仕事が終わって、家路につく。

 小走り。

 汗をだらだらとかきながらアパートに到着し、家のドアをあけようとする。鍵はかかっていない。こちらがドアをあける前にドアがひらき、すぐに巳雪さんの手が伸びてきた。

「う」

 力任せに家に引きずりこまれる。

 後ろでドアがバタンと閉められ、私の体ごしに手を伸ばした巳雪さんが勢いよく鍵を閉めている。ガチャンという重々しい音が体に響いてきた。

「おかえりなさいませ、旦那様」

 私のことをぎゅううっと抱きしめて、巳雪さんが言う。

「はやく帰ってきてくれて、うれしいです」

 ぎゅうううううッ!

 力強く抱きしめられる。

 おっぱいの谷間に顔面を埋もれさせて、めちゃくちゃに愛撫される。彼女の底なしの愛情を感じながら、自分がダメになっていくのが分かった。

「今日はこのまま、旦那様のこと、かわいがりたいです」

 さわさわと。

 背中や後頭部を撫でながら、巳雪さんが雄の脳髄を溶かす甘い声で言う。

「ダメですか?」

 涙目になって眉を下げて懇願してくる。

 こうなったらもうダメだ。

 射精させてほしくて、私の理性が巳雪さんに屈服しているのが分かる。なすすべもなく、私は彼女の胸の中で、コクンとうなずいてしまった。

「……うれしい」

 感極まったように巳雪さんが言う。

「今日も、たあっぷり、射精管理してさしあげます」



 *



 部屋に入ってすぐに全裸にさせられる。

 丁寧に丁寧に、巳雪さんが私の衣服をはぎ取っていく。その間も彼女の唇が私の体にキスの雨をふらしていく。その感触だけでバカになる。体がふにゃふにゃになって、足腰がガクガクとふるえた。

「今日はわたしも脱ぎますね」

 私の目の前で。

 ゆっくりと巳雪さんが服を脱いでいった。

「う」

 彼女の肌が少しづつ露出していく。

 私の視線は彼女の肉体にくぎ付けになってしまった。巳雪さんはまず下半身の衣服をすべて脱いだ。黒色の優雅なロングスカートと下着。私の前でゆっくりと、見せつけるようにしてそれを脱ぎ、下半身を剥きだしにした。

(す、すごい)

 思わず見とれてしまう。

 蛍光灯の光なのに、巳雪さんの体はまるで満月に照らされたみたいに幻想的な雰囲気をかもしだしていた。ムチムチな巳雪さんの太ももとふくらはぎ。肌がきめ細かくて、肉がずっしりと凝縮していることが分かる淫靡さ。なぜかいつもよりも彼女の肉体は充実しているように見えた。

「ふふっ」

 見とれてしまった私を見下ろしながら、巳雪さんがさらに服を脱いでいく。

 上半身の清楚な白色のシャツ―――ボタンをはずして、ゆっくりとそれを脱ぐ。その途端、部屋の中に甘い匂いが充満した。いつもよりも彼女のフェロモンの濃度があがっているのが分かる。巳雪さんの体臭を嗅ぐと、頭がすぐに麻痺してしまった。

「す、すごすぎるうううッ!」

 匂いだけではなく視覚情報でも頭をブン殴られた。

 ブラジャーからこぼれそうになっているおっぱいの迫力。さきほどまでの清楚な深窓の令嬢が、シャツを脱ぐだけで男の性を搾り取るために生まれてきたような卑猥な姿に変貌する。そのギャップに心を奪われ、興奮した瞳を向けることしかできない。

「旦那様、今からそれではこの後が大変ですよ?」

「え?」

「ブラジャー、はずしますね?」

 意味深に語られた言葉の後、彼女がブラジャーをはずす。

 そして、巳雪さんの言葉の意味を分からされた。

「ひいっ」

 思わず悲鳴が漏れてしまった。

 私の視線がその一点にくぎづけになる。

 目の前。そこにあらわになった、大きな、大きな生乳。その神々しさと迫力の前に、私は呼吸することすら忘れて見入ってしまった。

(す、すごいいいいいッ!)

