してくれ」
「……先輩」
「第13戦隊が解体されたからって戦えなくなるわけじゃないんだ。必ず名誉挽回の機会はおとずれる。あとはお前次第だ」
頼れる先輩。
こんなふがいない自分のことも気にかけてくれていることが分かってレッドの視界がにじむ。しかしこんなところで泣くわけにはいかなかった。
「はい、よろしくお願いします、先輩」
レッドの覚悟は決まっていた。
先輩のもとで詩織たちの討伐を手伝う。おそらく足手まといにしかならないだろう。けれど少しでも先輩たちの手助けをしたい。レッドは頼もしい先輩のもとで魔王軍討伐隊の一員になることになった。
●●●
討伐ははやくも翌日に実行された。
敵がエナジードレインを駆使する以上、時間は敵の味方にしかならないという判断だった。少しでも討伐が遅れれば、敵はさらに強くなってしまう。世界最強戦隊が遅れをとることはないだろうが、魔王軍を簡単に始末するためには、早急に討伐を実施する必要があった。
(今日で詩織たちは終わりだ)
レッドが内心で思う。
どんなに詩織たちが強くても、先輩たちには勝てない。目の前の先輩たちはまさしく歴戦の勇者そのものだった。練度も士気も高い。世界最強戦隊が詩織たちに負けるイメージがレッドには一切わいてこず、彼らの勝利を疑いすらしなかった。
「この廃墟です」
道案内役を担ったレッドが言った。
目の前には魔王軍の本拠地である廃墟ビルがある。夜の暗闇の中でぽつんと立っている不気味な建物を前にして、世界最強戦隊の面々が堂々と並んでいた。すると、
「やっほ~、エサさんたち、こんにちわ~」
「おいしそうですね」
ティファとエイファだ。
頭から角を生やした長身爆乳サキュバスたちが世界最強戦隊の前に現れた。
「おまえらが旧魔王の娘か」
最強レッドが言った。
ティファとエイファはニヤニヤと楽しそうに笑うだけだった。
「親玉はどこにいる? 新魔王はどこだ」
「お姉ちゃんは大事な役目があって取り込み中です」
「あんたらみたいなザコを相手にしてるヒマはないってこと」
ティファとエイファは世界最強戦隊を前にしても舐めきった態度を崩さなかった。けれどこれは明らかな油断だ。自分の実力と相手の実力を把握できていないことからくる慢心。世界最強戦隊の面々が、フっと失笑した。
「そうか。ならまずはお前たちからだ」
最強レッドの顔が厳しいものになったと同時、世界最強戦隊のメンバーが全員変身を遂げた。それぞれのイメージカラーにあった変身スーツを着用した男たちが5人、構えをとっている姿は神々しかった。
「自分たちの慢心を悔いるんだな!」
最強レッドたちが襲いかかっていく。
レッドは期待に瞳を輝かせて、始まった戦闘を食い入るように見つめた。
先輩たちならティファたちに勝てる。
全人類における最大戦力。
自分たちのようなザコでは手も足も出なかったが、先輩たちならば別だ。赤子をひねるようにティファとエイファを血祭りにあげて、すぐに詩織も圧倒してしまうだろう。輝かしい人類の栄光を目の前で見られる。レッドは愚かにもそう確信していた。
*
戦闘が続く。
もはや勝敗は明らかだった。
一方的な虐殺の光景が目の前にある。
レッドはただ呆然とソレを見つめていた。
「な、なんで」
レッドが思わず声をあげた。
ティファたちと世界最強戦隊の戦い。
実力差は確かに歴然だったのだ。
一方的な蹂躙が続き、あっという間にボコボコにされていく。
レッドが一人だけ無事のまま、その声を聞いた。
「あはっ、やっぱザコじゃ~ん」
「よわすぎですね」
ティファとエイファだ。
彼女たちは無傷だった。それとは対照的に世界最強戦隊の体はボロボロで、もはや満身創痍だった。
「く、くそおおおおおッ!」
最強レッドが決死の一撃を放とうとティファに突進する。己の全身全霊をかけたパンチ。レッドから見ても練度が高い一撃だ。それなのに、
「おっそ」
ドッゴオオオオンンッ!
