一番豪華なラブホテルに入る。

 信じられないことに昼間にもかかわらず部屋は満員だった。巳雪さんがカウンターで予約していた者であると告げ、部屋に通される。彼女が予約していたのはホテルの中でも一番高級な部屋のようだった。最上階にあって、さながら高級ホテルみたいな内装。ベットだけでなく、ソファーやリビングが設置されていて、宿泊するにもまったく問題がないような場所だ。そんな部屋に連れ込まれた瞬間、私は襲われた。

「旦那様♪」

 愛情たっぷりに名前を呼ばれて、そのまま壁に押しつけられる。

 背中には玄関の鉄骨性のドア。前方には大きな極上の女体。サンドイッチの具にされた私は、偏執的な愛情によって溶かされてしまう。

「旦那様……好き」

 愛の言葉を囁かれる。

 言葉だけでなく彼女が本心でそう言っていることが分かった。

「旦那様、怯えているんですか?」

 優しい笑顔で見下ろされる。

 鼻先と鼻先がくっつくほどの至近距離からまじまじと観察される。私の両手は彼女に捕まれ、背後の壁に押さえつけられている。両手を頭上にあげて無条件降伏するような格好。そんな無防備な状態をじいいっと観察されている。

「安心してください。旦那様の嫌がることはしませんから」

 にっこりと聖母みたいな笑顔で見つめられる。

「少し、刺激が強すぎるだけですからね」

 巳雪さんが顔をさらに近づけてくる。

 彼女の甘い吐息で脳味噌がイく。大きなおっぱいと体に埋もれながら唇が乱暴に奪われた。

「ジュパアッ! ジュルウウウッ!」

「あひいいッ!」

 激しい。

 いつもより過激なディープキス。

 さきほど巳雪さんは家の中では手加減をしていると言っていた。そんなこと信じられなかったが今のキスを受けているとそれが真実だと思い知らされる。

「アヒイッ! ひっぎいッ!」

 喘ぎ声が漏れる。

 陸の上で溺れている。

 それもこれも私の口内で暴れる巳雪さんの長い舌のせいだった。

(ぎ、ぎもじいいいいいッ!)

 頭がおかしくなる。

 狂う。

 脳味噌の中の快感を発生させる部位を直接舐められているような感触。彼女の肉厚な舌が私の矮小な舌を駆逐し、蹂躙して、口内中のすべてを犯していくのが分かる。激しすぎて呼吸もできない。息継ぎを許されるのは一瞬―――

「好き……好き……」

 愛の言葉を囁かれる瞬間だけだ。

 彼女の太ももが私の股間に差し込まれる。

 ムチムチの太ももが優しく私の玉袋をグリグリと刺激する。体格差から彼女は片足だけで私の体を持ち上げてしまっていた。股間に差し込まれた太ももによって私の体が宙に浮く。体の身動きをすべて奪われた状態で、過激なディープキスによって永遠と犯されていく。

「ぷはあっ」

 唇が放される。

 過激な口づけの証拠みたいに、私と巳雪さんの口と口に涎がドロリとかかっている。それを彼女はジュルジュルと啜って回収して、ゴクンと飲み込んでしまった。至近距離で、彼女の喉が動く様をまじまじと見せつけられ、「あひん」と声が漏れてしまう。

「ベットにいきましょう、旦那様」

「あひん……ひい……」

「もう言葉も喋れなくなってしまったんですか? まだまだこれからですよ」

 脱力して立つことなんてできない。

 嬉しそうに笑った巳雪さんが私のことをお姫様抱っこする。ふわあっという浮遊感とともに私の体が宙に浮かぶ。お姫様抱っこで運ばれ、シワ一つなくメイキングされたベットに優しく横たえられた。

