4
僕は手コキ中毒になった。
つぼみと一緒にいる時はもちろんのこと、彼女と離れているときだって、彼女の手コキのきもちよさを思い出して悶々とした。
中毒といったら手コキだけではない。
僕はつぼみ中毒にもなっていたのだろう。
精神的に依存していた。
もう彼女がいなくなってしまったら死ぬしかないのではないかと思うほど、僕はつぼみにはまりこんでしまっていたのだ。それは、手コキをされるごとに深まった。泥沼に沈むように僕はつぼみに依存していった。
「…………」
部室。
ボランティア部の部室だ。
今日はほかの部員もおらず、僕とつぼみの二人きりだった。長テーブルにパイプ椅子がおかれているだけの簡素な部屋。僕たちは窓際の椅子に座っていた。
「…………」
つぼみは無言で本を読んでいる。
彼女が好きな作家が新作を出したとかで、僕からしてみれば見る気も失せるような分厚い小説を、つぼみはいつもの無表情で熱心に読んでいた。
僕はそんな彼女の横顔をぼんやりと見つめていた。
夢心地。
おそらく熱に浮かされたようなトロンとしたまなざしを彼女に向けていることだろう。その自覚はあった。けれど、自覚があったからといってどうなるものでもない。
まるっきし恋する乙女だ。
僕は彼女の隣にいるだけで頭がぼんやりして、幸福すぎるほどに幸福だった。
(つぼみの手、綺麗だ)
本をめくる時の優雅な彼女の手つき。
長い指と、ふっくらと柔らかそうな指。
その手を見るだけで僕は手コキを思い出す。
目の前で本のページをめくっている指は、僕のことを簡単に射精させてしまう魔性の指なのだ。あれに絡みつかれたら最後、徹底的に射精させられる。意識がなくなるほどの射精地獄に男を叩き落としてしまう美しい指―――。
そんな彼女の指を見つめていると、僕の愚息がむくっと屹立するのを感じた。
勃起してしまったのだ。
彼女の手を見つめているだけで勃起してしまった。
僕は恥ずかしいやら決まりが悪いやらで、なんとか彼女の手から視線をはずそうとした。その時、つぼみがパタンと本を閉じて言った。
「勃起したね」
「え?」
「勃起してるでしょ、今」
どくんと心臓が脈打つ。
「ど、どうして、なんでわかったの?」
「そんなの分かるよ。男の子が勃起すると、なんだか情けない雰囲気になるんだもん。その空気みたいなものが伝わってくるの」
「そ、そうなのか」
「うん。それで、どうする?」
じっと無表情な彼女の視線が僕に突き刺さる。
「する?」
「え?」
「手コキ。どうする?」
つぼみが片手を輪っかにして僕の眼前に展示した。
そのまましこしこと上下に動かす。
その動き。
あのきもちよさを知ってしまっている僕は、顔を真っ赤にしてコクンとうなずくしかなかった。
*
裸になって。
つぼみはそう言った。
僕は言葉の意味が理解できなかった。
ここは部室なのだ。
いつ誰が入ってくるか分からない。
全裸になるなんてできるわけがなかった。
「裸にならないとしてあげないよ?」
「そ、そんな」
「はやく裸になって」
有無を言わせない言葉。
僕は射精の期待に逆らえなかった。
一枚一枚、服を脱ぐ。
彼女の前で自分から衣服を脱いでいく。
その様子をつぼみはじいっと見つめていた。
まるで支配者の視線だ。
僕はそれにさらされてますます勃起した。
ハアハアと息を荒くしながら僕は全裸になった。
「うん。じゃあ、隣に座って」
服を着ているつぼみが言う。
僕は言われたとおりに彼女の左隣に座った。
つぼみは服を着ているのに僕だけが全裸。
それが僕とつぼみの新しい関係性をあらわしているように思えてならなかった。
「読んでいる本がいいところだから、今日は本を読みながらするね」
彼女が机に本を開いた。
そのまま本に視線を落とす。
なんのことか分からない僕が困惑していると、彼女の左手が伸びてきて、僕の愚息をがっしりと掴んだ。
「むううううッ!」
つかまれただけで電流が走る。
つぼみの美しい指が僕の肉棒にからみつき、そして上下に動き出した。
「あああああああッ!」
声がもれる。
とんでもなくきもちい。
昨日より明らかにうまくなってる。
僕の弱点を的確に突きながら僕が一番感じる力加減で始まる手コキ。僕は声を我慢することもできずに、喘ぐしかなかった。
「…………」
そんな超絶技巧の手コキをしているというのに、つぼみは僕のほうをまったく見ていなかった。
彼女の視線は、テーブルに置かれた本に向けられている。
彼女の意識のほとんどだって、その本に向けられていることは、その真剣そうな瞳を見るだけで分かった。
ながら手コキ。
つぼみは本を読みながら僕に手コキしているのだ。
「…………」
無言。
こちらをチラっと見つめることすらしない。
つぼみは集中して本を読んでいて、時々、本のページをめくる音が聞こえる。
そんな適当な手コキなのに、僕の一物に与えられる快感は規格外すぎた。
「あ……あひ――あん―――」
声がもれる。
僕の口から抑えることのできない喘ぎ声がもれていた。そんな僕に反応することなく、つぼみは本を読み続けている。その左手だけが、僕の一物を責めるために躍動していく。
「ひい……ンンンッ……あああ―――」
「…………」
「んふうあ……アアン……」
「…………」
「ああん……ッン……んほ……」
「…………」
喘ぎ声と無言。
全裸の男と服を着た女
興奮した僕と静かに本を読んでいる彼女。
どちらが御主人様なのか。
どちらがペットなのか。
そんなことが一目瞭然に分かってしまう光景が、部室に展開されていた。
(ああ……こ、こんな……屈辱的なはずなのに……きもちよすぎるうう)
僕の限界は近かった。
その瞬間、本をめくっていたつぼみの右手が動き、テーブルの上のティッシュに手を伸ばした。シュッシュと何枚か抜き出し、そのまま僕の鬼頭にかぶせる。その後、明らかに動きを変えたつぼみの左手が、僕の一物に襲いかかった。
「ひっぎいいいッ!」
どっびゅううううううッ!
