1 あなたは金曜日の夜、島の南にある洞窟で敵と戦わなければならない。
2 敵に負けるとあなたは死ぬ。
3 あなたは絶対に逃げてはいけない。
4 あなたは絶対に逃げることはできない。


 ●●●


 金曜日。

 今日も俺たちは敵に殺される。

 名ばかりの勝負に負けた生け贄が、断末魔の悲鳴をあげて殺されていった。


「あはっ、宙づりになっちゃったね~」


 敵が笑いながら言った。

 黒のエナメル製の露出過多の衣装に身を包んだ敵が、今日もクラスメイトを殺していた。彼女はもはや女王様の仮面をつけていなかった。玲奈の顔にとても似た玲奈ではない敵が、その屈強な太ももの間に男の胴体を挟み込み、そのままミシミシと潰していた。


「体格差がすごいよね~。同じ人間じゃないみたい。ほら、お前の胴体よりも私の太ももの方が太いよ」


 見比べてみるまでもなかった。

 敵の小麦色に焼けた太ももは筋肉の束によって太く強靱になっており、その間に挟まれた矮小な男の胴体などひとたまりもなかった。

 まるで馬に乗った騎手のように、敵は男子の背中に乗って太ももで胴体を挟み込み、仁王立ちしているのだ。じたばたと暴れている男は、「ッギャアアアッ」という断末魔をあげながら、敵によってお馬さんにされていた。


「ほら、もっとがんばらないと死ぬよ?」


 彼女が男子の髪の毛を掴んだ。

 そのままぐいっと上にむけて強引に引っ張る。男は強制的に顔をあげさせらてしまった。女性の太ももに胴体を潰されたまま宙づりになっている情けない男の顔が、俺たちにさらされる。


「ひっぎいいいいいッ!」

「あはっ、すごい悲鳴。ほらほら、もっとじたばた暴れないと、すぐに殺しちゃうから」


 ぎゅうううううううッ!

 小麦色の太ももがさらに締め付ける。

 もはや男の胴体は彼女の太ももの中に埋もれる格好だ。

 敵のムチムチの太ももの肉が男の胴体によって形を変えているのを見るだけで、その太ももの柔らかさを想像することができる。そんな女性らしい脚なのに、現れてくる筋肉の暴力によって、同級生の胴体はぺちゃんこにされていくのだ。

 まるでバスケットボールをぺちゃんこにした玲奈のように、敵は男の胴体を情け容赦なく締め上げ、潰していった。


「あはっ、虫みたい」


 敵が嘲笑の声をあげる。

 男があまりの締め付けに発狂して暴れ始めたのだ。

 手足を上下左右に暴れさせながら、必死に暴れている。その目的は明らかだ。なんとか彼女の太ももから解放されようと努力している。命をかけた必死の反抗。

 それなのに、敵は太ももだけをつかって男の抵抗を無効化してしまった。両手を腰にやって仁王立ちとなり、太ももの締め付けだけで男を潰していく女傑。抵抗が無駄だとあきらめた男が、ぐったりと体中の力を抜いてしまった。ベゴベギボッゴンっという何かが潰れていく音が響いた。


「おっと、これじゃあもったいないや」


 敵が笑った。

 彼女は男の髪の毛を掴んで拘束すると、ようやく男の胴体をはなしてやった。アナコンダのように男の体に絡みついていた二本の太ももがするすると放れる。それもつかの間。今度は男の頭部をまたぐようにして立つと、そのまま太ももで男の首から上をすっぽりと挟み込んでしまった。


「あああああああッ!」


 絶望の声があがる。

 男の後頭部には敵の秘所が惜しげもなく押し当てられている。さらに両頬に食い込むのは恐ろしい太ももだ。敵の股の間からすっぽりと男の顔面が生えている光景。それはどこまでも絶望的な状況だった。


「命乞いしろ」


 敵が笑っていった。

 ぎゅっぎゅっと太ももの力を加減しながら男の頭部を挟み潰し、遊んでいる。


「命乞いが下手だったら殺す。このまま、太ももで頭を潰して粉々にする。脳味噌まで太ももで原型がとどまらなくなるまで擦り潰してやるよ」


 ぎゅっぎゅっ。

 太ももが躍動する。

 それごとに、彼女の筋肉が膨張して男の頭部をミシミシと潰した。その圧倒的な脚を前にすれば、男に選択の余地などなかった。


「た、たしゅけてくだしゃいいいッ!」


 絶叫。

 両頬を太ももによって押し潰されているのでうまく言葉が喋れない様子だった。それなのに、男は必死に命乞いをしていた。少女に対して必死に命の懇願を続ける。


「お願いでしゅッ! 命だけは勘弁ひてくだひゃいッ!」

「たしゅけてえええええッ! お願いしましゅ! たしゅけてくだしゃいいいいいッ!」

「殺さないでえええッ! 命だけは許してくださいいいいいッ! 死にたくないいいい! 死にたくないよおおおおッ」


 必死の命乞いが続く。

 それを敵はニヤニヤしながら聞いていた。

 太ももで男の頭部を挟み込み、両手は腰にやって男の命乞いを堪能している。性的に興奮しているらしく、敵のニヤニヤした笑顔は赤らんで見えた。


「ほら、もっとだよ。もっと情けなく命乞いしろ」


 ぎゅっぎゅっ。

 太ももが躍動する。

 膨張した太ももによって完全に押しつぶされてしまった頭。

 ミシベギっという頭蓋骨が潰されていく音に恐怖した男子の断末魔の命乞いが続く。

 喉がかれても絶叫は続いた。助けてくださいと、必死の懇願が洞窟に響きわたる。

 そこに男のプライドも人間としての尊厳もなかった。

 自分の命を見逃してもらうためだけに、男は全てを捨てて、少女に命乞いを続けるのだった。


「あはっ、ぜんぜんダメ」


 ぎゅううううううううッ!