「少し待っていてくださいね」

 にっこりと笑って巳雪さんが部屋から出ていく。

 一人残された私は「あひあひ」と快感の余韻で悶えながら部屋の中を見渡した。受付の部屋案内で見た時と同じく、そこはかなり豪華で広い部屋だった。しかし、高級ホテルと違って、そういうことを目的とした場所だということが分かる。ベットのすぐそばの壁は鏡仕様になっていて、その鏡にはベットの上で脱力して悶えている中年男性がうつっている。キス一つでこんな状態に落とされてしまったのだ。これから始まる本番を前にして、私の体が恐怖と歓喜でビクンと震えた。

「お待たせしました、旦那様」

 視線をあげる。

 巳雪さんの姿に「う」と呻き、視覚情報だけで射精しそうになった。

「どうでしょう、着替えてみたんですが」

 目の前―――そこにはヘソ出しホットパンツ姿の巳雪さんがいた。

 恥ずかしそうにぐるりと回転して全身を披露してくれる。圧巻は後ろを向いた時の姿だ。お尻の下半分が隠せていない極限まで短い丈のホットパンツ。そのせいでムチムチに育った巳雪さんの巨大なお尻が威圧的に迫っているように感じられた。こんなお尻に潰されたらどうなってしまうのか。それを想像しただけで、私の肉棒が勃起してしまう。

「ふふっ、気に入ってもらえたみたいですね」

 巳雪さんが怪しく笑う。

 そのままギャルモードの巳雪さんが笑いながらベットに乗ってきた。ギシリとベットのスプリングが軋む音がとても淫らに感じられた。巳雪さんが四つん這いの格好でゆっくりと私に迫ってくる。ヘソ出しTシャツでは隠せないおっぱいの谷間が近づいてくる。その大きな体に追いつめられ、「あ、これから自分は食べられてしまうんだ」と悟った。

「ふふっ」

 怯えた私を見下ろして、巳雪さんがどすんと覆い被さってくる。

 ベットに仰向けで横たわる私の小さな体が、巳雪さんの大きな体によって潰される。私の顔面が大きなおっぱいに生き埋めにされたあげく、長い足が私の下半身に絡みついてくる。獲物を絞め殺そうとトグロを巻く白い大蛇。捕まった獲物はこのまま全身の肉と骨をバギバギにヘし折られ、食べやすくされてから、丸飲みされてしまうのだ。

「あ、ここのキスマーク、薄くなってます」

 全裸になった私の体を点検しながら彼女が言う。

「上書きしますね」

「ま、まアッヒイイッ!」

 ブッジュウッルウッ!

 吸われる。

 力強い吸引。彼女のぷっくらとした唇の感触で体から力を奪われてしまう。私からしてみたら全く薄くなっていないキスマークに狙いを定めて、彼女の大きな口が貪り喰らう。そして吸引が始まり、舌で舐められて、一生消えないキスマークが刻まれていく。

「ここも薄くなってる」

 ぶっちゅうううううッ!

「ひいいいいいいいいッ!」

 巳雪さんがキスマークを刻みつける作業に集中してしまう。

 彼女の視線がキョロキョロと動いている。次なる獲物を求めて品定めをしているのだ。そしてほんの少しでも薄れているキスマークを発見すると、うっとりとした瞳で獲物を見定め、またしても丸飲みを開始してしまう。

「ここも」

「ひいいいッ!」

「ここもです」

「あひいいッ!」

「ここもダメ」

 ぶっちゅううううッ!

 続いていく。

 彼女の情熱的な独占欲が体に刻まれていく。ついには今までキスマークが刻まれていない首筋にまで、彼女の悪魔のような唇が迫った。

「み、巳雪しゃあああんんッ!」

 たまらず絶叫する。

 それを黙らせるみたいに彼女の肉厚の唇が私の首筋にかぶりついた。このままだと、首筋にキスマークを刻まれてしまう。

「だめえええッ! そこダメええええッ!」

「……んふっ」

「首筋はバレちゃうからあああああッ! ほかの人にバレちゃうからあああッ!」

 抗議をしてじたばたと暴れる。

 けれども無駄だ。

 彼女の両腕ががしっと私の体を抱きしめてしまう。それだけで、パタンと私の両腕が力尽きたようにベットに倒れた。

「ぶっちゅうううううううッ!」

「あああああッ!」

 私の抵抗がなくなったのを確認して、強烈なバキュームが再開する。

 私の首筋にかぶりついた唇が、勢いよく私の肉を吸引していく。念入りに、時間をかけて。一生消えないキスマークが首筋に刻まれていく。それはまるでヴァンパイアが獲物の生き血を吸っているような光景だった。