 何か人類の雄を屈服させるような特別な薬物が使われているようにしか見えない。冗談ではなく、おっぱいの張りと艶がとんでもなさすぎてピカピカと輝いて見えた。彼女のおっぱい周辺に雄の視線を吸収するブラックホールが発生している。健康そうなピンク色の乳首がぷっくらと自己主張をしていて目が離せなくなる。そのすべてが雄を蹂躙するために存在しているようにしか見えなかった。

「ひいいいッ! ひいいいッ!」

 興奮してしまい頭がおかしくなる。

 見ているだけで恐怖がとまらない。このおっぱいはダメだ。今までの比ではなく存在感を増している爆乳。こんなものに捕まったら、絶対に殺されてしまう。

「ふふっ、すごいですよね、わたしのおっぱい」

 巳雪さんが、左右からぎゅっとおっぱいを寄せあげる。

 それだけで乳肉と乳肉がつぶれて蠱惑的な肌色の暴力が炸裂してしまい、ますます目が離せなくなった。

「今日はすこしお灸をすえたんです。そのせいで、わたしの体がさらに成長してしまいました」

 怪しく笑う女性。

 彼女のことがなぜか見知らぬ女性に見えた。男を食い物にして残虐を繰り返す女豹。冷たいサディストの権化。男を蹂躙することを可能とする圧倒的な肉体を前にして、私の体が恐怖から一歩、後ろに下がった。

「どこに行くんですか、旦那様」

 見知らぬ女性が追い込んでくる。

 そのたびに私は一歩後ろに下がる。「ひいひい」と悲鳴を漏らしながら、圧倒的なまでに充実した肉体から逃げる。

「ふふっ、もっとはやく逃げないと捕まってしまいますよ?」

 笑って、女性がこちらに迫ってくる。

 彼女が一歩近づいてくるたびに、その男殺しの凶器みたいなおっぱいがブルンブルンと揺れるのだ。張りのある艶やかな肌をもったおっぱいが蠱惑的に揺れ、さらに私の恐怖が募る。

(逃げなきゃ……これに捕まったら助からない)

 ひいひいと悲鳴をあげながら後退する。

 それを見知らぬ女性が笑顔で追いかけてくる。そしてついに、私の背中が部屋の壁に突き当たってしまった。もう逃げ場はどこにもなかった。

「ふふっ、追いつめられてしまいましたね」

「ひいいいいいッ!」

「わたしの成長した肉体を前に恐怖でふるえてしまっている旦那様の姿、とってもすてきですよ?」

 さらに近づいてくる。

 おっぱいが威圧的に私の鼻先ギリギリまで近づき、ぴたっと制止した。

「あっひゃあああああッ!」

 目の前。

 その体温すら伝わってくる圧倒的な爆乳。ピンク色の健康的な乳首の先端が私の眉間めがけて突きつけられている。彼女の体温と、息づかい。そして至近距離になってさらに濃くなった彼女の体臭を前に、私は悶絶狂って頭をバカにするしかない。

「ほら見えますか、旦那様」

 巳雪さんが勝ち誇るようにして言う。

「これが今から、旦那様を丸飲みしてしまう怖いおっぱいですよ?」

「ひいいいいいッ! ひいいいいいッ!」

「この大きなおっぱいが、旦那様の顔面を押し潰して生き埋めにしてしまうんです。乳房一つとってもわたしのおっぱいのほうが旦那様の頭部よりも大きい……そんな格上おっぱい二つで、旦那様のことを丸飲みして、たあっぷりかわいがってあげます」

 ゆさゆさと目の前で生乳が揺れる。

 その迫力を前に私は失禁しそうになった。

「わたしのフェロモンもかなり成長してしまいました。今では男の人を一瞬で操ることができてしまいます。耐性のない殿方は一発で射精してしまうほどの凶悪フェロモンで、旦那様のことも操り人形にしてさしあげます」

「ひいいいいッ! ゆるじでええええッ!」

「ほら見えますか? この谷間の奥深くで旦那様を生き埋めにするんです。わたしのフェロモンは谷間の間が一番たまっていますからね。その奥底まで旦那様を引きずりこんで、そこでたっぷり匂いを嗅がせます。ずっとずっと。旦那様が壊れるまで」

 ふふっと見知らぬ女性が笑っている。

 ニンマリとした笑顔が白日のもとにさらされる。目の前の女性はサキュバスだ。男の精を搾り取り、絞り殺してしまう恐ろしい生物。人間よりもはるか格上な存在に私はこれから捕食されてしまうのだ。

「ゆるじでください。巳雪様、どうかゆるして」

 命乞いが自然に口から出てくる。

 このおっぱいには勝てない。このままじゃ殺されてしまう。それが分かっているからこその命乞い。まだ何もされておらず、おっぱいを突きつけられているだけなのに、私の心は屈服していた。

「ふふっ」

 巳雪さんが笑う。

 その優しい笑顔に私は救われ、

「はい、ぱっくん」

「むぐうううううううッ!」

 がぶうっ、と。

 いきなり凶悪おっぱいが私の顔面を貪り食らった。顔面に柔らかすぎる爆乳が押しつけられる。後頭部にまわされた彼女の両腕が、さらにぎゅううっと私の頭部を谷間の奥深くまで引きずりこんでしまった。

(き、きもじいいいいッ!)