びゅっびゅうううッ!
あっけない射精。
我慢できるはずもなく、絞り出されるように射精する。僕の精液はそのまま、つぼみにかぶせてもらったティッシュに放出された。
「はあ、はあはあ」
息も絶え絶えになった僕は椅子にもたれかかって呆然とするしかなかった。
その間につぼみが本を読みながら手早く精液まみれになったティッシュを丸めて、そのままテーブルの上に置いた。
敗北の証。
あっけなく射精した結果が、僕の目の前にさらされる。
しかもそれで終わりではなかった。
「ひいいいいッ!」
つぼみの左手が再び僕の一物をがしっと捕獲する。
それだけでフル勃起になった僕の愚息を握りしめて、またしてもながら手コキが始まった。
「つ、つぼみ、も、もうイったから、イったから」
「…………」
「や、やめ……だ、だめええ……もうイきましたからあああ」
僕が射精したことなんて彼女も知っている。
僕の射精をティッシュで処理したのは彼女なのだ。
それなのに、つぼみは再び手コキを始めてしまった。視線は変わらず本に落とされ、こちらのことを一瞥すらせずに、その左手だけが愚息を蹂躙する。
「ひひいいいいッ! ああああッ!」
もう声を我慢することなんてできなかった。
さきほどよりも強い手つきで彼女の左手が躍動している。もっと精液を搾り取る。左手はそう決意しているように見えた。射精したばかりで敏感な鬼頭を手の平で包んでグリグリと蹂躙したり、精液をローション代わりにして強烈なピストンを繰り出す。
つぼみは本を読んだままだ。
彼女の左手だけが意思をもった別の生物のように動き続けていた。
(だめええ……もうイくううう)
あまりにも強烈な手コキ。
僕は二回目だというのにもう射精しそうになった。
あと一瞬、
ほんの少し一物に刺激が加わったら射精する―――。
その瞬間、つぼみの手が僕の愚息から離れた。
「え?」
射精する感覚が遠のいていく。
僕は訳も分からずつぼみの横顔を見るだけ。
彼女は変わらずに本を読み続けていた。
「つ、つぼみッヒイイインン!」
彼女の左手が再び僕の愚息をがしっと掴んだ。
またしても手コキが始まる。
けれども射精の兆候はなくなっていて一からやり直しだった。僕の一物には再び強烈な手コキが施されていく。
寸止めだ。
つぼみは本を読みながらの手コキで、僕の射精の瞬間を完全に把握し、寸止めをしたのだ。
支配されている。
僕の射精は彼女に支配されているのだ。
彼女はこのまま、僕のことを寸止めし続けて射精をさせないこともできるし、一瞬にして精巣が空っぽになるくらいの圧倒的な射精に追い込むことだってできる。
「つぼみいい」
その横顔に僕は懇願する。
自分で聞いていても情けなくなるような負け犬の声で、僕は彼女の名前を呼んで射精をねだる。
「…………」
しかし、彼女は無表情のまま本を読むだけだった。
僕に意識を向けることもなく、まるで無反応に本を読むだけ。それなのに、彼女の左手は一個の生命体みたいに縦横無尽に僕の愚息をなぶってきていた。
「ひいいいいいッ」
しこるスピードがあがった。
体がガクガクと震える。
イく。
その瞬間、つぼみがティッシュ箱に手を伸ばし、シュッシュとティッシュを何枚も手にとって、再び僕の鬼頭にかぶせた。そして、
ぎゅううううううッ!