(ああ……私は巳雪さんの所有物なんだ……名前を刻まれちゃってる)

 そう思うとなぜか興奮した。

 自分の体が自分のものではないという感覚―――そんな倒錯した快感がこの世にあったということを身をもって教えられた。

「ふふっ、キスマークだらけになりましたね」

 ようやく私の体を捕食するのを止めてくれた巳雪さんが言う。

「旦那様の体、すごいことになってますよ?」

 背後から抱き起こされる。

 巳雪さんの両腕が、私の脇の下に通される。さらには彼女の両手が私の後頭部でがっちりと組まれて、磔が完成してしまった。私の両腕が彼女の両腕によって水平になるくらい持ち上げられている。

「宙づりにしちゃいますね?」

 ゆっくりと巳雪さんが立ち上がった。

 ベットの上で仁王立ちになる。彼女の狙いは明らかだった。私のみすぼらしい体が、巳雪さんの大きな体によって磔にされている光景―――それが目の前の鏡に展示されていた。

「ほら見てください。旦那様の体、キスマークだらけになってしまいました」

 耳元で甘く囁かれる。

「ふふっ、キスマークで埋もれてしまいましたね」

「ひいんッ!」

「これでもう、ぜったいに旦那様は他の人の前では衣服を脱げません」

「あひんッ!」

「素肌を見せていいのはわたしの前だけなんです」

「あひ……あひん……」

「もしも他の人の前で裸になってしまったら大変です。キスマークだらけの素肌を見られてしまいます。そうなったら「ああ、この人は奥さんにマーキングされているんだ」と思われてしまいますよ? ふふっ、実際、そのとおりですけど」

 ちゅっ。

 背後から首筋にキスされる。

 狂信的な独占欲は変わらず、私のことを独占するためにありとあらゆることをしようと決意していることが伝わってくる。

(勝てない。巳雪さんには、かなわないんだ)

 生物的な優劣で完敗している。

 そう悟ると、なぜかとてつもなく興奮した。肉棒がビギンビギンと勃起して、飼い主に媚びを売る負け犬のしっぽみたいに、ぶんぶんと振るわれていく。

「巳雪しゃん……巳雪しゃん……」

 助けてください。

 許してください。

 肉棒が命乞いしている。私よりも優秀で強い女性を前にしての必死の懇願。磔にされて、体の自由を奪われて、必死に命乞いをしている。自分の妻にむけた屈服。それがとてつもなく気持ちよかった。

「ふふっ、とってもかわいいですよ、旦那様」

 巳雪さんがすべてお見通しの瞳で呟く。

 そのまま彼女が私の体を放した。

 私という物体がベットに落ち、スプリングが鳴る。なぜかそんなふうに乱暴に扱われたにもかかわらず、体がビクンと震え、ますます興奮してしまった。いったい私の体はどうなってしまったのだろう。

「旦那様」

 声かけにビクンと震える。

 見上げると、仁王立ちになった巳雪さんがベットに倒れた私のことを見下ろしていた。ヘソ出しTシャツと短い丈のホットパンツ。ギャルモードの巳雪さんが、黒髪をたなびかせながら笑顔で私のことを見下ろしてくる。私なんかとは比べものにならない優秀な肉体。それをまざまざと見せつけられ、暴力的なまでの美貌で見下ろされると、まるで自分が下等生物になってしまったように感じられた。