 死刑宣告。

 彼女は終わりにすることにしたらしく、太ももにさらに力をこめた。ボゴッと膨張した太ももが男の首を刈り取るギロチンと化す。そんな強烈な締め付けをしているというのに、敵はまったく余裕の笑顔を浮かべ、両手を腰にやったまま太ももの力だけで男の命を刈り取っていった。


「潰れろ」


 ベギバギベッギイイイイイッ!

 頭が爆発した。

 いろいろなものがまき散りながら、鮮血の爆弾が周囲に飛び散る。男の首から下はダランと脱力してそのまま動かなくなった。敵の太ももと太ももが、これ以上くっつけないほどミッチリと重なりあっていた。


「あはっ、バスケットボールより柔らかかったかもね」


 笑っている。

 敵が笑っている。

 彼女は潰した男を躊躇なく海に落とした。首なし死体がドボンと海の藻屑と消える。それでも、敵は笑ったままだった。


「じゃあ、ご奉仕お願いしようかな」


 俺たちの方を見下ろしながらの言葉。

 頭の中に直接刷り込まれるような声が響く。


 ●●●


1 あなたは敵の掃除人形である。
2 敵の肉体に付着した肉片や血液を舐めとって綺麗にしなければならない。
3 一番下手な掃除人形は罰ゲームを受けることになる。


 *


 俺たちは必死に舐めた。

 3年B組の生存者4名。

 その全員が敵の体にすがりつき、その下半身に舌を這わせながらお掃除を続ける。

 敵は仁王立ちのままだった。

 その状態のままで、敵は両手を腰にやって俺たちのご奉仕を点検している。うまくやらないと罰ゲームが待っているのだ。それが嫌で、掃除人形である俺たちはいつものように敵の体を舐めていった。


「ふふっ、同級生の肉片と血液はおいしい?」


 バカにしたような声。

 彼女は俺たちを観賞動物でも見るかのような視線で見下ろしていた。

 彼女の言葉のとおり、その肉体にはかつて同級生だった男の肉片やら血液がこべりついていた。普通だったらこんなもの舐めることだってできない。しかし、俺たちは慣れていた。敵の体にお掃除ご奉仕することに、俺たちは慣れきっていたのだ。


「よし、口をはなせ」


 敵の命令。

 それを聞いたお掃除人形たちが命令どおりにする。


「まだ飲むなよ? しっかり味わえ」


 これまでどおり、舐めとった肉片や血液を勝手に飲み込むことは許されていなかった。

 吐き出したりするなんて論外だ。俺たちは同級生の肉片を頬張りながら、それを舌で転がしてしっかりと味わっていった。膝まづき、巨木みたいな敵の体の足下で、こちらをニヤニヤしながら見下ろしてくる敵の視線を受けながら、同級生の死体に舌鼓をうつ。


「よし、飲み込め」


 お許しの言葉。

 俺たちはごっくんと飲み込んだ。一度では飲み込めず、何度も喉をならすことによってようやく胃の中に同級生を落とし込むことに成功する。


「口をあけろ」


 俺たちは口を大きくあけた。

 これは点検なのだ。

 お掃除人形がきちんと仕事をしたかを見極めるための命令。俺たちは顎がはずれるほど口を大きくあけ、舌をベロンと大きく出して、口内に何も残されていないことを敵にむけて証明していた。


「ふふっ、どうだった? おいしい?」


 ニヤニヤ笑っている。

 俺は「はい、おいしいです」と敵が期待している言葉を口にした。


「そっかそっか、春信はやっぱ優秀だね」


 敵の手が伸びてきて俺の頭を撫でた。

 同級生の肉片をうまく舐めとれて偉いと誉められる。


「じゃあ、残りもお願いね」


 敵が言った。


「しっかり舐めろ」


 敵の命令。

 俺たちは必死に舐めた。

 敵の下半身から肉片と血液がなくなってもそれは続いた。秘所から太ももからふくらはぎから足の裏まで、丹念に丹念に舐めとっていく。

 ようやく終わると罰ゲームの時間だ。

 なんくせをつけられた朝倉が宙づりにされて往復ビンタをくらっていく。蜂に刺されて腫れ上がっていた頬がさらに腫れていった。もはや正視することも躊躇したくなるほど、容赦のない往復ビンタが続く。「ゆるひてえええ」「たしゅけてええ」という悲鳴。それを俺たちは正座で拝聴した。

 敵はニンマリと笑っていた。

 性的に興奮しているのだ。

 罰ゲームの後、もう一度俺たちは彼女の体を舐めることになるだろう。それまで、俺たちはガクガクと震えながら、仲間のお掃除人形が折檻されていく光景を見せつけられていった。



つづく