「ぎゃあああああああッ!」
ティファが最強レッドのパンチをひょいっと避け、代わりに膝蹴りをその胴体にめりこませてしまう。逆「く」の字に曲がった最強レッドがそのまま吹き飛んでいき、廃墟ビルの壁にめりこんでしまった。
「ほれほれ~」
容赦のない追撃。
ティファがニヤニヤした笑顔のまま、壁にめりこんだ最強レッドのもとに一瞬で到達し、直蹴りをかます。ティファの大きな足裏が最強レッドの顔面を踏み潰し、廃墟ビルの壁にさらにめりこませてしまった。
「う……うううッ」
呻きながらも最強レッドには息がある。
しかし壁にめりこんだ最強レッドは身動き一つとれない様子だった。その近くに仁王立ちになったティファがニヤニヤしながら言う。
「ねえ、いつティファの慢心を教えてくれるの?」
「ううッ」
「ねえ、どうなのよ」
「ううううううッ!」
「呻いてても分からないんだけど?」
ティファが最強レッドの髪の毛をつかむ。
そのまま壁にめりこんでいた最強レッドの体を引き抜いてやり、宙づりにした。身長差があり過ぎるので最強レッドの足は地面についていない。ダランと脱力して宙づりにされている姿からは世界最強戦隊の面影だって感じることができなかった。
「お前だけじゃない」
ニンマリした笑顔でティファが言う。
「ほら、お仲間さんも仲良くやられちゃった」
ぐいっと最強レッドの体の向きを変えて、見えるようにしてやる。髪の毛をつかまれ宙づりにされたまま最強レッドは絶望の表情でそれを見た。
「み、みんな」
最強レッドの視界の先には仲間たちの姿があった。
エイファの容赦ない絞め落とし地獄で悶えている男たち。最強レッド以外のメンバー全員が、エイファの大きな体によって絞め落とされていった。
「はい、また同時に墜ちましょうね」
ぎゅっ。
片手間程度の労力で絞め落としが完成してしまう。エイファは右手で最強ブルーを、左手で最強イエローを、太ももで最強ブラックを、ふくらはぎで最強グリーンを、それぞれ締め上げて、絞め落としてしまった。
「「「「グッボオオオオッ!」」」」
4人分のイビキが同時にあがる。
滑稽にも気絶した男たちが「ビクンビクンッ♡」と痙攣していく。そんな惨めな男たちを鑑賞したエイファが、またしても「ぎゅっ」と力をこめた。
「「「「かっひゅううッ!?」」」」
あまりの絞めつけで男たちが意識を取り戻す。
目覚めてもそこはエイファの拘束下で、全員が絶望した表情を浮かべた。
「あっという間に気絶しましたね」
にっこりとエイファが続ける。
「さきほどからまったく抵抗できていません」
「うううッ」
「情けないとは思わないんですか?」
「うううううううッ!」
「あなたたちは世界最強戦隊って言われてるみたいですけど間違ってるんじゃないですか? 世界最弱戦隊って名前に変えたほうがいいと思いますよ?」
さんざんになじられる。
男たちはそれを聞いてもうなだれるだけだった。エイファの執拗な絞め落としによって心が折られてしまっているのだ。エイファがにっこりと笑った。
「はい、マゾダンス開始」
ぎゅうううううううッ!
「「「「かぎゅううううッ!」」」」
力がこめられる。
同時に男たちがジタバタと暴れ始めた。
その中でも悲惨な目にあっているのが最強ブルーだ。エイファの右手で首をわしつかみにされて宙づりになっている。鬱血した顔―――半開きになった口から垂れている舌――最強ブルーが両手でエイファの腕をつかんで、自分の首を引き抜こうと必死だ。両足をばたばた暴れさせてエイファの体をよろけさせようとしている。最強ブルーだけでなく他の戦隊員たちも暴れていく。4人の男たちの必死の抵抗。しかし、
「うふっ、暴れてる暴れてる」
エイファはまったくの余裕で、男たちが披露するチビマゾダンスを堪能していた。
2歳児サキュバスが男たちの痴態をじっくりと見つめている。男がじたばたと暴れているのを見るのが好きらしく、男たちのことをさらに惨めに暴れさせようと力がこもる。その目的どおりに男たちはチビマゾダンスを披露してエイファを楽しませた。
「墜ちろ」
ぎゅううううううううッ!
力強い首絞め。
右手と左手で絞められていた最強ブルーと最強イエローが一瞬にしてダランと脱力して宙づりになる。絞首刑を執行された罪人の亡骸が少女の手によって吊るされてブラブラと揺れ始める。太ももとふくらはぎで絞められていた男たちも四つん這いの体勢から力をなくして気絶していた。
「起きろ」
終わらない。
気絶させては覚醒させての繰り返し。
男を気絶させるということに偏執的なこだわりをもつエイファが、世界最強戦隊の男たちを玩具にして遊んでいった。
*
「う、嘘だ」
元第13戦隊のレッドがつぶやいた。
目の前の光景がどうしても信じられない。
あの強い最強レッドたちが、世界最強戦隊の男たちが、まるで相手になっていない。詩織を倒すどころか、ティファとエイファにすら勝てない。尊敬すべき目標だった先輩がボロ雑巾になっていくのを見て、レッドはガクガクと震えていた。
「きゃはっ、お~ら、どんどん蹴っちゃうぞ~」
ティファが最強レッドを蹴って遊んでいく。
もはや最強レッドはサッカーボールだった。地面に倒れて起き上がろうとしたところをティファに蹴られる。吹っ飛んでいき壁に激突して、倒れた体を起こそうとしたところをまた蹴られる。子供がボール遊びをするかのように、ティファが最強レッドをボールにして遊んでいく。ティファの顔にはニンマリとした笑顔がずっと浮かんでいた。
「あはっ、顔面に入っちゃったね~。死んだ? ねえ死んだ?」
最強レッドの顔面に殺人キックが直撃して鮮血の火花があがる。
地面を吹き飛んで廃ビルの壁にシュートされた最強レッドが仰向けに倒れ、「ビクンビクンッ!」と危険な痙攣を繰り返していった。それを鑑賞して残酷なティファが爆笑している。
「うふっ、息吸えないですね?」
そのかたわらではエイファが遊んでいる。
たった一人に狙いを定めて徹底的に絞め落として遊び始めてしまった残酷なサキュバス。その相手は最強ブルーで、もはや正気を失ってしまった男が「あへあへ」と悶えている。眼鏡は砕け、あれだけ理性的だった表情がどこにもないことが衝撃だった。