「旦那様、わたしの服も脱がしてください」

「え?」

「これですよ。脱がしてください。脱がしてくれないと、セックスできないですよね?」

 ドクンと心臓が脈打つ。

 彼女は自分のホットパンツをつまんで見せた。これを脱がしてセックスしようと誘っているのだ。私は怪しげな花が出す甘い香りに誘われた蠅になる。膝立ちになって、彼女の下半身にすがりつき、その丈の短いホットパンツをつかむ。あまりにも彼女の肉体にフィットしているせいで、彼女の太ももに手が触れてしまい、「ん」と巳雪さんの甘い声が漏れた。その声と、手に伝わってくる太ももの柔らかさに全てがもっていかれる。私は発情した猿になって、ゆっくりとホットパンツを脱がしていった。

「あッ!」

 驚愕に目を見ひらく。

 ホットパンツの下にパンツはなかった。その場所では、ドロドロに濡れた彼女の象徴が、獲物を引きずりこもうと虎視眈々と狙っていた。

「ふふっ、すぐセックスできるように、下着はつけなかったんです」

 巳雪さんが仁王立ちのまま言う。

 彼女の手が伸びてきて私の頭を撫でる。それだけで脳味噌が溶けてしまった。

「はしたない女で申し訳ありません。旦那様のことをこれからたっぷりかわいがってあげられると思っただけで、グジョグジョに濡れてしまいました」

「あひい……あひい……」

「もう準備は大丈夫です。挿入してください、旦那様」

 仁王立ちのまま懇願してくる。

 これまでとは違った趣向。

 今までは一方的に巳雪さんが私を犯した。セックスは常に騎乗位で、腰を振るのも巳雪さんだった。けれど今は違う。これから私が巳雪さんを犯すんだ。

「お礼のプレゼントは、旦那様からのセックスが欲しいです」

 頭を撫でられながら巳雪さんの愛の言葉を聞く。

「男らしい旦那様のセックスで、わたしのことを女にしてください」

「み、巳雪さん」

「ココに旦那様の肉棒を突き入れて、わたしのことアンアン喘ぐだけの獣に調教してください。女は男に勝てないんだってこと教え込んで、わたしを旦那様の所有物にしてもらいたいです」

 頭がクラクラする。

 発情しきった頭でゆっくりとベットの上に立つ。

 目が血走るくらいに蜜壺を凝視して、私は自分の分身を挿入……挿入しようと……。

(と、届かない)

 明らかな身長差。

 股下の足の長さも段違いすぎて、彼女の密壷は私のおへそよりも高い位置にあった。ぷるぷるとつま先立ちをしても届かない。焦る。傷つく。興奮する。彼女との肉体の違いを見せつけられている。屈辱的なはずなのに、なぜかとてつもなく興奮した。

「ごめんなさい、旦那様」

 巳雪さんがゆっくりとベットにうつ伏せになった。そのまま私にむかって腰を浮かす。そうして私が挿入できるようにお膳立てを整えてくれた。

「どうぞ、旦那様」

 腰を控えめにフリフリして誘ってくる。

 私は猿になって彼女に飛びついた。

「巳雪さん……巳雪さん……」

 彼女の名前を呼びながら、両手でその細い腰をつかむ。

 ヘソ出しTシャツからこぼれる巨大なおっぱいが、背中ごしにも見える。その背中には彼女の漆黒の黒髪が芸術作品のようにかかっている。腰は内蔵が入っているのか疑問に思うくらいに細く、この女が妊娠していない種付けOKなメスであることを教えてくれる。そんな腰を両手でわし掴みにしていると征服欲が燃えたぎるのを感じた。今からこのメスを犯す。私が、巳雪さんを犯すんだ。

