道場。
英雄は捕食されていた。
明日香のむっちりとした腕が英雄の首にめり込んでいる。
亀の姿勢になって逃げようとした英雄が、背後から明日香にチョークスリーパーで締め上げられていた。
「師匠、完全に極まっちゃいましたね」
明日香がうつ伏せになった英雄の背中に覆い被さっている。
体格差がすさまじく、英雄の小さな体は明日香の大きな体の下敷きになって完全に埋まってしまっていた。
(ぐ、ぐるじいいいい)
英雄がボロボロの顔で悶える。
首に巻きついた明日香の腕。
それをほどこうと暴れるのだがどうにもならない。首に食い込んだ二本の逞しい腕は、がっちりとホールドされ、抵抗してもビクともしなかった。
(ぐ、ぐるじいいい・・・・くるじいのに・・・・・・で、でも・・・・・・)
英雄が頭を真っ白にする。
激痛。
首の異物感。
それなのに、
(ぎ、ぎもちいいいいいッ!)
昇天。
頭がぼんやりとして、なんだか気持ちよくなっていく。背後には明日香の豊満な体。彼女の大きなおっぱいが背中でぐりぐりとこすれ、その柔らかさに悶絶する。しかし、それよりも英雄を昇天させていたのは、首に巻きついた二本の腕だった。
「ふふっ、きもちいでしょ、師匠」
明日香が英雄の耳元でささやくように続ける。
「頸動脈だけ締め上げて、でも気絶は許さないギリギリのところで手加減してあげてます。こうすると、頭に血が十分に届かなくて、ぼおおっと気持ちよくなるんですよね」
「ぐ、ぐぎいぎぎ」
「やりすぎると死んでしまいますし、後遺症が残るので注意が必要ですが、何度も締め落としてきた明日香にかかればギリギリのタイミングもお見通しです。安心して気持ちよくなってください」
ぎゅうううううッ。
締め付け。極太の二匹の蛇がさらに英雄の首に巻き付く。
「ひゃ」
英雄は悲鳴をもらし、トロンとした表情を浮かべて、体を弛緩させた。
気絶はしていない。
ただ、いっさいの抵抗を放棄してしまったのだ。
それは、自分の命を相手に差し出すのと同じだった。
「ふふっ、締め上げられすぎて頭働かなくなっちゃいましたね」
「カヒュウウ――ッ!」
「きもちいのを優先して、自分のことを殺している相手に身も心もゆだねちゃいました」
「グええええええっ!」
「ほ~ら、仰向けにしちゃいます」
ぐいっ。
明日香がチョークスリーパーをかけたまま、英雄の体を引きずりこむようにして仰向けに寝転がった。
明日香の大きな体の上に英雄の小さな体が乗っかる。さらには明日香の太ももが獲物に巻きつくようにして、英雄の胴体をがっちりと挟み込んだ。
「胴締めチョークスリーパーの完成です。こうなったら、師匠はもう一生逃げられません」
「かぎゅうううッ! アっひゃあああッ!」
「明日香の許しがなければ、ずっとこのまま師匠は締められたままです。生きる権利を奪われてしまいました。ふふっ、恥ずかしくないんですか、師匠」
「カヒューーーカ、ヒュウー」
「分かってるとは思いますけど、明日香が少し力をこめるだけで師匠は気絶します。あとほんのちょっと、明日香が腕に力をこめれば、頸動脈が完全にシャットアウトして、すぐに気絶するんです。もちろん、そのまま締め上げ続ければ、師匠は死にます」
ニコニコ。
客観的事実を教え込むように、明日香が言う。
「ほ~ら、この腕で師匠は殺されてるんですよ。首にがっちり巻きついた明日香の腕で、師匠は命は奪われようとしているんです。それなのに・・・・・・」
明日香が鼻で笑って、
「そんな気持ちよさそうな顔を浮かべてていいんですか~?」
明日香の言葉どおり。
仰向けにされ、その顔を周囲にさらした英雄の顔はトロンとして、昇天しかかっていた。
頭に血がまわらず、もはや英雄は英雄ではなくなっていた。そこには、屈強な格闘家ではなく、頭を壊した廃人がいるだけだった。
「ふふっ」
明日香が堪能している。
少女が師匠を壊す感触で興奮しているのだ。
「一回、墜ちましょうか」
明日香が、くいっと腕に力をこめた。
男が一瞬で気絶し、「グボオオオオッ!」とイビキをかき始めた。
「はい、一秒。瞬殺でしたね、師匠」
腕をがっちりと英雄の首に巻きつけたまま明日香が言う。
「まだまだこれからです。今日もたあっぷり締め落としまくってあげますからね」
●●●
道場は明日香によって完全に支配された。
道場生たちは、皆、明日香によってボコボコにされ、最後には吊るされる。
男たちの足が地面から離れ、ぱたぱたと暴れる。明日香が片手だけで男たちの首を絞め、微動だにせずに持ち上げ、絞首刑を執行しているのだ。吊るされた男たちはすぐに白目をむき、口からブクブクと泡を吹きながら、意識を失ってしまう。今も師範が首を絞められ吊るされていた。最強の男が手も足も出ずにボコボコにされ、全裸に剥かれて、体中が変色するまで痛めつけられたあげくに宙づりにされるのだ。大柄な男でも関係なく吊るしてしまう明日香の高身長と怪力。ついに師範もダランと脱力して、盛大なイビキをかき始めた。