「鼻と口を覆われて酸欠死するのは苦しいですか?」
エイファは最強ブルーの首を絞めているわけではなかった。
右手の手のひらで最強ブルーの口を覆い、同時に右手の人差し指と中指で最強ブルーの鼻を挟みこんで閉じているだけだ。まるでお遊びみたいにして最強ブルーの呼吸を奪う。惨めなチビ男が酸欠によって死んでいった。
(う、嘘だ……これは夢なんだ……)
そんな地獄絵図を見せられながらレッドが現実逃避を始める。
しかし目の前の光景が現実であるということを、レッドは思い知らされることになる。
「あ~、レッドさんの先輩たち、ボコボコにされちゃってますね~」
間のびした声が響き、レッドが震えた。
現れたのは新魔王だった。
詩織がニコニコと笑いながら歩いてきて、レッドの隣で立つ。その左肘が無造作にレッドの頭頂部に置かれる。肘置きの場所としてレッドの頭の位置がちょうどよかったからだ。ずっしりと重いその感触に、レッドの体がガクガクと震えていた。
「憧れの先輩だったんですよね?」
「ううううッ!」
「ふふっ、ブラックさんを吸収して、レッドさんの情報もあらかた把握してるので隠すことはできませんよ? 先輩に追いつくために努力してようやく第13戦隊のレッドの称号を手に入れたんでしょ?」
詩織の左肘がぐりぐりとレッドの脳天を押し潰す。身長差がないとできない芸当。レッドが目の前の少女との優劣差を教えこまれていく。
「そんな憧れの先輩が、ティファちゃんたちにボコボコにされてますね」
「うッ!」
「ほら、ティファちゃんが先輩の顔面を踏み潰して遊び始めましたよ? エイファちゃんもほかの4人をおっぱいで絞め落とし始めました。見えますか?」
見えている。
絶望でレッドが震える。それなのに何故かレッドの体が赤く輝き始めてしまった。そのことにレッド自身が驚愕する。
「はい、憧れの先輩がボコボコにされていくのを見て、興奮しちゃいました~」
「ち、違う」
「違いませんよ~。レッドさんは重度のマゾ家畜なんです。大事なものを壊されていくのを見て悦んじゃう変態さん。ほんと、マゾって便利ですね」
くすりと妖艶な笑みを詩織が浮かべる。
それだけで体の輝きが増したマゾ家畜。「ふっ」と鼻で笑った少女が、ようやく左肘を男の脳天からはなしてやった。
「それじゃあ、次はわたしがボコボコにしてきます」
「あ、あ、あ、あ」
「よ~く見ておくんですよ、マゾ家畜くん?」
詩織がティファたちのほうに向けて歩き出す。
レッドはその背中を見送るだけだ。止めなければならないのに体が動かない。尊敬していた先輩が詩織に壊されてしまう。それが分かっていてもどうすることもできなかった。レッドの体だけが赤く輝いていく。
*
「ティファちゃん、エイファちゃん、わたしにもやらせてよ」
そんな気軽な言葉だけで選手は交代となった。
これだけの強さを持つサキュバスたちが、従順に詩織に従っているということが異常である。世界最強戦隊のメンバーたちは、新たに現れた詩織を前にして戦々恐々としていた。
「ん~、ボロボロになったみなさんを相手にしてもつまらないですよね」
詩織が右手を軽く振った。すると、
「な!?」
世界最強戦隊のレッドが驚きの声をあげた。
それは他のメンバーも同じだった。彼らの体が一瞬に全回復して、傷一つない状態に戻っている。
「回復させてあげました。ダメージ一つ残ってないでしょ?」
「な、なんだと?」
「ボコボコのままだとつまらないですからね。これでやりましょう。もちろん、全員一斉にかかってきてくださいね。そうじゃないと勝負にもなりませんから」
ギリっと世界最強メンバーの面々が拳を握る。
舐められている。それは明らかだった。人類最強の戦力が、自分たちよりもはるか年下の少女に舐められてしまっている。それが彼らのプライドを刺激した。
「後悔させてやる。いくぞみんな!」
「「「「おうッ!」」」」
最強レッドのかけ声にメンバー全員が呼応した。
世界最強戦隊のあうんの呼吸。合図もなにもなく、最強レッドを中心にした波状攻撃が詩織に炸裂する。
(一撃で決める!)
最強レッドが決死の覚悟で拳に力をこめる。
己のすべてをかけた一撃。これまでの厳しい修行や強敵との戦いで得たすべての経験値がこめられた人類が到達できる最大火力。それが詩織の顔面にめりこんだ。
「「「「はああああッ!」」」」
ほかの4人のメンバーも己のすべてをこめた一撃を詩織に叩きこんだ。そのエネルギーは周囲一帯が焼け野原になるほどの熱量をもっていた。ビルは砕け、めくりあがり、霧散する―――現実離れした化け物が最強レッドたちの攻撃を吸収してしまわなければ、そうなっていたはずだ。
「な!?」
世界最強戦隊のレッドが驚愕の声をあげた。
詩織は無傷だった。5人全員の波状攻撃を受けながら、吹き飛ぶどころかまったくダメージを負っていない長身爆乳少女がそこにはいた。
「今のが全力なんですね」
ふふっと詩織が不敵に笑った。
「想像していたよりザコですね。勝負どころか遊びにもなりません」
その視線が世界最強戦隊の面々を舐めるようにして見つめた。
「うん、とっとと終わりにしましょう。あなたたちのプライドを粉々にへし折ってあげます」
詩織の姿が消えた。
一瞬で最強レッドの間近に移動。
気づけば少女の右手が最強レッドのおでこに近づけられていた。
その技の名前を誰もが知っていた。けれどもあまりにも場違いだった。自分の額に狙いを定めている詩織の右手を、最強レッドが呆然と見つめていた。
「はい、デコピンっと」
ドッガンンンッ!
人差し指によるデコピン。
親指で止められていた指一本が最強レッドのおでこに直撃し、それで終わった。
衝撃波で周囲の最強ブルーたちが吹っ飛んでいく。直撃をくらった最強レッドが首から上をミンチにされ、きりもみしながら吹き飛び、廃ビルの壁に突き刺さってようやく止まった。最強レッドの首が鮮血の噴水に変わる。一発。最強レッドは詩織のデコピン一発であっさりと殺されてしまったのだ。
「よわっ」
詩織が吐き捨てるように言う。
「デコピン一発で死んでしまうなんて情けない。でも安心してください。これで終わりになんてしませんから」
パンッ!