「あっはあああんんん!」
どっびゅううううう!
ビュッビュウウ!
射精。
つぼみの手がひときわ強く僕の一物を握りしめると、すぐに僕は射精した。まるでゴムチューブの中身を絞り出すかのような強烈な手コキが炸裂し、下半身がなくなってしまったかのような射精がずっと続く。
「…………」
その間もつぼみは本を読むだけだった。
僕が「アヒアヒ」言いながらビクンビクンと体を震わせて射精をしているのに、こちらの方を振り向くこともなかった。
(す、すごかった)
ようやく射精が終わる。
つぼみは手早くティッシュを丸めると、僕の目の前のテーブルにそれを陳列した。
僕の敗北の証。
精液まみれのティッシュのかたまりが、僕の目の前に二つ並んでいる。
僕は背筋が凍った。彼女がやろうとしていることがその時はじめて分かったからだ。
「ひいいいいいいいッ!」
再び、彼女の魔性の手が僕の愚息を捕獲する。
その手に握られただけで、僕は逃げられない。
永遠に寸止めされ、永遠に射精させられる。
僕はその後、何度も寸止めと射精を繰り返され、精液の全てを彼女に搾り取られてしまった。最後にはテーブルの上に10個以上のティッシュが並ぶことになった。
5
僕は、つぼみにはまってしまった。
もう逃げられない。
つぼみと離れているときですら、つぼみのことばかり考えていた。彼女は変わらずに無口で無表情だったから、周囲からは僕だけが熱をあげているように見えただろう。
(でも、僕ばっかりいいんだろうか)
きもちよくなっているのは僕だけなのだ。
僕は手コキをしてもらってきもちよくなっているのに、僕は彼女に何もしてあげられなかった
自分だけきもちよくしてもらうことに罪悪感みたいなものも感じていた。
僕だけではなくつぼみにも感じて欲しい。
セックスができないのだとしても、つぼみがしてくれるように、僕も手で彼女のことをきもちよくさせてあげたかった。僕は、意を決して、彼女にその思いを口にした。すると、
「別に私はいいよ」
つぼみは読んでいた本から顔をあげることもなく言った。
場所はいつもの僕の部屋。
そこで顔を真っ赤にした僕が、ポーカーフェイスのつぼみに「よかったら、僕も手でつぼみのことをきもちよくさせてあげたい」と伝えたのだ。
「な、なんで? き、きもちよくなりたくないの?」
「ん?」
そこでようやく彼女は顔をあげた。
いつもの無表情が僕の焦ったような顔をじっと見つめてくる。僕は、ますます狼狽してしまった。
「だって、いつも僕だけきもちよくしてもらって、なんだか悪いよ」
「…………」
「僕だけきもちよくなることに罪悪感も感じるんだ。だから、つぼみにも、ちゃんと、きもちよくなってもらいたい」
つぼみはじっと黙って僕の顔を見つめてきた。
何かを考えているのだろう。
コナン君ポーズはとらなかったけど、長いつきあいで、彼女が熟考しているかどうかはその雰囲気で分かるようになっていた。
「別に本当に大丈夫だよ」
なんの気負いもなく彼女は言った。
「わたし、やっぱり性的なことって子供をつくるためにするものだと思うの。だから、そういうのは本当に大丈夫」
「で、でも」
「それに何か勘違いしてるようだけど」
彼女はじっと僕のことを見つめながら、
「私も楽しんでるんだよ」
「え?」
「君のこと射精させること、楽しんでるの」
どくん。
僕の心臓が脈打った。
彼女はいつもどおりの無表情だった。
けれど少しだけ頬が赤く見えた。
性的なことに抵抗感を覚えているはずの生娘が、僕のことを射精させることを楽しんでいるのだという。そのことがどこか背徳的に感じられて、僕は盛大に勃起してしまった。
「ん」
彼女が僕の股間を見下ろす。
勃起した瞬間を彼女が見逃すはずがない。僕の下半身はもうつぼみの支配下にあるのだ。そう思うとますます僕の愚息はバキバキに勃起した。
「そうだ」
つぼみが何かを思いついたように言った。
「さっき君、自分だけきもちよくなるのに罪悪感を感じてるって言ったよね」
「う、うん」
「それじゃあ、私のこときもちよくしてくれる代わりに、私のお願い聞いてくれる?」
「お願い?」
そう。
彼女はつぶやき、無表情で言った。
「徹底的に君のこと寸止めしてみたい」
*
断ることはできなかった。
これは彼女の希望なのだ。
僕は真っ赤な顔をしてコクンと頷いた。頷いてしまったのだ。これがおそらく僕が引き返すことができた最後の分かれ道だったのだろう。僕は、なんの比喩もなく、つぼみなしでは生きていけなくなる道を選んでしまった。