 暴力的な乳肉の感触だけでトぶ。

 頭部全体が爆乳の谷間の中に閉じこめられてしまっている。前後左右すべてが柔らかい乳肉に囲まれている。全方位から蹂躙され、私の理性が溶けていく。

「すっうはあああッ!」

 さらには毒薬じみたフェロモンだ。

 甘い匂いが肺を満たしてしまっているのが分かる。息を吸えば吸うほどに頭が麻痺する。体から力がなくなってされるがままの操り人形になってしまう。こんなの知らない。今までのフェロモンの比ではない猛毒。こんなの嗅いだら人生を破壊されてしまう。一生このおっぱいの中に顔面を突っこみ匂いを嗅いでいたい。そんなふうに思わされるほどに依存性たっぷりな甘い体臭。私は壊れてしまった。

「旦那様、どうですか?」

 女性が問いかけてくる。

「わたしのフェロモンすごいですよね。さきほどから、旦那様の体がビクビクと痙攣しています」

「むううううッ! むううううッ!」

「耐性のない殿方はこれだけで射精してしまうんです。何人も何人も、わたしのおっぱいに閉じこめられただけで、子種を空っぽになるまで吐き出してしまいました。そうして奪われた子種は、すべてわたしの成長の養分にされてしまうんです。かわいそうですね」

 ぐりぐり。

 さらに限界まで、私の頭部をおっぱいに閉じこめていく。奥に引きずりこまれるたびに彼女の体臭が濃くなって痙攣がひどくなった。

「ふふっ、サンドイッチにしてさしあげます」

 どっすううんんッ!

「むうううううッ!」

 突然、私の体が壁に打ちつけられた。巳雪さんが私をおっぱいの谷間に閉じこめたまま、その爆乳を壁にむかって押しつけたのだ。あまりにも重量感のある乳肉の突進を受けて、部屋の壁がミシッと音をたてた。

「閉じこめられてしまいましたね、旦那様」

 なおもおっぱいで私を潰しながら巳雪さんが言う。

「分かっていると思いますが、旦那様が押しつけられている壁は、隣の家に接する壁です。だから、間違いなく隣の住民にはこの音を聞かれてしまっています。ひょっとすると、わたしの声も届いているかもしれませんね」

 くすりと、怪しげな笑い声。

 まるで誰かに聞かせるみたいにして、彼女が続ける。

「旦那様がわたしのおっぱいに閉じこめられて、悶絶しながら壁に打ちつけられているって、隣の住民にバレてしまっています。また今日も旦那が妻に犯されてる―――旦那のほうがあの大きなおっぱいで潰されているんだ―――そんなふうに興奮しながら隣の住民が聞き耳をたてているかもしれません」

 巳雪さんの言葉にハっとする。

 今朝出会った男。

 おどおどしていた彼が、今、壁のむこうで聞き耳をたてているかもしれない。こうして私が情けなくも妻に犯されているということ。そのおっぱいに手も足も出ないままに蹂躙されてしまっていることを聞かれている。そう思うと、とてつもなく興奮した。

「ふふっ、聞かれていると思って、興奮しましたね?」

「むうううううッ! むううううッ!」

「もっともっと聞いてもらいましょう」

 どっすうんんッ!

 打ちつけられる。

 何度も何度も。

 爆乳が壁から一瞬離れ、すぐさま勢いよく壁に押しつけられる。彼女の大きな体が、私の小さな体を押し潰し、壁に打ちつけてしまう。その中でも重点的に潰されるのが頭部だ。おっぱいの中に閉じこめられ、逃げることもできない。私の首から上のすべてが打楽器になる。おっぱいで打ちつけられてドスンドスンと音を鳴らす楽器だ。そのたびに壁が揺れ、振動が伝わってくるようだった。

「ほらほら、聞かれちゃってますよ?」

「むううううッ! むううううッ!」

「おっぱいにいじめられて、壁に打ちつけられて潰されてしまっている旦那様の情けない姿が、隣の住民に聞かれてしまっています」

 ぎゅうううううッ!

 さらに潰される。彼女の大きな体が圧倒的な肉の壁になって、私の体が外から見えなくなるほど押しつけられる。

「恥ずかしいですね~。おっぱいだけで完敗してしまっています。女性の大きな体で、壁に打ちつけられて、いじめられている。そんな怖いおっぱいの谷間に閉じこめられてしまっているのに、乳肉の感触とフェロモンの匂いで悶絶して体を脱力させて悶えるだけ。そんな情けない姿を、隣の住民に聞かれてしまっているんです。惨めですね」

 追い込まれる。

 彼女の肉体と言葉に全てを支配されてしまう。被虐の極地というべき心境にさせられてしまった私は、あっけなくマゾイキした。

「んむうううううッ!」

 ビクンッ! ビクビクッ!