詩織が両手を打ち鳴らす。
肉片になった最強レッドの体が消えた。代わりとばかりに詩織の目の前で生きた最強レッドが召喚された。
「は!?」
肉塊から蘇生された最強レッドが驚愕している。
自分の顔を何度もさわって無事であることを確認している。認識と現実が一致しないというバグが最強レッドの混乱を増長させていた。
「なにを驚いてるんですか? ただの蘇生魔法ですよ」
「そ、蘇生?」
「はい、ほらこうやって」
無造作に再びのデコピン。
ニコニコ笑顔の詩織が放ったデコピンに反応すらできなかった最強レッドが、再び首から上を吹き飛ばされて、あっけなく絶命してしまう。
「ほい、蘇生っと」
パンッ!
詩織の手が打ち鳴らされる。
すると再び肉塊から蘇生された最強レッドが詩織の前に召喚された。
「こ、こんなこと」
世界最強戦隊の面々が顔面を真っ青にさせて震え始める。
蘇生魔法なんてこれまでの歴史の中で確認すらされていないものだった。そんな魔法を惜しげもなく披露する少女の姿に恐怖がわきあがってくる。
「どんどんいきますよ~」
始まったのは虐殺だった。
詩織が使うのは指一本だけだ。子供の遊びのようなデコピン攻撃。それが炸裂するだけで男たちは簡単に肉片に変えられ、絶命していく。
「ぎゃああああああッ!」
「ビッグウっつううッ!」
「ゆるピッギイイイッ!」
「ひっぎいいいいいッ!」
「おっぼおおおおおッ!」
ニコニコした笑顔のままで詩織がデコピンを放っていく。それだけで男たちの体がポンポンと飛んでいく。誰一人例外なく絶命し、肉塊に変えられた体がピクピク痙攣していった。
「ふふっ」
パンッ!
その手拍子が響くと蘇生させられる。
詩織の目の前に召喚されて、そしてまたデコピンで殺されるのだ。
それが連続して続いていった。
パンッ!
パンッ!
パンッ!
パンッ!
パンッ!
「ひいいいいッ! ひいいいッ!」
殺されていない時間に最強レッドは恐怖で悶える。
彼の眼前には詩織の右手がある。
人差し指が折り曲げられ親指でストッパーがかけられている状態。
いつ目の前の恐ろしい指が力を放つか分からない。あまりの恐怖に最強レッドは目をつむってしまう。それでもデコピンが放たれない。恐る恐る目をあけた瞬間にデコピンが炸裂し、最強レッドの命を奪った。
「ふふっ、ビビりすぎですよ、みなさん」
パンッ!
にっこりと笑った詩織がまた簡単に男たちを蘇生させて言う。
「どんどんいきますね~」
そしてまた始まるのだ。
デコピンと手拍子。
それが連続して続き、男たちが殺され、生きかえされ、そしてまた殺されていった。
*
「ゆるじで……ゆるじでください……」
殺し尽くされた男たちが全裸で土下座をしている。
そこに世界最強戦隊としてのプライドも何もあったものではなかった。ただただ全身で恐怖を表現している。全裸になった男たちはガクガクと震えて、少女の足下で必死に自分の額を地面にこすりつけていた。
「ん~、まだやりたりないんですけどね」
一人だけ仁王立ちになった詩織が言った。
彼女はニコニコ笑いながらデコピンを宙にむかって放っている。その風切り音が響くたびに男たちがビクンッと震えた。彼らは知っているのだ。その音が聞こえたら自分たちが死ぬということを。だからこそ空うちデコピンでガクガクと震えていく。
「も、もうひゃめでくださいいいいッ!」
世界最強戦隊のレッドが涙をボロボロと流しながら言った。他の戦隊員たちも同じだ。理性的な最強ブルーも全裸で震えながら必死に命乞いを続けていた。
「じゃ、舐めろ」
詩織が足を前に突き出す。
ただそれだけの動作なのに、男たちはエサに群がる犬のように殺到した。
「じゅぱあ……じゅるうう……」
詩織の足を舐める。
生足状態の足裏を最強レッドがぺろぺろ舐める。最強ブルーは足の甲を。他のメンバーはふくらはぎや太ももを必死に舐めていく。長身爆乳少女の足一本に群がってペロペロと舐め続けている男たち。それはまるで大樹の密を舐めるために群がった昆虫のようだった。
「ん~、こんなに簡単に従われると楽しくないですね~」
足を舐めさせながら詩織が言う。
「そうだ。なら「どうか私の体を食べてください」って、そうお願いするならデコピンやめてあげます。もうこれ以上は殺さないであげますよ」
ニッコリと残酷な少女が笑う。
「ね? わたし、優しいでしょ?」
そんな少女の足下で男たちが震えていた。
ペロペロと詩織の足を舐めながら男たちがガクガクと体を震わせていく。そんなお願いをしたらいけない。そうしたらすぐに自分たちは食べられてしまうだろう。目の前の少女に。あの大きすぎるおっぱいでムシャムシャと食べられてしまう。それが分かっているからこそ、世界最強戦隊の面々は「ゆるじでええ」と滑稽にわめきながら、慈悲を乞うために一生懸命に少女の足を舐めていくのだった。
「お願いしないなら、殺す」
「ひいいいいいいいいッ!」
「またデコピンで殺して、蘇生魔法で生きかえらせて、また殺す。それをずっと繰り返す」
「ひゃだあああッ! それは嫌ですうううッ!」
「そうだ。ティファちゃんとエイファちゃんにも手伝ってもらおうかな。ね、楽しそうじゃない?」
詩織がティファたちに声をかける。
3歳児サキュバスと2歳児サキュバスは、サディスティックな笑顔を浮かべて男たちを見下ろした。
「いいですね~、それ、サイコ~」
「蘇生魔法はエイファたちも使えますからね」
二人がパンパンと手拍子を始める。
詩織もまた手を打ち鳴らしていった。
ニンマリ笑った少女たちの手拍子。そのパンパンという音で恐怖を刻み込まれている男たちは発狂しそうなほどガクガクと震えていった。
「ほら、お願いしろ」
パンッ!