「ひいいいいいいいッ!」
男の悲鳴。
それは僕の悲鳴だった。
僕は全裸になり、自分の部屋の床で四つん這いになっていた。そんな僕の尻のほうから、彼女の手が伸びている。僕はまるで乳搾りをされる牛のように、つぼみに手コキをされていた。
「おねがいいいッ! つぼみいいいいッ! もう、もうイかしぇてええええええッ!」
僕は半狂乱になって叫んだ。
つぼみは宣言どおり決して僕のことを射精させることはなかった。
今も彼女の右手が僕の愚息にふれるかふれないかの微妙なフェザータッチで、永遠と肉棒をなでていた。彼女の左手は僕の玉をコロコロと転がし続けている。
その刺激はとんでもなくきもちがよいものだった。けれど射精するには足りない。僕は長い時間、生殺し状態のままで、永遠と焦らされていた。
「…………」
つぼみは無言だ。
ただただ熱心に僕の肉棒に快感を送り込んでいる。一言も発さず、集中して僕の愚息をいじめ抜いている彼女。僕の口から射精懇願の命乞いが続いても、つぼみは一切それに反応せず、ひたすらに僕の愚息を虐めるだけだった。
「おかしぐなるううううッ! もうおがじぐなっじゃうからあああッ! もう許してくだじゃいいいいいいいいッ!」
僕は涙を流して絶叫していた。
それだけつぼみの寸止め地獄は残酷だった。
いつまでたっても射精直前の快感だけを送られ続ける。もう少しで射精できそうというところで手コキが緩やかになり、ぜったいに射精をさせてもらえない。その生き地獄に僕の精神は瓦解寸前だった。
「ひいいいいいッ!」
いきなりフェザータッチが強烈な手コキになった。
四つん這いになった僕の乳搾りをするために、容赦のない刺激が僕の愚息に加えられる。
限界までじらされていた僕はその刺激だけで射精しそうになる。
目の前がチカチカしてやっと射精ができる―――その瞬間、つぼみの手がパっと離れた。
「しょ、しょんなあああああッ!」
イけない。
あと1秒。
あと1秒彼女の手が僕の肉棒にふれていたら絶対に射精した。その瞬間におあずけをくらうことによるダメージはひどすぎるものだった。僕は両手で自分を支えることもできず、頭から地面に倒れこみ、その寸止めの地獄に悶えるしかなかった。肉棒もご主人様に媚びへつらうように、上下にぶるんぶるん揺れて、さわってくださいいいっと自己主張をしていた。
「…………」
けれどつぼみは無言だ。
僕は地面に突っ伏したまま背後に視線だけをやる。
いつもの無表情で僕の痴態をじっと観察しているつぼみが視界に入る。その普段と変わらない様子の彼女と、全裸になって四つん這いになっている自分との対比で、ますます僕は興奮してしまった。
「…………」
彼女が無言で僕の愚息に顔を近づける。
寸止めの余韻で苦しんでいる僕にむかって、これまで何度も繰り返されてきた追い打ちをしようとしているのだ。僕が待ってと懇願するよりも前に、彼女が僕の愚息に息を吹きかけた。
「ふううううう」
「ひいいいいいいいいッ!」
彼女の吐息が残酷な快楽拷問具となる。
微弱な刺激。竿や玉に加えられる吐息くらいでは普通だったら快感を覚えることだって難しいはずだ。
しかし、今は違う。
何度も射精直前の寸止めをされたこの瞬間、吐息の刺激はイくこともできない絶妙な生殺しの責めに変わる。
「ふうううううう」
「あ、や、やめてえええ」
僕の体がガクガクと震える。
肉棒も媚びるように、もっと刺激をくださいと射精を懇願して犬のしっぽのように揺れている。あと少しの刺激が加わるだけで射精できる。そんな状態で吐息だけでもどかしい刺激を加えられると、頭がどうにかなってしまいそうだった。
「ふうううううう」
やめてくれない。
じわじわと吐息だけで僕の愚息の快感がコントロールされていく。僕はいつまでも続く射精禁止地獄に、我慢ができなくなっていった。
(も、もう無理。しゃ、射精したい)
頭の中はその一念だけ。
それ以外のことは考えられない。
つぼみのきもちなんて考えることなく、僕は射精をさせてもらうためだけに四つん這いの格好を止め、起きあがってしまった。
「お、お願い。もう、もう射精させてください」
正座。
ハアハアと肩で息をして、目の前の彼女に必死のお願いをする。
「…………」
つぼみは無言だ。
じっと僕のことを見つめている。
いつもの無表情。しかし、長年のつき合いのある僕は、彼女が怒っていることに気づいた。
「つ、つぼみ?」
「…………」
「お、おこってるの?」
「…………」
「ね、ねえッヒイイインッ!」