「さ、次は師匠の番ですよ」
気絶した師範を吊るしながら、トロンとした瞳を浮かべた明日香が言う。
彼女の視線の先には、ガクガクと震える英雄がいた。
「ほらほら、逃げてください師匠」
「ひ」
「明日香につかまったらどうなるか分かってますよね。はやく逃げないとつかまえちゃいますよ?」
ニコニコ笑いながら迫ってくる年下の少女。
その圧倒的な肉体を前にして恐怖した英雄が、「ひい」と悲鳴をもらしながら道場の中を逃げる。
滑稽にも走り回って明日香から遠ざかろうとする。
しかし、
「のろま~」
「ひいいいッ」
信じられない速さで明日香の巨体が駆けた。
あっという間に道場の出口前を塞ぎ、少女が英雄の前に立ちはだかった。その豪快な走り方は見ているだけで格差を分からされるようなものだった。彼女の太ももに浮き出た筋肉がとんでもない推進力を与えているのが分かる。どんなに逃げても無駄。明日香のほうが絶対に足が速い。それが嫌でも分かった。
「スピードでも明日香の圧勝ですね」
「あ、あああああッ!」
「チビがすばしっこさで負けたら、師匠は明日香に何も勝てませんね」
ふふっと明日香が笑う。
彼女が怯え切った英雄の両手をぐいっとつかんだ。上から覆いかぶさるみたいにして明日香が英雄に迫る。明らかに興奮した女の視線が、英雄の苦痛に満ちた顔に突き刺さった。
「師匠がどんなに逃げても、明日香は簡単に師匠に追いついちゃいます」
「ひいいいッ」
「師匠は絶対に明日香から逃げられません。ふふっ、そもそも足の長さが違いすぎますからね。明日香の足の長さは師匠の足の2倍くらいあるんじゃないですか? 歩幅もぜんぜん違います。師匠はチビすぎるので、足の速さでも明日香には勝てないんですよ」
ぎゅううううッ!
両手を握りしめて力比べの体勢になった。
その圧倒的な怪力の前に英雄は激痛で顔を歪ませる。あっという間に膝をつき、明日香の足元で膝まづく格好になってしまったかつての兄弟子。指導役だった男が、教え子だった妹弟子の怪力の前で、涙を流し始めてしまった。
「ふふっ、ザ~コ」
軽く。
明日香が英雄の体を押す。
それだけで男の体は仰向けに倒れてしまった。英雄が最後に見たのは、自分の顔面めがけて跳躍する明日香の巨尻の姿だった。
「潰れろっ!」
どっすうんんんッ!
ベッギイイイイッ!
「むっぐうううううううううッ!」
ヒップドロップが英雄の顔面に直撃し、道場が揺れた。
明日香の大きすぎるほどに育った巨尻が、矮小な男の頭部全体を潰してしまったのだ。
女の子座りで英雄の顔面にまたがった少女が、かつての師匠に顔面騎乗を開始する。
「あはっ、師匠の顔、わたしのお尻で潰されちゃいましたね」
巨大な桃尻によって、英雄の首から上を完全に潰されてしまった。
桃尻だけではなく、ムチムチな太ももの下敷きにもなっている。英雄は明日香の巨体によって生き埋めにされてしまい、身動き一つとれなくなってしまった。
(ぐ、ぐるじいいいい)
息が吸えなくなった英雄がジタバタと暴れる。
すこしでも明日香の体を動かして、この圧迫から解放されようと必死に手足をパタパタさせる。しかし、英雄がどれだけ暴れても明日香の体をよろめかせることすらできなかった。
「くすっ、なにしてるんですか、師匠」
明日香が笑う。
「チビな男子はかわいそうですね。大きな女の子に座られただけで負けちゃう」
「むうううッ! むうううッ!」
「今も、明日香は師匠の顔面の上で座っているだけですよ? それなのに師匠は身動き一つとれなくなっちゃっています。チビすぎて明日香の体の下で埋もれちゃってる。惨めですね~」
ぐりぐり。
さらに潰す。
潰された英雄が、半狂乱になったみたいに腕でマットを叩き始めた。
ギブアップの意思表示。
助けてくださいという命乞い。
バンッバンッとマットにむかって何度も何度もタップが繰り返される。
「ふふっ、だ~め」
がしっ。
しかし許されるわけがなかった。
無駄な抵抗をする英雄の両手を明日香がわし掴みにしてしまった。
ギブアップのためのタップもできない。絶望感で英雄の背筋が凍った。
「ほ~ら、ぐりぐり~」
おどけたように言って、明日香が巨尻を英雄の顔面にすりつける。
自分の命ごと押し潰そうとしている圧倒的なお尻。その重量感によって英雄の抵抗しようとする心自体がぺちゃんこにされてしまった。
(たじゅげで・・・・たじゅげで・・・・)
英雄の目の前が暗くなっていく。
弱っていく獲物。その息の根がとまろうとしている様子を見て、明日香がニンマリと笑った。
「堕ちろ、チ~ビ」
ぎゅうううううッ!