「お願いしないならデコピンですよ?」
パンッ!
「ティファたちもデコピン一発で殺せるんだからな? それが嫌ならとっととお願いしろ」
パンッ!
手拍子。
少女たちのくすくす笑い。
3人の長身爆乳少女たちに囲まれた男たちは、その大きな体でできた影の中で怯え狂っていく。限界に達した最強レッドが恐怖のあまりお漏らししながら言った。
「食べてえええええッ! 食べてくださいいいッ!」
「なにを?」
「俺たちですうううッ! 俺たちのこと食べてくださいいいッ! エサに、詩織様たちのエサにしてくださいいいいいッ!」
言った。
言わされた。
自分たちを食べてくださいと。
これ以上殺されたくなくて。生きかえされたくなくて、自分たちの体を少女たちのエサにすることを選択してしまったのだ。涙をポロポロ流しながらの絶叫。最強レッドだけでなく最強ブルーたちも同じ末路をたどる。おしっこをジョボジョボと漏らしながら「お願い」をする男たちはあまりにも惨めだった。
「あはっ、かわいそ~。この人たち追い込まれて自分からエサ志願しちゃった~」
くすくす笑いながら詩織が言う。
彼女は男たちに舐めさせていた足を振り上げると、膝まづいている最強レッドの脳天を踏み潰してやった。「あひん」と悶えた男の股間からさらに大量のおしっこが漏れてくる。純粋な恐怖だけで排泄機能を壊されてしまった世界最強の男が、脳天を踏み潰されたまま「ひい~ん」と情けなく悶えていた。
*
「じゃ、食べよっか」
詩織が笑いながらティファとエイファに向かって言う。
長身爆乳少女たちが足下に転がったエサを品定めしながら相談を始めた。
「どれ食べる?」
「ん~、迷うな~」
「どれもおいしそうですね」
少女たちがえり好みをしていく。
おしゃれなカフェで女子高生がメニューを眺めながらキャッキャと笑っているみたいだ。詩織たちが、足下に転がった全裸の男たちのどれを食べるか話し合っている。
「ん~、コレかな~?」
詩織が最強レッドの脳天から最強ブルーの脳天に右足を移動させた。
男たちの唾液でベトベトに汚れた右足裏で、最強ブルーの頭をグリグリと踏み潰す。すると踏まれた獲物はガクガクと震えて怯え、捕食者たちを楽しませた。
「ティファもやろ~」
「エイファも」
詩織をマネしてサキュバスたちも男たちの頭を踏んで楽しんでいく。
3歳児サキュバスと2歳児サキュバスの大きな足裏が世界最強戦隊の男たちの頭をグリグリと踏み、獲物たちの反応を鑑賞していった。
「ゆるじで……ゆるじで……」
膝まづいた最強レッドたちが涙をポロポロ流しながら命乞いを続けていく。
もはや何を許してほしいと願っているのか自分たちでも分からないほど、最強レッドたちの精神は瓦解していた。詩織に踏まれ、ティファに踏まれ、エイファに踏まれる。そのたびに最強レッドたちはビクビク震え、恐怖でお漏らしを繰り返してしまうのだ。獲物たちの鑑賞会がしばしの間続いた。
「うん、わたしはコレにしよう」
ドスンッ!
詩織が最後に最強レッドの脳天を踏み潰した。ねっとりした足使いで最強レッドを蹂躙していく様子は官能的ですらあった。
「え、詩織お姉ちゃん、一匹でいいの?」
「まだ4匹も残ってますよ?」
ティファとエイファの疑問の声に、詩織が、
「うん。わたしはこいつだけでいい。残りはティファちゃんたちで食べていいよ」
エサの譲渡がされた瞬間だった。
誰が誰を食べるのか決まった。ティファとエイファがニンマリとした笑顔を残り4匹に向ける。それだけで世界最強戦隊の面々は自分たちの運命を悟ったのだった。
「「いただきま~す」」
そして捕食が始まる。
ティファとエイファの尻尾口が、くぱああっと大きく開く。一匹ではなく二匹同時に丸呑みするためだ。尻尾口に生えた牙や中のピンク色の肉が艶めかしく獲物たちに迫り、あっという間に丸呑みを完成させてしまった。
「「「「むううううううッ!」」」」
ティファが最強ブルーと最強イエローを。
エイファが最強グリーンと最強ブラックを。
それぞれ頭からかぶりついた尻尾口が、そのまま獲物の体を持ち上げて逆さずりにしてしまう。重力に沿って尻尾内に落ちてきた獲物が尻尾の中に完全に丸呑みされ、見えなくなった。
「あはっ、膨らんでる膨らんでる」
「二匹まとめての捕食は始めてです」
自分の尻尾のふくらみを鑑賞してサキュバス娘たちが楽しんでいる。
言葉どおり彼女たちの尻尾は大きく膨らんでいた。
獲物二匹分の大きさに膨らんだ尻尾は艶めかしいものだった。アナコンダが人間を丸呑みしてしまったみたいに、3歳児サキュバスと2歳児サキュバスが人間を二匹まとめて丸呑みしてしまったのだ。
「「まずは締めつけ」」
同時に消化が始まる。
ベギバギベッギイッ!