いきなり押し倒された。
あおむけに転がる。
その上に覆い被さるようにして、彼女が僕に襲いかかってきた。
「つ、つぼアッハンンッ!」
乳首を摘まれた。
ビクンと体が震える。
同時に愚息ががしっと捕獲され、手コキが再開される。容赦のない手つき。まるでおまえの精液を絞り出してやると宣言するかのような乱暴な勢いで、僕の愚息を責めなぶっていく。
「だ、だめえええええッ!」
「…………」
そんな強烈な手コキと乳首責めをしているというのに、つぼみはあくまでも無言だった。無表情のまま僕を見下ろして、容赦なく責めてくる。
「あ、アヒ、も、もう無理」
すぐに僕はイきそうになった。
下半身が爆発する寸前。
その瞬間をつぼみが見逃すはずがない。
「…………」
無言のまま彼女の手が離れる。
またしても寸止め。
けれどもそれで終わりではなかった。
彼女はそのまま僕の両乳首を搾り取るようにいじってきた。
「ひいいいいいいいいッ!」
悲鳴が部屋中に響く。
快感が継続する。
射精の兆候がやまない。
彼女の指がカリカリと妖艶に僕の乳首をいじり続ける。一物には一切の刺激を与えることなく、永遠と僕の乳首に致死的な快感を送り込んでくる。何かが僕の股間を濡らした。
「ん、漏れたね」
つぼみの声。
僕は訳が分からず「え?」と口にした。
「ほら、精液漏れてるでしょ」
つぼみが僕の下半身を指さした。
そこには、ぽたぽたと白い液体を弱々しく漏らしていく僕の愚息があった。
「な、なんで」
訳が分からなかった。
僕は射精していないはずだ。
つぼみに射精させられる時のきもちよさはなにもなかった。それなのに、なぜ僕の愚息から精液だけが漏れていくのか。
「ぜんぜんきもちよくないでしょ」
つぼみが無表情で僕を見下ろしながら言った。
「射精ぎりぎりで寸止めして、乳首だけに刺激を与えていくと、射精できずに精液だけ漏れるんだってさ。インターネットに書いてあった」
「あ、あああッ」
「これやると、射精のきもちよさをぜんぜん感じないまま精液だけ漏らしちゃうんだって。ほら、今もポタポタ漏れてる」
言われたとおりだった。
僕の一物から白い液体がポタポタ漏れていく。
しかし、快感はなにも感じなかった。
ただただ、自分のものとは思えない愚息から、精液だけが漏れていく。
「これ、つらいでしょ」
彼女が凄みを感じさせる無表情で、
「せっかく我慢したのに、きもちよさ0の射精ですべてはご破算。きもちよくなくても射精は射精だからね。あんなに我慢したのに、君の射精はこれでおしまいだよ」
「そ、そんなああああッ」
「寸止めを我慢できなかった君が悪いよ。私の好きにしてもいいって言ったのに、私の言うこと聞けなかったんだもん」
だから、これはお仕置き。
彼女はそう言って、精液お漏らしが終わった僕の愚息にデコピンをした。もはや子供ち●ぽになってしまった僕の分身は、その衝撃でぷるぷると震えるだけだった。
お仕置き。
彼女の言葉。
僕の心臓はドクンドクンと脈打っていた。
ぷるぷると震える体。
僕はつぼみにすがりついた。
「しゃ、射精させて」
「ん?」
「しゃ、射精させてください。こんなのやだあ。お願いです。ちゃんと、ちゃんと射精させてください」
「…………」
「なんでもしますからああ。なんでも言うこと聞きますから、だから射精させてくだしゃいいいいッ!」
自分の彼女の心の底から哀願する。
射精させてくださいと。
お願いですからちゃんと射精させてくださいと。
必死にお願いする。
「…………」
つぼみは無言だ。
無表情のまま僕の痴態を観察している。
なぜか、その頬が若干赤らんで見えた。
「なんでも言うこと聞くのね?」
静かに。
子供に言い聞かせるみたいにつぼみが言う。
「なんでも言うこと聞くんだね?」
「ひ、ひいいいッ!」
「どうなの? ん?」
あくまでも無表情での言葉。
その迫力に僕は頷いてしまった。
「はひいいいいッ! なんでも言うこと聞きますうううううッ!」
その瞬間。
つぼみが、うっすらと笑った気がした。
「じゃあ、今日はもう一度寸止めするね」
彼女の手が僕の愚息を握り支配する。
その時にはもう、彼女はいつもの無表情に戻っていた。
「限界まで寸止めを繰り返す。わかった?」
「あ、あああああッ!」
「最後にはイかせてあげるから、がんばってね」
彼女の手コキが再開する。
ぜったいに射精できない手コキ。
彼女に支配されている僕は、射精1秒前で寸止めを繰り返され、バカになっていった。もう、つぼみには逆らえない。そう思った。
