射精をさせない。

 熟成させて精子の質と量を高める。

 そんな冗談のようにしか聞こえないことを、巳雪さんはせっせと実行していった。朝も夜も。ずっとずっと。巳雪さんは宣言どおりに寸止めを繰り返し、絶対に私を射精させなかった。

「はい、射精1秒前ち●ぽの完成です」

 うれしそうに巳雪さんが言う。

 私はそんな巳雪さんのおっぱいの中に閉じこめられていた。背後から、爆乳の深い谷間の中に頭部を埋め込まれて、左右から潰されている。巳雪さんはその長身でどっしりと立っている。身長差から、私の足は地面についていない。ぶらぶらと足を揺らしながら、肉の監獄に閉じこめられた私は、背後から永遠と寸止めの手コキを施されているのだった。

「旦那様、見てください。旦那様のおち●ちん、ひくひく痙攣してしまっています」

 背後からニコニコ笑った巳雪さんの声が聞こえる。

 私の顔面はかろうじて巳雪さんのおっぱいから露出しているだけだった。顔面だけがひょっこりと谷間から顔を出しているのだ。私は巳雪さんの体に埋もれ、宙づりにされながら、彼女から言われたとおり、自分の一物を見下ろすことしかできなかった。

「旦那様のおち●ちん、少しだけ仕上がってきたの分かりますか?」

 背後から巳雪さんが問いかけてくる。

「金玉の膨張率が増しています。亀頭もビンビンに腫れていますよね。毎日の寸止め調教の成果です」

 ニコニコ。

 上機嫌な巳雪さん。

「でもまだまだです。これくらいでは赤ちゃんをさずかることはできません。だからもっともっと、旦那様のことを寸止めしますね」

 宣言される。

 そしてそれは現実になる。

 この女性には勝てない。私の頭部を拘束している大きなおっぱいに完敗している。自分よりも強い女性から永遠と犯されていく。私の耳元で、巳雪さんがそっと囁いてきた。

「旦那様の体、小さいですよね」

 ビクンッ!

 始まった言葉責めに体がふるえる。

「わたしのおっぱいに顔を挟まれて、旦那様の体は宙づりにされてしまっています。足をブラブラさせて地面に届かない。それなのに、わたしの足はどっしり床を踏みしめています。というか、軽く膝を折っても、旦那様の足は地面に届かないですよね」

 くすくす。

 嘲笑しながら、巳雪さんが言葉どおり膝を折ってみせる。私の視界が少しだけ下がったものの、足が地面につくことはなかった。はるか高みで宙づりにされたまま、足をブラブラさせてされるがままになる。それだけ私と巳雪さんの身長差は歴然なのだった。それを分からされて、私はマゾイキする。

「ふふっ、チ~ビ」

「あひんッ!」

「自分の妻より身長が低いチビザコ。おっぱいに挟まれて宙づりになって足ブラブラさせるなんてチビにもほどがあります。恥ずかしくないんでしょうか」

 辛辣な言葉で体がふるえる。

 屈辱感だけでなく興奮で頭がおかしくなる。すべてお見通しな巳雪さんが耳元で囁く。

「チビでマゾな男のち●ぽ、いじめてさしあげますね」

 がっしいッ!

「あひいいッ!」

 片手で肉棒を握りしめられる。

 彼女の大きな手にかかれば片手で十分なのだった。それだけで私の急所はすべて握りしめられ、彼女の手のうちにおさまってしまう。

「ふふっ、ち●ぽもチビですね」

「ひいいいいいッ!」

「チビでマゾで短小な旦那様のこと、たあっぷりかわいがってさしあげます」

 しこしこ。

 手が上下運動を始める。

 それだけで私の口から「あ、あ、あ、あ」と壊れた蓄音機みたいな声が漏れる。それを背後からバカにされる。私の状態をすべて把握している恐ろしい女性が容赦なく責め立ててくる。

「命乞いしてください」

 笑いながら、巳雪さんが、

「ほら、はやく」

 ぎゅううううッ!

 握りしめられる。それだけで、

「ゆるじでええええッ! 巳雪様ああああッ!」

 絶叫した。

 絶叫してマゾイキで頭を壊されていく。

「もっと」

「ゆるじでええッ! 射精させでええええッ!」

「もっとです」

「巳雪様ああああッ! たすげでええええッ!」

 叫ぶ。

 マゾイキする。

 背後で「ふっ」と笑われた。

「無様でとってもすてきですよ、旦那様」

 ねっとりとした声色。

「ほら、くちゅくちゅと旦那様の分身がいじめられています。わたしの大きな手で、旦那様のチビでザコなち●ぽが蹂躙されてしまっています」

 しこしこ。

 グチャッ! ネチッ!