尻尾が収縮して獲物たちの体を軋ませる。くぐもった「ぎゃああああッ!」という悲鳴が遠くから聞こえてくる。じたばたと暴れ尻尾が揺れる。けれどそれもすぐに終わった。暴れることもできなくなるほど締めつけられた男たちがバギバギと体を潰されていく。
「あ~、獲物を締めつけで潰すのサイコ~」
「尻尾にも勝てないザコを痛めつけると興奮します」
「ほれほれ~、もう抵抗しなくていいんでちゅか~」
「抵抗しないなら殺しますよ? もっと悲鳴をあげて、無様に抵抗して、エイファたちを楽しませてください」
ベギバッギイッ!
バギッベッギッ!
ばっぎっばギッ!
グッジョベギッ!
尻尾がさらなる締めつけを開始して男たちの体を潰す。
肉と骨が砕ける音が響いていく。しかしもう悲鳴もあがらなかった。声も発することもできなくなった獲物たちが尻尾の中で殺されていく。
「つまんないの」
「もういいです」
サキュバスたちが笑って、
「「消化開始♪」」
キュイイインッ!
魔力音が鳴り、すぐに獲物たちの体が輝きだした。
青と黄色、緑と黒。それぞれの輝きがドクンドクンと血液の循環みたいにサキュバスたちに吸収されていく。
「ん、おいしいかも」
「魔力量はいいです」
食事に舌鼓をうちながらティファたちが食べていく。
もっと食べようと思ったのだろう。尻尾の締めつけが増して獲物たちの体を圧迫する。その体から魔力を搾り取ろうとする動き。締めつけられた獲物の体から魔力がさらに漏れ出し、サキュバスたちの体に吸収されていった。
*
「あ、ああ、あああッ」
仲間たちが食べられていく様子を、世界最強戦隊のレッドが呆然と見つめていた。
全裸のままで詩織の足下に膝まづき、ただただその光景から目が離せない。これまで苦楽を共にしてきた仲間たちがまだ幼いサキュバスによって食べられていく。その絶望が最強レッドから一切の抵抗を奪っていた。
「ふふっ、お仲間さん、食べられていきますね」
詩織が最強レッドの脳天を再び踏み潰しながら言った。
「ほら見えますか? あなたのお仲間さんの体、少しづつ小さくなっていきます」
「ひいいいッ! ひいいいッ!」
「ティファちゃんとエイファちゃんの尻尾で吸収されて体がなくなっていくんですよ。あれだけ膨らんでいた尻尾がもう一人分くらいになってる」
サキュバスたちの尋常ではない食欲が獲物たちから急速に魔力を奪っていった。目がくらむほどの光が闇夜を照らす。食欲旺盛なサキュバスたちが獲物をぺろりと平らげていく。
「さ、心の準備はできましたか?」
詩織がニコニコ笑いながら言う。
「あなたのことは、わたしのおっぱいで食べます」
長身爆乳少女が胸をデンと前に突き出す。
そしてサービスと言わんばかりにもったいつけて衣服を脱ぎ去った。ブラジャーをつけていない生乳が大迫力で最強レッドに突きつけられた。
「う」
世界最強戦隊のレッドが思わず呻く。
目の前の現実離れした爆乳。
生命力に満ちあふれているような肌の張りと艶。芸術品のような健康そうなピンク色の乳首。これだけの大きさなのにまったく垂れていない強そうなおっぱい。これまで第13戦隊の魔力を一人で捕食し成長した最強おっぱいを前にして、最強レッドはプツンと糸が切れたように、一切の抵抗を止めてしまった。
「ありゃ、もう諦めるんですか?」
詩織が拍子抜けしたように言った。
「おっぱいに耐性がなかったんですかね。わたしのおっぱいを見ただけで戦意喪失してしまいました」
くすりと笑って、
「それじゃあ、いただきますね?」
おっぱいの谷間がひらく。
巨大すぎる乳房と乳房が最強レッドの目の前に迫っていく。ハアハアと荒い息づかい。原初の母のような爆乳を前にして、最強レッドの意識は完全に溶けていた。
「はい、どうぞ」
「ひいいいッ!」
詩織は動く必要すらなかった。
許しの言葉をもらった最強レッドは、自分からその顔面を詩織のおっぱいに押しつけてしまった。
「むうううッ! むううううッ!」
乳肉の中で最強レッドが溺れていく。
自分の体をエサにすることを選んでしまった男が、自らの顔面をおっぱいに生け贄に捧げている。自分の頭部よりも巨大な乳房と乳房の間で、性欲まみれになった猿が、自分の顔面をおっぱいに擦りつけていった。
「むうううううううッ!」
どっびゅうううううッ!
びゅっびゅううううッ!
そして当然のように射精する。
敗北の白い液体が詩織の足下に元気よく放出されていく。おっぱいの感触と魔性のフェロモンによって精液まで奪われていくのだ。その間、詩織はまったく動くことなく、両手を腰にやって仁王立ちしたままだった。
「ん~、一瞬でしたね~」
「むうううッ! むうううッ!」
「ふふっ、顔面をおっぱいに埋もれさせてスリスリが忙しいですね~。まるで性欲まみれの猿みたい」
最強レッドの射精が止まらない。
逃げなければならないおっぱいに夢中になってしまった哀れな犠牲者。存在するだけで男をマゾにする強すぎるおっぱい様によって、世界最強の戦士が屈服してしまった瞬間だった。
「終わりにしましょう」
詩織がニコニコ笑って言う。
長身爆乳少女が、腰にやっていた両手をおっぱいの左右にあてがった。巨大な乳房と乳房の間に挟まれている最強レッドの顔面がぐんにゃりと潰れる。そして、
「じゃ~ん、人間の躍り食いで~す」
ぐいっとおっぱいが持ち上げられた。
それにあわせて頭部を食べられていた最強レッドの体が宙に浮かんだ。そのまま、じたばたと両手両足が暴れていく。
「暴れてる暴れてる。やっぱり躍り食いはこうじゃないとダメですね」
おっぱいを寄せあげながらの言葉。
頭部を丸呑みされた最強レッドが、少女の胸元に顔を突っ込んだまま引きずりこまれていく。両手両足のじたばたがさらに増していった。
「食べていきま~す」
元気よく言って詩織が捕食を開始する。
おっぱいの左右にあてがわれた両手にギュウウウッと力がこもる。
すると乳房と乳房が巨大な牙となって男の体を潰すのだ。
ベギバギイイッ!