6
絶対服従。
つぼみの言うことをなんでも聞く。
そんな約束をしてしまった後、僕は立ち上がることもできなくなるほど寸止めをされ、空っぽになるまで絞りとられた。僕はもう彼女に逆らうことができなくなってしまった。だから、つぼみから新たな命令をされた時も、僕はおとなしく従うしかなかったのだ。
「て、貞操帯?」
彼女に手渡されたもの。
それは金属製の貞操帯だった。
僕の愚息にはめこむためのもの。
それを手渡して、彼女は言ったのだ。
「これから君のこと射精管理するね」
いつもの無表情。
その普段と変わらない様子で当然のように「射精管理」とつぶやく彼女に、僕はたまらない恐怖を感じた。
「な、なんで」
「ん?」
「しゃ、射精管理なんて、どうしてだよ」
つぼみはじいっと僕のことを見つめた。
「だって我慢できないでしょ」
「え?」
「私、これから君のこと寸止めさせ続けるつもりだよ? 射精させることなくずっと寸止めする。そんなことされて、貞操帯なしで君が我慢できるはずないじゃない」
「あ、ああああッ」
彼女は本気だ。
それが僕には分かった。
つぼみの地獄のような寸止め。
極上の手コキから繰り出される寸止め地獄。
それを今後、永遠と僕に施そうと言うのだ。
「つけて」
「つ、つぼみ」
「はやく」
「ううううッ」
「は・や・く」
「ひいいいい」
彼女が無言ですごむ。
それだけで僕は全裸になった。
恥も外聞もなく全裸になって、バッギバキに勃起した愚息を彼女に捧げる。しかし、勃起した状態で貞操帯をつけることなんてできなかった。
「仕方ない」
つぼみが「ふう」とため息をついて、
「今日だけだよ?」
「アッッヒイイインッ!」
彼女の魔性の手が僕の愚息をがしっと拘束する。
その手に捕らえられただけで、僕の腰は快感のあまり溶けてしまった。そのまま、彼女の地獄のような手コキがスタートし、終わった。
「ひいいいいいいッ!」
どっびゅううううッ!
びゅっびゅうううう!
あっという間の射精。
10秒ももたずに射精が始まり、それが終わらない。僕は訳も分からず絶叫していた。
「な、なんでえええッ! なんでこんなはやくうううううッ!」
僕の愚息から精液が爆発している。
その間もつぼみの手が高速で僕の愚息をしこり続けていた。その快感。それは今まで味わってきた手コキよりも強烈で、僕の射精は止まらなくなった。
「今日はすぐに射精させる」
つぼみが無表情で言う。
「あっという間に空っぽにしてあげるからね」
彼女は僕の愚息を完全に攻略しているのだ。
支配されている。僕という存在はつぼみによって支配されていた。僕はあっという間に精液をすべて搾り取られてしまった。腰が抜けてしまい、地面に倒れ込んで、その赤ん坊みたいになった愚息を彼女にさらす。
「つけるね」
アヒアヒ喘ぐ僕にむかって彼女が言う。
手慣れた手つきでつぼみが貞操帯を僕の愚息に装着した。ガチャンと鍵がかかる音がする。それで、僕の全ては物理的にも支配されてしまった。
「これで君は勃起もできないよ」
つぼみが無表情で、
「君の射精の権利は、今後、わたしが管理するからね」
彼女が僕の眼前に鍵を見せつけてくる。
僕の愚息は勃起することもできなくなり、射精の権利も奪われてしまったのだ。
その支配者は誰か。
僕の男性としての権利を奪い支配しているのは誰か。
貞操帯の鍵を見せつけてくる彼女を見上げていると、そのことが嫌でも脳髄に刻み込まれた。
「明日から寸止めだよ」
彼女が無表情で言う。
僕の御主人様が淡々と宣言した。
「ぜったい射精させないから覚悟してね」
7
射精管理が始まった。
管理されているのは僕だ。
管理しているのはつぼみだった。
僕は彼女から徹底的に射精管理をされて、絶対にイかせてもらえず、永遠と寸止め調教をされた。
「ああああッ!」
いつもの僕の部屋。
そこで四つん這いにされて、一物を握られている。
寸止め調教の時だけ、つぼみは貞操帯をはずしてくれた。それがはずされた途端にギンギンに勃起した僕の愚息を、彼女はがしっと握りしめる。
「…………」
握りしめて、それだけ。
彼女の片手が僕の急所をわし掴みにしている。
それだけなのに、僕の性感はどこまでも高まっていった。
「つ、つぼみいいいッ!」
自分の意思とは無関係に、僕の腰がふりふりと左右に揺れる。
こびるように。御主人様に射精を懇願するように揺れ、少しでも一物に与えられる刺激が増えるように浅ましい懇願をしている。
「…………」
バッチインンンッ!