「い、いくよ、巳雪さん」

「きてください、旦那様」

 後ろ越しに振り返った巳雪さんの瞳が見える。

 ハートマーク多めで発情していることが分かる女の顔。そんな彼女にやられて、私は息を荒くしてから、自分の肉棒を彼女の密壷に……。

「あれ?」

 そこで唐突にきづく。

 自分の肉棒。

 自分の分身―――そこが小さく縮こまっていた。

「な、なんで」

 訳が分からない。

 さっきまであれほど興奮して勃起していたのに。巳雪さんが四つん這いになる前までは固く勃起していた肉棒が、へなへなの子供ち●ぽになって弱々しく横たわっていた。こんなものじゃ、密壷に挿入なんてできるわけがない。

「どうしましたか、旦那様」

 後ろごしに振り返った巳雪さんが心配そうに言う。

 そんな彼女の言葉にさらに焦る。

 けれど、どうしようもなかった。私の肉棒はまったく反応しなかった。子供ち●ぽのまま、いっこうに固くならない。

「す、すみません。あの、その」

「旦那様?」

「勃たなくて、その……」

 しどろもどろになりながら答える。

 情けなくて仕方なかった。

 申し訳なくて、自分で自分を殺してやりたくなる。そんなふうに下をむいて劣情にかられていると、いきなり巳雪さんに抱きしめられた。

「大丈夫ですよ、旦那様」

「あ」

「大丈夫です。大丈夫」

 抱きしめられ、後頭部を撫でられる。

 そんな状態ですべてを許すような言葉をかけられたら、どんな男だっていちころだろう。私なんかは1000回以上は殺されている。

「わたしのほうこそ、申し訳ありません」

 巳雪さんが至近距離から私のことを見つめながら続けた。

「たぶん、旦那様が勃起できないのは私のせいなんです」

「そ、そんなこと。巳雪さんはなにも」

「いいえ。違うんですよ」

 私の顔をまじまじと見つめながら、

「おそらく、旦那様はマゾになってしまったんです」

「え?」

「わたしが、旦那様のこと、マゾにしてしまったんだと思います」

 確信をもって巳雪さんが言う。

 私は何がなんだか分からず言葉も出せない。

「旦那様だけではないんです。私と体を重ねた殿方は、みなさん、例外なく、全員、マゾになってしまうんです」

 淡々と、事実を確認するように、

「わたしの与える刺激が強すぎるんだと思います。どんなに男らしい殿方でも、女を犯すのが好きだと公言するようなサディストも、みなさん、わたしとセックスすると、マゾになるんです」

 さわさわと。

 彼女の両手が私の背中を愛撫する。

「ひどい方になると、わたしから冷たく罵倒されなければ射精できなくなってしまいました。2番目の夫がまさにそうで……冷たくなじったり、足を舐めさせたり、首を締めながら宙づりにしないと興奮できない重度のマゾになってしまったんです」