 カウパーを天然のローションにして私の肉棒が巳雪さんの手によって追い込まれていく。

(射精できる)

 あと少しだけ。

 このまま巳雪さんにバレなければ射精できる。

 私はさらに命乞いした。射精の兆候をさとられないように体をジタバタ暴れさせて、絶叫して、肉棒を逃がすために必死になる。あと一瞬、そこで、

「お見通しです」

「あああああッ!」

 ぱっと、巳雪さんが肉棒から手を離した。

 手をひらいて、それを私の眼前にさらす。

 もう握ってくれない。射精させてくれない。それを分からせるために、さきほどまで肉棒を握っていた右手をヒラヒラと見せつけてくるのだ。

「旦那様の限界なんて、目をつむっていても分かります」

「み、巳雪様ああああッ!」

「このままずっと寸止めしてさしあげますね」

 彼女の魔性の手が亀頭だけを包み込む。

 そしてグリグリとこねくりまわし始めた。ゆっくりと、真綿で首を絞めるがごとく、私の性感だけを高め続けていく。

「イがぜでえええッ! 射精させてえええッ!」

 私に許されたのは泣き叫ぶことだけ。

 背後から「くすり」と巳雪さんの笑い声が聞こえた。



 ●●●



 ずっと続いていく。

 夜通し行われた寸止め地獄は朝になっても続けられる。気絶するように眠りについた私が起きるのは、いつも巳雪さんによる凄惨なマゾ調教が開始されてからだった。

「ひいい」

 何か恐ろしい怪物に食べられている夢。

 そんな悪夢で目覚めると、夢の中と同じく私の股間が捕食されていた。

「じゅるるっ! ジュパアッ!」

「ひゃあああッ!」

 食べられている。

 私の金玉が巳雪さんにパクリと丸飲みされ、ころころと舌先で転がされていた。

「んふっ」

 巳雪さんはとてもおいしそうに私の金玉を食べている。金玉を口の中に引きずり込んで、両頬をふくらませた巳雪さんの姿。顔にかかる竿を愛おしげに見つめながら、うっとりとした瞳で舌鼓をうっているのが分かった。

「あ、あ、だ、だめえええッ!」

「ジュパアッ! ジュルルウッ!」

「ひいいいいいッ」

 巳雪さんの口の中で彼女の長い舌が金玉に絡まってくるのが分かる。舌先でころころと転がされて、その刺激で体がビクンビクンと痙攣する。暖かい口の中。そこに丸飲みされて食べられているという実感が、私のマゾ性癖を刺激し、ますます興奮していった。それでも、

(イけないいいい)

 金玉をいじめられるだけでは射精できなかった。

 少しでもいいから竿に刺激が欲しい。永遠に続く生殺し状態。じっくりと溶かされて肉汁をすすられていくみたいに、金玉だけを舐められ寸止め調教されていく。

「ふふっ」

 巳雪さんが笑った。

 彼女が金玉を一時的に解放して、分からせるようにして言う。

「射精はさせませんよ、旦那様」

「ひいいいいいッ!」

「こうして金玉だけをいじめてさしあげます。優秀な子種をつくってため込んでもらうために、直接刺激を与えるんです。はやく精子つくれ。もっとがんばって精子つくれって、旦那様の睾丸に鞭打って労働をさせなければいけません」

 ぺろぺろと金玉が舐められる。

 彼女の長くて肉厚な舌が縦横無尽に這いまわっていく。その感触だけで体がふるえた。ベットの上でのたうちまわって、射精の兆候だけがずっと続く。

「ほ~ら、旦那様の金玉、食べられちゃいますよ~」

 巳雪さんが大きな口をあけた。

 見せつけているのだ。長い舌が口から伸びて獲物である金玉をツンツン突っつき始める。彼女の口が底なしの井戸に見えて仕方ない。この中に獲物が引きずりこまれて、咀嚼され、そしてゴクンと飲み込まれてしまうのだ。そう思っただけで、私はマゾイキした。

「ふふっ、そうですよ。旦那様はこれから食べられてしまうんです」

 巳雪さんがさらに追いつめてくる。

「わたしの口の中に丸飲みされて、食べられてしまいます。わたしがその気ならば一瞬で睾丸を噛み潰してしまうこともできます。そんな怖い口の中に閉じこめられて、優しく愛撫される……ふふっ、恐怖と興奮で、旦那様のことをおかしくしてあげますね」

 がぼおおッ!

 巳雪さんの口が大きくひらき、宣言どおりに丸飲みされた。

 私の金玉がすべて巳雪さんの口の中に閉じこめられてしまう。そのまま巳雪さんの健康的な白い歯が、金玉を軽く噛んだ。

「ひいいいいッ!」

 恐怖で悶える。

 まだ甘噛み程度。しかし、巳雪さんがその気ならば、このままいっきに歯と歯を噛みあわせて睾丸を潰してしまうことが可能だ。急所を支配されているという感覚にマゾイキする。頭をバカにして、恐怖と快感でさらに興奮し、効率的に精子を製造する機械にさせられてしまった。

「イがぜでえええッ! お願いいいいいッ!」

 こうなったらもうダメだ。

 私は朝から射精懇願をするしかない。金玉を潰されながら、射精をさせてくださいと妻にお願いする。けれどもその願いが叶うことはない。巳雪さんは念入りに金玉だけを責め、竿には1ミリだって触れずに、永遠と寸止めを繰り返すだけだった。