「ひいいいいッ」
それを叱責するかのように、つぼみの手が僕の尻を叩いた。
お尻ペンペン。
聞き分けの悪い子供を躾るための行動。
彼女はそれを無言のうちで行い、僕の腰振りを強制的に止めさせると、またしても僕の愚息をわし掴みにした。
「あ……アアアッ―――ああん」
微弱なそれでいて確実な快感。
彼女の手に握りしめられているだけで、僕はどこまでもきもちよくなっていった。彼女の手の暖かさ。それに包まれている安心感と射精への焦燥感。そんなもので僕の頭はめちゃくちゃになっていく。
「ふううううううッ!」
「ひいいいいいいッ!」
彼女の吐息がとどめをさすように僕の愚息に吹きかけられる。
その微弱な刺激がさらなる興奮をよび、僕の体がガクガクと震える。
それでもイけない。
射精するにはあとほんの少し刺激が足りない。
その生殺し状態。
射精する直前の状態に永遠に留められてしまうという屈辱と地獄。僕は耐えることもできず、体勢を崩してしまった。前のめりになり、まるで土下座しているみたいに額を地面に押しつける。
「…………」
そんな状態になっても、つぼみの寸止め調教は止まない。ずっと続いていく。僕はあえぎ声をもらすだけの人形に変わり、永遠と彼女の手によって犯され続けた。
*
寸止め調教は毎日続く。
彼女と一緒にいる時の僕は常に全裸で、常に彼女の魔性の手によって責められていた。
愚息を直接虐められるだけではない。
この日は徹底的に乳首責めをされた。
「お、お願い。ち●ぽ、ち●ぽさわってえええ」
浅ましいおねだりを繰り返す。
大の大人が射精を懇願して甘ったるい声で叫びちらかす。
「…………」
僕の懇願むなしく、つぼみは絶対に一物にふれようとしなかった。それどころか、この日は貞操帯もはずしてくれなかったのだ。僕の愚息は金属の拘束具によって閉じこめられたままだった。
「ア、アアアンッ! ち、乳首らめえええッ!」
その状態のままで乳首責め。
僕はいつものように全裸でベットに腰かけて座っていた。その背後から僕のことを抱きしめ永遠と乳首責めをしているのがつぼみだった。
「…………」
無言。
僕の痴態には反応することなく、彼女は僕の胸板に魔性の手を這わせ、さわさわと愛撫を繰り返す。突起をいじられていないのに、それだけで頭がぼんやりとしてくる愛撫。それがしばらくの間続くと、彼女の人差し指が、勢いよく僕の両乳首に襲いかかった。
カリカリカリッ!
「ひいいいいいいッ!」
右手人差し指が右乳首を。
左手人差し指が左乳首を。
それぞれ容赦なくカリカリと責める。その指使いはいやらしいの一言で、見ているだけで興奮するものだった。
「アヒイインッ! あ、あああん……ひっぎいい……」
悶える。
容赦のないカリカリ攻撃は止まない。
彼女の指が動くたびに僕の体はビクンビクンと震えて、快感で腰を跳ねさせていった。
きもちい。
おかしいほどの快感が次々とおそってくる。
極上の乳首責め。
つぼみにかかれば、男の乳首だって性感帯に変えて悶え苦しませることが簡単なのだ。
「おねがいいいッ! ち●ぽもいじってええええッ!」
僕の懇願が繰り返される。
かれこれ1時間以上、僕は乳首だけを虐められていた。貞操帯で拘束されて、勃起する権利も奪われたまま、永遠と乳首責めをされているのだ。
貞操帯で拘束されたまま乳首責めをされていると、普段よりも乳首の快感が増すから不思議だ。
アンアンというメスの喘ぎ声が響く。絶対に愚息をさわってもらえず、その存在を無視されていると、そんなものは自分には生えていないんじゃないかという気持ちになってくる。さんざんに乳首だけを責められ自分がメスに改造されていくのが分かる。それが怖くて、射精したくて、僕は男として生かしてもらうために必死の命乞いをする。
「ち●ぽおおおおッ! ち●ぽさわってくだしゃいいいいッ! お願いだからあああ、お許しくださいいいいいッ!」
命乞い。
それが届いたのか。
つぼみがガサゴソと自分の胸元に手をやるのが分かった。
期待に僕の目が見開く。
彼女は胸元から鍵を取り出した。それを背後から僕の貞操帯に差し込む。ガチャンと、その拘束が象徴的に解けた。
「あああああッ! あああああッ!」
僕は感極まって言葉も喋れなくなる。
貞操帯からはずされた途端、僕の愚息は勢いよく勃起して、必死の自己主張をはじめていた。
さわってください。
しごいてください。
いじめてください。
そう浅ましい自己主張をして、バギバギに勃起した愚息が犬のしっぽのように左右に振られた。しかし、
「あ、あ、な、なんで、ち、乳首らめえええッ!」
つぼみに乳首をつまみあげられる。
解放した一物に興味を示すこともない。無言の彼女が背後から再び僕の乳首責めを開始してしまった。
カリカリカリッ!