 巳雪さんの愛撫が強くなる。

 男を例外なくマゾに変えてしまう魔性の愛撫。逃げなければならないと理性が訴えてくるのに、本能が全力でそれを拒否しているのが分かる。

「旦那様のことも、わたしから虐められないと興奮できないマゾにしてしまいました」

 瞳がうるうると潤む。

 泣きそうになりながら巳雪さんが謝罪の言葉を口にする。

「申し訳ありません。この責任はきちんととります。マゾな旦那様のこと、わたしが一生責任をもって面倒見ますから」

 愛撫が強くなる。

 猛毒のような献身的な愛がそそがれる。

 けれど巳雪さんの言葉をすんなりと受け止めることができなかった。

 巳雪さんから虐められないと欲情できないマゾにさせられた。そう言われても納得できない。いや、納得したくなかった。自分の中の男の部分が全力でそれに抵抗している。

「ち、違う」

「旦那様?」

「わ、私はマゾなんかじゃないです。今は少し疲れているだけで、か、回復すれば、すぐに」

 しどろもどろに言う。

 巳雪さんが申し訳なさそうにしながら、

「それでは試してみましょう」

「え?」

 巳雪さんが私の体を押した。

 ベットに仰向けに倒れる。そんな私の股間にめがけて、後ろ向きでこちらに背中をさらした巳雪さんが、ドスンッと座った。

「あああああッ!」

 潰された。

 私の股間。

 そこには丸々とした存在感たっぷりの巨尻が、我が物顔で鎮座していた。私の矮小な一物ごと下敷きにして、巳雪さんの巨大なお尻が、私の体を潰している。

「旦那様のこと、お尻で潰しちゃいました」

「ひいいいいいッ!」

「わたしのお尻が旦那様の下半身を押し潰して、ぺちゃんこにしてしまっています。逃げられないですよね、旦那様?」

 後ろを振り返って言う巳雪さん。

 彼女はこれみよがしに、お尻をふりふりさせて私の体をゆさぶった。その存在感の前に私という全存在が潰されてしまったことが分かる。

(逃げないと)

 体をよじって下敷きになった自分の体を動かそうとする。しかし、動くのは巳雪さんの巨尻で潰されていない上半身だけだった。押し潰された股間周辺はビクともしない。私は巳雪さんのお尻にも勝てないみすぼらしい存在に過ぎないのだ。それを分からされた。

「ほら旦那様、これが今から旦那様のことをかわいがってくれるお尻ですよ?」

「ひいいい! ひいいいいッ!」

「このお尻を旦那様の腰に打ち付けて、パンパンパンッてレイプしちゃいます。そうなったら旦那様はもうダメです。わたしのお尻一つで敗北服従射精。あっという間に空っぽになるまで搾り取られてしまいます」

 巨尻がぐりぐりと股間に押しつけられる。

 言葉で責められ、体がビクンと震え、あれだけ縮こまっていた肉棒が限界まで勃起してしまった。こちらを振り返って見つめてくる巳雪さんが、にんまりと笑った気がした。

「勃起しましたね、旦那様」

 ねっとりとした声色で現実を強調される。

「ほら、すごく勃起してます。分かりますか?」

「ひいいいいッ! 握らないでえええッ!」

「さっきまで子供ち●ぽだったのに、わたしに少しいじめられただけでフル勃起。はやくいじめてくださ~いって、ブルブル震えながら敗北勃起してしまいました」

「言わないでええッ! 言わないでえええッ!」

「こんなふうに言葉で責められて、ますます興奮してしまっています。女にいじめられて興奮するマゾ。旦那様は、わたしにマゾにさせられてしまったんです」

 グッシャアアッ!

 巨尻であらためて潰される。

 そして分からされる。

 自分がマゾに改造させられてしまったこと。

 巳雪さんとセックスをしていただけなのに、自分の性癖が変えられてしまったことに気づいてしまう。おそらく、巳雪さんにその気はないのだろう。私のことをマゾに調教しようという気持ちはみじんもなかったはずだ。それなのに、彼女は自然と私をマゾにしてしまった。無自覚に、ただセックスをするだけで、男をマゾにしてしまう女性。そんな圧倒的存在を前にして、私はこれ以上ないほど興奮し、勃起した。

「安心してください、旦那様」

 巳雪さんが体を起こし、対面になって私のことを抱きしめてくる。

「わたしはマゾの悦ばせ方を熟知しています」

「あひいいッ!」

「だから旦那様のことも満足させられるはずです。大丈夫ですよ。男らしさとか、男が女を満足させなければいけないとか、そんなつまらない考えは捨ててください」

 にっこりと聖母みたいに笑う巳雪さん。

「旦那様は旦那様のままでステキです。マゾな旦那様もかわいらしいです。わたしの性技でアンアン喘いでしまう旦那様のことが、愛おしくて仕方ありません」

 ちゅっと、優しくキスされる。

 情けないところもすべて許されて、受容されて、ますます巳雪さんという底なし沼にはまっていく。

「これから、マゾの旦那様を悦ばせてあげます」

「あひい……ひいん……」

「ラブホテルの時間はまだたっぷり残っていますからね。覚悟してください、旦那様」



つづく