 陸揚げされた魚みたいに体が痙攣する。それでも射精はできない。頭だけがトび、体が性的興奮のためにマゾイキした。

「ふふっ」

 そんなマゾイキした私をさらに追いつめようと、巳雪さんが私の体を壁に押しつける。おっぱいだけでなく、その体全体で私の体を潰してしまっている。極上の女体と壁に挟み込まれた私は、かろうじて両手を外に出すことに成功するだけで、それ以外は完全に大きな女性の体の下敷きになり、埋もれてしまった。体全体を潰され、圧迫され、息苦しさと同時にマゾイキする。その余韻がずっとずっと続いた。

「マゾイキ、おつかれさまです」

 巳雪さんが言う。

「今日はこのまま、ずっと私のおっぱいに閉じこめて、匂い責めと圧迫責めをします。旦那様の肺の中がわたしのフェロモンの匂いで浸食されて、一生消えなくなるまで、ずっとわたしの体臭を嗅がせていきます」

 ぎゅううううッ!

 再び体が壁に押しつけられる。

 ミシミシと隣の部屋と接する壁が悲鳴をあげている。私の体ごと壁を破壊してしまいそうな力強さ。私の体全体が彼女の大きな体に押し潰されて、息もできなくなる。あまりの圧迫感に横隔膜も肺も動かないのだ。人類離れした柔らかさを誇るおっぱいが、男を殺す凶器に変わっている。

「むううううッ! むううううッ!」

 息苦しさから暴れる。

 殺されたくなくて、この肉の監獄から逃げるために必死に抵抗しようとする。

(ビ、ビクともしない)

 けれど無駄だ。

 巳雪さんの大きな体をよろめかせることすらできず、私の小さな体は巳雪さんの体によって潰されるだけ。かろうじて下敷きにされていない腕をブンブンと動かし、それすらも無駄と分かった私の体が、ダランと脱力して無条件降伏をしてしまった。

(死ぬ……殺される……)

 目の前が暗くなっていく。

 体が痙攣しようとしてそれすらも巳雪さんの体によって潰される。このまま極上の女体に圧迫責めされて殺されるんだ。そう思った瞬間にマゾイキした。おっぱいの向こう側で、「ふっ」とバカにしたような笑い声が聞こえた気がした。

「はい、息吸ってください」

 少しだけ。

 圧迫されている私の体が解放される。まだ大きな体の下敷きにされて、壁に押さえつけられていることに変わりはない。そんな拘束状態の中で少しだけ圧迫の力が緩められた。呼吸がかろうじてできる程度の締め付け。

「カヒュウウ―――ッ!」

 私は空気を貪り食らった。

 口は重点的におっぱいでおさえつけられているので、鼻から息を吸う。命を助けようと、酸欠寸前だった肺に酸素を補給しようと……必死に。しかし、それはさらなるマゾイキ地獄の始まりだった。

「ひいいいいいいいッ!」

 ビクビクッ!

 ビクンビクンッ!

 息を吸うたびにフェロモンで神経をズタズタにされる。純度100パーセントの猛毒フェロモンを吸い込み、肺をフェロモンで満たして、マゾイキする。これを吸ってはいけない。それが分かっていても酸欠寸前の体は酸素を求めてフェロモンで肺を満たしてしまう。巳雪さんの体と壁の間で、私の体が痙攣しっぱなしになった。

「フェロモン中毒にしてさしあげます」

 妖艶な声で巳雪さんが言う。

「旦那様がわたしのフェロモンを求めてどんなことでもするような、立派なフェロモン中毒者にしてあげますね。依存させる。旦那様のこと、わたしの体に依存させて、絶対に逃げないようにします」

 ぎゅうううううッ!

 締め付けが再開される。

 肺の中に十分な酸素を補給できなかった私の体が暴れ始める。けれども彼女の力の前では私の抵抗など微生物がビチビチ暴れているのと変わりがないのだろう。私の体は簡単に潰され、大きな女性の体で生き埋めにされて、再び呼吸を奪われてしまった。

「このまま、何時間も続けますからね」

 巳雪さんが言う。

「酸欠寸前まで追いこんで、凝縮したフェロモンを嗅がせ続けます。旦那様の肺からわたしの匂いが二度と消えなくなるくらいに染みわたらせます。今日だけで重度のフェロモン中毒にしてさしあげますからね」

 潰される。

 呼吸困難とマゾイキでバカになる。

 永遠と猛毒フェロモンを嗅がされていった。



つづく