「ひいいいいいッ!」
電流が走った。
僕の乳首から全身に快楽がほとばしって、それがずっと続いた。
「つ、つぼみいいいいッ!」
「…………」
彼女は無言。
無言で僕の乳首をいじめてくる。
僕の愚息はバキバキに勃起したまま上下左右に暴れはじめていた。
さわってください。
お願いします。
助けてください。
先走りのツユをまるで涙のように流しながら必死に命乞いを繰り返している。しかし、つぼみは一切そこにふれることなく、乳首だけを責め続けた。耳元で、小悪魔と化した彼女がささやく。
「絶対にち●ちんはさわってあげない」
「ひいいいいいいッ!」
「聞き分けが悪い子にはおしおきだよ」
「つ、つぼみいいッ!」
「今日は乳首だけ責める。メスにしてあげるよ」
言葉責め。
あのいつも無口な彼女の言葉責めに、僕はどうにかなってしまいそうだった。
僕は彼女の宣言どおりに甘ったるい喘ぎ声をあげ続け、乳首の快感でメスにされていった。
この一物はもう僕のものではないのだ。
これは、つぼみのものだった。
彼女の許しがないとさわることすら許されない。
射精だけではなく、全ての男の権利を奪われてしまった。そんな気がした。
*
もう壊れてしまった。
僕はつぼみに壊された。
一日中、考えるのは射精のことばかり。
朝起きたベットでも、
通学途中の電車の中でも、
講義を受けている授業中でも、
学食でご飯を食べているときも。
つぼみに虐められる想像を昼夜を問わず繰り返し、寝ても夢で犯される。
徹底的な寸止め調教。
僕はもう壊れてしまった。
つぼみに壊されてしまったのだ。
もう男のプライドも人間としての尊厳も、なにも残っていなかった。
「しゃ、射精させてください。お願いします」
土下座。
部屋に入った瞬間、僕は脱兎のごとく衣服を脱いだ。全裸で無条件降伏して、貞操帯で拘束された役立たずの一物をぷるぷる震わせながら、僕はつぼみに向かって土下座をしたのだ。
「…………」
無言。
玄関先で、まだ靴を脱いでもいない彼女が土下座した僕のことを見下ろしている。僕はそんな彼女の足下で、頭を深く下げ、額を玄関のタイルにつけて必死に射精をさせてくださいと懇願していた。
「も、もう許してください。げ、限界です。ずっと射精したいってきもちで頭爆発しそうで、起きてる間も寝てる間もずっとつぼみのこと考えてて。も、もう許してください。射精、射精させてください」
必死に。
一生懸命。
射精をさせてくださいと命乞いをする。
無言の時間。
それが流れた後、つぼみがゆっくりと片足を振り上げるのが分かった。そのまま、僕は後頭部を踏み潰された。
「ウッ!」
後頭部に広がる靴裏の感触。
僕の顔面全体が地面に押しつけられ、そのままグリグリと蹂躙される。
痛い。苦しい。そのはずなのに、僕はとてつもなく興奮していた。
「ああああああッ!」
体がビクンビクンと震える。
快感が全身を支配して歓喜していた。
僕は土下座をして頭を踏まれているだけだ。
それは屈辱的なことのはずだった。
それなのに、僕はとてつもなく興奮していた。
「マゾ」
びくん。
つぼみの言葉に僕は快感で震える。
「だいぶ仕上がってきたね」
「つ、つぼみいいいいッ!」
「君は今、マゾの快感でよがってるんだよ。わかる?」
「ああああッ! アアンンンッ!」
「彼女に土足で頭踏み潰されて興奮してるの。わたしが与えるすべての刺激が快感になってる。情けないと思わない?」
ぐりぐりとさらに潰される。
僕の頭は快感でさらにバカになっていった。
彼女の言葉どおり、頭を踏み潰されているだけで、僕は頭の中で絶頂していた。
「一週間後」
つぼみがどこか弾むような声で、
「一週間後、射精させてあげる」
「つ、つぼみ様あああああッ!」
「それまで徹底的に寸止め調教する」
「ひゃ、ひゃだあああああッ!」
「今日も絶対に射精させてあげない。がんばってね、変態マゾくん」
グリグリグリイッ!
最後にひときわ強く僕の頭を踏み潰してから、つぼみ様が離れた。
そのまま、無言のままで靴を脱ぎ、部屋にあがってしまう。僕は玄関先で涙を流しながら、「射精させて……射精させてください」と弱々しくつぶやいたままだった。
つづく