体重がかけられ、英雄は気絶させられた。
ただ座られただけで意識を刈り取られてしまった男が、大きな少女のお尻の下で、くぐもったイビキをかき始めた。
「まだまだこれからですからね、師匠」
明日香が笑って、
「師匠で遊ぶのとっても興奮するんで、時間をかけて虐めてあげます」
*
時間が経過する。
英雄が気づいたときには吊るされている。
何度も何度も締め落とされた後、今日も最後に吊るされて首を締められている。
自分の足が地面についておらず、バタバタと暴れているのに英雄が気づく。首に巻き付いているのは明日香の左手。片手だけで首をわし掴みにされて、持ち上げられているのだ。
(あ、明日香・・・)
もはや言葉を奪われた英雄は、ただただ明日香のことを見下ろすしかない。
こちらのことを今もニコニコしながら見上げている存在。その逞しい体で仁王立ちして、男一人を持ち上げ、吊るしている少女。
英雄はまたしても頭がぼおっとするのを感じ、気持ちよさが全身を支配するのに浸った。その股間はこれ以上ないくらいに勃起していた。
「師匠、だいぶ墜ちちゃいましたね」
ニコニコと明日香が笑う。
「今の師匠、格闘家の顔じゃないですよ? 女の子に虐められて悦ぶマゾの顔です」
「カヒュ――カヒュウ―――」
「なさけないですね~。自分よりはるか年下の女の子に手も足も出ずに締め落とされて、負け続けて、墜ち癖までつけられて、あげくの果てにマゾにさせられちゃった」
ふふっ。
妖しげな笑み。ジトっとした瞳で、純粋無垢なはずの少女が、性的に興奮した視線で師匠を観察している。
「それもこれも、師匠がチビだからですよ」
これみよがしに体格差を強調しながら明日香が言う。
「男のくせに身長が低いザコだから、師匠は明日香にボコボコにされちゃうんです」
「カヒュ――ぐっげえ・・・・・」
「本当に、かわいそうですよね、チビって」
明日香が吊るしている英雄の耳元で囁く。
「チ~ビ♡」
「あひっ」」
「チ~ビ♡ チ~ビ♡ チ~ビ♡ チ~ビ♡」
「アヒンッ……カヒュう―――」」
「一回り以上年下の少女にも身長で勝てないチビ。明日香の胸のあたりまでしか背が届かないチビザコ。吊るされたら地面に足がつかなくなっちゃってブラブラ暴れるしかないおチビちゃん。惨めですね~。情けないですね~。チビって本当にかわいそうですね~」
洗脳するように囁き続ける。
そのたびに、英雄がビクンビクンと痙攣して、脳髄に明日香の言葉が刻まれていく。
「おチビちゃんな師匠が、おおきな明日香に勝てるわけないんです」
「カヒューーカヒュウウーー」
「明日香がその気なら、いつでもチビな師匠のことを殺せちゃう。それって、なんて優越感なんだろう。支配してるって気がして、とっても興奮します。ずっと、師匠のことをこうしてボコボコにしたかったんです」
うっとりとした顔。
恋焦がれた乙女の表情を浮かべて明日香が英雄に宣告する。
「もっともっと、師匠のことボコボコにして、心を折って、明日香に夢中にさせてあげますからね」
ぎゅうううううッ!
とどめとばかりに明日香の両手で英雄の首を掴む。
大きな明日香の両手によって首が丸ごと包み込まれてしまっている。まるで宝物でも扱うように、明日香が両手で小さな英雄の首を握りしめ、絞めた。
「グッボオオオオオッ!」
それだけで英雄はビクンと痙攣して、気絶した。
明日香の大きな両手の中で、白目をむいて、びくんびくん痙攣していく。そんな英雄のことを明日香がいつまでも、じいいっと見つめていた。
つづく