寸止め調教はさらに続いた。

 もう限界だった。

 意識があるときも、

 意識がないときも、

 私の脳裏にあるのは射精をしたいという欲望だけになっていた。

 なんど自分の手が肉棒へ伸びたか分からない。そのたびに私は歯をくいしばって耐えた。けれど、やはりどうしたって限界なのだ。じきに私は巳雪さんとの約束を破ってオナニーをしてしまう。その予感だけが毎日のように高まっていった。

 だからだろう。

 私の限界を私自身よりも熟知している巳雪さんが、そのまま私のことを放置しておくわけがなかった。



 *



「旦那様のこと、これからは貞操帯で管理します」

 にっこりと笑って巳雪さんは言った。

 内助の功を美徳とするような穏やかな笑顔。しかし、その言葉と、彼女が差し出してくる金属製の道具がすべてを一変させる。目の前の女性は自分の夫に貞操帯をはめようとしている支配者だった。そのギャップがどこまでも巳雪さんの魅力を引き立てている。

「て、貞操帯?」

「はい。そうです」

「で、でも……なんで?」

 私の疑問に巳雪さんがほほえんだ。

「おそらく旦那様は、今日の夜に我慢ができなくなります。この後いつものように旦那様のことを犯すのですが、その後、寝静まった夜中に旦那様は目覚めて、トイレでオナニーをしてしまいます」

 まるで確定した未来として巳雪さんは語った。

 彼女からしてみれば、私がどのような行動をとるのかなんて簡単に予測できてしまうのだろう。自分は巳雪さんの手の平の上で転がされている惨めな存在にすぎないという実感が深まり、興奮してしまった。

「なので貞操帯で管理をしたいと思います。旦那様にこれを装着していただき、その鍵をわたしが厳重に保管します」

 よろしいですよね?

 有無を言わさずに問いかけられる。

 にっこりと笑った笑顔がどこまでも恐ろしかった。

「ひゃ、ひゃめで……」

 私は顔を左右に振ることしかできない。それを見て巳雪さんがこちらに顔を近づけてきた。その怜悧な刃じみた美貌を私の顔に近づけ、一言、

「よ・ろ・し・い・で・す・ね?」

「は、はひいいいいい」

 迫力満点の笑顔に思わず返事をしてしまった。

 目の前の美しい女性が「んふっ」と甘く笑い、さっそく貞操帯を装着することにしたらしい。

「服を脱いでください」

 命令される。

 私は妻の前でぷるぷるとふるえながら服を脱いだ。自分の肉棒に貞操帯をはめるために、無条件降伏をする。服を着たままの巳雪さんの前で、自分だけが全裸になる。生まれたままの格好をさらした瞬間、「くすり」と笑われた。

「ふふっ、もう勃起していますね」

 彼女の手が私の肉棒に伸び、握った。

 その瞬間、私という存在がすべて支配されてしまうのを感じた。射精管理のために限界まで勃起している肉棒。それを握られて興奮は頂点に達する。優しく頭を撫でるようにして、巳雪さんの魔性の手が肉棒を撫でてくる。その感触だけで、私の亀頭から大量のカウパーがこぼれ落ちていった。それはまるで、支配者の前でぽろぽろと涙を流して慈悲にすがろうとする負け犬のようだった。

「このままでは、貞操帯を装着できませんね」

「ひいいいいッ! イがぜでええええッ!」

「少し手荒なことをしますが、ご容赦ください」

 私の懇願を無視して巳雪さんが笑った。

 そして、握っていた肉棒をはなすと、そのまま容赦なく、私の金玉を握りしめた。

「あひいいいいいいッ!」

 愛撫ではない。

 文字どおり握り潰さんとするような力強さで、私の金玉が握られる。巳雪さんの大きな手が、片手だけで私の二つの金玉を同時に握りしめている。そんな状態で、彼女はその美貌を私の顔に近づけ、ひいひいと苦しむ私をにっこりとした笑顔で鑑賞するのだった。

「痛いですか? 旦那様」

「ひゃ、ひゃめでえええッ!」

「今、旦那様の急所が私の手の内にあります。このままあと少し力をこめれば、旦那様の睾丸は潰れてしまいます。かわいそうですね」

「ひいいいいッ! ひいいいいッ!」

「簡単ですよ? わたしの力はふつうの人間よりも強いので、このまま片手だけで、旦那様の睾丸を同時に破裂させることが可能です。安心してください。潰す時には念入りに、ぜったいに元通りにできないよう、時間をかけてグジャグジャに潰してさしあげますから」