「それでは、朝ご飯の準備をしてきますね」

 さんざんに調教を施してから巳雪さんが立ち上がる。

 口元を片手でぬぐって、にこりと笑った良妻賢母の見本のような女性が、キッチンにむかって歩いていく。

「射精……射精させでえ……」

 狂ったようにつぶやく。

 マゾ家畜の声だけが部屋の中で空虚に響いていった。



 *



「いってらっしゃいませ。旦那様」

 床の上に正座で座り、頭を下げた巳雪さんに見送られて、私は自宅を出る。

 朝から足腰がふらふらする。夜も朝もずっと寸止めされているせいだ。下半身が常に熱くて仕方なかった。体中に巳雪さんの体臭を塗りたくられているので、ずっと寸止めされているような気分になる。彼女と離れているのに、私の睾丸がせっせと子種を製造しているのが分かった。

「あ、おはようございます」

 アパートを出たとき、コンビニ袋を手にもった若い男とはちあわせた。

 その男は隣の部屋に住んでいる住人だった。

「お、おはようございます」

 どこかオドオドしながら男は言った。

 挙動不審になって私の顔を見つめては、ビクビクと怯えている。

「あの、会社ですか?」

 隣人が聞いてきた。

 私は怪訝に思いながら、

「そうです。あなたもお休みなんですか?」

「いいえ。最近仕事を辞めて、恥ずかしながら無職なんですよ」

「あ、そうなんですか。いや、すみません」

 立ち入ったことを聞いてしまった。

 申し訳なくて、あいさつをしてその場をはなれようとする。その時、彼が、

「奥さんは家にいますか?」

「え? あ、はい。いると思いますが」

「そうですか……本当にお美しい人ですよね」

 陶酔した顔で言う隣人。

 まるでひとりごとを言うみたいに、

「あの人が……あんなことを……」

 その言葉で私の背筋が凍る。

 夜の情事。

 毎日のように犯され搾り取られているということを、目の前の男性は知っているのだ。あれだけ悲鳴を漏らせば当然かもしれない。そのことを思うと、なにやらバツの悪い思いにさせられた。

「し、失礼します」

 足早にその場を離れようとする。

 隣人は、そんな私には無頓着に、ぼおっと私たち夫婦の部屋を外から見上げていた。

(なんなんだ……いったい……)

 不審に思って私も自分の部屋を見上げる。

 3階の角部屋。そこの窓にはカーテンが閉められている。その間で人影が動いた気がした。それは一瞬のことで、巳雪さんの姿だったかは確認できなかった。

「巳雪さん」

 ぼおっと、私も部屋を見上げてしまう。

 さきほどまで一緒だった彼女のことを思うと、どうにかなってしまいそうだった。股間が熱くなる。はやく仕事を切り上げて帰りたい。その一心のまま、私は後ろ髪をひかれながら、会社へむかった。



 *



 隣人と別れても、考えるのは巳雪さんのことばかりだった。

 それは会社に到着しても、仕事をしていても変わりなかった。体にこべりついた巳雪さんの体臭を嗅ぐごとにビクンと痙攣しては、悶絶をうつしかない。

(しゃ、射精したい)

 頭の中はそれ一色になってしまった。

 仕事に集中することすらできない。思わず会社のトイレに駆け込んでオナニーをしてしまおうかと、そんなことを考えてしまう。

(ダメだ……それは……)

 巳雪さんに対する裏切りだった。

 赤ちゃんをつくるために努力している彼女を裏切って、自分だけ射精するなんて許されないことだった。射精したい。でも自分でオナニーするのはダメだ。私は悶々としながら仕事をこなしていくしかなかった。

「よお」

 その時、声をかけられた。

 郷田と近藤だ。経費申請の領収証をこちらに差しだしてくる。

「なんだか鬱々としているようだが、うまくいかなかったのか?」

「え?」

「奥さんとなんかあったんだろ? 真剣に考えてみるって、まじめなおまえが仕事を早退までしてたじゃないか」

 ああ、とその時のことを思い出す。

 だいぶ昔のことのように思える。その後に私は射精管理をされるようになったのだ。とはいえ、郷田になにも報告していなかったのはまずかった。

「いや、大丈夫だったよ。きちんと巳雪さんの気持ちにも寄り添えて、うまくいった」

「そうか?」

「ああ、郷田のおかげだ。ありがとう」

 率直に感謝の気持ちを口にする。

 ふん、と照れ隠しに不遜に振る舞いながら、こちらに2枚目の領収証を差し出してきたので、ぺしんと手を叩いてやった。

「それとお中元もありがとう」

「ああ、届いたか」

「うん。巳雪さんもよろこんでたよ」

 それはなによりと郷田が3枚目の領収証を差し出すふりをしてきて、苦笑いする。こちらも何か送らなければならないと考えていると、隣の近藤が口を挟んできた。

「センパイ、住所知ってるなら教えてください」

 邪心のない声で近藤が言う。

 ギラギラした性欲を隠しもしない若者に、郷田の拳骨が飛んだ。





つづく