おっぱいによって頭部が潰されていく音が闇夜を貫いた。
「むううううううううッ!」
甲高い悲鳴があがる。
激痛によってようやく自分が何をしているのか理解した最強レッドがさらに暴れていく。その両手が詩織の肩をつかみ、なんとか自分の頭部を詩織のおっぱいから引き抜こうと努力を始める。首がもぎとれてしまうのではないかと思うほどの強さで引っ張る。しかし、
「無~駄」
ぎゅうううううッ!
詩織のおっぱいがさらに寄せあげられた。
それだけで最強レッドの体が「ビクンッ♡」と痙攣して、あっけなく抵抗が終わってしまった。
「わたしのおっぱいに食べられて、逃げられるわけないじゃないですか」
「むうううううッ! むううううッ!」
「ふふっ、一生懸命ふんばっている両手ごと、躍り食いしてあげますね」
詩織がおっぱいでさらに最強レッドを持ち上げた。じたばたと暴れる獲物の体を少しづつ豊かなおっぱいの谷間に引きずりこんでいく。詩織の両肩をつかんでふんばっていた最強レッドの両腕が、ぱっくんとおっぱいに捕食された。
「むううううううッ!」
両腕をむしゃむしゃと食べられた男に許されたのは両足をばたばたと暴れさせることだけだ。
もう自分の体をおっぱいから引き抜くことなんてできるわけがないのに、最強レッドが必死に両足をバタバタさせていく。そんな暴れる獲物をおっぱいが食べていった。それはまさしく人間の躍り食いだった。
「ふふっ、暴れてるエサを食べるの本当に楽しいです」
詩織が食事を続けながら笑う。
「一生懸命に暴れてるのにまったく相手にされずに、おっぱいに食べられていく姿を見ると胸がポカポカしますね。チビなオスをいじめても良心が痛むこともないので便利です」
むしゃむしゃ。
おっぱいがエサを食べていく。
最強レッドの腰が捕食され股間も食べられ、太もも―――ふくらはぎへと続く。そしてついに最強レッドの足首がぱくりと食べられて丸呑みが完成してしまった。
「ふふっ、はいお顔を見せてください」
丸呑みした最強レッドの体を反転させて、その顔面だけをおっぱいから露出させる。
第13戦隊のブラックの時もそうだったが、そうやって最後の一呑みを楽しむのが詩織の趣味になっているようだった。おっぱいの谷間にすっぽりとおさまった最強レッドの顔が展示される。
―――絶望した表情。
―――ボコボコにされた負け犬の顔。
―――それを見せつける相手は当然に決まっていた。
*
「レッドさん、ほら、あなたの先輩、わたしのおっぱいで丸呑みされちゃいましたよ?」
第13戦隊のレッドだ。
その間近で見せつける。
呆然としているレッドに憧れの先輩の末路を見せつけ、詩織がニンマリと笑った。
「尊敬していた先輩が食べられちゃいましたね」
「あひいいんッ!」
「ほら見えますか? わたしの谷間から生えた先輩の姿……ふふっ、すごく惨めでしょ?」
さらに「グイッ♡」とおっぱいがレッドに近づけられる。
乳房の体温すら感じる距離におっぱいが迫ると、その谷間から生えている先輩の顔面がよく見えた。
「せ、先輩」
レッドが呆然とつぶやいた。
白目をむいて口から舌をベロンと出した先輩の姿。
乳房によって両頬が圧迫されているせいで、舌をしまっておくためのスペースすら奪われ、口から舌を垂れさせてしまっている。まだ意識があるのが逆に残酷だった。丸呑みされた先輩が、意識を保ったまま己の死を自覚させられていく
「た……つ…お…………」
弱々しい声が響く。
レッドが涙を流しながらすがりつく。なんとか助けたくてレッドが先輩の頭部をつかむ。そして恐ろしい爆乳から先輩を引きずりだそうと決死の顔で抵抗を始めた。
「先輩……先輩……」
はあはあと荒く息をしながら力をこめる。
先輩の髪の毛をつかんでなんとか引っこ抜こうとする。
しかしビクともしなかった。
先輩の体はおっぱいにはまったまま1ミリも動かない。それどころかレッドが引きずりだそうとするたびに、最強レッドは「うううッ」と呻いて苦痛を訴えていく。すでに丸呑みされてしまった最強レッドの体は詩織に吸収され、引き抜こうとすると激痛を与えてしまっているのだ。
「ふふっ、無駄ですって」
詩織がニコニコしながら言う。
「あなたたちが何人束になってかかってきても、わたしのおっぱいには勝てないんです」
「ううううッ! ううううッ!」
「ふふっ、レッドさんの絶望しきった表情、とってもいいですよ? わたし好みでゾクゾクしちゃいます」
けっきょくレッドの抵抗は先輩を助けることなく、詩織を悦ばせるだけに終わった。
ぶるんっとおっぱいが揺らされただけでレッドの体が地面に倒れる。
迫力満点の谷間の中で最強レッドの呻き声だけが響いていった。
「それじゃあティファちゃん、エイファちゃん、同時に食べよっか」
詩織が合図をする。
すぐにニヤニヤ笑いながらサキュバスたちが集まってきた。そして尻尾で吸収を続けている光景をレッドに見せつけ始める
「10,9,8,7」
カウントダウンが始まる。
「6,5,4」
詩織の両手がおっぱいの左右にあてがわれる。
「3,2,1」
ティファとエイファが尻尾にぐいっと力をこめた。
「ゼロ」
ぎゅうううううううううッ!