 んふっと、巳雪さんが笑う。

 私の金玉を握った彼女の手に、ぎゅうううっと力がこもるのが分かった。その力強さの前に私の体がビクンとふるえる。巳雪さんは本気だ。彼女は本当に私の睾丸を潰そうとしている。それが分かると、ひゅうっと股間が冷たくなるのを感じた。そして、自分の意志とは無関係に、肉棒が縮みあがってしまうのを自覚する。

「はい、子供ち●ぽの完成です」

「ひいいい……やああああ……」

「睾丸を握り潰されそうになって、恐怖から縮みあがってしまいました。わたしのことが怖くて、無条件降伏してしまいましたね。情けない」

 ふっと、巳雪さんが笑う。

 私の敗北をさらに強調して、さらなる被虐の彼方に私を落とそうとしている。巳雪さんが笑って、貞操帯をゆっくりと私の縮みあがった肉棒に近づけていく。

「ほら見てください。貞操帯、はめられてしまいますよ?」

「や、やめでえええ」

「これをはめられてしまったらもうダメです。自分では射精することはおろか勃起することもできなくなります。自分のものだったち●ぽを完全に奪われ、私に支配されてしまう瞬間です」

 どんなに私が泣き叫んでも、巳雪さんは貞操帯をじっくりとはめこむのをやめない。

 金属の冷たい感触が私の肉棒にあたる。その無機質な感触によって、この道具が冷酷に私を管理するためのものであることを分からされる。ゆっくりと、まるで見せつけるようにして、貞操帯がはめこまれていく。かちゃかちゃという音が部屋に響く。そして、私の肉棒が完全に貞操帯によって支配された。



 ガチャンッ!



 その音がやけに大きく聞こえた。

 巳雪さんがそのまま貞操帯の鍵穴に鍵を差し込んで、まわした。鍵が閉められてしまった。これでもう私は自由に自分の肉棒をいじることもできない。完全支配。私は自分の妻から支配されてしまったのだ。

「はい、完成です」

「うううううッ!」

「鍵は私のおっぱいの谷間の中で、厳重に保管してあげますからね」

 準備していたのだろう。

 彼女は貞操帯の鍵にヒモをつけてネックレスのようにした。それを首にかけ、胸元に垂れ下がった鍵を一度私に見せつけてから、言葉どおり厳重に爆乳の谷間の中に挟み込んだ。大きすぎるおっぱいが左右から貞操帯の鍵を挟み込んで潰しているのが分かる。まるで自分自身が永遠に彼女のおっぱいに閉じこめられてしまったような心境に陥り、マゾイキした。

「今後はこの状態で旦那様を犯してさしあげます」

「ゆるじでええ……ゆるじでくださいいい」

「赤ちゃんをつくるために、がんばりましょうね、旦那様」



 ●●●



 貞操帯で管理されるようになってから数日が経過した。

 彼女の射精管理は徹底していた。巳雪さんが私の肉棒に手を触れることはなかった。一度のお慈悲だってない。今日も私は射精管理をされた状態で、永遠と性感を高められ、より質の高い子種の製造を強制されていく。

「あん……ひん……あひん……」

 甘ったるい男の声が響く。

 私は永遠と乳首をいじめられていた。

 椅子に座った巳雪さんの股の間に腰をおろして背後からがっちりと抱きしめられる。そして後ろからまわされた彼女の両手によって、同時に両乳首をカリカリといじめられていくのだった。

「マゾ楽器にしますね?」

「ひゃ、ひゃめアヒインンッ!」

 演奏が始まる。

 巳雪さんの人差し指だけが、カリッカリッカリッと単調なリズムで乳首をいじめ始める。なんの工夫もない上下運動に見えて、その魔性の指使いは繊細の一言だった。

「アッ、アッ、アッ、アッ」

 私の声帯がマゾ楽器にさせられる。

 彼女の指の動きにあわせてマゾの声を奏でるマゾ楽器。巳雪さんが私という楽器を上手に演奏していき、ずっと喘がされる。普通だったら乳首の感触に慣れがきて、快感を感じなくなるのに、巳雪さんの指にかかればどこまでも際限なく性感を高め続けることが可能なのだった。

「旦那様の声、とてもすてきですよ?」

「アッ、アッ、アッ、アッ」

「マゾ楽器として、良い音色を奏でています」

「アッ、アッ、アッ、アッ」

「ふふっ、もう少し、音量をあげましょうか」

 やめて。

 そんな抗議の声を巳雪さんが許すはずがない。

「はい、音量アップ」

 カリッ! カリッ! カリッ!