べぎっばっっぎいいいいッ!
人数分の男たちが潰れる音が響いた。
詩織のおっぱいが完全に閉じられ、谷間から生えていた最強レッドの頭部が見えなくなる。ぐりぐりと乳房と乳房がこねくりまわされ最後の仕上げをする。いつの間にか、魔力の輝きも、男たちの悲鳴も消えていた。
*
「はい、完全捕食完了~」
詩織が妖艶に笑って言った。
「ほら見てください。ぜんぶ食べ尽くしました」
レッドに向けて―――、
恐ろしい少女が自分のおっぱいをひらいた。その谷間に先輩の姿はどこにもなかった。巨大すぎるおっぱい様が先輩の肉片や血液ごとぱっくり捕食し吸収してしまったのだ。それはティファとエイファも同じだった。
「こっちも同じ」
「見てください」
くぱあああっと、尻尾口がひらかれる。
大きくひらかれた尻尾の中に男たちの断片たりとも残されていない。骨の一本にいたるまですべて消化して吸収してしまったのだ。
「レッドさんの頼みの綱だった先輩たちも、わたしたちにかかればこのザマです」
勝ち誇った詩織が言う。
レッドが涙をぽろぽろ流していた。
「悔しいですよね? 哀しいですよね? それなのに―――」
ふっと鼻で笑って、
「なんで体を輝かせているんですか?」
詩織の言葉どおりレッドの体は輝いていた。
被虐の快感でマゾイキして魔力を生み出してしまっている。憧れの先輩が目の前の少女たちに殺されたというのに、それで興奮してしまっている。自分が信じられなくて、レッドは涙をポロポロと流し続けるしかなかった。
「ふふっ、本当にレッドさんはわたし好みです」
詩織が言った。
「さきほどの吸収でさらに強くなりました。それに世界戦隊協会の本拠地もすべて把握しました。これなら、あっという間でしょうね」
不敵に笑う。
ティファとエイファも同じく笑っていた。
レッドは恐怖に苛まれながらもなんとか口をひらいた。
「あ、あっという間って、な、何がだ?」
「決まってるでしょ? 世界征服です」
「せ、世界征服?」
「はい。女性が男性を支配する世界の構築です。すべてのオスをマゾ家畜にするために調教します。魔力を生み出すだけの家畜にして女性に奉仕させます。この地球でも、他の世界でも、みなひとしく女性がすべてを支配するんです」
この前も語っていた言葉。
争いばかりしている男たちに世界を任せておけないというのは本気だったのだ。
レッドは戦慄しながら、わらにもすがる思いで言った。
「そ、そんなことできるはずがない」
「そうですか?」
「そ、そうだ。お、おまえら3人で何ができる? 世界同時多発危機で地球に侵略してくる奴らも含めれば無限に近い敵がいるんだぞ?」
すべての世界でオスを家畜するなんて不可能だ。
いくら詩織たちが強いからといって数が圧倒的に足りていない。机上の空論。そのはずなのに、
「レッドさん、何か勘違いしてませんか?」
「な、なんだと?」
「わたしたちだけじゃないですよ。ねえ、みんな」
その言葉でレッドがようやく気づく。
廃墟の周辺。そこには無数の魔物たちが「くすくす」笑いながらレッドを取り囲んでいた。
「な、なな、な」
信じられない思いでレッドが周囲を見渡す。
数えられないほど大量の魔物たち。そのすべては女の魔物だった。おっぱいの大きな無数の魔物たちが獲物であるレッドを見つめている。
「新魔王になってすぐゲートを復活させたんですよ」
詩織がなんでもないように言う。
「それでティファちゃんたちと一緒に魔界を攻撃して、オスの魔物を一匹残らずマゾ家畜にしました」
「な、なに!?」
「簡単でしたよ? 途中から女魔物さんたちにも手伝ってもらってからはあっという間でしたね。魔界を世界征服して女だけの世界にしました。これを地球でも、ほかの世界でもやるんですよ」
詩織の語っていること。それは、
「その世界の女性たちに力を与えて、ほかのオスたちをマゾ家畜にしてもらうんです。そうすればあっという間に世界征服できるでしょうね」
確定した未来のように語る詩織。
そんな彼女の圧倒的な強さを前にしてレッドが膝から崩れ落ちる。ふふっと笑った詩織が右足を振り上げレッドの脳天を踏み潰した。
「レッドさんみたいに、虐められて興奮するマゾ家畜たちを大量調教していきます」
ぐりぐり。
「待っていてくださいね。世界征服が終わった後、レッドさんのことを迎えにきますから」
踏み潰しが強くなる。
ついにレッドは耐えられず、踏み潰されて顔面を地面に激突させた。地面に伏して頭を下げさせられたその格好は、詩織にむかって土下座をしているようだった。
「楽しみにしていてください」
詩織たちが去っていく。
気づくと周囲にいた女の魔物たちもいなくなっていた。
廃墟には、すべてを奪われて呆然とする未来のエサだけが残されていた。
つづく