「アッ! アッ! アッ! アッ!」

 強くなった人差し指の動きにあわせて、私のマゾ喘ぎの音量が大きくなる。自分の意志とは無関係に自分の体が反応する。完全に操られている。自分よりも強くて優秀な女性に支配されている。そんな感覚を強めれば強めるほどにマゾイキして、さらにマゾ楽器として声をあげていくのだ。

「乳首だけで、すごく気持ちがよさそうですね、旦那様」

「アッ! アッ! アッ! アッ!」

「これなら、このまま一生、旦那様のち●ちんをいじめてあげなくてもいいですよね。乳首だけをずっといじめてさしあげます」

 んふっという笑い声。

 私は泣き叫んだ。

「ひゃだあああッ! ち●ぽもおおお、ち●ぽもさわってええええッ!」

 体を暴れさせて懇願する。

 涙をぽろぽろと流しながらいやいやをする子供のように必死に抗議する。背後で巳雪さんがバカにしたように笑った。

「絶対にさわってあげません」

 絶対的支配者が私の耳元で宣言する。

「旦那様のおち●ちんは、ずっとこのままです」

「ひゃだあああッ! ひゃだよおおおッ!」

「ふふっ、羽交い締めにしてあげますね?」

 巳雪さんがその長い足を私の短い足に絡めてきた。彼女のカモシカのようなふくらはぎが、私のマッチ棒みたいな下腿に絡みつき、そのままぐいっと開脚させてしまった。

「はい、ご開帳です」

「あああああッ!」

 股を大きく開脚させられて、背後から羽交い締めにされる。

 背中には巳雪さんの爆乳が押しつけられている。私の腕を巻き込むようにして抱きしめてくる巳雪さんの強い両腕。それだけでもダメなのに、下半身に巻きついた彼女の長くて強い足によって開脚させられて、もう本当に身動きがとれなくなってしまった。惨めに開脚させられた股の間で、貞操帯をはめられた肉棒がピクピクと無条件降伏していた。

「旦那様のおち●ちん、丸裸にされてしまいましたね」

「ああああッ! ひいいいいッ!」

「太ももをモジモジさせてなけなしの刺激を与えることもできない。おち●ちん一人ぼっち状態。このまま、乳首だけをいじめてあげますからね」

 もう涙をぽろぽろと流すことしかできなかった。

 絶対拘束下で背後から乳首をいじられる。再びマゾ楽器にさせられた私に許されたのは、マゾの喘ぎ声を漏らすことだけ。巳雪さんは執拗に私をマゾ楽器にした。音量をマックスにさせた演奏会。間違いなく、私の甘いマゾ喘ぎはアパート中に響いている。それを強制してくる巳雪さんの指使いによって、私の人格は壊れていった。

(ち●ぽ……なくなって……なくなったみたい……)

 開脚させられ、無防備にさらされている肉棒。

 それを無視されて、永遠と乳首だけをいじめられていると、自分という肉体に肉棒なんて最初からついていなかったような気になってくる。これの所有者は自分ではない。そんな自覚を強制されていく。とられてしまった。私の男として一番大事な部位の所有権は、自分ではなく巳雪さんが握っている。彼女の許しがなければ、私は今後一度も肉棒をさわることができない。勃起することもできず、悶々とするだけ。支配されている。私はこの恐ろしい女性に支配されているのだ。そう思うとやはり体を震わせてマゾイキしてしまった。背後から「ふふっ」という笑い声が聞こえてくる。

「そうです。もう旦那様のおち●ちんは、わたしのものなのです」

 耳元で囁かれる。

「これはわたしのもの。旦那様のものではありません。だから、どのように扱おうと、わたしの自由なんですよ」

「あひいん……ひいんん……」

「ぜんぶ管理してさしあげます」

 ねっとりと。

 脳髄を溶かすように。

「旦那様のおち●ちんも、旦那様の人格も、旦那様の人生も、ぜんぶわたしが管理してあげますからね」

 ぐいっと私の顔が上を向かされる。

 こちらを見下ろしている怜悧な美貌が視界に飛び込んでくる。それは私を支配し、管理してくれる女性の姿だった。

「んふっ」

 熱いハートマークたっぷりの瞳が近づいてきて、私の唇が貪り食らわれた。乳首をいじめられながら、口内も犯される。巳雪さんの長い舌が、私の口の中で過激に暴れ始めた。

(支配されてる……ぜんぶ……私の全部が、巳雪様に……)

 激しいキスで呼吸を奪われ、与えられる酸素すら管理される。自分という存在がすべて彼女に吸収されてしまう。ああ、それはなんて……なんて心地が良いのだろう。

「ジュパアッ! じゅるうううッ!」

「あひい……ひいいい……」

 激しい唾液音と、マゾの喘ぎ声。

 私はヒナ鳥が親鳥からエサを与えられるようにして、永遠と口の中を犯されていった。



つづく